本日発表の景気ウォッチャーと消費者態度指数と経常収支をどう見るか?
本日、内閣府から供給サイドと需要サイドの典型的なマインド指標である景気ウォッチャーと消費者態度指数が、また、財務省から経常収支が、それぞれ公表されています。マインド指標は1月の、経常収支は12月の統計です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
1月の街角景気、現状判断2カ月連続改善 原油安や求人数増で
内閣府が9日発表した1月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比0.4ポイント上昇の45.6と2カ月連続で改善した。原油安を背景に輸送業など非製造業で回復の兆しがみられるほか、正社員の求人数が増加していることから指数の改善につながった。
足元では食料品などの値上がりが消費者心理の重荷となっている。「3カ月前より各種商品、特にラーメン、粉類商品が値上がりし、客の節約志向が強まっている」(東北のスーパー)との指摘があった。一方、原油安の恩恵も出始めており、「燃料価格が下がっているので物流部門の収支は徐々に改善されている」(九州の輸送業)といった声が上がった。
内閣府は街角景気の基調判断を前月の「このところ回復に弱さがみられる」に2カ月連続で据え置いた。先行きについては「物価上昇への懸念などがみられるものの、燃料価格低下への期待や賃上げへの期待などがみられる」との認識を示した。
2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は前月比3.3ポイント上昇の50.0と、2カ月連続で改善した。好況の目安である50以上になったのは2014年8月(50.4)以来5カ月ぶり。円安の影響による生産拠点の国内回帰や、今年の春季労使交渉での賃上げに期待する声が多かった。
「賃金のベースアップが実施されそう。実質所得の増加による消費へのプラスが期待でき、花見の頃には明るいムードが広がってくる」(近畿のスーパー)、「製造業の国内回帰の傾向が鮮明になりつつある。雇用の拡大など雰囲気的に良好な状態」(四国の食料品製造業)と前向きなコメントが出ていた。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象で、有効回答率は90.6%。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
消費者態度指数、1月も改善 0.3ポイント上昇
内閣府が9日発表した1月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は39.1と、前月比0.3ポイント上昇した。改善は2カ月連続。内閣府は消費者心理の基調判断を前月の「下げ止まりの動きがみられる」に据え置いた。
指数を構成する意識指標のうち、「雇用環境」と「耐久消費財の買い時判断」が2カ月連続で上昇した。一方、「暮らし向き」と「収入の増え方」の指数は前月を下回った。悪化はいずれも2カ月ぶり。
1年後の物価見通しについては「上昇する」と答えた割合(原数値)が前月比0.4ポイント増の87.4%と、2カ月ぶりに上昇した。
調査は全国8400世帯が対象。調査基準日は1月15日で、有効回答数は5452世帯(回答率64.9%)だった。
14年の経常黒字、18.8%減の2兆6266億円 過去最少
財務省が9日発表した2014年の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆6266億円の黒字だった。黒字額は前年比18.8%減少し、現行基準で統計を遡ることができる1985年以降で最少となった。円安進行で企業の海外での投資収益を示す第1次所得収支の黒字が過去最大となった一方、貿易赤字が過去最大となり、経常黒字は低い水準にとどまった。
14年の貿易収支は、輸送の保険料や運賃を含まない国際収支ベースで10兆3637億円の赤字。赤字額は前年比18.1%増加し、比較可能な1996年以降で最大となった。貿易赤字は4年連続。輸入額は10.3%増の84兆4862億円で、過去最大だった。液化天然ガス(LNG)や半導体等電子部品などが増加し、5年連続で輸入額が前の年を上回った。一方、輸出額は9.3%増の74兆1225億円となった。自動車や科学光学機器などが増え、輸出額は2年連続で前の年を上回った。
サービス収支は3兆932億円の赤字。赤字額は13年の3兆4786億円から縮小した。項目別にみると、「知的財産権等使用料」が1兆6948億円の黒字と黒字額は比較可能な96年以降で最大。また訪日外国人観光客数の増加を背景に「旅行収支」が1251億円の赤字と赤字額は13年の6545億円を下回り過去最少となった。
第1次所得収支は18兆712億円の黒字。黒字額は前年比9.7%増加し、07年(16兆4818億円)を上回って比較可能な1985年以降で最大となった。円安進行により、企業が海外事業への投資で受け取る配当金や海外証券投資で得られる債券利子が増えた。
同時に発表した14年12月の経常収支は1872億円の黒字だった。経常黒字は6カ月連続。13年12月は6799億円の赤字だったが、黒字転換した。貿易赤字は3956億円で、赤字額は前年同月比63.1%減少した。第1次所得収支は1兆173億円の黒字で、黒字額は12月としては過去最大だった。
いずれも、よく取りまとめられた記事だという気がします。でも、さすがに3指標の記事を一気に並べるとかなり長くなってしまいました。次に、マインド指標のグラフは以下の通りです。上のパネルは景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIを、下のパネルは消費者態度指数を、それぞれプロットしています。影をつけた部分はいずれも景気後退期です。
景気ウォッチャーと消費者態度指数のいずれも2か月連続の改善を示しましたが、その改善幅は決して大きくもなく、明確に上昇や改善に転じたというよりは底ばいに近いと私は受け止めています、ですから、統計作成官庁である内閣府も基調判断は前月から据え置いています。中でも、消費者態度指数の基調判断である「下げ止まりの動き」というのが、マインドに対するなかなか適確な表現のような気がしています。もっとも、景気ウォッチャーの先行き判断DIが特に大きな改善を示していますから、春先以降のマインド改善が期待されます。すなわち、現時点では、引用した記事にもある通り、原油安の好影響が顕在化して、円安による原材料高を相殺している形ですが、春以降は年央にかけて賃上げや雇用の質的な改善が消費に結びつけば、底ばいを脱してマインドの本格的な改善に向かう可能性は十分あると私は考えています。引用した記事の最初のパラにある通り、正社員の求人増というのは雇用の質的な改善を象徴していると受け止めています。
経常収支については、昨年2014年通年の経常黒字が統計史上最少の黒字幅に縮小した、という年データの動向が注目されています。ただし、足元の2-3か月では原油価格の下落もあって、貿易赤字が急速に縮小し、同時に円安に伴う1次所得収支の円建ての受取りの増加もあって、経常黒字幅が拡大しているのがグラフから見て取れます。形状収支の傾向だけを見た univariate な分析ですが、震災以降から昨年前半まで続いていた一気に経常黒字が縮小するトレンドとは違って来ているのは明らかです。国際商品市況での原油価格の動向は私には予測がつきませんが、この先、輸出はもう少し伸びるでしょうから、貿易収支や経常収支はそれなりに安定に向かうんではないかと期待しています。
本日の経常収支の発表で、GDP統計1次QEに必要な指標がほぼ出そろいました。消費増税後の4-6月期と7-9月期には2四半期連続でマイナス成長を記録しましたが、10-12月期には経済も持ち直してプラス成長に転じたんではないかと私は考えているところ、いずれにせよ、日を改めて、1次QE予想を取り上げたいと思います。
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