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2015年5月30日 (土)

今週の読書はマーティン・フォード『テクノロジーが雇用の75%を奪う』ほか

今週はかなりがんばって読みました。以下の通りです。

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まず、マーティン・フォード『テクノロジーが雇用の75%を奪う』(朝日新聞出版) です。誰がどう見ても経済書なんですが、著者はコンピュータ工学部卒業の企業経営者、未来学者らしいです。どこかで聞いたような理論なんですが、著者ご本人もラダイト主義者かもしれないとは気づいているようです。でも、テクノロジーに関するマルサシアンではないかという気もします。ご本人も認めているところでは、資本主義の生産様式の発展については、ほぼマルクスと同じ見方をしています。ということは、ほぼ私とも同じということです。私は雇用をとても重視しているにしては、労働経済学については専門外であって、いまだに理解できない点が幾つもあります。ケインズの「わが孫たちの経済的可能性」のように、生産性の向上とともに労働時間が画期的に減らないのは何かおかしいと感じますし、生産性の動向と労働移動についても謎だらけです。すなわち、高度成長期には低生産性部門である農業から高生産性部門である製造業に労働が移動して、国全体の生産性が向上する、というパターンが広く観察されたんですが、プラザ合意以降くらいの最近20-30年ではそうなっていません。例えば、電機産業などは円高に対応して生産性を向上させていたりするんですが、電機産業の雇用が増えているわけではなく、逆に、雇用者をリストラしたりして労働投入を減少させつつ生産性を上げているようにも見えます。最後に、本書に戻れば、原書が出版されたのがリーマン・ショック直後の2009年だけに、もっと早くに邦訳が出版されていれば、さらに本書のインパクトが大きかった可能性があるんではないかと思います。少しタイミングを外されたような部分が見受けられます。

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次に、ブレット・スティーブンズ『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』(ダイヤモンド社) です。著者は Wall Street Journal 紙で安全保障政策に関するコラムニストを務めるジャーナリストであり、私のようなリベラルなエコノミストから見れば、かなり右派な議論を展開しています。米国はまだまだ世界の警察官であることが可能であり、そうあるべきだ、という論陣を張っています。「割れ窓」理論を前面に押し出した強硬なタカ派の論調です。米国が世界の警察官をヤメにして孤立主義になったらどうなるかを予測した p.224 「2019年ヒラリー大統領」以下の近未来予想は、どこまで妥当性があるかを私は判断できないものの、なかなか興味深く読めます。また、翻訳者のあとがきにあるんですが、原著には第2次世界大戦後に米国が世界の警察官を引き受けていなかったらどうなっていたかを仮想的に論じた章があるらしいんですが、翻訳の時点で割愛されています。省略せずに全訳をして欲しかった気がします。

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次に、東野圭吾 『ラプラスの魔女』(角川書店) です。著者は売れっ子ミステリ作家ですから紹介の必要もないと思います。それから、本書のタイトルは、当然ながら、「ラプラスの悪魔」に由来しています。すなわち、ピエール=シモン・ラプラスに従えば、宇宙に存在するすべての物質の位置と運動量を把握し、かつ、それらのデータを解析出来るだけの知性が存在すれば、その知性にとっては未来も過去もすべて見通せるであろう、ということです。私が時折勝手に書いているように、この世の中は微分方程式体系に沿って進んでいるわけですから、初期値が決まれば未来が決定され、それがアカシック・レコードである、ということになります。しかし、物質の位置と運動量は同時に把握できない、というハイゼンベルクの不確定性原理がありますから、ラプラスの悪魔は存在し得ない、という結論になります。もちろん、本書は物理学の学術書ではなく、この著者が時折取り上げる人体改造モノといえます。流体力学のナビエ・ストークス方程式を瞬時に解いて、というか、おそらく直感的に理解して、猛毒の硫化水素がどこに向かうかを解析して、常人には不可能な殺人を行うスーパーマンとスーパーウーマンが主人公です。どちらも脳の手術を受けていたりします。この著者の作品としては、平均以下かもしれませんが、私のようなファンからすれば読んでおいて損はありません。

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最後に、「シリーズ日本近世史」(岩波新書) ですが、上の画像はそのうちの第3巻である高埜利彦『天下泰平の時代』の表紙です。第5巻まで完結しました。発売は完結したんですが、まだ第5巻を入れている図書館はないようです。私は上の表紙の第3巻『天下泰平の時代』がもっとも読みたかったんですが、取り急ぎ、1巻から3巻までの3冊を読みました。図書館への納入状況を勘案しつつ、残った2冊も読みたいと考えています。典型的な封建時代である江戸時代、しかし、世界に例を見ない鎖国を実行し、ヨーロッパ的な停滞した中世とは異なり、大いに生産性の向上や生産要素の投入、さらに、独特の文化が花開いた日本的な中世がコンパクトに取りまとめられているます。私のような歴史に興味ある人向けかもしれません。なお、このシリーズの構成は以下の通りです。

第1巻
戦国乱世から太平の世へ
第2巻
村 百姓たちの近世
第3巻
天下泰平の時代
第4巻
都市 江戸に生きる
第5巻
幕末から維新へ

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