企業物価上昇率は国際商品市況の下落に伴いマイナスを続ける!
本日、日銀から7月の企業物価指数 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲3.0%の下落と、昨年の消費増税の影響が一巡した今年4月から4か月連続でマイナスを続けています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7月の企業物価指数、前年比3.0%下落 原油安受け下げ幅拡大
日銀が12日発表した7月の国内企業物価指数(2010年平均=100)は103.4で、前月比0.2%下落、前年同月比で3.0%下落した。原油安や中国景気の懸念を受けた原材料費の下落が影響し、前年比の下げ幅は6月(2.4%下落)から拡大し、2009年12月以来の大きさとなった。消費増税を除いたベースでの前年比は2.9%下落だった。
前月比での下落要因で最も影響が大きかったのは「石油・石炭製品」だった。原油価格の下落を受けて、ガソリンや軽油など石油製品の価格が下がった。中国の景気減速懸念に伴う国際商品市況の悪化で、銅地金などの非鉄金属にも下落圧力がかかった。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している814品目のうち、前年同月比で上昇したのは312品目、下落は382品目で、7カ月連続で下落品目が上昇品目を上回った。下落品目と上昇品目の差は6月から拡大し、13年5月以来の大きさだった。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の、下のパネルは需要段階別の、それぞれの上昇率をプロットしています。いずれも前年同月比上昇率で、影をつけた部分は、景気後退期を示しています。
日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは国内物価の前年同月比で▲2.9%の下落でしたし、レンジとしても▲3.5%から▲2.7%でしたので、ほぼジャストミートだった気がします。国内物価でプラスとマイナスの主要な寄与を示した品目を見ると、引用した記事にもある通り、マイナス寄与では石油・石炭製品が▲0.12%、非鉄金属が▲0.09%、スクラップ類が▲0.03%などが上げられているほか、プラス寄与では電力・都市ガス・水道が+0.04%、農林水産物が+0.03%などとなっています。要因としては、これまた引用した記事にある通り、中国経済の減速に伴う商品市況の下落から石油や非鉄金属価格に落ち込みが見られる点が上げられます。中国の政策当局も景気浮揚の必要性は認識しているようですが、報道で見かけた通り、 くらいしか対応策がないんでしょうか。でもまあ、商品価格の落ち着きは全体としては日本経済に悪くないと考えるエコノミストは多そうな気がします。
上のグラフのうちの下のパネルで示されている通り、国際商品市況に近い素原材料だけでなく、中間財や最終財もすべて石油価格の下落とともに伸び率を低下させてマイナスに転じており、同時に上のパネルの輸出入価格上昇率でも円安の効果で輸出物価だけは上昇を続けているものの、さすがに、原油というかなり基礎的な物資の価格が大きく低下していますので、相対価格の変化というよりは一般物価水準が低下していると私は考え始めています。ですから、もちろん、物価のターゲットは消費者物価(CPI)であって企業物価(PPI)ではないんでしょうが、いわゆるフォワード・ルッキングな先行きにおいて物価上昇の見込みがあるとの蓋然性が高いのであればともかく、物価の現状が継続する蓋然性の方が高いのであれば、私は何らかの追加的な政策を必要とするんではないかと考えています。米国連邦準備制度理事会(FED)が明確に利上げに舵を切りつつあるところで、追加緩和は難しい課題とは考えますが、いずれにせよ、日銀の金融政策動向に注目しています。
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