景気動向指数は踊り場脱却を示唆しているか?
本日、内閣府から6月の景気動向指数が公表されています。ヘッドラインとなるCI一致指数は前月から+0.7ポイント上昇して112.0を、CI先行指数は+1.2ポイント上昇の107.2を、それぞれ記録しています。一致指数は2か月振りの上昇、先行指数は4か月連続の上昇となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
景気一致指数、6月は2カ月ぶり改善 「足踏み」の基調判断維持
内閣府が6日発表した6月の景気動向指数(速報値、2010年=100)は、景気の現状を示す一致指数が112.0と、前月比0.7ポイント上昇した。改善は2カ月ぶり。内閣府は一致指数の基調判断を「足踏みを示している」とし、5月からの表現を維持した。
一致指数を構成する10指標のうち、7指標がプラスに働いた。乗用車や二輪車といった耐久消費財出荷指数や、電子部品などを含む商業販売額(卸売業)が一致指数を押し上げた。投資財出荷指数(除く輸送機械)は資本財と建設財がともに伸びたほか、鉱工業生産指数も上振れした。半面、天候不順を背景に園芸用品やエアコンなど季節商品の売れ行きが鈍く、商業販売額(小売額)はマイナスとなった。
数カ月先の景気を示す先行指数は1.2ポイント上昇の107.2だった。改善は4カ月連続で、14年2月(108.1)以来、1年4カ月ぶりの水準を回復した。最終需要財や鉱工業用生産財の在庫率指数が改善した。新設住宅着工床面積もプラス要因となった。一方、景気に数カ月遅れる遅行指標は0.2ポイント低下の115.1と、2カ月連続で低下した。
指数を構成する経済指標のうち、3カ月前より改善した指標の割合を示すDI(最高は100)は一致指数が50.0、先行指数は88.9だった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。
CI一致指数・先行指数とも前月から上昇を示しています。ただし、それほど大きな上昇ではなく、連続的な変化でもありませんから、統計作成官庁の内閣府は基調判断を「足踏み」で据え置いています。CI一致指数を構成するコンポーネントのうち、耐久消費財出荷指数と商業販売額(卸売業)(前年同月比)が大きなプラス寄与を示した一方で、商業販売額(小売業)(前年同月比)がもっとも大きいマイナス寄与を示しており、耐久消費財出荷は増えたものの小売業販売はマイナスなんですから、単純に考えると、耐久財以外の消費が振るわなかった、ということなのかもしれません。引用した記事はひとつの解釈ながら、消費に関してやや解釈に苦しむ結果ではないかと思います。ただ、CI一致指数がジグザグと一進一退を繰り返しているグラフなのに対して、CI先行指数は4か月連続の上昇を示しており、グラフを見ても明らかな通り、4月から踊り場に入っている我が国景気もそろそろ停滞を脱して上昇、というか、回復・拡大に向かう動きが始まっている可能性がCI先行指数のグラフから見て取れます。今月の結果のように消費の動向がハッキリしない恨みはありますが、設備投資は着実に景気をけん引し始めており、海外経済、特に欧州や中国次第ではありますが、米国経済は好調を維持しており、年内には我が国経済も踊り場を脱して本格回復・拡大の軌道に復するものと私は期待しています。
なお、実は、今日の景気動向指数の発表から第11次指数に改定されています。7月24日に開催された景気動向指数研究会での議論を踏まえたものです。CI一致指数では、、2011年の東日本大震災から節電の影響などで生産動向との相関が弱まっている大口電力使用量が外され、11系列から10系列になっており、CI先行指数では、実質機械受注(船舶・電力を除く民需)を実質機械受注(製造業)に、また、長短金利差をマネーストック(M3)に入れ替えています。さらに、CI遅行指数では、きまって支給する給与(製造業、名目)と消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)(前年同月比)と最終需要財在庫指数を新たに追加して、従来の6系列から9系列になっています。直近の動向には大きな変化ないんですが、比較したグラフは以下の通りです。
最後に、景気動向指数の系列の入替えに伴って、「CIによる景気の基調判断」の基準もビミョーに変更されています。局面変化を上方と下方に書き分けたんではないかと思いますが、内容に大きな変更はないようです。詳細は以下のリンクから確認できます。
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