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2015年8月22日 (土)

夏休みの今週の読書はそれなりにたくさん!

今週の読書は『セックスと恋愛の経済学』、英語の原題は Dollars & Sex ほか、以下の7冊です。ただ、上下巻を2冊とすれば8冊だったりします。今週は夏休みで仕事に行きませんでしたので、かなり読書がはかどった気がします。大量に読みましたので、ハズレも少なくなく、軽く済ませる本は軽く済ませたいと思います。

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まず、マリナ・アドシェイド『セックスと恋愛の経済学』(東洋経済) です。著者はカナダの太平洋岸にあるブリティッシュ・コロンビア大学の研究者です。まず、大きな疑問はセックスと恋愛を市場におけるマイクロ経済学的な方法論で論ずることが可能かどうか、本書はそれに対する議論はなく、自明で「可能」という結論のようです。まあ、労働市場分析なんぞはやや怪しげなマイクロ経済学分析で定量的な結果を示していますのでいいとして、その上で、セックス市場、すなわち、売春市場や風俗産業の分析がありません。これも不可解です。たふぁ、結婚についてはそれなりの分析を示して、分かりやすく結んでいます。まあ、分析者の研究対象については主観的な重要性と趣味で決まるのですから、私としてはこれはこれでいいような気もしますが、エコノミストによってはとても物足りないと受け止める場合も少なくないような気がします。私はハッキリと不満ですが、出会いサイトや婚活サイトで現実のパートナーは検索条件にヒットしない可能性が高い(p.79)という指摘だけは強く合意します。

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次に、吉本佳生『マーケティングに使える「家計調査」』(講談社) です。著者は証券会社かどこかの金融機関だかの調査部門でエコノミストをしている人物でないかと思います。実は、私は総務省の統計局に勤務したけんけんがあり、本書が取り上げている「家計調査」にも深く関わったんですが、誠に残念ながら、本書の目的としては5年おきの周期調査である「全国消費実態調査」の方が適していることは明らかです。「家計調査」は月次ですから毎月の調査で時系列的な方向や傾向を追うことが目的で、「全国消費実態調査」のように構造を明らかにするには適していません。それに加えて、本書もエンゲル係数に関して間違っているように、相関と因果関係については基礎的な認識の欠落があります。2013年3月13日付けのエントリーでカーネマン教授の『ファスト&スロー』を取り上げて、オフィスの井戸端会議に参加するためのホントカーネマン教授自身が位置づけていると紹介しましたが、本書も同様であり、オフィスの同僚諸氏であればともかく、外部の人に本書に書いてある豆知識をご披露する際には十分な注意が必要です。

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次に、アンドルー・ファインスタイン『武器ビジネス』(原書房) です。本書も著者がハッキリしないんですが、南アフリカの国会議員経験者だそうで、極めてリベラルな見方を持ち、ジャーナリストであればナオミ・クラインに近いんではないかと思います。いかに、武器ビジネスが倫理性にかけて賄賂で政策当局者を籠絡して不正なビジネスを展開しているか、という事実を延々と取り上げています。我が国の田中内閣時代のロッキード事件も下巻p.42から取り上げられています。私も基本的に本書の著者と同じリベラルな見方をしているんですが、最後の解決方法についても私と同じでかなりお粗末な気がします。すなわち、本書の著者も下巻p.414では過去10年で収集したドキュメントを捜査当局や検察に持ち込んだと明らかにした上で、「期待はあまり持っていない」と表明しており、私もどうすれば解決できるかはまったく不明です。経済学的には市場における情報の非対称性の問題であり、すなわち、教育や薬を含む医療などとまったく同じ問題が生じているわけなんですが、武器ビジネスについては、武器は軍しか買わないことから需要独占が生じているので、問題解決は容易だろうと思っていたものの、本書を読む限りではかなり難しそうです。本書も武器ビジネスについて問題となる事実はいっぱい収録されている割に、それらを解決する方向性がまったく示されておらず、読後感がかなり暗い気がします。

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次に、鳥越規央『スポーツを10倍楽しむ統計学』(化学同人) です。著者は東海大学の統計学の研究者で、本書にあるようなスポーツ関係の統計に詳しいようです。本書は野球を扱っていませんが、この著者は本書の以前にいわゆるセイバーメトリクス、本と映画の「マネーボール」で有名になった野球の統計学に関する著作が何冊かあり、私も読んだことがあります。そのうちの1冊が本当は強い阪神タイガース』というタイトルで2013年のシーズン前に出版されており、私は恥ずかしながら1年半くらい遅れて読んだんですが、セイバーメトリクス的には阪神は能力の高い選手がそろっていると論証しています。ですから、私の解釈では選手の能力ではなく、当時の監督だった真弓監督や今の和田監督のベンチワークが悪くて阪神が優勝できないのである、と考えていました。また、歴代阪神選手をセイバーメトリクスで分析したベストナインがあって、現役選手では、永久欠番の吉田義男や熱血監督だった藤田平を抑えて、唯一鳥谷遊撃手が選出されており、とても納得した記憶があります。前置きが長くなりましたが、本書は野球以外のテニス、卓球、サッカー、ゴルフ、陸上にウィンター・スポーツのスキージャンプ、フィギュアスケート、最後に大相撲を各章で取り上げています。最初の第1章にテニスで、二項分布を展開してラリーで60%を支配できれば99%超の勝率を上げられるとして、ややシロートさんに小難しい理論を展開しています。また、野球、テニス、ゴルフ、などの離散型のスポーツと違って、サッカーやラグビーなどの連続型のスポーツは統計的な分析は難しそうな気がするんですが、p.73以降でサッカーのカストロール・インデックスなる指数を紹介したり、1試合当たりのサッカーのゴール数や野球のホームラン数の分布が極めてポアソン分布に近い(p.65)、など、数式を展開しつつ理論的かつ実証的な議論を展開しています。

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次に、日本再建イニシアティブ『人口蒸発』(新潮社) です。先日の8月9日付けのエントリーで、船橋洋一[編著]『検証 日本の「失われた20年」』を取り上げましたが、基本的に同じ傾向です。すなわち、日本再建イニシアティブの理事長は朝日新聞の主筆を務めた船橋洋一だからです。前著の『検証 日本の「失われた20年」』についても私はやや酷評に近かったんですが、本書も同じ傾向です。かなり大きな問題に対して、著者ご本人たちは包括的なアプローチを取っているつもりなんでしょうが、ハッキリと私は散漫な印象しか受けません。バックグラウンドにエコノミストが考えるようなモデルを置かず、漠たる事実の寄集めを対象に、「群盲象をなでる」といわれても仕方がないような散漫な議論を展開しています。背景にモデルがありませんから、評価関数もハッキリしません。本書では人口一本槍で評価関数を構成できそうに私は想像したんですが、国土政策や地方新興などを寄せ集めて、わけの分からない怪物を対象に徒手空拳で立ち向かって、ほとんど何の結論も出せていません。1冊の本に取りまとめる意味もなく、読者の興味ある章を取り出して読めばいい、というスタンスなのかもしれません。私にはよく分かりません。唯一、シルバー民主主義を正面から取り上げようと試みた姿勢だけを評価します。そのほかは、前著の『検証 日本の「失われた20年」』と同じで、大きく期待倒れです。

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次に、三浦しをん『あの家に暮らす四人の女』(中央公論新社) です。私の好きな直木賞作家の最新作ですから、久し振りに買って読んだ小説です。今年の4月くらいまで『婦人公論』に連載されていたそうです。ということで、古い古い終戦直後に建てられた築70年の家に暮らす母娘と娘の友人女性、さらにその友人女性の職場の後輩女性と4人を中心に物語が進みます。いかにも、というカンジで、p.48で著者自身も登場人物を通して、『細雪』との類推を示唆したりしています。でも、決して類似点はありません。その家が杉並区の善福寺川周辺のようで、我が家が結婚直後に暮らしていた地域だったりします。また、新しい試みがいくつか試されていて、主人公は母娘の40歳近い娘の方ではないかと思うんですが、同年代の同居の友人の視点やその友人の会社後輩の心情などの描写も盛り込まれていて、必ずしも主人公の視点で統一されているわけでもなく、そうかといって3人称で書かれているわけでもなく、新機軸の試みかもしれませんが、やや中途半端な印象です。さらに、私は決して評価しないんですが、p.135からカラスに昔語りをさせたり、p.253から主人公の亡くなった父親が幽霊として登場して、いろんな追加的なトピックを語ったりと、新たな試みが随所に見られます。繰返しになりますが、私は決して評価しません。この作者には小説の王道を行くようにお願いしたいです。

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最後に、江戸川乱歩『幽霊塔』(岩波書店) です。上の表紙に見られる通り、表紙と最初の数ページに宮﨑駿のマンガがあります。今年5月から1年にわたって三鷹の森ジブリ美術館で企画展示されているものだそうです。中身も漢字や仮名遣いなどを現在の少年少女向けに改定しているんではないかと思います。舞台は長崎の幽霊塔で、実に戦前の推理小説らしく、悪いヤツは悪く、美女は決して犯人ではなく、最後は大団円で終わる、という倫理的に好ましい、と当時考えられていた手法で構成されています。

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