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2015年6月27日 (土)

今週の読書は経済書を中心にエッセイも含めて5冊ほど!

先週の海外出張の後、少し体調を崩し気味で、腰痛がして仕事を早退していたりしたんですが、今週の読書は単行本や新書の経済書を中心に5冊ばかり。以下の通りです。

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まず、森信茂樹『税で日本はよみがえる』(日本経済新聞出版社) です。財務省出身の税に関する専門家らしく、幅広い観点から日本経済にプラスとなるような税制改革の方向性を示しています。しかし、何といっても現時点でもっとも関心が高いのは、財政再建のためにはどこまで消費税率を上げるか、なんですが、この問いにはまったく触れていないどころか、近づくことすらしていません。それから、日本で国民に租税回避の傾向が強いのは、いわゆる「土建国家」といわれる通り、集めた税金を公共事業でごく一部の国民にしか還元しなかったためであり、いわゆる「福祉国家」のスキームの下、もちろん再分配機能は保持しつつ、幅広い国民に還元する道を取らなかったことに原因があると私は考えています。また、それとも関係して、特定の何らかの間違ったグルーピングによる租税や補助金などの優遇策が取られたことも国民の間の不公平感の拡大に大きく寄与しています。すなわち、産業別では農業が保護され、企業規模別では中小企業が優遇され、世代別では高齢者に手厚い社会保障が与えられる、といった点が問題として認識されていないうらみはあります。

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次も経済書で、清水誠『負の利子率政策』(日本評論社) です。5章構成の本書の中で、4章まではリフレ派の金融政策批判を繰り広げており、その批判のポイントは量的緩和をしても信用乗数の低下により相殺される、という1点に尽きます。私も量的緩和はかなりの程度に信用乗数の低下で相殺されるとは考えていますが、それでも効果が残るかどうかは定量的な検証に委ねるべきであり、私の知る限りなんですが、量的緩和は価格引上げに効果があると考えるべきです。最後の第5章で負の利子率政策を展開していますが、私には政策効果に比べて政策の実施コストが高過ぎるように感じられてなりません。従来から、私のような公務員はコスト意識が希薄で、政策効果がプラスである限り政策リソースをつぎ込んで、結局、ムダなことをやっている可能性が往々にしてあるんですが、その私にしてもコストが高いと感じるデフレ対策の政策が、この負の利子率政策と小刻みに短い周期で消費税率を引き上げる政策です。一部の欧州の国で実施しているように本書で主張されていますが、もう少ししっかりした検証が必要ではないかと受け止めています。

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次に、酒井順子『裏が、幸せ。』(小学館) です。表紙のイメージからも理解できる通り、その昔は「裏日本」と呼ばれた日本海側の紀行記をはじめとするエッセイです。それにしても、北陸新幹線の開業にドンピシャで照準を合わせた出版には恐れ入ります。私自身は著者のいう表のど真ん中の京都の南部の出身で、現在では東京在住ですし、私に限らず我が家の親戚筋は大阪や名古屋などの東海道沿線の都市部に在住していますので、ほとんど「裏日本」とは何のつながりもありません。せいぜいが、東京で就職する前の大学生のころに金沢や鳥取・島根といった日本海を臨む地方都市に旅行した経験があるくらいです。当時は自動車で旅行したものですから、島根県の県庁所在地ながら松江の駅前北口の交差点に信号がないという事実にショックを受けたことを記憶していたりします。でも、この著者らしくセンスよく「裏日本」の魅力を解き明かして取りまとめています。私は長崎大学に出向していた際に、長崎の人は長崎新幹線の継続的な輸送サービスを必要にしているのではなく、たった1回限りの工事が欲しいんではないかと感じたことがありますが、この著者の論理展開を読み進むと北陸の人はホントに新幹線の交通サービスを上手に利用できそうな気になってしまいます。

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いつも後の方に新書を置く私の読書感想文の並びのクセで、次に、大竹文雄『経済学のセンスを磨く』(日経プレミアシリーズ) です。基本的に、行動経済学に基づくエッセイなんですが、本書の著者はいつも新しい論文を紹介したりして、なかなか勉強になるので可能な限り読むようにしています。最終章の教育に関する計量的な分析を紹介した部分などは、とても参考になります。もちろん、著者の連発する「労働経済学者の標準的な見方」も私のようなマクロエコノミストには新鮮です。ただ、行動経済学の実証的な見方を提供する視点も十分にありながら、やや旧来型の「人はインセンティブに反応する」という行動経済学の実証に裏付けられていない見方も顔をのぞかせます。そのあたりはバランスを取りつつ読み進む姿勢が要求されるかもしれません。多くの経済に関係するビジネスパーソンや経済学に興味ある学生諸君などにオススメです。

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ホントの最後に、伊坂幸太郎『3652』(新潮文庫) です。デビュー10周年で編集されたエッセイ集をさらに5年後の今年15周年記念で文庫化されています。私の知る限り、この著者は単行本が文庫化されるに当たっては、少なからざる追加修正を施すことから、文庫本が出てから読むというファンもいたりすると聞き及んでいます。著者は今や押しも押されもしない我が国トップグループの人気作家ですが、2003年から急にエッセイが増加するので、このあたりから売れ始めたのだということが手に取るように見て取れます。ただし、干支エッセイで苦労していたり、エッセイがやや苦手な様子も理解できます。私はこの著者のファンなので、本書はついつい買ってしまいましたが、同時期に文庫化されて出版された『仙台ぐらし』が仙台に興味ない私には魅力的に見えなかったものの、まだ仙台に関するエッセイの方がよかったんではいないか、あるいは、本書を買ったのは失敗だったんではないか、と反省しています。ただ、著者の読書感想文や映画の評価などには興味ひかれます。そのうちに、『仙台ぐらし』も読もうと考えています。

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