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2015年7月 4日 (土)

今週の読書はややハズレか?

今週の読書は経済書が多かった先週の反動か、小説の新刊書を2冊読みました。新書も含めて、以下の6冊です。

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まず、西條辰義[編]『フューチャー・デザイン』(勁草書房) です。経済書だと私は見なしていますが、表題はズバリ単純に日本語では将来設計なんですから、かなり学際的な要素も含まれています。編者はミクロ経済学、実験経済学、環境経済学などを専門分野とし、メカニズム・デザインなどにも詳しい一橋大学教授です。政府に「将来省」を、あるいは、地方自治体に「将来課」を設置するとか、大学に将来学部を設けるとかも含めて、将来のことを学問的に考えようとする姿勢が分かりやすいです。ただ、表紙にも見える通り、副題が「七世代先を見据えた社会」となっている通り、かなり長期の将来を対象にしていることが伺われます。経済学ではムリのあるタイム・スコープだという気もしますが、先行き見通しのフォアキャスティングと対比したバックキャスティングなどの興味深い方法論も展開されています。超長期の課題としては、日本に限らず高齢化というか、デモグラフィックな人口構成の変化や、水資源などを含む地球環境問題、そして、現時点ではギリシア、近い将来には我が国も陥らないとも限らない財政問題などなど、長期の視点で解決する必要のある課題が決して少なくなく、本書が対象とする期間にも目を配る必要があるのかもしれません。もっとも、将来学や将来省にしても解決すべき課題はまだまだ残されており、将来世代の意見を代弁する者と現行の民主制との整合性をどう取るか、あるいは、資源のない日本では問題にならないものの、産油国などで資源からの収入をどう処分するか、などなど、逆から見れば、今後の発展が望まれるという気がします。

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次に、松井良明『球技の誕生』(平凡社) です。著者は関西在住のスポーツ学の高専教授です。表紙の画像に見える通り、タイトルも、副題もかなり幅広い印象を受けますが、地域としては欧州限定、主として英国、せいぜい西欧です。しかも、自然発生的なスポーツだけを対象としています。ですから、米国発祥でヒトの発明になるバスケットボール、バレーボールなどは対象外ですし、幅広くどうして人類がスポーツをするのかも議論していないように見受けられます。著名なギルマイスター仮説については言語学的な分類として疑問を呈しつつも、それに代替する系譜を著者が本書で提示できているかというと、そうでもないような気もします。いくつかの章では、著者独特の分類により、ハンドボール系とフットボール系とヒッティング系というか、著者の称する打球系に分類していますが、そもそも、欧州で古くからある「ハンドボール」とは、ラケットの代わりに手でボールをたたくテニスのようなものらしいですから、オリンピック競技のハンドボールとは似ても似つかない気がして、混乱を生じています。加えて、活字メディアにおいて共通認識となっていない球技を論ずる難しさも感じました。ルールもさることながら、プレーしているところを実際に見ないと、まったく実感が湧かないわけです。そのうちに、電子書籍が大いに発達して、動画を電子書籍に乗せられるようになる日が待ち遠しいです。

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次に、柚木麻子『本屋さんのダイアナ』(新潮社) です。売れっ子作家になりつつある著者の最新作であり、本書もそこそこ話題になり、本屋大賞にもノミネートされました。モンゴメリの『赤毛のアン』をモチーフにしつつ、小学生低学年くらいから大学を卒業するくらいまで、10年余りの期間の少女から女性になる2人を主人公にした小説です。ドラえもんの四次元ポケットから現れる便利ではあるが荒唐無稽な道具ほどではないものの、「ゴルゴ13」クラスのあり得ない設定というか、キャラもストーリーもかなりムリがあります。私は純文学ではなくエンタメだからと思って読み進みました。次々に明らかにされる驚愕の事実を前に、また、みかげちゃんは放置されたままですし、50代サラリーマンのオッサンである私は感情移入することも出来ず、ただただ字面を追っただけの読書でした。それなりに文学に関するペダンティックな知識は埋め込まれていることから、おそらく、好きな人は好きな作家なのかもしれませんが、少なくとも私はこの作者の作品はしばらくの間避けようと思ってしまいました。

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次に、真梨幸子『お引っ越し』(角川書店) です。このブログの読書感想文では取り上げなかったんですが、最近、この著者の『あの女』が文庫化されて、メルボルンに持って行って読んだ記憶があります。著者は湊かなえや沼田まほかるなどと並んで、いわゆる「イヤミス」の代表的な作家です。この作品は連作短編集であり、「扉」、「棚」、「机」、「箱」、「壁」、「紐」の6篇の短編を収録しています。なお、目次にはありませんが、各短編に必ず登場するアオシマさんが最後に解説を書いています。というか、作者が作中人物のアオシマさんになり代わって解説してくれています。本書のタイトル通りに、引っ越しをテーマとして都市伝説的な怪奇な、というか、ホラー趣味が濃厚な不思議でやや気持ちの悪いストーリーが展開されています。この短編集も、前の『本屋さんのダイアナ』以上に、あり得ない登場人物とストーリー展開なんですが、あくまで、あざといエンタメ小説なのでこんなもんだろうという気がします。

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最後に、岩波新書が2冊で、坂井豊貴『多数決を疑う』三木義一『日本の納税者』(岩波新書) です。著者たちは前者が慶応大学経済化うぶの、後者は青山学院大学法学部のそれぞれ研究者であり、坂井教授は2014年4月12日付けのこのブログで『社会的選択理論への招待』を紹介したことがあります。また、三木教授は民間税調のメンバーだったりします。『多数決を疑う』は表紙の画像に見る通り、社会的選択理論を扱ったもので、ボルダやコンドルセから始まって、民主主義下でどのような意思決定理論が適当かを模索しています。すなわち、タイトルにある多数決とは単純たすっけつのことなんですが、、1位の選好対象に対して1票を与え、その他の2位以下にはゼロとするスコアリングルールであるのに対して、いっわゆるボルダ・ルールでは1位に3点、2位に2点、3位に1点を与えます。プロ野球の最優秀選手(MVP)を選ぶジャーナリストの投票がこの方式に似通っており、1位5点、2位3点、3位1点だったと記憶しています。また、単純多数決の過半数に基づく結果が頑健でない可能性も議論されていますが、著者は64%ルール、もしくは、2/3ルールを提唱しています。私もこれらの選択理論の重要性を理解はするんですが、新たな決定における選択と従来の状態の改変を目指す選択では、後者に現状維持バイアスがかかる可能性があることも考慮すべきと考えます。すなわち、この本の背後に憲法改正に関する意思決定に関する議論が透けて見えるんですが、私自身はリベラルな護憲派ながら、実は、「護憲」とは別の角度から見れば現状維持であり、人間が選択する場合に現状維持バイアスがかかるのは実験経済学などからも明らかですから、ビミョーに高いハードルを設けるのも考えものだという気がしないでもありません。『日本の納税者』は税法学者の立場から現行の法制及び凡例も引きつつ、我が国における納税者について浮き彫りにしています。すなわち、明治憲法下での臣民から主権者たる天皇への貢物的な位置づけから、現在の憲法下での主権者の権利や義務としての納税のあるべき姿を問うています。しかし、最終章あたりで軽く触れられるにとどまっていますが、我が国の納税者の間で納税忌避感が強いのは、いわゆる「土建国家」レジーム下で徴収した税金を土木工事などで極めて不公平感強い配分をしたのに端を発していると私は考えています。本書でもデンマークなどの例が引かれていますが、こういった北欧のいわゆる「福祉国家」レジーム下で社会保障を通じて国民に還元するのとは不公平感が大きく異なるわけです。そのあたりも掘り下げて論じて欲しかった気がします。

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