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2015年7月18日 (土)

今週の読書は塩田潮『内閣総理大臣の日本経済』ほか7冊

今週の読書は、塩田潮『内閣総理大臣の日本経済』ほか、今週も先週に続いて小説はなく、経済書中心に新書も含めて以下の7冊です。

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まず、塩田潮『内閣総理大臣の日本経済』(日本経済新聞出版社) です。戦後の吉田内閣から始まって、現在の安倍内閣までの総理大臣ごとの日本経済の動向、もちろん、総理大臣としての経済政策も含めて、骨太な議論を展開しています。もっとも、何人かの総理大臣は省略されています。その基準は著者なりの日本経済へのインパクトなんだろうと私は受け止めています。在任期間が短いながらも取り上げられている石橋湛山総理もあれば、パスされている鈴木善幸総理もいたりします。しかし、何といっても戦後から現在まで続く保守本流の経済政策は吉田内閣の吉田ドクトリンで明らかにされている「富国軽軍備」です。そして、その延長線上にある池田内閣の「所得倍増計画」が戦後日本経済の方向を決定し、少なくとも1980年代末のバブル経済前までのレールを敷いたと私は考えています。そして、アベノミクスの経済政策の一方で、「軽軍備」に反するように見える安全保障政策重視の現在の安倍内閣がどのように日本経済の舵取りをするのか、主権者たる国民として、そして、総理の手足となるべき公務員として、いろんな観点から私は注目しています。

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次に、デービッド・アトキンソン『新・観光立国論』(東洋経済) です。著者はソロモン・ブラザースやゴールドマン・サックスなどでアナリストをしていた任物で、現在は京都在住で重要文化財の補修を手がける事業を行っていると紹介されています。我が国における観光の産業としての可能性について、かなり高く評価しており、観光立国、ないし、観光大国となることが可能と結論しています。その根拠は、リソースとなる気候、自然、文化、食事の4点で条件を備えているからです。そして、日本的な「おもてなし」を徹底的に批判し、特に、相手の要求に合わせたカスタマイズが出来ず、押し付けになっていると指摘します。先週の読書感想文で紹介した『残念なエリート』と期せずしてまったく同じ主張です。私もこの点については無条件で賛成です。そして、この先は私の解釈なんですが、観光についても、我が国では、製造業、特に電機産業と同じようにガラパゴス化して行くんではないかと予想しています。何よりも、アサっての方を向いた役所が地域振興と称して観光にここまで介入しているんですから、上手く行くハズもありません。

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次に、ベンジャミン R. バーバー『消費が社会を滅ぼす?!』(吉田書店) です。著者は米国の政治学者で、本書はまるでフランス構造学派の分析のような調子です。ただ、邦訳のタイトルは少しミスリーディングであり、原題の CONSUMED How Markets Corrupt Children, Infantilize Adults, and Swallow Citizens Whole の方が本書の内容をよりよく表現しているような気がします。また、原書がサブプライム・バブル崩壊直前の2007年に出版されていることも留意して読み進むのが賢明かもしれません。「幼稚エートス」をキーワードに、いかなる定義かは自明ではないんですが、現代資本主義がマーケターを駆使して幼稚化した消費を促進し、あるいは、人間存在の本質とは何の関係もなさそうな不要な消費を半ば強要している、そして、それがマルクス主義的な意味での過剰生産恐慌を緩和ないし解消している、という主張なんだろうと私は理解しています。特に、第3章の p.142 では、困難(ハード)に優越する安易(イージー)、複雑(コンプレックス)に優越する単純(シンプル)、そして、スローに優越するファストの3点を強調していますが、少なくとも第2の点は中世のオッカム法則の流れもあって、近代以降の現代資本主義に特有の現象とは私は考えていません。最終的には、これらを経済的に解決するのではなく政治的に民主主義により解決する方法が模索されています。出版年からしてもかなりムリがあるんですが、出版社のサイトを見たりする限り、ピケティ教授の『21世紀の資本』との類推で本書を売り込むのは、まさに、本書で避難しているマーケターを駆使した不要消費の促進ではないか、という気がしないでもありません。確かに、この著者が前著で『ジハード対マックワールド』として、トマス・フリードマンの『レクサスとオリーブの木』に先駆ける視点を提供したのは事実ですが、結局、世の中にもたらしたインパクトで見ると影響力の差は歴然としているような気がします。

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次に、神野由紀『百貨店で<趣味>を買う』(吉川弘文館) です。著者は芸術学やデザイン学の研究者で、本書は明治後半から昭和初期くらいまでの近代初期において、都市部の新中間層の消費のうち、百貨店で購入される<趣味>のよい品に関する文化史に焦点を当てています。近代初期において、勤め人としてそれ相応のお給料をもらう紳士の嗜みとしての道具や趣味の品の取りそろえについて、三越や高島屋などの百貨店の広い意味でのマーケティング戦略を分析しているんですが、その視座は直前に取り上げた『消費が社会を滅ぼす?!』とはまったく逆で、上品で新しい時代の中間層としてふさわしい品々の取りそろえを促進する、との視点です。コレクションとまではいかないものの、例えば、私の生家では限界にはルドンの「花」の複製画かかけられていましたし、今の我が家にはジャカルタのころに買い求めたワヤンがいくつか飾られています。本書の時代背景には含められていませんが、その昔には書棚に百科事典があるのが好ましいと思われていたころもあったように記憶しています。そういった品の良さや<趣味>の望ましさを実現する近代初期の我が国における消費において百貨店が果たした役割が明らかにされています。

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次に、ジョン・コーンウェル『ヒトラーの科学者たち』(作品社) です。数学、物理学、化学、医学などの基礎科学から始まって、これらの応用分野であるロケット、ジェット機、暗号システム、情報通信、抗がん研究、バイオテクノロジー、そして、最後は原子力理論に基づく核爆発の兵器化まで、19世紀末から20世紀初頭までのドイツの科学力の高さを基にしたナチスによる科学の戦争利用を取り上げたノンフィクションです。著名なアインシュタイン、プランク、フロイト、ハイゼンベルク、フォン・ブラウンら総勢100人超の科学者たち、少なくないノーベル賞受賞者にも焦点が当てられています。基本的に自然科学や技術を対象としていますが、第13章では地政学と生存圏という人文科学も取り上げています。でも経済学などの社会科学はスコープから外れている印象です。当然ながら、ナチスの科学利用には大きなバイアスがかけられていたわけで、その第1は戦争利用というバイアスです。そして、容易に想像できるのが、第2にユダヤ人蔑視やアーリア人の優遇に起因するバイアスです。多くのユダヤ人科学者が英米に逃れ、あるいは、当時のソ連に連行された科学者もあります。そして、最終部には、「ナチだけが格別に違う存在と言えるのだろうか?」と題する章が設けられていて、6月7日付けの読書感想文のブログで取り上げた『ナチスと精神分析官』(角川書店) とまったく同じ視点を提供しています。本書は正面からこの問いに答えていませんが、私は『ナチスと精神分析官』とまったく同じで「たぶんイエス」なんだろうと受け止めています。本書も原著は2003年の出版ですが、『消費が社会を滅ぼす?!』と違って賞味期間の長いテーマですので、10年以上も前の出版であることは何ら気になりません。

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次に、岩本裕『世論調査とは何だろうか』(岩波新書) です。最近よく読む岩波新書です。著者はNHKの放送文化研究所世論調査部の副部長さんだそうです。戦後に民主主義の礎となるべくGHQの後押しで始まった世論調査の現代社会での位置づけを振り返った後に、内閣支持率が政権の命運を握りかねない現状や、それにしては、各社の世論調査結果に差が大きい点などを解説していますが、もう少し統計的な有意性検定に関するキチンとした理解を示して欲しかった気がしないでもありません。もっとも、私が、統計局の経験者としても含めて、エコノミストとして政府の発表する経済統計すら確率分布として捉えているような厳密性はメディアから発信される情報には要求されないのかもしれません。バイアスについても実施主体に伴うバイアスは当然にあります。例えば、私は国家公務員として、国会議員事務所にアムネスティ・インターナショナルから死刑制度の賛否を問うアンケートが送られて来て、回答に困り果てている議員秘書さんとお話をしたこともあります。最後に、著者がメディアの方ですので調査方法のRDDにやや偏った信頼を置き過ぎていて、ネット調査への偏見が垣間見えた気がしないでもありません。ネット調査については、もう少し実例を取り上げる必要を感じました。

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最後に、中島国章『プロ野球最強の助っ人論』(講談社現代新書) です。著者は長らくヤクルト球団の通訳や外国人選手スカウトなどを務め、晩年は巨人でも同様のお仕事に従事されていたようです。ということで、いかにヤクルト球団が当たりの外国人選手を採用し続けて来たか、という自慢話が長くて、もちろん、それを一般化して日本で「成功する選手」と「ダメ外国人」を分ける判断基準に関する議論も展開しています。もっとも、その基準が外国人選手だけに適用されるのか、それとも、日本人選手にも遍く当てはまるのか、については判然としません。また、外国人選手に関する内幕もののウラ話も豊富に収録されています。そして、最後の最後に本書のタイトルであり、私のお目当てでもあった「プロ野球最強の助っ人は誰か」という話題を取り上げています。著者としては、ご自分が採用を決め、日本球界で長らく活躍し、2000本安打も達成したラミレス選手に対する愛着を表明しつつも、やはり花があったのは1980年代に阪神で活躍したバース選手を上げています。阪神ファンとして、当然だと受け止めています。

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