減産に転じた鉱工業生産は景気の停滞を示すのか?
本日、経済産業省から2月の鉱工業生産指数が公表されています。季節調整済みの系列で前月比▲3.4%減産を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
2月の鉱工業生産指数、前月比3.4%低下 3カ月ぶりマイナス
経済産業省が30日発表した2月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比3.4%低下の98.9だった。マイナスは3カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1.8%低下で、市場予想より大幅な下げ幅となった。
1月に生産が活発だった一般機械や自動車、電子部品などで反動が出た。ただ経産省は「1、2月をならした数字でみると上昇傾向は続いている」とし、生産の基調判断を前月までの「緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
生産指数は15業種のうち12業種が前月比で低下、上昇は2業種で、1業種が横ばいだった。低下業種をみると、「はん用・生産用・業務用機械」が前月比5.6%の低下だった。化学プラント向けの反応用機器や蒸気タービンなどの減産が目立ったという。
自動車を含む「輸送機械」は前月比3.6%低下し、4カ月ぶりにマイナスとなった。在庫の積み上がりが大きい小型乗用車を中心に生産調整の動きが出たもようだ。「電子部品・デバイス」は前月比7.4%低下で、8カ月ぶりのマイナス。中華圏の春節(旧正月)に備えて生産・出荷が好調だった1月の反動が出た。
一方、上昇業種は「石油・石炭製品」と「パルプ・紙・紙加工品」で、「化学(医薬品除く)」が横ばいだった。
出荷指数は前月比3.4%低下の100.2と、3カ月ぶりのマイナス。15業種中12業種中が前月比で低下した。特に、はん用・生産用・業務用機械が前月比10.6%低下、電子部品・デバイスが10.3%低下と2桁の下げ幅となった。在庫指数は0.5%上昇の111.8で、3カ月ぶりにプラスとなった。出荷に対する在庫の割合を示す在庫率指数は4.3%上昇の112.8だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査によると、3月が前月比2.0%低下、4月は3.6%の上昇を見込む。経産省は「3月は自動車で在庫削減を目的にした生産調整の動きが続くほか、一般機械や電子部品も2月の水準を下回る」とみている。
長いながら、網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。
日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比▲1.8%の低下で、予想レンジは▲2.9%から+0.1%でしたから、このレンジを超える大きな低下幅を記録したことになります。中華圏の春節のお休みが2月にあって1月の生産が大幅増を記録した反動が2月の生産に出たという意味で、基本は春節効果だろうと受け止めていますが、製造工業生産予測調査で4月も▲2.0%の減産を見込んでいる点が懸念されています。ただし、4月は+3.6%の増産が予想されており、底堅い動きを示すことから、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「緩やかな持ち直しの動き」で据え置いています。ということで、基調判断に着目すると、昨年2014年9-11月の「一進一退」の後、12月から「緩やかな持ち直しの動き」を3か月連続で基調判断として維持しているんですが、今年2015年1月の生産が2月の春節を見越して+3.7%増を記録した後、本日発表の2月実績が▲3.4%減、3-4月見込みがそれぞれ▲2.0%減、+3.6%増ですから、生産は引き続き底堅いものの、一進一退に近い気がしないでもありません。別の表現をすれば、増産基調に変わりないものの、ややペースダウンという見方もできます。
また、現在の鉱工業生産は米国を起点とする外需、すなわち輸出と内需については設備投資の資本財が牽引役となっており、逆から見て、いまだに消費財については昨年4月の消費税率引上げのショックから回復をしているとは私は考えていません。国際商品市況における原油価格の低下はガソリン価格などの形で一部は消費者にも還元されていますが、円安や景気回復に伴う企業収益の改善を賃上げなどの形でいかにして国民に還元するかが、今後の息の長い景気回復・拡大にとって重要な課題となる、というのがこのブログでの私の一貫した主張です。
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