毎月勤労統計は雇用の質の改善を示しているか?
本日、厚生労働省から12月の毎月勤労統計が発表されています。ヘッドラインとなる現金給与総額は季節調整していない原系列の前年同月比で+1.6%増の551,878円と大きく増加し、景気に敏感な所定外労働時間は製造業の季節調整済みの系列で前月比+0.3%と鉱工業生産に歩調を合わせるように緩やかな増加を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
14年現金給与、4年ぶりプラスも実質賃金2.5%減
厚生労働省が4日発表した2014年の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、従業員1人当たりの月平均の現金給与総額は前年比0.8%増の31万6694円だった。10年(0.5%増)以来4年ぶりにプラス転換し、伸び率は1997年(1.6%増)以来17年ぶりの高さとなった。ボーナスが比較可能な91年以降で2番目に高い伸び率だったほか、昨年の春季労使交渉で基本給を底上げするベースアップが広がり、9年ぶりに基本給にあたる所定内給与が下げ止まったことが寄与した。
一方、現金給与総額から物価上昇分を除いた実質賃金は2.5%減と3年連続で減少した。減少率は91年以降では米リーマン・ショック後の09年(2.6%減)に次ぐ2番目の大きさ。昨年4月の消費増税や日銀が掲げる2%のインフレ目標により、賃金の伸びが物価上昇に追いついていないことが改めて浮き彫りとなった。
調査は従業員5人以上の約3万3000事業所が対象。パートタイム労働者が増加傾向にあり、現金給与総額はピークだった97年の37万1670円を5万4976円下回った。現金給与総額を就業形態別でみると、正社員などフルタイムで働く一般労働者は1.3%増の40万9860円と2年連続で増え、パート労働者は0.4%増の9万6979円と2年ぶりに増加した。
所定内給与は前年比横ばいの24万1357円と、05年(0.2%増)以来9年ぶりに下げ止まった。ボーナスにあたる特別給与は3.5%増の5万5647円と2年連続のプラスで、91年(5.7%増)に次ぐ高い伸び率だった。残業代などの所定外給与は3.1%増の1万9690円。
併せて発表した14年12月の現金給与総額は前年同月比1.6%増の55万1878円と10カ月連続で増加した。所定内給与は0.3%増の24万1372円で2カ月ぶりのプラス。冬のボーナスなど特別給与は2.6%増の29万159円、所定外給与は0.5%増の2万347円だった。一方、実質賃金は1.4%減と18カ月連続で減少した。
年データが中心で12月の月次統計は最後のパラだけながら、いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、下のパネルは製造業に限らず調査産業計の賃金の季節調整していない原系列の前年同月比を、それぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。
先週の雇用統計はいずれも堅調な雇用動向を示しており、生産も緩やかながら回復に向かう姿が確認されました。今日発表の毎月勤労統計でも上のグラフの所定外労働時間、下の賃金動向とも堅調な雇用と人手不足からいずれも順調な推移を示していると受け止めています。ただし、12月の賃金がアップした大きな要因はボーナスなどの所定外給与であり、グラフに太線で示した所定内給与については、この毎月勤労統計のクセを考慮するとやや弱めの内容と考えられます。給与を上げた事業所は胸を張って速報に間に合うように調査票を提出する傾向があり、確報段階では給与指数は下方修正される統計としてのクセがあるからです。
順序が逆になりましたが、季節調整済みの所定外労働時間指数は昨年2014年1月がピークで、8月が底となっています。先週金曜日に鉱工業生産指数を取り上げた際に書いた通り、生産指数もまったく同じであり、1月を山とし、8月を谷としています。金曜日のエントリーでも指摘しましたが、景気循環日付の山谷を付けるかどうかはビミューなところですが、繰返しになるものの、私はややネガティブです。いずれにせよ、生産や雇用はすでに回復過程に回帰しているのは明らかだと考えるべきです。
ということで、賃金とともに雇用の質として私が重視している就業形態別の雇用の推移は上のグラフの通りです。通常、正規雇用とは、第1に、パートタイムの短時間労働ではなくフルタイムであること、第2に、任期付きの雇用ではなく期限の定めのない雇用であること、第3に、派遣でなく直接雇用されていること、の3点をすべて満たす雇用と考えられています。この毎月勤労統計からは第1のパートタイムかフルタイムかの就業形態しか判明しませんが、それでも、最近時点では徐々にフルタイムの雇用が伸びてているのが観察され、12月統計ではフルタイムの伸び率がパートタイムにとうとう追いつきました。このフルタイムの伸び率がパートタイムを追い抜くと、フルタイム雇用のシェアが増加するわけですから、いよいよ、雇用は量的な拡大から質的な改善の局面に入る可能性が出て来たと私は大いに期待しています。
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