設備投資の下振れと在庫調整の進展で2次QEは下方修正!
本日、内閣府から昨年2014年10-12月期のGDP速報2次QEが公表されています。実質GDPの前期比成長率は+0.4%、前期比年率で+1.5%と、先月発表の1次QEからやや下方修正されましたが、在庫調整の進展による寄与が大きく、決して内容は悪くないと私は受け止めています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
10-12月期実質GDP改定値、年率1.5%増に下方修正
内閣府が9日発表した2014年10-12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.4%増となり、2月16日発表の速報値(0.6%増)から下方修正された。年率換算では1.5%増(速報値は2.2%増)だった。速報値の発表後に明らかになった法人企業統計や商業販売統計などを加味した結果、設備投資や民間在庫の寄与度が押し下げ要因となった。
10-12月期の法人企業統計をもとに推計し直した結果、設備投資は速報段階で仮置きしていた数字を実績が下回り、0.1%減(速報値は0.1%増)に下方修正された。
民間の在庫寄与度はマイナス0.2ポイントと速報値(プラス0.2ポイント)から大きく引き下げられた。10-12月期の法人企業統計を受けて仕掛品在庫が下方修正。12月の商業販売統計の確報値を反映したことで、自動車や衣服の流通在庫も速報段階から下振れした。
一方、個人消費は流通在庫が減った影響で0.5%増(速報値は0.3%増)に引き上げられた。12月分の実績を加味した公共投資も0.8%増(速報値は0.6%増)に上方修正された。
生活実感に近い名目GDPは1.0%増(速報値は1.1%増)、年率で3.9%増(同4.5%増)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比プラス2.4%(同プラス2.3%)だった。
同時に発表した14年暦年の実質GDPは13年比0.0%減と、速報値の0.0%増からわずかに引き下げられた。名目も1.6%増で速報値の1.7%増から下振れした。
ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次 に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者 報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDP は実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではな く、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスク を付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与 度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ます ので、内閣府のリンク先からお願いします。
です。正確な計数は自己責任で最初にお示 しした需要項目 | 2013/10-12 | 2014/1-3 | 2014/4-6 | 2014/7-9 | 2014/10-12 | |
1次QE | 2次QE | |||||
国内総生産 (GDP) | ▲0.3 | +1.3 | ▲1.6 | ▲0.7 | +0.6 | +0.4 |
民間消費 | ▲0.2 | +2.2 | ▲5.0 | +0.3 | +0.3 | +0.5 |
民間住宅 | +2.6 | +2.4 | ▲10.3 | ▲7.0 | ▲1.2 | ▲1.2 |
民間設備 | +1.3 | +5.9 | ▲5.0 | ▲0.2 | +0.1 | ▲0.1 |
民間在庫 * | (+0.0) | (▲0.5) | (+1.4) | (▲0.8) | (+0.2) | (▲0.2) |
公的需要 | +0.3 | ▲0.6 | +0.5 | +0.6 | +0.1 | +0.3 |
内需寄与度 * | (+0.2) | (+1.6) | (▲2.7) | (▲0.7) | (+0.3) | (+0.2) |
外需寄与度 * | (▲0.5) | (▲0.3) | (+1.1) | (+0.1) | (+0.2) | (+0.2) |
輸出 | ▲0.2 | +6.5 | ▲0.3 | +1.5 | +2.7 | +2.8 |
輸入 | +3.0 | +6.9 | ▲5.3 | +1.0 | +1.3 | +1.3 |
国内総所得 (GDI) | ▲0.5 | +0.9 | ▲1.3 | ▲1.0 | +0.8 | +0.6 |
国民総所得 (GNI) | ▲0.7 | +0.7 | ▲1.0 | ▲0.5 | +1.7 | +1.5 |
名目GDP | ▲0.1 | +1.4 | +0.3 | ▲0.9 | +1.1 | +1.0 |
雇用者報酬 | ▲0.2 | +0.2 | ▲1.5 | +0.6 | +0.1 | +0.0 |
GDPデフレータ | ▲0.3 | +0.1 | +2.2 | +2.0 | +2.3 | +2.4 |
内需デフレータ | +0.6 | +0.8 | +2.5 | +2.3 | +2.0 | +2.1 |
上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2014年10-12月期の最新データでは、前期比成長率がプラスに転じ、赤の民間消費と黒の外需が小幅のプラス寄与を示す一方で、グレーの民間在庫がマイナス寄与しているのが見て取れます。
繰返しになりますが、先月の1次QEから今日発表の2次QEへの下方修正は在庫調整に進展が見られたことに起因し、設備投資の下方修正はやや気にかからないでもないものの、過度に悲観する必要はなく、むしろ、基本的に内容は悪くないと受け止めています。もっと正直に言えば、昨年2014年4月の消費増税から低迷していた景気の底入れを確認できる内容であったと言えます。全体のGDP成長率は▲0.2%ポイントの下方改定ですが、在庫の下方改定幅が寄与度で▲0.4%ポイントありますから、逆算すれば、在庫を除いた需要項目はプラスに改定されていると考えるべきです。特に、消費が上方改定されているのは設備投資の下方改定とともに、というか、それ以上に注目すべきであると私は考えています。その内容が消費増税によるネガティブ・ショックからの脱却を示唆しているからです。すなわち、消費のうちの耐久財消費の季節調整済み系列の前期比に着目すると、2014年1-3月期に駆込み需要で+13.1%増と大きく増加を示した後、4-6月期は反動減で▲18.8%減、7-9月期も▲4.2%減と続いた後、10-12月期には+1.8%と底を打った可能性があります。ただし、住宅投資の回復にはもう少し時間がかかる可能性があります。なお、足元1-3月期の成長率については、前期比で+1%近く、前期比年率で3%前後の成長が見込めると考えていますが、その後は企業部門の貢献による押上げ効果が景気のゆくえを左右します。すなわち、人手不足や労働市場のひっ迫に応じた企業行動が見られるかどうか、もっと言えば、企業収益の拡大および人手不足に応じた賃上げや正社員化による雇用の質の改善、さらに、省力化投資などの設備投資が企業部門のアニマル・スピリットを後押しするか、それとも、デフレ期の縮小均衡的な期待がまだ支配的で、先行き不透明感から企業活動が雇用と設備投資の面で活発化しないか、我が国景気の分岐点かもしれません。
GDP統計2次QEのほか、今日は内閣府から2月の景気ウォッチャーが、また、財務省から1月の経常収支が、それぞれ発表されています。事情により、グラフと日経新聞のサイトからの記事の引用のみにとどめておきます。悪しからず。
街角景気の指数上昇、50超え 基調判断を上方修正
2月景気ウオッチャー調査
内閣府が9日発表した2月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比4.5ポイント上昇し50.1だった。改善は3カ月連続。好況の判断の目安となる50を超えたのは、昨年7月以来となる。内閣府は街角景気の基調判断を「一部に弱さが残るものの、緩やかな回復基調が続いている」とし、8カ月ぶりに上方修正した。1月の判断は「このところ回復に弱さがみられる」だった。
2月の現状判断指数は、家計動向が前月比4.5ポイント上昇の48.4と2カ月ぶりで改善したほか、企業動向が4.4ポイント上昇の51.1、雇用が4.3ポイント上昇の59.1と、そろって前月を上回った。中華圏の春節(旧正月)期間の訪日外国人客増加や、株高などを反映し、消費者心理の持ち直しを指摘する報告が相次いだ。「外国人観光客の買い上げが特に都心店舗で多く、化粧品や雑貨の売れ行きが好調」(近畿・百貨店)といった声や、「株価が1万8000円台に乗り、富裕層の購買意欲が活性化してきている」(南関東・百貨店)といった見方が寄せられた。
その一方で、「加工食品の値上げが相次いでおり、生活防衛意識が強くなっている」(東北・スーパー)など、値上げで消費者の節約志向を指摘する声もあった。
2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は前月比3.2ポイント上昇の53.2で、3カ月連続で改善した。先行き判断指数が50を超えたのは2カ月連続。「ガソリン価格は比較的安値で安定しており外出が増えるのでは」(東北・ホテル)など、燃料価格低下を好感したり、賃上げによる消費増に期待する声が出ていた。
調査は景気に敏感な小売業など2050人を対象とし、有効回答率は89.4%。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
経常黒字7カ月連続 1月614億円、円安で輸出額増
財務省が9日に発表した1月の国際収支統計によると、海外とのモノやサービスの取引状況を表す経常収支は614億円の黒字となった。黒字は7カ月連続で、1月としては東日本大震災前の2011年以来で4年ぶりの黒字だ。原油安で輸入額が減り、円安によって輸出額が拡大したため貿易収支の赤字も大幅に縮小した。
昨年4月から今年1月の経常収支は累計で3兆5065億円の黒字となり、14年度通年でも経常黒字を維持できる公算が大きい。14年1月は1兆5861億円の赤字だった。
1月の貿易収支は8642億円の赤字だった。赤字幅は前年同月に比べ1兆5404億円(64.1%)減った。1月の平均円相場は1ドル=118.24円と、前年同月に比べ14円程度も円安が進み、輸出額が6兆3324億円と8395億円(15.3%)増えた。米国の景気の持ち直しなども影響して、電子部品を中心に輸出が伸びた。
輸入は1月は7兆1966億円と前年同月に比べ7009億円(8.9%)減った。減少は8カ月ぶりだ。原油安の影響でエネルギーの輸入額が減った。
1月の第1次所得収支の黒字は前年同月に比べ704億円(5.2%)増え、1兆4129億円だった。黒字額は比較できる1985年以降で1月としては2番目の高水準だった。
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