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2015年6月29日 (月)

鉱工業生産指数と商業販売統計から我が国経済の踊り場を確認する!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数商業販売統計が公表されています。いずれも5月の統計です。ヘッドラインとなる鉱工業生産は季節調整済みの前月比で▲2.2%の減産、商業販売のうちの小売販売は季節調整していない原系列の前年同月比で見て+3.0%の増加を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の鉱工業生産指数、2.2%低下 基調判断を下方修正
経済産業省が29日発表した5月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比2.2%低下の97.1だった。低下は2カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中央値は0.7%低下で、市場予想を下回った。生産の基調判断は「緩やかな持ち直しの動きがみられる」から「一進一退で推移している」に下方修正した。基調判断の引き下げは昨年6月以来、1年ぶり。
生産指数は15業種のうち12業種が前月比で低下し、上昇は3業種だった。自動車の国内販売や輸出が低調で、輸送機械工業が前月比5.4%減と落ち込んだことが響いた。アジアでスマートフォンの生産が一服していることを受け、電子部品・デバイス工業も4.3%減だった。
出荷指数は前月比1.9%低下の96.0と、2カ月ぶりに低下した。在庫指数は0.8%低下の112.9だった。低下は4カ月ぶり。在庫率指数は1.9%上昇の115.3だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査によると、6月は前月比1.5%上昇、7月は0.6%の上昇を見込む。もっとも予測調査は実績よりも上ぶれる傾向にある。経産省では依然として在庫積み上がり局面が続いているとみており、「生産が6-7月に2カ月連続で上昇するのはなかなか難しい」としている。
小売販売額、5月3.0%増 2カ月連続プラス、伸び率は鈍化
経済産業省が29日発表した5月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比3.0%増の11兆7690億円だった。消費増税後の反動減の影響が一巡し、2カ月連続でプラスとなった。ただ、4月の4.9%増(確報)に比べ伸び率はやや鈍化した。
業種別では、白物家電などを含む機械器具(9.1%増)や飲食料品(4.9%増)、自動車(4.1%増)などで伸びた。小売業販売の基調判断は「一部に弱さがみられるものの横ばい圏」とし、4月から据え置いた。消費増税の影響が薄れる一方、一部の高価格の耐久消費財で回復が鈍い点などを踏まえた。
百貨店とスーパーを含む大型店は6.2%増の1兆6922億円、既存店ベースの販売額は5.3%増だった。衣料品、飲食料品ともに伸びた。既存店のうち、百貨店は6.3%増、スーパーは4.8%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は6.4%増の9344億円、既存店ベースは1.6%増だった。

いずれも網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。しかし、これだけの記事を並べるとそれなりのボリュームになります。これだけでお腹いっぱいかもしれません。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。景気後退期のシャドーについては商業販売統計も同様です。

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先月にこの統計が発表された時点での製造工業生産予測調査では、5月は前月比で+0.5%の増産という結果が示されており、また、直近の日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも▲0.8%の減産だったんですが、統計が出てみると▲2.2%の減産ですから、かなり大きな下振れと受け止めています。もっとも、先月の鉱工業生産統計の発表時から、「生産については横ばいの動きが続く踊り場的な段階に入った」とこのブログで私も指摘しているところで、この踊り場入りが確認されたと考えるべきです。同時に、引用した記事にある通り、統計作成官庁である経済産業省も基調判断を「緩やかな持ち直しの動き」から「一進一退」に下方修正しています。なお、この踊り場の背景は、海外経済の低迷に伴う輸出の不振と在庫調整であり、後者の在庫調整の進展については、在庫水準の低下により把握できます。しかし、出荷がそれ以上に減少していることから在庫率は上昇していたりします。製造工業生産予測調査では6-7月は増産が見込まれていますが、少なくとも4-6月期の四半期については、減産がほぼ確定と考えていいような気がしますし、現時点の足元でのギリシアにおける債務デフォルトの可能性から欧州経済の先行きがさらに悪化するようだと、主たるルートとして中国経済を経由して我が国への影響も小さくない可能性が残ります。ただし、上のグラフのうち、下のパネルに見られるように、耐久消費財出荷はまだ底入れまで時間がかかりそうですが、設備投資需要はやや上向き加減に見えなくもありません。海外経済の低迷を内需がどこまで補完できるかも焦点ですが、すべてを上向きにするだけの力強さがあるとも私は想定していません。

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次に、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。昨年4月からの消費増税の大きなかく乱効果が一巡して、今年4-5月の小売販売は順調に推移していると見受けられます。ただ、昨年の駆込み需要の反動で今年3月に前年同月比▲9.7%減を記録した後、4月+4.9%増、5月+3.0%増ですから、引き続き、やや物足りない気もします。上のグラフの下のパネルで示した季節調整済みの系列で見ても、小売販売はほぼ横ばい圏内であり、突然、先月から始まった経済産業省の基調判断でも先月・今月と「小売業販売は一部に弱さがみられるものの横ばい圏」とされているのは、引用した記事にある通りです。先ほどの生産のグラフにもある通り、設備投資向けの出荷はまずまず増加基調ですが、耐久消費財出荷はまだ低迷を続けています。この先、夏季ボーナスや賃上げにより、どこまで所得増加が実感できるか、あるいは、正規職員の増加などの雇用の質の改善が進むかどうか、などの労働市場に依存する部分も小さくないと考えられます。

最後に、本日の統計とは何の関係もないながら、ユーロ圏諸国の現行の支援の枠組みが明日で失効することから、ギリシアのデフォルトの可能性が高まっているように金融市場で受け止められています。資本規制が強化され、ギリシアの銀行は今日から来週の7月6日まで閉鎖されると報じられています。日経新聞のサイトなどで見る限り。麻生財務大臣などは日本市場への影響は大きくないといった趣旨の発言をしていますが、実は、リーマン・ショックの時もそう考えられていたものですから、いったい何が起こるのか、いうまでもないことながら、多くのエコノミストは注目しているものと思います。

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