下降を続ける景気動向指数は景気の転換を示しているのか?
本日、内閣府から3月の景気動向指数が公表されています。ヘッドラインとなる一致指数は前月から▲1.2ポイント下降して109.5を示した一方で、先行指数は逆に+0.8ポイント上昇して105.5を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
3月景気一致指数、2カ月連続悪化 基調判断据え置き
内閣府が12日発表した3月の景気動向指数(速報値、2010年=100)は、景気の現状を示す一致指数が109.5と、前月に比べ1.2ポイント下がった。悪化は2カ月連続だが、低下幅は2月(2.6ポイント)と比べ縮小。内閣府は、一致指数の基調判断を「改善を示している」に据え置いた。
一致指数を構成する11指標のうち、商業販売統計など8指標が指数の下振れにつながった。商業販売統計(小売業・卸売業)は、前年同月に消費増税前の駆け込み需要が膨らんだ反動でマイナス影響が大きかった。スマートフォン(スマホ)向け電子部品などを含む鉱工業生産財出荷指数や、有効求人倍率といった指標も前月比で悪化し、一致指数の低下要因となった。半面、耐久消費財出荷指数は改善し、指数を下支えした。
数カ月先の景気を示す先行指数は0.8ポイント上昇の105.5と、3カ月ぶりにプラスに転じた。消費者態度指数の改善や東証株価指数の上昇などが寄与した。景気に数カ月遅れる遅行指標は1.2ポイント低下の120.3だった。
指数を構成する経済指標のうち、3カ月前と比べて改善した指標が占める割合を示すDI(最高は100)は一致指数が40.0、先行指数が55.6だった。
いつもながら、簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。
引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「改善」に据え置いていますが、景気動向指数の基調判断はほぼ機械的に決定され、「改善」は3か月以上連続して3か月後方移動平均が上昇した場合であり、「改善」の次に来るのではないかと予想される「足踏み」は3か月後方移動平均の符号が変化し、1ないし3か月の累積で1標準偏差以上の逆方向への振れがあった場合、とされています。3月の景気動向指数の一致指数は3か月後方移動平均の符号が逆転してマイナスとなりましたが、基調判断に変化ないということは、まだ1標準偏差分の逆方向への振れが実現していないということなんだろうと思います。3月統計で観察された3か月後方移動平均の符号の変化が、景気局面の転換に起因するのか、それとも、昨年4月からの消費増税直前の駆込み需要によるイレギュラーな要因に起因するのか、今後の動向が気がかりなところです。ただし、グラフは示しませんが、私がチェックしているうちのDI累積指数はCI一致指数の広報3か月移動平均と同じで、2月までプラスを示していて3月統計からマイナスに転じています。私自身は本格的な景気局面の転換とは考えておらず、消費増税直前の駆込み需要によるイレギュラー要因と受け止めていますが、いずれにせよ、3月の景気動向指数からだけでは判断しがたいところです。
なお、私が景気局面の転換ではなく消費増税前の駆込み需要のイレギュラー要因と考えている根拠は、商業販売額(小売業)と商業販売額(卸売業)のいずれも前年同月で取っているCI一致指数のコンポーネントがマイナス寄与の2大要因となっている一方で、耐久消費財出荷がもっとも大きいプラス要因を示しているからです。今年3月の景気動向は消費増税直前の駆込み需要のあった昨年3月と比較すれば下振れしているものの、今年2月の直前月と比較すれば上向きなわけで、景気動向としては後者の傾向を取るべきですし、さらに、来月発表予定の4月統計では昨年の消費増税直後の4月と前年同月で比較すると大きなプラスを示す指標も少なくないと予想しています。3月のCI一致指数が前月から下降したのは事実ですが、CI先行指数が上昇している事実も見逃すべきではないと私は考えています。
| 固定リンク
コメント