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2015年3月31日 (火)

部活・サークルとバイトについてのアンケート結果やいかに?

本日は厚生労働省から2月の毎月勤労統計の結果が公表される予定だったんですが、なぜか延期されてしまいました。日経新聞の報道では「数字に不確かな部分が見つかり、点検に時間を要する」とされています。ということで、突然ながら、アルバイト情報誌「an」を発行しているインテリジェンスから発表されている「1000人のanバイト白書」vo.25から「バイトx部活・サークル」の調査結果を図表を引用しつつ簡単に紹介したいと思います。なお、私は今年大学に進学すっる上の倅になぞらえて見ていますが、調査主体から理解される通り、アンケート対象者はすべてバイトをやっている人、もっとも、大学生とは限らない、と理解しています。念のため。

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上のグラフは部活もしくはサークルに入っているかどうかを問うた設問の回答結果です。ザッと見て半々で、部活・サークルに参加している人と参加していない人に分かれています。なお、参加している部活・サークルの活動内容については、体育会系・アウトドア系と文化系がこれまたほぼ半々となっています。

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上のグラフは2つの棒グラフをあわせてあるんですが、部活・サークルとバイトの頻度を問うた結果です。上の縦棒グラフが部活・サークルの活動頻度、下の横棒グラフがバイトの頻度です。いずれもヒストグラムで表示されていますが、最初に調査対象者がすべてバイトしている人と理解している旨を書きましたが、頻度でもややバイトの方にウェイトが置かれた結果となっています。

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最後に、部活・サークルをやっていない理由の回答結果が上のグラフの通りです。「勉強に専念」との回答社もバイトはやっているような気がするんですが、矛盾はないんでしょうか。
なお、グラフなどの引用は省略しましたが、興味ある問いとして「伝統バイト」に関する質問がありました。単に「伝統バイト」と聞けば、私のような京都出身者は葵祭とか時代祭で昔の扮装をして行列するアルバイトを思い出すんですが、ここでは違って、クラブやサークルなどで代々伝わっているアルバイトを指しているようで、関連性の高いものとしてはテニス部やサッカー部で試合の審判をするバイトとか、関連の薄いものではバトミントン部で百貨店の鮮魚売り場などが上げられていました。都市伝説的な伝統として、ある中華料理店でバイトすると留年する、といった例も見かけました。ありそうな気もします。

来月から上の倅が大学に進学し、アルバイトの機会もあるかもしれません。少し前もって、アルバイトやサークル活動などの関係について、調査対象は大学生とは限らないながらも、倅の学生生活を垣間見た気がします。

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2015年3月30日 (月)

減産に転じた鉱工業生産は景気の停滞を示すのか?

本日、経済産業省から2月の鉱工業生産指数が公表されています。季節調整済みの系列で前月比▲3.4%減産を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の鉱工業生産指数、前月比3.4%低下 3カ月ぶりマイナス
経済産業省が30日発表した2月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比3.4%低下の98.9だった。マイナスは3カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1.8%低下で、市場予想より大幅な下げ幅となった。
1月に生産が活発だった一般機械や自動車、電子部品などで反動が出た。ただ経産省は「1、2月をならした数字でみると上昇傾向は続いている」とし、生産の基調判断を前月までの「緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
生産指数は15業種のうち12業種が前月比で低下、上昇は2業種で、1業種が横ばいだった。低下業種をみると、「はん用・生産用・業務用機械」が前月比5.6%の低下だった。化学プラント向けの反応用機器や蒸気タービンなどの減産が目立ったという。
自動車を含む「輸送機械」は前月比3.6%低下し、4カ月ぶりにマイナスとなった。在庫の積み上がりが大きい小型乗用車を中心に生産調整の動きが出たもようだ。「電子部品・デバイス」は前月比7.4%低下で、8カ月ぶりのマイナス。中華圏の春節(旧正月)に備えて生産・出荷が好調だった1月の反動が出た。
一方、上昇業種は「石油・石炭製品」と「パルプ・紙・紙加工品」で、「化学(医薬品除く)」が横ばいだった。
出荷指数は前月比3.4%低下の100.2と、3カ月ぶりのマイナス。15業種中12業種中が前月比で低下した。特に、はん用・生産用・業務用機械が前月比10.6%低下、電子部品・デバイスが10.3%低下と2桁の下げ幅となった。在庫指数は0.5%上昇の111.8で、3カ月ぶりにプラスとなった。出荷に対する在庫の割合を示す在庫率指数は4.3%上昇の112.8だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査によると、3月が前月比2.0%低下、4月は3.6%の上昇を見込む。経産省は「3月は自動車で在庫削減を目的にした生産調整の動きが続くほか、一般機械や電子部品も2月の水準を下回る」とみている。

長いながら、網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

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日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比▲1.8%の低下で、予想レンジは▲2.9%から+0.1%でしたから、このレンジを超える大きな低下幅を記録したことになります。中華圏の春節のお休みが2月にあって1月の生産が大幅増を記録した反動が2月の生産に出たという意味で、基本は春節効果だろうと受け止めていますが、製造工業生産予測調査で4月も▲2.0%の減産を見込んでいる点が懸念されています。ただし、4月は+3.6%の増産が予想されており、底堅い動きを示すことから、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「緩やかな持ち直しの動き」で据え置いています。ということで、基調判断に着目すると、昨年2014年9-11月の「一進一退」の後、12月から「緩やかな持ち直しの動き」を3か月連続で基調判断として維持しているんですが、今年2015年1月の生産が2月の春節を見越して+3.7%増を記録した後、本日発表の2月実績が▲3.4%減、3-4月見込みがそれぞれ▲2.0%減、+3.6%増ですから、生産は引き続き底堅いものの、一進一退に近い気がしないでもありません。別の表現をすれば、増産基調に変わりないものの、ややペースダウンという見方もできます。
また、現在の鉱工業生産は米国を起点とする外需、すなわち輸出と内需については設備投資の資本財が牽引役となっており、逆から見て、いまだに消費財については昨年4月の消費税率引上げのショックから回復をしているとは私は考えていません。国際商品市況における原油価格の低下はガソリン価格などの形で一部は消費者にも還元されていますが、円安や景気回復に伴う企業収益の改善を賃上げなどの形でいかにして国民に還元するかが、今後の息の長い景気回復・拡大にとって重要な課題となる、というのがこのブログでの私の一貫した主張です。

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2015年3月29日 (日)

映画「ソロモンの偽証 前篇・事件」を見に行く

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映画「ソロモンの偽証 前篇・事件」を見に行きました。ご存じ、宮部みゆきの原作になる小説の映画化です。原作本は我が家では私と上の倅がむさぼるように読んでいたのを思い出します。ほぼ原作通りな気がしますが、藤野涼子の2人の妹が弟と妹になっていました。どういった意図で変更したのか不明です。
役名をそのまま芸名にしてデビューした藤野涼子の存在感がバツグンです。私が通ったのは男子ばかりの中学高校でしたが、出来のいい女子はこんななんだろうと想像した通りだった気がします。来月には後編が封切られ、もちろん、結末はよくわかっているんですが、後編もぜひ見たいと思います。でも、やっぱり、原作は読んでおいた方が100倍も映画が楽しめそうな気がします。

事情により少しブログの更新が滞っていましたが、今週からはできるだけ早く本格的に復帰したいと予定しています。長らくお休みしている経済評論のブログもバリバリ取り組みたいと思います!

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2015年3月28日 (土)

今週の読書は岩波書店の現代経済の展望シリーズ大森拓磨『米中経済と世界変動』ほか

今週の読書は岩波書店の「現代経済の展望」シリーズの大森拓磨『米中経済と世界変動』ほか以下の通り5冊でした。なぜか、今週は小説がありません。

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大森拓磨『米中経済と世界変動』(岩波書店) です。岩波書店の「現代経済の展望」シリーズで現時点までに観光されているうちで、唯一読み逃していた本です。欧米の宗主国とアジアやアフリカなどの植民地という帝国主義時代のブロックではなく、ほぼ対等な米中関係をして「ネオブロック」という言葉で説明しようとしています。

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H. ギルバート・ウェルチ/リサ M. シュワルツ/スティーヴン・ウォロシン『過剰診断』(筑摩書房) です。著者は米国アイビーリーグの名門ダートマス大学の医学部の先生方です。火事でないのにサイレンが鳴ってしまうのと同じ意味で、病気でないのに病気を過剰に予防する現状を分析しています。私の専門分野で言えば、統計の第2種の過誤のようなもんかと思います。

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高野信治『武士の奉公 本音と建前』(吉川弘文館) です。天下泰平の時代に戦場で武勲をあげられなくなって、畳の上の文官化した武士のお勤めについて、いろいろと例を上げて分かりやすく解説しています。

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NHKスペシャル『メルトダウン』取材班『福島第一原発事故 7つの謎』(講談社現代新書) です。1号機ベントの遅れ、そのベントが成功したかどうかなど、7つの謎を追っています。

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手嶋泰伸『日本海軍と政治』(講談社現代新書) です。戦前史を顧みて、陸軍の政治介入に比較した海軍のテクノクラート振りが強調されることが多いんですが、陸軍を止められなかった海軍という視点も強調されています。

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2015年3月22日 (日)

お彼岸に墓参りに行く!

昨日のお彼岸の中日を経て、今日もまずまずのお出かけ日和で、そこそこ気温も上がりました。昨年買ったばかりの亡き父のお墓参りに行き、上の倅の高校卒業と大学進学を報告しておきました。といっても、我が家は浄土真宗の一向門徒ですから、この墓に私の亡き父が入っているわけではありません。すでに往生した瞬間に極楽浄土に生まれ変わっているハズです。でも、墓を掃除したりするため、年に1-2度くらいはお参りするのが私の務めと心得えています。

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2015年3月21日 (土)

今週の読書は須藤・野村『日本経済の構造変化』ほか

今週の読書は岩波書店の現代経済の展望シリーズの須藤・野村『日本経済の構造変化』ほか、小説や新書を合わせて以下の5冊です。

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須藤時仁・野村容康『日本経済の構造変化』(岩波書店) は、岩波書店のシリーズ「現代経済の展望」の1冊です。私はこのシリーズがほとんど読んでいる気がします。

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湊かなえ『絶唱』(新潮社) は、1995年の阪神・淡路大震災をテーマにし、なぜか、トンガを舞台にしています。

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葉真中顕『絶叫』(光文社) は、21世紀版の『火車』かもしれません。壮絶に脱出を図っています。

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田崎史郎『安倍官邸の正体』(講談社現代新書) は、現在の安倍政権に対してかなり肯定的、ポジティブです。

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片田珠美『他人を攻撃せずにはいられない人』(PHP新書) は、ここまでひどくなくても、これに近い要素をチラつかせている人は少なくないような気もします。

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2015年3月18日 (水)

上の倅が高校を卒業する!

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今日は、上の倅の通う高校の卒業式でした。倅も無事に卒業し、卒業証書その他一式をもらって帰宅しました。というか、ホントは祝賀会で焼き肉を食べに行って、まだ帰宅していなかったりします。第一志望の大学に合格できて4月の入学式まで1か月足らず。この先も高校の祝賀会や大学のオリエンテーションなどの予定が目白押しだそうですが、ある意味では、人生でもっとものんびりと過ごせる時期かもしれません。
下の写真は女房に頼んで撮ってもらいました。卒業式を終えて教室でのヒトコマです。

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高校卒業おめでとう!

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2015年3月14日 (土)

今週の読書は『経済の時代の終焉』ほか

事情によりブログの更新が滞っています。せめて、読書の記録だけでも残したいと思っています。

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井手英策『経済の時代の終焉』(岩波書店)

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ヒュン・ソン・シン『リスクと流動性』(東洋経済)

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柿沼陽平『中国古代の貨幣』(吉川弘文館)

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道尾秀介『透明カメレオン』(角川書店)

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柴田よしき『自滅』(角川書店)

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柚月裕子『蟻の菜園』(宝島社)

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酒井順子『オリーブの罠』(講談社現代新書)

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高井尚之『カフェと日本人』(講談社現代新書)

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2015年3月10日 (火)

大学の合格発表が一巡し上の倅の進学先が決まる!

昨日の大阪大学、東北大学、名古屋大学などに続いて、本日、東京大学や京都大学などの国立大学の2次試験前期日程の合格発表があり、まだまだ後期日程などを残しているものの、世間的には大雑把に、私立も国公立も含めて大学入試の合格発表が一巡したような雰囲気です。我が家の上の倅もいくつか合格した大学があり、来月4月から通う進学先も決まりました。その大学には同じ高校の同級生が40人余り行くようなことを倅は言っていました。浪人生を含めれば、もっと多いのかもしれません。
まあ、何はともあれ、誠にめでたい限りです。まだすべての大学で入試や合格発表が終わったというわけではありませんが、我が家では終わったようですので、改めて、大学受験生のみなさん、お疲れさまでした。

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2015年3月 9日 (月)

設備投資の下振れと在庫調整の進展で2次QEは下方修正!

本日、内閣府から昨年2014年10-12月期のGDP速報2次QEが公表されています。実質GDPの前期比成長率は+0.4%、前期比年率で+1.5%と、先月発表の1次QEからやや下方修正されましたが、在庫調整の進展による寄与が大きく、決して内容は悪くないと私は受け止めています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月期実質GDP改定値、年率1.5%増に下方修正
内閣府が9日発表した2014年10-12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.4%増となり、2月16日発表の速報値(0.6%増)から下方修正された。年率換算では1.5%増(速報値は2.2%増)だった。速報値の発表後に明らかになった法人企業統計や商業販売統計などを加味した結果、設備投資や民間在庫の寄与度が押し下げ要因となった。
10-12月期の法人企業統計をもとに推計し直した結果、設備投資は速報段階で仮置きしていた数字を実績が下回り、0.1%減(速報値は0.1%増)に下方修正された。
民間の在庫寄与度はマイナス0.2ポイントと速報値(プラス0.2ポイント)から大きく引き下げられた。10-12月期の法人企業統計を受けて仕掛品在庫が下方修正。12月の商業販売統計の確報値を反映したことで、自動車や衣服の流通在庫も速報段階から下振れした。
一方、個人消費は流通在庫が減った影響で0.5%増(速報値は0.3%増)に引き上げられた。12月分の実績を加味した公共投資も0.8%増(速報値は0.6%増)に上方修正された。
生活実感に近い名目GDPは1.0%増(速報値は1.1%増)、年率で3.9%増(同4.5%増)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比プラス2.4%(同プラス2.3%)だった。
同時に発表した14年暦年の実質GDPは13年比0.0%減と、速報値の0.0%増からわずかに引き下げられた。名目も1.6%増で速報値の1.7%増から下振れした。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次 に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者 報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDP は実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではな く、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスク を付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与 度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ます ので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示 しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2013/10-122014/1-32014/4-62014/7-92014/10-12
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)▲0.3+1.3▲1.6▲0.7+0.6+0.4
民間消費▲0.2+2.2▲5.0+0.3+0.3+0.5
民間住宅+2.6+2.4▲10.3▲7.0▲1.2▲1.2
民間設備+1.3+5.9▲5.0▲0.2+0.1▲0.1
民間在庫 *(+0.0)(▲0.5)(+1.4)(▲0.8)(+0.2)(▲0.2)
公的需要+0.3▲0.6+0.5+0.6+0.1+0.3
内需寄与度 *(+0.2)(+1.6)(▲2.7)(▲0.7)(+0.3)(+0.2)
外需寄与度 *(▲0.5)(▲0.3)(+1.1)(+0.1)(+0.2)(+0.2)
輸出▲0.2+6.5▲0.3+1.5+2.7+2.8
輸入+3.0+6.9▲5.3+1.0+1.3+1.3
国内総所得 (GDI)▲0.5+0.9▲1.3▲1.0+0.8+0.6
国民総所得 (GNI)▲0.7+0.7▲1.0▲0.5+1.7+1.5
名目GDP▲0.1+1.4+0.3▲0.9+1.1+1.0
雇用者報酬▲0.2+0.2▲1.5+0.6+0.1+0.0
GDPデフレータ▲0.3+0.1+2.2+2.0+2.3+2.4
内需デフレータ+0.6+0.8+2.5+2.3+2.0+2.1

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2014年10-12月期の最新データでは、前期比成長率がプラスに転じ、赤の民間消費と黒の外需が小幅のプラス寄与を示す一方で、グレーの民間在庫がマイナス寄与しているのが見て取れます。

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繰返しになりますが、先月の1次QEから今日発表の2次QEへの下方修正は在庫調整に進展が見られたことに起因し、設備投資の下方修正はやや気にかからないでもないものの、過度に悲観する必要はなく、むしろ、基本的に内容は悪くないと受け止めています。もっと正直に言えば、昨年2014年4月の消費増税から低迷していた景気の底入れを確認できる内容であったと言えます。全体のGDP成長率は▲0.2%ポイントの下方改定ですが、在庫の下方改定幅が寄与度で▲0.4%ポイントありますから、逆算すれば、在庫を除いた需要項目はプラスに改定されていると考えるべきです。特に、消費が上方改定されているのは設備投資の下方改定とともに、というか、それ以上に注目すべきであると私は考えています。その内容が消費増税によるネガティブ・ショックからの脱却を示唆しているからです。すなわち、消費のうちの耐久財消費の季節調整済み系列の前期比に着目すると、2014年1-3月期に駆込み需要で+13.1%増と大きく増加を示した後、4-6月期は反動減で▲18.8%減、7-9月期も▲4.2%減と続いた後、10-12月期には+1.8%と底を打った可能性があります。ただし、住宅投資の回復にはもう少し時間がかかる可能性があります。なお、足元1-3月期の成長率については、前期比で+1%近く、前期比年率で3%前後の成長が見込めると考えていますが、その後は企業部門の貢献による押上げ効果が景気のゆくえを左右します。すなわち、人手不足や労働市場のひっ迫に応じた企業行動が見られるかどうか、もっと言えば、企業収益の拡大および人手不足に応じた賃上げや正社員化による雇用の質の改善、さらに、省力化投資などの設備投資が企業部門のアニマル・スピリットを後押しするか、それとも、デフレ期の縮小均衡的な期待がまだ支配的で、先行き不透明感から企業活動が雇用と設備投資の面で活発化しないか、我が国景気の分岐点かもしれません。

GDP統計2次QEのほか、今日は内閣府から2月の景気ウォッチャーが、また、財務省から1月の経常収支が、それぞれ発表されています。事情により、グラフと日経新聞のサイトからの記事の引用のみにとどめておきます。悪しからず。

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街角景気の指数上昇、50超え 基調判断を上方修正
2月景気ウオッチャー調査

内閣府が9日発表した2月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比4.5ポイント上昇し50.1だった。改善は3カ月連続。好況の判断の目安となる50を超えたのは、昨年7月以来となる。内閣府は街角景気の基調判断を「一部に弱さが残るものの、緩やかな回復基調が続いている」とし、8カ月ぶりに上方修正した。1月の判断は「このところ回復に弱さがみられる」だった。
2月の現状判断指数は、家計動向が前月比4.5ポイント上昇の48.4と2カ月ぶりで改善したほか、企業動向が4.4ポイント上昇の51.1、雇用が4.3ポイント上昇の59.1と、そろって前月を上回った。中華圏の春節(旧正月)期間の訪日外国人客増加や、株高などを反映し、消費者心理の持ち直しを指摘する報告が相次いだ。「外国人観光客の買い上げが特に都心店舗で多く、化粧品や雑貨の売れ行きが好調」(近畿・百貨店)といった声や、「株価が1万8000円台に乗り、富裕層の購買意欲が活性化してきている」(南関東・百貨店)といった見方が寄せられた。
その一方で、「加工食品の値上げが相次いでおり、生活防衛意識が強くなっている」(東北・スーパー)など、値上げで消費者の節約志向を指摘する声もあった。
2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は前月比3.2ポイント上昇の53.2で、3カ月連続で改善した。先行き判断指数が50を超えたのは2カ月連続。「ガソリン価格は比較的安値で安定しており外出が増えるのでは」(東北・ホテル)など、燃料価格低下を好感したり、賃上げによる消費増に期待する声が出ていた。
調査は景気に敏感な小売業など2050人を対象とし、有効回答率は89.4%。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
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経常黒字7カ月連続 1月614億円、円安で輸出額増
財務省が9日に発表した1月の国際収支統計によると、海外とのモノやサービスの取引状況を表す経常収支は614億円の黒字となった。黒字は7カ月連続で、1月としては東日本大震災前の2011年以来で4年ぶりの黒字だ。原油安で輸入額が減り、円安によって輸出額が拡大したため貿易収支の赤字も大幅に縮小した。
昨年4月から今年1月の経常収支は累計で3兆5065億円の黒字となり、14年度通年でも経常黒字を維持できる公算が大きい。14年1月は1兆5861億円の赤字だった。
1月の貿易収支は8642億円の赤字だった。赤字幅は前年同月に比べ1兆5404億円(64.1%)減った。1月の平均円相場は1ドル=118.24円と、前年同月に比べ14円程度も円安が進み、輸出額が6兆3324億円と8395億円(15.3%)増えた。米国の景気の持ち直しなども影響して、電子部品を中心に輸出が伸びた。
輸入は1月は7兆1966億円と前年同月に比べ7009億円(8.9%)減った。減少は8カ月ぶりだ。原油安の影響でエネルギーの輸入額が減った。
1月の第1次所得収支の黒字は前年同月に比べ704億円(5.2%)増え、1兆4129億円だった。黒字額は比較できる1985年以降で1月としては2番目の高水準だった。

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2015年3月 8日 (日)

先週の読書は『経済学者、未来を語る』ほか

今週の読書は『経済学者、未来を語る』ほか以下の通りです。

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まず、イグナシオ・パラシオス=ウエルタ[編]『経済学者、未来を語る』(NTT出版) です。著者はロンドン経済大学 (LSE) の教授であり、タイトルから理解できる通り、著名なエコノミスト10人が100年先、すなわち、2113年の経済や世界についての予測を寄稿して編集されています。ただし、その前提にあるのは1930年のケインズの講演録「わが孫たちの経済的可能性」です。10人のエコノミストの見方はそれぞれで、例えば、予測の仕方についても、「現在の傾向から推定する」(p.180) というエコノミストもいれば、「未来の予測においては新しいアイデアの提案が欠かせない。現在の傾向から未来を推測するだけでは不十分だ。」(p.199) という意見もあります。また、将来予測が自分の専門分野に集中するのは当然で、それが金融市場のリスクだったり、地球環境問題だったり、テクノロジーだったりします。要するに、寄稿したエコノミストによりバラバラなわけです。バラバラな中で、第1章のアセモグル教授の稀覯論文だけでも読んでおく値打ちがあると私は考えています。また、ほぼすべてのエコノミストに共通して、未来に対する楽観論が支配的だという印象を受けました。もちろん、手放しの楽観論ではなく、慎重な楽観論が主なんですが、少なくとも、マルサス的、というか、ローマ・クラブ的な悲観論は控えめにいっても少数派だと見受けました。ケインズは「わが孫たちの経済的可能性」で、国民生活の豊かさが4倍から8倍になると予想し、これは誤差を考慮すればほぼ的中に近いと評価されていますが、週労働時間を15時間と考えて、これは大ハズレと受け止められています。しかし、蛇足ながら、ケインズの講演の趣旨が、かなりマルクス・エンゲルス的な、逆から見て、レーニン・スターリン的ではない社会主義や共産主義の社会を念頭に置いていることは意識されていないようです。共産主義の前期段階では「能力に応じて働き、労働に応じて受け取る」社会ですが、後期段階では「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」ようになります。生産性が極めて高くなり、労働の成果物としての製品が希少性を喪失して市場における価格付けに応じた配分が、ヘーゲル的な意味で止揚された世界をケインズは念頭に置いている可能性を意識すべきです。もっとも、そんな世界が100年先にやってくるとは、私も含めた大多数のエコノミストは考えていないと思います。それを考えていたのがケインズの偉大さなのかもしれません。

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次に、佐藤滋・古市将人『租税抵抗の財政学』(岩波書店) です。財政学というよりも社会保障論に近い印象で、著者のお二人はどうも井出英策教授のお弟子さんらしいカンジです。井出教授の『財政赤字の淵源』については、このブログでも一昨年2013年1月12日付けの読書感想文のブログで取り上げています。ということで、とてもリベラルな社会保障論・財政学が展開されています。本書では「財政破綻」の言葉の意味が通常と異なって使われており、普通は歳入が歳出に追い付かずに財政赤字が膨らんで市場から政府のソルベンシーに疑いが生じ、財政資金のファイナンスが困難になったり、そのために国債価格が暴落したりする現象を指すんですが、本書では財政が本来のリスク・プールをはじめとする社会保障などの機能や役割を果たせなくなった状態をいっているような気がします。その上で、財政破綻の原因は、基本的には、高度成長期の減税政策にあるとし、米国はともかく、欧州諸国が戦後の経済成長期に税収を増大した結果として歳出を拡大して福祉国家の建設を目指したのに対して、我が国では税収が増加した一方で減税を実行して福祉政策の充実を目指さなかった点が強調されています。さらに、財政破綻に対する処方箋としては、勤労所得だけでなく資産所得などを含めた総合課税による課税ベースの拡大を志向しています。税収の増加と累進構造によって格差是正にも役立ち、財政の所得再分配機能と財政赤字削減の一石二鳥の気がしますが、やっぱり、後者の財政赤字にも目配りされているようです。その意味で、通常の理解になる「財政破綻」にも配慮されています。とても短くて、ポイントだけをかいつまんだ議論が展開されており、現在の我が国財政の問題点が浮き彫りになっています。

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次に、ジョン・スウィーニー『ハリウッド・スターはなぜこの宗教にはまるのか』(亜紀書房) です。著者は戦場ジャーナリストから英国BBCのテレビ・ラジオに転じたジャーナリストです。そして、本書の現代は The Church of Fear すなわち、『恐怖の教会』です。そして、取り上げられているのはサイエントロジーです。トム・クルーズが信者として有名かもしれません。なかなかの際物ですので、私にも判断がつきかねる部分がいくつかあるものの、著者はサイエントロジーをカルト宗教であると見なして糾弾する立場を取っています。私は何でも正面突破を図る人間なんですが、ここは、ややナナメから論評して、我が家の上の倅がもうすぐ高校を卒業しますので、私が高校を卒業して京都大学経済学部に進学する際に私の父親から学生生活上の注意をいくつか受けた記憶があります。私の父は「京都大学で手を出してはいけない分野」という表現だった気がしますが、3点あり、カルト宗教、マルチ商法、学生運動、と列挙しました。現在の私であれば、上の倅に対して、もう1点付け加えて、薬物も手を出さない対象として入れそうな気がします。カルト宗教は言語道断で、我が家は親鸞聖人がお始めになった一向宗の門徒であり、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えて極楽浄土への往生を願うだけでいい、というのが私の父親の宗教観でした。私もほぼこれを受け継いでいます。マルチ商法については、バブル経済と同じで逃げ切れる自信があれば別だが、普通は出来ないので最初から手を出さない方がいい、ということで、学生運動については京都大学の特徴のひとつであるので、心から正しいと思えば引き止めない、というスタンスでした。私が上の倅に示そうとしている第4の薬物は、カルト宗教と同じで問答無用でダメ、というつもりです。ということで、読書感想文の本筋に戻れば、海外ジャーナリストの著書にありがちなところながら、インタビューをはじめとして山のように事実を積み重ね、事実をして語らしめる手法を取りつつ、とても強く著者の主観的な意向も反映されている気がします。私はカルト宗教に対しては拒否感が強く、サイエントロジーについては詳しくないながら、著者の立場に近いかもしれないと受け止めています。

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次に、有栖川有栖『怪しい店』(角川書店) です。作者の作品の中で作家アリスのシリーズ、すなわち、英都大学火村英生准教授のシリーズ最新作です。長編ではなく、表題作をはじめとして5編の短編が収録されています。私はこの作者の作品のファンですから、学生アリス、すなわち、江神二郎の活躍するシリーズも含めて、アリスのシリーズはすべて読んでいると思います。本書はタイトルの通りに店をテーマにしています。その昔に、同じ作者で2001年に出版された『暗い宿』が宿をテーマにしていたんですが、本書は店です。中でも理髪店を舞台にした作品は、火村英生らしいフィールド・ワークではなく、いわゆる安楽椅子探偵の趣きがあり、推理が当たっているのかどうかは確かめようもありません。ただ、この作家の作品らしく論理性を重視して、ほとんどがキチンと時間を遡行して犯人を明らかにする正統派のミステリであり、当然ながら、私のようなファンは必ず読んでおくべき本であるという気がします。ただ、3話目に収録されている「ショーウィンドウを砕く」だけは倒叙ミステリとなっています。いずれにせよ、ミステリの短篇集ですので、手短かに終えておきます。

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最後に、南直哉『善の根拠』(講談社現代新書) です。著者は禅僧です。私のような一行門徒ではなく、幾分なりとも自力の修行により極楽往生を目指しているんではないかと想像しています。ということで本書ですが、タイトル通り「善」の根拠を著者らしく仏教の観点から解き明かそうとしています。その努力をどう評価するかは読者次第という気もしますが、わたしはややネガティブです。必ずしも学術書ではありませんから、現在までの学界の既存研究の到達点をもって出発点とする必要はないんでしょうが、せめて、我が国哲学界のひとつの到達点である西田幾多郎の『善の研究』について言及くらいはして欲しい気がします。著者がまだ読んでいないのであれば言語道断というほかなく、読んだ上であくまで無視したのであれば理由が知りたい気がします。もちろん、本書はあくまで「善」に関する根拠を問うものであり、「善」そのものを対象とし、「善」とは何かを解明しようとするものではありませんが、個人の「善」と集団の「掟」を区別する以上、その定義というか、社会的な役割のようなものを最初に明らかにしておく必要があるんではないでしょうか。その上で、人間としての行動原理にいくつかの根拠があり、ひとつが本書の立場である「善悪」、ほかに「正邪」や「損得」などもあり得る中で、おそらく、他人や自然に対峙する人間としての行動原理が「善悪」であり、カント的な定言法の世界が「正邪」、経済学的な市場における交換の世界が「損得」なんではないかと私は考えています。さらに、芸術における「美醜」もひとつの行動原理になる人がいる可能性も否定できません。いずれにせよ、人間存在ではなく行動原理としての「善悪」という観点が本書では抜けている気がして、やや物足りない気がしています。

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2015年3月 7日 (土)

映画「ジョーカー・ゲーム」を見に行く!

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この週末は少し前の天気予報では雲が多くて雨がちとのことでしたので、今日は遠出を避けて近くのシネコンに映画を見に行きました。「ジョーカー・ゲーム」です。柳広司の原作で、我が家では私のほかに上の倅も大好きなシリーズです。最新刊は『ラスト・ワルツ』、このブログの2月8日付けの読書感想文で取り上げています。この映画のポスターは2種類あって、上の画像ともうひとつは主演の亀梨和也が銃を構えているものですが、本来の原作の「ジョーカー・ゲーム」シリーズは、「死ぬな、殺すな、とらわれるな」ですから、ほとんど銃は出て来ません。村上春樹の『1Q84』で引用されたチェーホフの名セリフにあるように、「物語の中に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはならない」わけですから、少し原作とは違う印象の映画といえるかもしれません。
主人公は言うまでもなく帝国陸軍のスパイなんですが、新型爆弾に関する機密文書の入手を命じられて南の島に飛び、結局、「007」シリーズ張りのサスペンス大活劇に仕上がっています。原作には影も形もないフリーランスの女性スパイも活躍したりして、深田恭子ファンの私は悪くないと受け止めていますが、大いに原作と違っていたりします。それにしても、どうして拷問部屋にあんな女性用の衣類が置いてあったのか意味不明です。原作の雰囲気が好きな人にはこの映画はオススメしません。

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米国雇用統計は極めて堅調に推移し為替市場で円安が進む!

日本時間の昨夜、米国労働省から2月の米国雇用統計が公表されています。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月から+295千人増加し、失業率は前月から▲0.2%ポイント低下して5.5%とさらに低下しました。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから記事を最初の8パラ引用すると以下の通りです。

U.S. Economy Added 295,000 Jobs in February, but Wages Continued to Lag
The economy gained fresh momentum last month as the Labor Department reported on Friday that employers added 295,000 workers in February, far exceeding expectations, and the unemployment rate took another dip. But wage gains continued to lag, rising only 2 percent from a year earlier.
The unemployment rate fell to 5.5 percent, its lowest since mid-2008, down from 5.7 percent in January. Last month, wages rose just 0.1 percent, according to the Labor Department, a disappointment coming off an increase of 0.5 percent in January.
Despite the disappointing wage numbers, the report prompted a new round of optimism about the economy’s recovery and spurred more talk on Wall Street that the Federal Reserve might raise interest rates at its June meeting rather than wait until September. The news prompted a rise Friday morning in the yield on 10-year bonds and a dip in the stock market, where investors fear that higher interest rates will take a bite out of corporate profits.
"We were all on guard for signs of a February freeze-up, but this is a barn burner of a jobs report," said Mark Hamrick, an analyst at the personal finance site Bankrate.com. "The Fed will say the pieces are coming together."
Job growth last month came particularly from the service sector, with leisure and hospitality adding 66,000 jobs, as well as an expansion of 54,000 jobs in education and health. Construction added 29,000 jobs in February, while manufacturing increased by just 8,000.
Still, one consistently dark patch in the recovery has been the sluggish growth of wages. Average hourly wages for private-sector workers have been rising slowly, at around 2 percent annually, for the last few years.
Slow wage growth suggests that the economy is still far from returning to its potential and is a big factor behind the feeling of many Americans that the recovery has left them behind.
At the same time, millions of potential workers remain detached from the job market. The labor force participation rate fell slightly, dropping to 62.8 percent, from 62.9 percent.

やや長いものの、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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市場の事前コンセンサスが非農業部門雇用者の増加数で240千人、失業率で5.6%と見られていましたので、いずれも実績はこれを上回る好調さを見せつけられた形です。昨年12月から前月2月までの3か月間での雇用者増は月平均で288千人に達し、どこから見ても、米国の雇用は非常に堅調といえます。セクター別の雇用者数の増加を見ると、ヘルスケアの+32.8千人増はいつも増加しているとしても、小売が+32.0千人増、運輸・倉庫が+18.5千人増、卸売が+11.7千人増と、ガソリン価格の下落もあって、いかにも個人消費が景気を牽引している姿が浮かび上がっています。この堅調な米国雇用を受けて、金融市場では米国連邦準備制度理事会(FED)の利上げ姿勢が強まるとの観測が流れ、円ドル為替が円安に振れています。3月6日のニューヨーク市場では1ドル121円近くまで円安ドル高が進んだと、日経新聞のサイトで報じられていたりします。

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また、日本の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。サブプライム・バブル崩壊前の+3%超の水準には復帰しそうもないですが、まずまず、コンスタントに+2%のライン周辺で安定していると受け止めており、少なくとも、底割れしてかつての日本や現在の欧州ユーロ圏諸国のようにゼロやマイナスをつけてデフレに陥る可能性は小さそうに見えます。

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2015年3月 6日 (金)

景気動向指数に見る我が国景気は着実に回復中!

本日、内閣府から1月の景気動向指数が公表されています。ヘッドラインとなるCI一致指数は先月から+2.4ポイント上昇して113.0に、CI先行指数ポイントは逆に▲0.2ポイント低下の105.1を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の景気一致指数、2カ月連続改善 2.4ポイント上昇
内閣府が6日発表した1月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比2.4ポイント上昇の113.0だった。改善は2カ月連続。伸び率は消費増税前の駆け込み需要があった2014年1月(2.7ポイント上昇)以来の高さだった。輸出向けに生産が活発な設備投資用の一般機械や乗用車など生産関連の指標が上向いたことが寄与した。内閣府は、一致指数の基調判断を「改善を示している」に据え置いた。
数カ月先の景気を示す先行指数は0.2ポイント低下の105.1で2カ月ぶりに悪化した。中小企業の景況感が低下したことなどが響いた。景気に数カ月遅れる遅行指数は0.9ポイント低下の120.3だった。
指数を構成する経済指標のうち、3カ月前と比べて改善した指標が占める割合を示すDI(最高は100)は一致指数が80.0、先行指数が55.6だった。

いつもながら、簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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先月2月6日付けのエントリーで景気動向指数を取り上げた際に明らかにした通り、12月指数の発表時から統計作成官庁である内閣府の基調判断は「改善を示している」に引き上げられたものの、先月の基調判断ではただし書きが、「ただし、基調判断に用いている3か月後方移動平均のこのところの変化幅は、大きいものではない。」とくっついていて、私には何のことやらサッパリ理解できなかったもので、すっかり無視していたんですが、今月の基調判断はスッキリと「改善を示している。」で終わっています。CI一致指数のプラス寄与の大きい系列は、投資財出荷指数(除輸送機械)、耐久消費財出荷指数、中小企業出荷指数(製造業)などが上げられており、逆に、マイナス寄与の大きな系列として商業販売額(小売業)(前年同月比)や有効求人倍率などがあります。CI先行指標がマイナスに転じましたが、引用した記事にある中小企業売上げ見通しD.I.もさることながら、マイナス寄与が大きいのは日経商品指数(42種総合)です。国際商品市況でこれだけ原油価格が低下したんですから仕方ない面があると私は受け止めています。この系列のマイナス寄与が1月には▲0.83あって、12月の▲0.51から▲0.3ポイント超も拡大していますから、▲0.2ポイントに過ぎないCI先行指数の下降は深刻に考える必要はないものと理解すべきです。ですから、本日発表の景気動向指数を見る限り、記事のタイトルにしたように、我が国の景気は着実に回復中である、と見なして何ら差し支えないと私は考えています。

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2015年3月 5日 (木)

2次QE予想で実質成長率は1次QEからほぼ修正なしか?

来週月曜日の3月9日に昨年2014年10-12月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。昨年2014年4月の消費税率引上げ後、4-6月期、7-9月期と2四半期連続のマイナス成長を記録した後、10-12月期の1次QEでは前期比年率で+2.2%のプラス成長が確認されたところです。そして、今週月曜日に発表された法人企業統計を受けて必要な経済指標がほぼ明らかにされ、シンクタンクや金融機関などから2次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、先行きの今年1-3月期以降を重視して拾っています。もっとも、明示的に取り上げているのは、表の中では、みずほ総研と伊藤忠経済研だけでした。2次QEですから、アッサリした発表のリポートも少なくありません。なお、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.6%
(+2.2%)
n.a.
日本総研+0.7%
(+2.7%)
成長率は前期比年率+2.7%(前期比+0.7%)と1次QE(前期比年率+2.2%、前期比+0.6%)から上方修正される見込み。
大和総研+0.4%
(+1.8%)
2014年10-12月期GDP 統計二次速報(3月9日公表)は、一次速報からわずかに下方修正されると予想する。
みずほ総研+0.6%
(+2.5%)
2015年1-3月期は、公的需要が停滞するものの、個人消費や設備投資、輸出などの民間部門を中心に回復が続くと予想している。
ニッセイ基礎研+0.5%
(+2.2%)
14年10-12月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.5%(前期比年率2.2%)になると予測する。1次速報の前期比0.6%(年率2.2%)とほぼ変わらないだろう。
第一生命経済研+0.6%
(+2.2%)
設備投資が僅かに上方修正されるとみられるものの、在庫投資の下方修正がそれを打ち消すことで、GDP全体では1次速報から成長率は不変と予想する。
伊藤忠経済研+0.5%
(+2.0%)
今回の改訂により、2014年の日本経済が予想 を上回る消費増税の下押し圧力によって年末にかけて停滞してい たという見方は変わらない 。したがって、今後は在庫調整の終了や輸出および設備投資の拡大に個人消費の持ち直しが加わ り景気が回復に向かうという見通しを維持する。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+0.8%
(+3.3%)
実質GDP成長率が、1次速報の前期比年率2.2%から同3.3%に上方修正されると予想している。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.6%
(+2.6%)
2014年10-12月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比では1次速報値の+0.6%と変わらないが、年率換算値では+2.2%から+2.6%に、若干上方修正される見込みである。
三菱総研+0.6%
(+2.3%)
2014年10-12月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.6%(年率+2.3%)と、1次速報値(同 +0.6%(年率+2.2%))からほぼ変わらずと予測する。

多数決で決まる性質のものではありませんが、1次QEから2次QEに向けた改定方向で見て、上方修正が5機関、下方修正が3機関、変わらずが1機関となっています。私はほぼ修正なしと推測しており、上方修正か下方修正かはビミョーなところだろうと見ています。でも、GDPコンポーネントで見て、在庫が下方修正され、設備が上方修正されるのは確実です。
下の表は、ニッセイ基礎研のリポートから引用しています。私は公共投資は下方修正の可能性があると見ているんですが、全体の仕上がりとしてこんなもんではないかと受け止めています。

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2015年3月 4日 (水)

大学生協による「第50回学生生活実態調査」の結果にみる大学生の生活動向やいかに?

先週金曜日2月27日に大学生協連合会から「第50回学生生活実態調査」の結果が公表されています。自宅生・下宿生とも収入合計は昨年よりも微増していたりしますが、ほかに経済状況に加えて学生生活や日常生活についても調査しています。我が家にも高校3年生の倅がいますので大学生の生活実態には興味あるところ、本日のエントリーではいくつか図表を引用しつつ、簡単に紹介したいと思います。

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まず、上のグラフは大学生協連のサイトから【図表6】暮らし向きの変化 を引用しています。大学生の暮らし向きは自宅生と下宿生である程度の差はあるものと思いますが、上のグラフに見られる通り、「普通」の比率はジワジワと減少している一方で「楽な方」は増加を示しており、現在の暮らし向きに対して「楽」(「大変楽な方」+「楽な方」)と感じている学生は51.1%(自宅生53.1%・下宿生50.2%)と、この3年間は半数を超えています。収入の大部分は親からの仕送りや小遣いとアルバイトだと思うんですが、アルバイトの就労率は69.1%(自宅生75.1%・下宿生64.8%、男子64.5%・女子74.9%)で、前年に続いて上昇しており、特に、終活との関係が明らかではないものの、自宅生・下宿生ともに4年生の就労率が上がっているようです。

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終活や留学の質問もありますが、ここは一気に生活面に飛ばして、上のグラフは大学生協連のサイトから【図表15】一日の読書時間 を引用しています。2013-14年と読書ゼロが増加して40%を超えています。ただし、読書ゼロ以外の読書をする学生の中では、上のグラフに見られる通り、「60分以上」が昨年から5%ポイント近く伸び、逆に、「30分未満」が大きく落ちている通り、読書については二極化が進んでいる印象です。他方、グラフの引用は省略しますが、読書を離れてスマートフォンの利用についても調査しており、1日のスマートフォン利用時間は平均163.6分に上っています。スマートフォンを持たない、または利用しない「0」分は4.4%(男子5.3%・女子3.2%)に過ぎず、平均時間は女子177.8分に対して男子152.2分と、女子が男子を25.6分上回っているとの結果を得ています。私には評価の難しいところです。

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興味本位ながら、50年以上も前の第1回調査との比較のグラフ大学生協連のサイトから引用すると上の通りです。物価の変動や社会情勢の変化などにより2014年の結果を約50年前と単純に比較することは難しいんですが、1963年の収入金額は自宅生、自宅外生ともに、ほぼ現在の10分の1の金額で分布していることから、大雑把に貨幣価値は10倍して得ることも可能かもしれません。パソコンやスマホなど50年前には存在しなかった学生生活の必需品が今ではそれなりの重要性を占めていますので、何とも比較の難しいところですが、あくまでご参考だと受け止めています。

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2015年3月 3日 (火)

毎月勤労統計に見る雇用の質的改善やいかに?

本日、厚生労働省より1月の毎月勤労統計の結果が公表されています。現金給与総額は前年同月比+1.3%増の27万2779円と11か月連続の増加を示し、製造業の所定外労働時間は季節調整済みの系列で前月比+2.8%増と生産に合わせて大きく伸びました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

現金給与総額、11カ月連続増 1月1.3%増 中小企業でボーナス伸びる
厚生労働省が3日発表した1月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、従業員1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比1.3%増の27万2779円だった。増加は11カ月連続。景気回復に伴う企業業績の持ち直しを背景に、30人未満の中小企業でボーナスの支払いが増えた。基本給や残業代のプラスも寄与した。一方、現金給与総額から物価上昇分を除いた実質賃金は19カ月連続で減少した。
基本給や家族手当にあたる所定内給与は0.8%増の24万275円と、2カ月続けて増加した。昨春の労使交渉で基本給を底上げするベースアップ(ベア)が広がったため。
ボーナスにあたる特別給与は10.8%増の1万2700円で、昨年8月(13.4%増)以来5カ月ぶりの高い伸び率だった。1月は30人以上の中堅や大手企業のボーナスの伸び率が0.9%増にとどまった半面、30人に満たない中小企業の伸び率が23.4%増となった。
残業代などの所定外給与は円安による輸出の改善で増産が進み、2.6%増の1万9804円だった。所定外労働時間は1.0%増の10.7時間、製造業の所定外労働時間は2.0%増の15.1時間となった。
一方、実質賃金は前年同月比1.5%減と19カ月連続で減少したものの、減少率は昨年12月(1.7%減)から縮小した。

いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、下のパネルは製造業に限らず調査産業計の賃金の季節調整していない原系列の前年同月比を、それぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。

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先週の雇用統計は失業率の上昇などを示したものの、生産も増加して堅調な日本経済の姿が確認されました。今日発表の毎月勤労統計でも上のグラフの所定外労働時間、下の賃金動向とも堅調な景気と人手不足からいずれも順調な推移を示していると受け止めています。特に、引用した記事にもある通り、中小企業でのボーナス増加により給与が伸びたのはまずまずいいニュースと受け止めています。所定内給与もグンと増加し、今春から本格的な賃上げが始まる予感もします。また、順序が逆になりましたが、季節調整済みの所定外労働時間指数は昨年2014年1月がピークで、8月が底となっています。生産指数もまったく同じであり、1月を山とし、8月を谷としています。金曜日のエントリーでも指摘しましたが、景気循環日付の山谷を付けるかどうかはビミューなところですが、繰返しになるものの、私はややネガティブです。いずれにせよ、生産や雇用はすでに回復過程に回帰しているのは明らかだと考えるべきです。

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ということで、賃金とともに雇用の質として私が重視している就業形態別の雇用の推移は上のグラフの通りです。正規雇用と非正規雇用に関して、毎月勤労統計からは派遣か直接雇用かなどは判明せず、パートタイムかフルタイムかの就業形態しか判明しませんが、それでも、最近時点では徐々にフルタイムの雇用が伸びているのが観察され、1月統計ではフルタイムの伸び率がパートタイムをとうとう上回りました。ここの状態が続くと、フルタイム雇用のシェアが増加するわけですから、いよいよ、賃上げとともに雇用は量的な拡大から質的な改善の局面に入る可能性が出て来たと私は大いに期待しています。

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2015年3月 2日 (月)

法人企業統計にみる好調な企業収益から賃上げや設備投資へのトリクルダウンは見られず!

本日、財務省から昨年2014年10-12月期の法人企業統計が発表されています。季節調整していない原系列のベースで統計のヘッドラインを見ると、売上高は前年同期比+2.4%増の340兆9719億円、経常利益は+11.6%増の18兆651億円、設備投資は+2.8%増の9兆7080億円をそれぞれ記録しており、収益をはじめとする堅調な企業活動がうかがい知れます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

設備投資、前年比2.8%増 経常利益は最高・10-12月の法人企業統計
財務省が2日発表した2014年10-12月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は前年同期比2.8%増の9兆7080億円で、7四半期連続で増加した。経常利益は11.6%増の18兆651億円と、比較可能な1954年4-6月期以降で最高だった。円安などの外部環境改善で製造業を中心に業績が回復し、稼いだ利益を設備投資に振り向ける好循環が継続している。設備投資の産業別の投資動向をみると、製造業は8.0%増と2四半期連続で増加。工場の生産自動化システムや自動車関連が伸びた電気機械などの業種で増加した。非製造業は0.3%増だった。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となり、注目が高いソフトウエアを除く全産業の設備投資額は、季節調整して前期と比べると0.6%増。伸び率は7-9月期(3.0%)から縮小した。
全産業の売上高は2.4%増の340兆9719億円と6四半期連続で増えた。製造業は0.1%増。情報通信機械や電気機械が増えた。非製造業は3.4%増えた。
経常利益は12四半期連続で増加。北米向けを中心に販売好調な輸送用機器を中心に製造業は16.4%増えた。非製造業は8.3%増。土木建築事業の増加や利益率の改善で建設業が増えたほか、鉄道旅客が好調な運輸業も伸びた。
財務省は今回の結果を受け「景気は緩やかな回復基調が続いている」とみている。同統計は資本金1000万円以上の企業の収益や投資動向を集計。今回の結果は内閣府が9日に発表する14年10-12月期のGDP改定値に反映される。

いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、ビジネスとしての企業活動は極めて活発で売上げや利益が高水準にあることが法人企業統計から確認できます。上のグラフの上のパネルを見ても明らかな通り、水色の折れ線グラフで示した売上げこそまだ水準として過去と比べて低いものの、昨年2014年4-6月期の消費増税のショックのあった期を除いて2013年4-6月期以降は前期比でプラスの増収を続けていますし、経常利益についてはすでにサブプライム・バブル崩壊前の水準をはるかに超えています。部分的には昨年後半からの原油価格の下落も企業の売上げ増や利益の拡大に寄与していることはいうまでもありません。それにしては、ということで、下のパネルの設備投資が伸び悩んでいます。グラフは1990年からプロットしていて、それなりに循環的な動きを示していますが、これをならせばバブル経済の崩壊以降では右肩下がりであることは明白です。企業が設備投資もせず、非正規雇用を拡大して総人件費も抑制され、企業部門内部のキャッシュが溜め込まれている現状と整合的な設備投資の動きです。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出しています。このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。いずれも、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率は現在の景気拡大局面に入ってから一貫して低下しているのが見て取れます。キャッシュを溜め込んでいる企業から賃金として雇用者に滴り落ちてトリクルダウンする人件費の割合を示す労働分配率はここ2-3年でほぼ一貫して低下し、1985年からプロットしている上のグラフの上のパネルを見ても、60%をやや上回った水準の労働分配率は歴史的な低水準を示しています。下のパネルの設備投資がキャッシュフローに占める比率も50%台半ばで横ばいないしジワジワと低下を示しています。

何度も繰り返しましたが、企業部門に溜め込まれたキャッシュを賃上げや設備投資という形で、いかにして家計部門に還元するのか、というのが、企業部門と家計部門の相互関係による経済の好循環をもたらす課題であると言えます。なお、本日発表の法人企業統計に伴う2次QEに向けた修正は余り大きくないものと私は推測しています。

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2015年3月 1日 (日)

東京ではいよいよ本格的な花粉の季節が到来!

毎年のように、2月終わりから3月初めにかけては花粉症に関する情報が数多く出回り、私自身の興味もあって週末ごとに取り上げていたりします。ということで、2月25日にウェザーニューズから「西-東日本の広い範囲で続々"本格花粉シーズン"に突入!」との発表がありました。タイトル通りに、東京周辺では本格的な花粉飛散のシーズンに入り、3月上中旬のスギ花粉のピークを迎えそうです。

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私なんぞは、抗アレルギー剤を頼りに、ただひたすらに、「悪霊退散」とばかり、花粉シーズンが去るのを待つだけです!

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