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2015年9月30日 (水)

2か月連続の減産を示す鉱工業生産指数と小売販売額の伸びが鈍化した商業販売統計から何を読み取るか?

本日、経済産業省から8月の鉱工業生産指数商業販売統計が公表されています。ヘッドラインとなる鉱工業生産の季節調整済みの前月比は▲0.5%減と2か月連続の減産となり、基調判断が下方修正されています。また、商業販売統計のうちの小売業販売額は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.8%の増加と7月確報よりもやや伸び率が鈍化しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月鉱工業生産、0.5%低下 海外の機械需要後退、基調判断を下方修正
経済産業省が30日発表した8月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比0.5%低下の97.0だった。低下は2カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1.0%上昇で、市場予想を大きく下回った。マシニングセンターなど機械関連の輸出がアジアを中心に減少した。経産省は生産の基調判断を「一進一退で推移している」から「弱含んでいる」に下方修正した。
基調判断は約1年ぶりの弱い表現となった。9月の予測指数も0.1%の上昇にとどまり、7-9月期は4-6月期に続いて2期連続で減産になる見通しとなった。
8月の生産指数は15業種のうち10業種が前月から低下し、5業種が上昇した。はん用・生産用・業務用機械工業が3.2%低下した。輸送機械工業も普通乗用車の生産抑制により0.7%低下した。電子部品・デバイス工業も1.0%低下した。
出荷指数は前月比0.5%低下の95.7だった。在庫指数は0.4%上昇の114.1、在庫率指数は6.1%上昇の119.1だった。
小売販売額、8月は0.8%増 5カ月連続プラス
経済産業省が30日発表した8月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比0.8%増の11兆5480億円だった。プラスは5カ月連続。小売業販売額は季節調整済みの前月比では横ばいだった。
業種別では機械器具が4.8%増、織物・衣服・身の回り品は4.5%増、自動車は3.8%増だった。経産省は小売業の基調判断を「一部に弱さがみられるものの横ばい圏」に据え置いた。
百貨店・スーパーの販売額は前年同月比2.6%増の1兆6057億円だった。増加は5カ月連続。既存店ベースの販売額は1.8%伸びた。既存店のうち百貨店は2.7%増、スーパーは1.4%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は5.5%増の9961億円だった。

いずれも網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

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先月の指標公表時の製造工業生産予測調査では8月は何と+2.8%の増産という結果が出ていましたし、引用した記事にもある通り、日経・QUICKが取りまとめた市場の事前コンセンサスでも8月は+1.0%の増産とのことでしたから、逆に減産に沈んだというのはかなり生産の状況が厳しいということを示しているような気がします。統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「一進一退」から「弱含んでいる」に引き下げています。生産の弱さの原因を考えると、基本は中国などの新興国経済の低迷に起因する我が国の輸出の不振ですが、同時に、消費増税後の国内の消費の停滞もそれなりのインパクトがありそうです。上のグラフのうちの下の出荷のパネルを見ても、輸送機械を除く資本財出荷は最近時点でやや停滞気味とはいえ、まずまず順調に増加を示している一方で、耐久財出荷は2014年4月の消費増税から方向感として減少しているように見えます。もちろん、消費は耐久財のみから成り立っているわけではありませんが、生産と消費のサイクルがともに弱まっている印象は持ちます。7-8月と2か月連続で生産と出荷が前月比マイナスで、製造工業生産予測調査では9月も前月比で+0.1%の増産にとどまるようですから、7-9月期の生産は4-6月期に続いて2四半期連続で減産を記録するのはほぼ確実です。そうなれば、日経新聞の記事ではないですが、GDP成長率も4-6月期に続いて7-9月期も2四半期連続のマイナスとなる可能性が十分あり、すなわち、日本経済が2四半期連続マイナス成長のテクニカルな景気後退に陥る可能性も覚悟すべきです。もちろん、新興国経済の停滞が原因と手をこまねいているばかりではなく、インフレ目標の達成も同時に厳しくなりつつありますから、日銀が何らかの追加緩和に踏み切る公算が高まったと私は受け止めています。

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次に、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは2010年=100の季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は、鉱工業生産指数のブラフと同じで、景気後退期を示しています。消費に直結する小売販売額は季節調整していない前年同月比でプラスを続けており、季節調整済みの系列でも増加しているように見えますが、それほどの力強さは感じられません。統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「一部に弱さが見られるものの横ばい圏」で据え置いています。生産とのギャップの要因のひとつは、インバウンド観光客の爆買いにありそうな気がしないんでもないんですが、統計的な根拠はありません。少なくとも、7月の毎月勤労統計で示された所得は、特に、ボーナスの所定外給与を含む賃金総額では、決して期待ほどには伸びませんでしたから、小売販売額の伸びも力強さを欠いています。でも、ここまでプラスを記録しているのは、インバウンド観光客の爆買いのほかに7-8月の猛暑効果だと私は考えています。ですから、決してサステイナブルとはいえず、企業が賃上げや非正規職員の正規職員化などの雇用の質的改善に積極姿勢を示さない限り、消費の本格回復にはまだ時間がかかる可能性が高いと私は考えています。

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消費に大きな影響を及ぼす恒常所得について考える上で、年金の世代間格差を見落とすわけにはいきません。一昨日の9月28日に厚生労働省から5年振りの年金の財政検証として、平成26年財政検証結果レポート「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し」が公表されています。上のテーブルは全文リポートの p.407 から 第5-2-4表 世代ごとの給付と負担の関係について を引用していますが、多くのメディアで参照されているものです。1945年生まれの高齢世代は払った年金保険料の4.3倍の年金が受け取れるのに対して、1995年生まれの若者世代では2.3倍にしか受け取れません。従来からこのブログで主張している通り、現役の勤労世代は消費しようにも、年金の世代間格差を含めた将来不安から財布のひもを緩めようがないといったところです。以下のメディアのサイトへのリンクもご参考まで。

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2015年9月29日 (火)

IMF「世界経済見通し」分析編第2章と第3章を読む、ほかノーベル経済学賞やいかに?

日本時間の昨夜、来週末10月9日からのIMF世銀総会に向けて、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し」IMF World Economic Outlook (WEO) の分析編 Analytical Chapters が公表されています。章別のタイトルは以下の通りです。なお、どうでもいいことながら、その昔は、第1章が見通し総括、第2章が国別地域別見通しで、第3章と第4章が分析編だったんですが、今回は、おそらく、第1章が地域編も含めた見通しで、第2章と第3章が分析編として構成されているようです。

Chapter 2:
Where Are Commodity Exporters Headed?
Chapter 3:
Exchange Rates and Trade Flows: Disconnected?

見れば分かると思いますが、第2章は資源国経済の分析、第3章は為替レートと貿易の分析となっています。なお、IMF Survey の以下のページも同じ趣旨ですので参考になろうかと思います。

ということで、私のこのブログでは国際機関のリポートを取り上げるのがひとつの特徴になっていますので、今夜のエントリーではリポートからいくつか図表を引用しつつ、簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、第2章の一次産品輸出国経済に関する分析です。上のグラフはリポート第2章から Figure 2.8. Event Studies: Average Annual Growth Rates of Key Macroeconomic Variables during Commodity Terms-of-Trade Upswings and Downswings を引用しています。イベント・スタディなんですが、GDPをはじめとして、一次産品の交易条件が改善した時と悪化した時のそれぞれのトレンドを示しています。当然ながら、一次産品が高値をつける交易条件改善時に成長率が高まったり、直接投資などの資本流入が増加したり、あるいは、TFPで測った生産性まで上昇したりしています。他方、CPIで測ったインフレは高進したりするものの、大雑把にいって、余りにも当然ですが、一次産品輸出国においては交易条件が改善する時に経済の全般的なパフォーマンスもよくなる、ということになります。結論として、第2章で分析したところ、一次産品価格の下落の予想により、一次産品輸出国の2015-17年の経済成長率は、一次産品が高値をつけていた2012-14年と比べ年約1%ポイント低下する可能があり、特に、エネルギー輸出国の成長率の下げ幅は、過去1年間の原油価格の急落を反映し、平均で約2.25%ポイントに達するとの推計結果を示しています。

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次に、上のグラフはリポート第2章から Figure 2.9. Variation in Average Output Growth between Upswings and Downswings: The Role of Policy Frameworks and Financial Depth を引用しています。このグラフは一次産品輸出国におけるマクロ政策対応と交易条件との関係を示したものであり、変動為替の方が固定為替よりも成長率の変動に対するダメージが少なく、同様に、財政の景気循環への対応や債務のGDP比なども成長率の変動幅を縮小させるのに有効であると結論しています。

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続いて、第3章の為替レートと貿易に関する分析です。上のグラフはリポート第3章から Figure 3.3. Effect of a 10 Percent Real Effective Depreciation on Real Net Exports を引用しています。過去30年間のデータに基づいて、実質為替レートが10%減価した際の純輸出の長期的な増加幅を試算しています。すなわち、最近時点で、主要通貨の相場が実質実効ベースで10-30%とこれまでになく大幅に変動しているにもかかわらず、為替相場の動きはかつてほど貿易に影響を及ぼしていないとする意見もあるところ、このリポートでは為替相場の動向が依然として貿易に大きな影響を及ぼしていることを主張しているわけです。もっとも、私なんぞは1985年のプラザ合意から円高が進んだにもかかわらず、一向に我が国の貿易黒字・経常黒字の削減が進まず、いわゆる弾力性ペシミズムの時代に経済分析に携わってきたエコノミストでしたから、為替の貿易に及ぼす影響はゼロとまではいわないにしても、決して大きくないような実感を持っていることも確かです。

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上の地図の画像はリポート第3章から Figure 3.11. Illustrative Effect of Real Effective Exchange Rate Movements since January 2013 on Real Net Exports を引用しています。もちろん、為替レートは貿易に影響を及ぼすとはいえ、国別に違いがあるわけで、地図に示した青い色付けをされた国は為替の動きと純輸出が通常理解される方向、すなわち、為替が減価すれば純輸出が増加する方向に動く国々であり、色が濃いほどその程度が大きいということを示していて、赤はその逆です。日本をはじめとして多くの西欧諸国やカナダ、さらに新興国ではメキシコ、ブラジルなどは青なんですが、何と、米英と中国、さらに、多くの東南アジアやインドをはじめとする南アジア諸国では赤くなっていたりします。中国などのアジアの新興国・途上国では、為替の動きが通常考えられる純輸出の逆の動きをもたらしている、というよりも、因果関係が逆であって、純輸出が低迷すると為替を減価の方向に操作する、ということなんではないか、と私は思うんですが、いかがなもんでしょうか。もっとも、米英についてはやや不明です。

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それから、IMFの「世界経済見通し」を離れて、やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週9月24日にトムソン・ロイターから今年のノーベル賞の科学部門の予想が Thomson Reuters Forecasts Nobel Prize Winners と題して公表されています。当然ながら、トムソン・ロイターの日本語サイトにもアップされています。ただし、ほとんど英語そのままですので、私なんぞにはかえって判りにくかったりします。なお、科学部門ですから、平和賞と文学賞は除かれています。ノーベル賞各賞の発表予定は10月5日の医学・生理学賞から始まり、6日に物理学賞、7日に化学賞、9日に平和賞、がそれぞれ発表され、エコノミストとして気にかかる経済学賞はその次の週の10月12日に予定されています。文学賞は未発表ですが、通例通り、空いている8日ではないかと考えられます。トムソン・ロイターによる経済学賞の予想は以下の通りです。

氏名所属功績
Sir Richard Blundell, CBE FBARicardo Professor of Economics, Department of Economics, University College London and Research Director at Institute for Fiscal Studies, London UKFor microeconometric research on labor markets and consumer behavior
John A. ListHomer J. Livingston Professor of Economics, University of Chicago, Chicago, IL USAFor advancing field experiments in economics
Charles F. ManskiBoard of Trustees Professor in Economics, Northwestern University, Evanston, IL USAFor his description of partial identification and economic analysis of social interactions

誠に不勉強にして、私のよく知らない先生方ばかりなんですが、真ん中のリスト教授については、昨年2014年11月15日付けのエントリーで紹介した『その問題、経済学で解決できます。』(東洋経済) の共著者です。読書感想文では「タイトルから分かりにくいんですが、サブプライム・バブルが始まる前に流行ったような経済学礼賛本、すなわち、人間はインセンティブに反応するので、経済学によってインセンティブ構造を明らかにすれば、マイクロな人間行動は経済活動に限らずすべて解明できる、とするタイプの少し恥ずかしい本ではありません。さすがに現在ではそんな本は出版されない気がします。そうではなく、実験経済学の本です。」と紹介しています。ですから、実験経済学がご専門分野ではないかと想像しています。私の予想は今年は2組出しておいて、成長論・技術革新論などの専門家であるジョルゲンソン教授とアセモグル教授、さらに、ややトムソン・ロイターにおもねって実験経済学でセイラー教授とリスト教授、をそれぞれ上げておきたい気がします。

また、トムソン・ロイターの予想では、京都大学の森和俊教授と大阪大学の坂口志文教授がともに医学・生理学分野で候補に上げられ、メディアなどでも話題になっています。功績については、私はサッパリ理解できません。ノーベル賞については、今年こそ村上春樹さんの文学賞やいかに?

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2015年9月28日 (月)

10月1日発表の日銀短観予想やいかに?

今週木曜日10月1日の発表を前に、シンクタンクや金融機関などから9月調査の日銀短観予想が出そろっています。4-6月期の2次QEで企業の設備投資が前期比マイナスを記録し、企業マインドとともに設備投資計画にも注目が集まっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと大企業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は今年度2015年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、今回の日銀短観予想については、先行きの業況判断DIの予想に着目して拾いました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、html の富士通総研以外は、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
6月調査 (最近)+15
+23
<+9.3%>
n.a.
日本総研+10
+17
<+7.8%>
先行き(12月調査)は、全規模・全産業で9月調査対比▲3%ポイントを予想。企業の好業績を起点とした緩やかな景気の回復基調が続くと見込まれるものの、中国・新興国経済の減速懸念は当面払拭されず、先行き不透明感が増すなか、景気への慎重な見方が優勢となる公算。
大和総研+13
+20
<+9.2%>
業況判断DI(先行き)は、大企業製造業、大企業非製造業ともに悪化するとみている。当社のメインシナリオでは、先行きの日本経済は徐々に持ち直すと予想しているものの、足下で輸出と生産の停滞が続いており、個人消費の回復も遅れている。さらに、中国を中心とする新興国経済の減速やグローバルな金融市場の動揺などを背景に、企業は先行きに対して慎重な見方を示すと考えている。
みずほ総研+13
+21
<+9.1%>
(大企業製造業) 先行きも1ポイントの悪化を見込んでいる。欧米を中心に海外経済は緩やかな回復基調を維持するとみられるが、新興国経済の先行き不透明感が重石となり、先行きに対する見方は慎重化すると予想する。
(大企業非製造業) 先行きは、2ポイントの改善を見込んでいる。原油安による企業収益押し上げ効果が続くことや、消費回復への期待から、幅広い業種で先行きに対する見方は上向くだろう。
ニッセイ基礎研+13
+18
<+8.5%>
先行きの景況感についても、企業規模や製造業・非製造業を問わず、悪化するだろう。最近の情勢悪化を受けて、内外経済の下振れリスクは高まっており、景気回復シナリオへの慎重な見方が強まっていると考えられるためだ。
第一生命経済研+12
+21
<+9.1%>
筆者は、世界連鎖株安と中国経済の悪化を踏まえて日銀・物価見通しは10月30日に下方修正されると予想している。それに応じて、追加緩和に踏み切る蓋然性は高いとみている。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+13
+19
<+7.6%>
景気の先行き不透明感が強まる中、雇用と設備の不足感がやや薄らいだことで、設備投資計画を下方修正する動きが広がった可能性がある。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+13
+22
<+10.0%>
(大企業製造業) 先行きについても企業は慎重な姿勢を強めており、景況感は悪化が続くと予測する。大企業製造業の業況判断DI(先行き)は3ポイント低下の10になるだろう。
(大企業非製造業) 先行きについても、個人消費を中心に内需が伸び悩む中、海外景気の減速を受けて企業活動や訪日外国人の増加テンポが鈍化する懸念もあることから、先行きの業績を慎重に見る企業が増えると予想される。大企業非製造業の業況判断DI(先行き)は2ポイント低下の20になるだろう。
三菱総研+13
+22
<n.a.>
先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業+10%ポイント、非製造業は+20%ポイントといずれも悪化を予想する。中国をはじめとする新興国経済の下振れリスクが高まっているほか、米国の利上げを控える中、金融市場も不安定化しており、製造業、非製造業ともに先行きに対する見方は慎重化しているとみる。
富士通総研+12
+21
<+7.9%>
先行きの見通しについては、現時点では不透明感が払拭される見通しは立たず、さらに悪化すると見込まれる。

ということで、見れば分かると思いますが、大企業の製造業・非製造業の業況判断DI、さらに、大企業全産業の2015年度設備投資計画の前年度比です。設備投資計画は土地を含みソフトウェアを除くベースです。国内経済の景気とともに、あるいは、中国をはじめとする新興国経済の停滞の影響や株安などの要因もあって、足元のみならず先行きも含めて、企業マインドは緩やかに下り坂を示すものの、まだプラス領域の推移が続く、と見込まれているようです。他方、設備投資計画は6月調査寄りは下方修正される可能性が高いものの、依然として大幅増加の予想であり、場合によっては上方修正の可能性すら残されているのかもしれません。
最後に、下のグラフは業況判断DIの予想です。日本総研のリポートから引用しています。

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2015年9月27日 (日)

ヤクルトにマジックが点灯し、負け続ける阪神のCS進出は大丈夫か?

  HE
阪  神100000100 2120
広  島30000002x 5111

またまた、決定打が出ずに広島に逆転負けでした。8回表裏の攻防がこの試合のすべてを物語っていたんではないでしょうか。8回オモテの阪神はノーアウト満塁を無得点で終わり、そのウラの広島の攻撃で福原投手が2点を失ってダメを押されました。11安打の広島を上回る12安打と打線は2ケタ安打を放ちながら決定打なく、ベテラン中心のリリーフ陣は終盤に決定的な失点をする、という見慣れた負けパターンです。バックグラウンドには若手の育成を怠ってきたチーム事情があります。
残り試合も少なくなり、明日の巨人戦と10月1日のヤクルト戦は確実に負けるでしょうから、最後の10月4日の日曜日の最終の広島戦がクライマックス・シリーズ出場をかけた大一番、ということになりそうな気がして怖いです。

明日の巨人戦は、
がんばれタイガース!

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週末ジャズは新垣隆/吉田隆一の「N/Y」を聞く!

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昨年2014年暮れにリリースされた新垣隆/吉田隆一「N/Y」を聞きました。新垣隆のピアノと吉田隆一のバリトン・サックスのデュエットです。取り急ぎ、曲目構成は以下の通りです

  1. Vertigo
  2. 野生の夢 ~水見稜に~
  3. 秋刀魚
  4. 皆勤の徒 ~酉島伝法に~
  5. Spellbound
  6. 怪獣のバラード
  7. Stage Fright
  8. Embraceable You
  9. The Birds
  10. Sophisticated Lady
  11. Topaz
  12. 明日ハ晴レカナ、曇リカナ

私はジャズのプレイヤとしては、誠に失礼ながら2人とも知らなかったんですが、ピアノの新垣隆は作曲家としては有名です。どう有名かというと、ジャケットの写真を見て思い出した向きもあるかもしれませんが、かの全聾の作曲家と称していた佐村河内守のゴーストライターだったと大騒ぎになった事件を記憶の方も少なくないと思います。という方面で有名なわけです。CDに付属しているライナー・ノーツならぬプロデューサーズ・ノートでは、サラリと「事件」としか触れられていません。
ということで、凝った曲が収録されているんではないかと期待しましたが、まあ、標準的な出来ではないかという気もします。厳しい人なら標準以下というでしょう。ジャズ界では久し振りのキワモノの話題のアルバムかもしれません。私も特に強くはオススメしません。

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2015年9月26日 (土)

毎度おなじみでマエケンを打てず広島に逆転負け!!

  HE
阪  神100000000 151
広  島00002000x 270

取りあえず、昨日は勝ちましたのでクライマックス・シリーズには安泰と考えていますが、それでもマエケンには何度も負けています。今日もスミ1のまま逆転負けでした。これで、マエケンは13勝を上げて沢村賞なんでしょうか。藤浪投手は来年狙っていただきたいと思います。少し前まで優勝を目指していたチームには志の低いことで申し訳ありませんが、何とかクライマックス・シリーズを確実にするため、広島には勝っておきたいところです。

明日は、
がんばれタイガース!

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今週の読書は『日本沈没』以外に岡部直明『ドルへの挑戦』ほか

今週はシルバー・ウィークの読書として『日本沈没』第1部と第2部を読書感想文として取り上げましたが、それ以外にもチョコチョコと図書館から借りて読んでいたりします。『ドルへの挑戦』や『「人間国家」への改革』など、以下の通りです。

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まず、岡部直明『ドルへの挑戦』(日本経済新聞出版社) です。著者は日経新聞のジャーナリストです。為替の関係で日経新聞の記者さんといえば、本書の参考文献にも上げられている『日米通貨交渉』の著者である滝田洋一さんの名前が上がることも多いんですが、本書の著者はさらにシニアな方だと記憶しています。さすがに、エコノミストではなくジャーナリストですので、為替や通貨の問題は経済学だけでなく地政学的な観点からも考慮すべきであるということを十分にわきまえた著者だと思います。ですから、米国が世界の警察官から降りたのはオバマ政権の考えだけではなく、ブッシュ政権下でイラク戦争やリーマン・ショックなどの失政の結果であるとか、シェール革命によってエネルギー自給が可能となった米国は安全保障の重点を中東からアジアや太平洋にリバランスする方向にあるとする見方は私も同意します。その上で、1997年金融危機の際に山一證券や拓銀を破綻させた清算主義について、2008年のリーマン証券の破綻と同じように批判したり、あるいは、中国主導のAIIBに日米ともにそろって加盟すべき、といった意見は傾聴に値するような気がします。

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次に、田中辰雄/山口真一『ソーシャルゲームのビジネスモデル』(勁草書房) です。著者は2人とも経済学、特に計量経済学の研究者です。タイトルになっているソーシャルゲームとは、プレイヤー間でコミュニケーションやアイテムのやり取りが行われるゲームで、いわゆる規模の経済が大いに働く形式と考えてよさそうです。我が家の倅たちが小学生のころにやっていたクロノスや、現在のラグナロクなどが当てはまるんではないかと思います。このソーシャルゲームでは、我が家の倅たちのように無料で遊んでいる大勢のプレイヤーとともに、何らかのアイテムを有料で入手しているプレイヤーがいます。その入手方法のひとつにコンプガチャがあり、数年前に射幸心を煽るなどとして消費者庁から規制を受けたのは記憶に新しいところではないでしょうか。経済学的に著者が解明する通り、p.90 図3-3 に明らかなように、不確実性のあるガチャがある場合、その分、需要曲線は左にシフトしますが、有料プレイヤーがガチャで入手したうちで不要なアイテムを交換に出したり、あるいは、他のギルド内のプレイヤーなどに無料で与えたりしますので、その分だけ需要曲線はもう一度右にシフトします、といった特徴的な需要構造があります。しかし、もっとも私が興味あったのは第5章の依存性や射幸性の分析です。操作変数(IV)を用いたGMM法による定量分析により、著者たちは射幸性については認めつつも、パチンコ・パチスロよりもソーシャルゲームは射幸性と依存性が決して高くなく政府規制は不要との結論を導き出していますが、私は極めて怪しいと受け止めています。GMM分析に耐えるほどのサンプル数なのかどうかが疑問ですし、操作変数の取り方にも恣意性が残ります。その昔に、消費者金融会社の業界団体から多額の寄付を受けて、消費者金融は消費者の流動性制約を緩和する素晴らしい機能があるとする研究成果をバンバン出していた経済学の研究者がいましたが、こういった業界に偏重しつつ政府規制に否定的な成果を示す研究成果は、かなりの精査が必要ではないかと私は考えます。社会科学や経済学の分野でも「原子力ムラ」に近い形で研究成果を出す研究者がいないとも限りません。

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次に、神野直彦『「人間国家」への改革』(NHKブックス) です。著者は財政学や公共経済学を専門とするエコノミストであり、東京大学の名誉教授です。本書のタイトルにもなっている「人間社会」というのが、カッコつきでもあり分かりにくいんですが、要するに、人間が単なる生産や消費などの経済活動に対する関わりだけから見られるんではなく、まさに人間として評価される社会、ということなんだろうと思います。例えば、p.190 では、「膨張する市場を抑制しつつ、社会システムを大きくしていくこと」と表現しています。ただし、家族機能よりも地域コミュにテュを活性化して拡大する必要性を説いていますので、やや分かりにくいんですが、私から見れば、マルクス主義的な疎外を本書なりに表現しているのだと受け止めています。それに加えて、本書における著者の主張は大いに私の共感するところであり、社会的なインフラとセイフティネットの充実のために租税負担を引き上げる必要があることなどは、まったくその通りだという気がします。ただ、従来からの私の主張のように、日本は徴収した租税を公共事業で還元する「土建国家」であるために、社会保障で還元する「福祉国家」に比べて租税負担が極めて回避的になりがちである点は指摘されていません。重要なポイントだと思います。また、しきりと西欧や北欧の福祉国家の例を持ち出していますが、これも土建国家と福祉国家の違いを無視しているような気がします。まず、福祉国家建設のための努力を強調しておきたいと思います。全体を通して、「知識社会」というキーワードが示されていますが、私には少し意味不明でした。

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次に、ポール・ロバーツ『「衝動」に支配される世界』(ダイヤモンド) です。著者はジャーナリストで、印象としてはかなりリベラルなジャーナリストではないでしょうか。私の知っている範囲では、ナオミ・キャンベルなどの考え方に近い印象です。原書は昨年2014年の出版で、原題は The Impulse Society、邦訳のタイトルも準拠しているようです。本文にも「インパルス・ソサイエティ」とそのままの言葉で何度も出てきたりします。タイトルから見て、7月18日付けの読書感想文で取り上げたベンジャミン R. バーバー『消費が社会を滅ぼす?!』のように私は受け止めていて、「欲しいもの」と「必要なもの」の分離、あるいは、「爬虫類脳」に従った消費行動、といった内容も含まれていますが、より幅広い指摘もあります。すなわち、生産性の向上とともに経済社会は豊かになってきたんですが、市場に直結することにより短期的な視野の行動が主流になったり、効率一辺倒の思考パターンや経済の金融化などです。すべてを経済的な効率性で測ることに対する反発は当然に理解しますが、例えば、労働組合運動の退潮などに原因を見出そうとする著者の主張には歴史的な不可逆性というムリがありそうな気がします。私は読んでいないんですが、少し前に流行った『里山資本主義』という本がありました。本書も同じような観点で昔を懐かしんでいるだけで、ほとんど何の解決にもならないような気がしてなりません。

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次に、茂木誠『世界史で学べ! 地政学』(祥伝社) です。著者は駿台予備校の世界史の講師だそうですが、我が家の上の倅は世界史を取ってなくて知らなかったようです。それはともかく、マハン流のシーパワーとマッキンダー流のランドパワーを対比させて地政学を世界史から説き起こすという意味で、割合とオーソドックスな見方を示しているような気がしますが、もちろん、地政学ですからナショナリスト的な見方であることはいうまでもありません。中東を分割したサイクス・ピコ協定なんぞは、確かに、高校の世界史で習って以来の登場かもしれません。読者として想定されているグループが不明なんですが、大学受験生ということでもないでしょうし、その筋の専門家には物足りなさそうな気もする一方で、私のような専門外の人間にはそこそこ勉強になるのかもしれません。専門外の私は、中国では宦官がシーパワー派で科挙に合格した完了がランドパワー派だったとは知りませんでした。本書では現象面に現れる事実を淡々と書き連ねており、まさに大学受験に必要な社会科の授業というカンジで、逆にいうと、個々の事実に共通する法則性のようなものは解明しようとすらしていません。すなわち、ニュートン的なエピソードであれば、リンゴが落ちるという事実がいっぱい記述されていながら、万有引力の法則には到達していません。でも、地政学というのは融通無碍で、そんなものかもしれないと考えないでもありません。

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最後に、島田裕巳『戦後日本の宗教史』(筑摩選書) です。著者は私の専門外でよく知らないんですが、宗教学者・作家と本書では紹介されていますが、p.240 には一時山岸会に所属していた旨の記述もあります。なお、本書のタイムスパンは戦後ですから1945年から50年間、1995年までです。どうして最近の20年を対象に含めなかったのかは不明です。ですから、幸福の科学などは出てきません。1995年3月のオウム真理教による地下鉄サリン事件で終わっています。宗教史を紐解く視点は3つあり、副題にもなっていますが、天皇制・祖先崇拝・新宗教の3点です。ただし、祖先崇拝については柳田國男の業績などを援用しているものの、私には従来から純粋には日本的とは言い切れない要素、すなわち、儒教的な要素を含んでいるんではないかとやや批判的な見方もあるかもしれません。特に、新宗教では創価学会に多くのスペースが費やされています。教団としての規模や政党結成の動きなどから当然かも知れません。なお、私の宗教観について簡単に述べると、宗教とは非合理的なものであり、現世に関する問題解決に用いるのは避けた方がいいと考えています。我が信ずる一向宗=浄土真宗は死後の解脱、すなわち、極楽浄土への往生だけを約束しています。それに対して、創価学会=公明党はやや現世利益の実現を強調し過ぎて、政治的な圧力団体となっているんではないかと疑問を持っています。ただ、天皇制については国家神道都の関係は時間の経過とともに薄れつつあるような気もします。神道とは、ほとんど宗教的な教義を持たないという意味で非常にまれな宗教ですし、さすがに戦前的な国家神道に逆戻りする恐れは小さいと感じています。本書では宗教史を対象としている一方で、宗教の教義に関する分析がほとんどなくて、少し物足りない思いをする読者がいるかもしれません。

実は、村上春樹『職業としての作家』を買い求めました。何となくまだ読んでいません。今年のノーベル文学賞は誰に輝くんでしょうか?

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2015年9月25日 (金)

マイナスに転じた消費者物価上昇率は日銀のインフレ目標と整合的か?

本日、総務総統計局から消費者物価指数 (CPI) が、また、日銀から企業向けサービス価格指数 (SPPI) が、それぞれ公表されています。いずれも8月の統計です。ヘッドラインCPIの前年同月比上昇率は+0.2%、生鮮食品を除くコアCPI上昇率は▲0.1%と、国際商品市況における石油価格の下落に伴って、上昇率が大きく鈍化しています。ただ、ヘッドラインのSPPI上昇率は+0.7%とやや上昇幅を拡大しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

全国消費者物価、8月は2年4カ月ぶり下落 市場予想と同水準
総務省が25日に発表した8月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除いたコアCPIが103.4となり、前年同月比で0.1%下落した。前年比の下落は13年4月以来、2年4カ月ぶりとなった。原油価格の下落を受け電気代やガソリン価格が下がったことが主な要因。QUICKがまとめた市場予想の中央値(0.1%下落)とは同水準だった。
もっとも、菓子類の値上げや訪日外国人の増加による宿泊料の上昇などは物価を下支えした。食料・エネルギーを除く「コアコアCPI」は0.8%上昇の101.5となり、7月(0.6%上昇)から上げ幅が拡大した。総務省は「エネルギー価格下落の影響を除くと、物価の上昇基調は続いている」との見方を示した。天候不順でキャベツなどの野菜が値上がりしたこともあり、生鮮食品を含む総合指数も0.2%上昇した。
生鮮食品を除いた品目別では上昇が339、下落が131、横ばいが54だった。7月から上昇、下落ともに品目数がやや減り、横ばいが増えた。
先行指標となる9月の東京都区部のCPI(中旬速報値、10年=100)は、生鮮食品を除く総合が101.9と、0.2%下落した。原油安の影響で下げ幅は8月(0.1%下落)から拡大した。一方、都区部のコアコアCPIは0.6%上昇し、上昇基調が続いた。
8月の企業向けサービス価格、前年比0.7%上昇 リースや広告が値上がり
日銀が25日発表した8月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は102.9で、前年同月比0.7%上昇した。前年比でプラスになるのは26カ月連続。機械リースやテレビ広告などが値上がりした。前年比の伸び率は7月から0.1ポイント拡大した。前月比では0.2%下落だった。
価格が上昇した品目は65、下落した品目は43だった。上昇と下落の品目数の差は22で、7月確報の28から縮小した。品目数で上昇が下落を上回るのは23カ月連続だった。
品目別に見ると、産業機械や電子計算機関連リースが上昇した。企業によるリース料率の引き上げなどが影響した。テレビや新聞の広告料も値上がりした。大型のスポーツ特番が多かったため、番組枠を指定して出稿する広告が増えたとみられる。ホテル宿泊サービス料金も前年比で上昇基調を維持した。円安による日本人の国内旅行シフトや、外国人観光客の増加が寄与した。
大きく下落したのは、外航貨物輸送の料金だった。中国などによる在庫の積み増しが一服し、原油タンカーが値下がりした。割引サービスの導入で、国内航空旅客輸送の料金も下落した。日銀は「中国など海外経済が国内の企業向けサービス価格に与える影響を引き続き注視していく」(調査統計局)とした。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など企業間で取引されるサービスの価格水準を示す。

いずれも網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、いつもの消費者物価上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが9月中旬値です。いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミューに異なっている可能性があります。

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上のグラフの最近数か月ほどをよく見ると、棒グラフのうちの黄色いエネルギー寄与度がマイナス幅を拡大している一方で、水色のエネルギーと食料を除くその他の寄与度がプラス幅を拡大しています。青い折れ線のコアCPI上昇率が低迷して、とうとう8月CPIからマイナスに転じた一方で、赤い折れ線のコアコアCPI、すなわち、エネルギーと食料を除くCPI上昇率はまだ決して高くないもののプラス幅を拡大しています。これらを総合して、国際商品市況における石油価格の下落の寄与の方が大きく、コアCPI上昇率は2年4か月振りにマイナスを記録しています。また、物価に大きな影響を及ぼす賃金については、グラフは示しませんが、毎月勤労統計の7月確報が本日公表され、速報段階よりも実質賃金の前年同月比上昇率が+0.2%ポイント上方修正され、+0.5%となっています。日銀は物価の上昇基調に変化はないとし、来年2016年前半にはインフレ目標の2%に達するシナリオを堅持しているようですが、物価の粘着性を考慮すれば、半年余りで現状のマイナスのコアCPI上昇率から+2%まで大きく上昇率が引き上げられるとは考えがたく、何らかの追加緩和が実施される可能性が十分あると私は受け止めています。他方で、先週の公開市場委員会(FOMC)において、米国連邦準備制度理事会(FED)は利上げを見送りました。日銀としてはイエレン議長が年内と繰り返し表明している米国の利上げのインパクトを見極めつつ、追加緩和を模索することとなり、ややタイミングとしては追加緩和も後送りされた気がします。

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続いて、企業向けサービス物価上昇率のグラフは上の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしています。ただし、SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。財貨のウェイトの高く石油価格動向の影響が強く表れがちなPPI上昇率よりも、SPPIは人件費の影響を受けやすいと考えられ、人手不足の影響もあって足元でサービス物価は上昇率を高めています。上のグラフからも、青い折れ線のPPI上昇率が右肩下がりのマイナス幅拡大基調なのに対して、赤い折れ線のSPPI上昇率はここ2-3か月で少し上昇幅を拡大しているのが見て取れます。8月統計では、リース、宿泊サービス、テレビ広告などのプラス寄与が高まっています。

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2015年9月24日 (木)

最下位チームの引退記念試合に花を添えて阪神の首位が遠のく!!

  HE
阪  神000002000 2121
中  日04000000x 490

私はラッキーセブン7回オモテの新井選手のゲッツーを見て風呂に入り始め、試合を最後まで観戦するのを拒否したんですが、案の定、阪神は負けました。中日の引退選手に気を使って花を添えた分、阪神が首位から遠くなってしまいました。中村GMも草葉の陰で嘆いていらっしゃることと思います。でも、広島も付き合いよく負け続けてくれていますので、2.5ゲーム差は変わりありません。今や、当面の敵は上位のヤクルトや巨人ではなく、CS争いの広島です。明日からの3連戦でひとつ勝てば何とかAクラスをキープできそうな気もします。

明日からの広島戦は1勝目指して、
がんばれタイガース!

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ウェザーニューズによる紅葉の見ごろやいかに?

かなり旧聞に属する話題ですが、9月14日付けでウェザーニューズから全国各地の紅葉見ごろ予想が発表されています。北日本の山沿いほど見ごろが早く、東日本・西日本の山沿いは平年並みで、平野部は平年よりやや遅めとの見込みだそうです。もみじといちょうの見ごろマップは以下の通りです。東京でいえば、高尾山のもみじは11月半ばころ、神宮外苑のいちょうは11月下旬ころ、といった予想のようです。それにしても、東京都のシンボルのいちょうでも昭和記念公園と神宮外苑では見ごろが2週間も違うんですね!!

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何となく、シルバーウィークのお休み気分の抜けない記事だったかもしれません。

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2015年9月23日 (水)

またまた巨人に負けて12連戦前半を1勝5敗と大きく失速し阪神は優勝戦線から脱落か!!

  HE
阪  神001000001 260
読  売100000101x 390

今日も、巨人にサヨナラ負けでした。この12連戦は1勝5敗と勝負どころで負けまくって、ほぼ阪神は終戦な気がします。先発メッセンジャー投手はよく投げましたし、昨日までの試合を見る限り、リリーフ陣も勝利の方程式の安藤投手・福原投手などは疲労でヘトヘトのように見受けます。今日は呉投手も失点してサヨナラ負けを喫しました。でも、敗戦は打てない打線の責任です。急死された中村勝広GMも浮かばれないような気がしてなりません。せめて、次の中日戦と広島3連戦にがんばって、クライマックス・シリーズの出場くらいは何とかして欲しいものです。楽天の大久保監督の潔さを見ていると、万が一にも阪神がBクラスなら責任問題が生じる可能性が大きいと覚悟すべきです。

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明日の中日戦は、
がんばれタイガース!

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シルバーウィークに『日本沈没』第1部と第2部を読む!

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どうということもないんですが、昨日の記事にも書いた通り、お休みはプール、読書、野球観戦で過ごしているところ、『日本沈没』を昨晩までに読み終えました。第1部も第2部も読んだ記憶があります。しかし、第1部は出版されたばかりのころ、私は中学生ではなかったかと思います。素晴らしい構成力なんですが、大人になってから第2部で日本をメガフロートで復活させる際、米国と同盟して中国を牽制するというのは、戦後日本の吉田ドクトリンそのままではないか、と気にかかったところです。

ところで、本日の東京ドームでの巨人・阪神戦やいかに?

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2015年9月22日 (火)

巨人にも負けて勝負の9月で大きく失速した阪神はそろそろ終戦が近づいたか!!

  HE
阪  神000000000 040
読  売00000111x 370

今日も、巨人相手になすすべもなく4安打無得点のボロ負けでした。9月に入って、特にこの12連戦は1勝4敗と勝負どころで負けまくって、阪神の終戦が近づいた気がします。今日の試合では、4番福留外野手の前にランナーなく、ランナー出れば大和選手が凡退するという繰返しの攻撃でした。先発岩崎投手はよく投げましたし、敗戦投手にしてしまうのは忍びないんですが、打線の責任です。ついこの間まで首位だったのが冗談に思えるほどの失速です。

明日は意地を見せるべく、
がんばれタイガース!

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ヒマにしているシルバー・ウィークに Facebook の友達を整理する!

いろいろとあって、特に出かけもしないシルバー・ウィークが過ぎようとしております。
基本的に通常の週末とかわりなく、読書とプールと野球観戦に明け暮れており、阪神の戦績が振るわないので、リーグ優勝が遠のいた気がしていたりします。というヒマなだけの長い週末と同じシルバー・ウィークに、読書は『日本沈没』の第1部と第2部を読んでいます。そして、決心して、Facebookの友達を整理しました。その昔のmixiをはじめとして、このテのSNSでは私の場合はオフラインで顔見知りしか登録しておらず、しかも、私から友達登録をお願いしたことはなく、すべて先方からのリクエストにより登録したもので、今まで大学と高校の友人を合わせて数人、友達登録していました。実は、先週、私の誕生日でFacebookに連動させているブログに記事をアップしたり、あるいは、Facebook自身に友達の誕生日を知らせる機能もあるんですが、私の誕生日の反応があったのは1人だけで、他の人についてはホントにとても親しかった2人を例外としてバッサリと友達登録を解除しました。友達は3人に減ってしまいました。ついでながら、解除した人たちは、それぞれ数十人から3桁のお友達がいらっしゃるようなので、その他大勢の私がLikeをクリックしなくてもいいんではないかと推測しています。でも、FacebookのザッカバーグCEOによれば、Dislikeボタンを設置するらしいので、それまで待ってもよかったかも…と思い始めていたりします。いつもながら、ヒマな休暇です。

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2015年9月21日 (月)

藤浪投手先発の必勝体制にもかかわらず継投に失敗して自力優勝消滅!!

  HE
ヤクルト001100300 560
阪  神001100000 255

昨夜の勝利はまぐれだったのかと疑問が出るような試合運びで、必勝体制の藤浪投手の先発にもかかわらず継投に失敗して、自力優勝消滅です。ともに一死満塁だった6回ウラと7回オモテの攻撃が明暗を分けました。自力優勝は勝負のアヤですぐにも復活する可能性はありますが、明日から巨人戦と広島戦が控えていて、よほどがんばらないと優勝の可能性がどんどん低下しそうな気がして怖いです。

失速の9月にならないように明日は東京ドームで、
がんばれタイガース!

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国勢調査に回答する!!

今年2015年は国勢調査の年です。5年前の2010年国勢調査の年には、私は統計局に勤務していましたので、特に意味ないながら何となく、ブログで取り上げるのを憚った記憶があります。5年前は東京都だけがオンライン調査の対象だったと記憶していますが、今年はスマート国勢調査!と称して、全国的にオンライン調査を展開しているようです。
我が家では昨夜に下の倅を私が監督して、オンラインで回答を済ませました。大学生の上の倅は土曜日曜と、半年前に卒業したばかりの高校の文化祭に行って不在でした。国勢調査はとても大切な統計調査です。私はもう統計局勤務ではないんですが、このブログをご覧のみなさんも、ご協力お願いします。

野球が始まっていますが、序盤に藤浪投手が失点してしまいました。
がんばれタイガース!

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2015年9月20日 (日)

序盤から打線が爆発して岩田投手が熱投し首位攻防戦第1戦を爆勝!!

  HE
ヤクルト000000010 143
阪  神32001002x 8131

横浜戦に連敗し、今日負けるとヤクルトにマジックが出るという瀬戸際ながら、序盤から2番今成三塁手が実に機能して打線が爆発した上、先発岩田投手もテンポよく投げ切り、ヤクルトとの首位攻防戦第1戦に爆勝です。12連戦真っ最中で、リリーフ陣を休ませたピッチングも頼もしい限りでした。打線も今成選手だけでなく、クリンナップの外国人選手も打ち出しましたので、大いに期待が持てます。

明日は藤浪投手を押し立てて、
がんばれタイガース!

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2015年9月19日 (土)

12連戦最初の横浜戦に連敗して阪神のリーグ優勝はかなり遠のいたか?

  HE
阪  神102010100 5111
横  浜01310101x 7131

いよいよ勝負の9月の12連戦が昨夜から始まっているですが、今日は能見投手が筒香選手のスリーランに沈み、横浜に逆転されて連敗でした。この12連戦冒頭の連敗で、星勘定とか何とかでなく、投打ともチームの状態から見て、かなり優勝が遠のいた気がします。勝負の9月は転じて、例年通りのいつもの失速の9月に終わってしまうんでしょうか?

甲子園に戻って明日のヤクルト戦は、
がんばれタイガース!

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今週の読書は福田先生の『「失われた20年」を超えて』ほか

先週から今週にかけて、図書館の予約の都合にもよりますが、かなり大量に回って来て、私の方でも着実にたくさん読みました。先週よりは今週の方がハズレが少なかった気がします。でも、読んだボリュームが大きいので、なるべく簡単に紹介しておきたいと思います。でも、書き進んでいるうちに、やや気分が高まって持論を展開し長くなったのもあります。反省です。

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まず、福田慎一『「失われた20年」を超えて』(NTT出版) です。著者は東大経済学部の教授です。マクロ経済学がご専門だと記憶しています。タイトルとなっている「失われた20年」を1990年代の10年と2000年代の10年の前後に分割し、その上で、クルーグマン教授の説のような需要サイドの需要不足とともにプレスコット教授と林教授の論文のような供給サイドの生産性にスポットを当てて、「少なすぎて遅すぎる」 too little, too late をキーワードに政府と企業の経済主体の行動を分析しています。ただし、さすがに1冊の経済書で20年に及ぶ日本経済の停滞を分析し尽くすのはムリがあり、やや中途半端に終わっているきらいは否めません。特に、政策、中でも金融政策の分析については不十分ではないかと私は考えています。思い起こせば、私は1991年春に日本を発って南米チリの大使館に赴任し、そのころはまだバブルが弾けたという認識はなく、遠く地球の反対側から実感なく日本のバブル崩壊を眺めていたんですが、3年を経て1994年に帰国してまるで焼け野原みたいな日本経済を見てびっくりした記憶があります。私の周囲の研究職公務員にはバブル経済のころでも何のいい目も見なかった、という人が少なくないんですが、私の場合、バブルのころが20代後半から30過ぎくらいの遊び盛りに当たっていて、それなりに楽しく過ごした記憶があり、そのために結婚が遅れたと自覚していたりします。帰国して経済対策などの仕事をしていましたが、「山高ければ、谷深し、さらに、谷長し」を実感してしまいました。いまだにバブル崩壊後の日本経済の低迷を解明する決定打がないのは不思議な気もしますが、逆に、それだけ多くの複雑な要因が絡んでいるのだろうと理解しています。

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次に、エリック・ブリニョルフソン/アンドリュー・マカフィー『ザ・セカンド・マシン・エイジ』(日経BP社) です。著者の2人はマサチューセッツ工科大学(MIT)の経営学やビジネスに関する研究者です。現在のコンピュータやインターネットなどのデジタル技術の大きな進歩の状態を本書のタイトルとして「セカンド・マシン・エイジ」が始まったと定義しており、では、「ファースト・マシン・エイジ」はというと、私の従来からの歴史観にピッタリなんですが、18世紀の産業革命から始まるとしています。そして、産業革命の開始期と現在のデジタル技術革新の始まりの2時点を変曲点と位置付けて、人類史のグラフの傾きが急速に変化する点と本書では考えています。これも私の進歩史観にピッタリで、私は基本的に歴史は微分方程式に沿って進んでおり、初期値が決まればアカシック・レコードのように遠い未来まで決定されかねないものの、時折、確率論的なシフトが生ずる、と考えています。そして、歴史が進む方向は経済学的に考えれば、いろんな財貨やサービスのうちで希少性の高いものの希少性が減ずる方向だと私は考えています。マイクロにはこの見方はかなり正しいんですが、マクロには必ずしもそうなっていません。ということで、本書の中身は5月30日付けの読書感想文で取り上げたマーティン・フォード『テクノロジーが雇用の75%を奪う』をもっと楽観的にしたようなカンジです。もちろん、悲観論も展開しており、『テクノロジーが雇用の75%を奪う』では雇用そのものが機械に取って代わられる、という観点だったんですが、本書では「セカンド・マシン」を使いこなせたり、あるいは、「セカンド・マシン」では不可能なスキルを持った人、あるいは、スーパースターとそうでないその他大勢の一般ピープルとの間で格差が広がる、という観点で悲観論を展開しています。私がいつも不思議に思うのは、マルクス的あるいはケインズ的な観点で、生産性が高まれば労働時間が短縮される、という論点は誰も支持しないんでしょうか?

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次に、宮崎康二『シェアリング・エコノミー』(日本経済新聞出版社) です。著者は驚くべきことに、この4月に大学を卒業したばかりの章啓会社の新入社員だそうです。深尾先生のゼミだったんでしょうか。それはともかく、P2P宿泊サービスのAirbnbやライドシェアのUberなどを題材にして、所有してあるいは占有してサービスの提供を受けるのではなく、タイトル通りにシェアしつつサービスの提供を受ける新たな形態について紹介しています。ほかにも、カーシェアとか、クラウド・ソーシングなどもこういった範疇に入ります。遊休しているリソースを活用して稼働率を上げることにより、経済社会全体の生産力を向上させるということにつながる可能性が大いにあり、インターネットの普及や認証制度の発達などのテクノロジーの進化により、こういったサービス提供が可能になり、新たなビジネス・チャンスが生まれているものと私は受け止めていますが、あえて、あえてなんですが、批判的なポイントを2つだけ上げると、ひとつは未熟練労働への脅威となる可能性、もうひとつはサービス提供者と受給者双方の質の確認の問題です。まず、シェアされるのは、ありていにいえば、シロートでも容易に提供可能なサービスであり、弁護士活動とか医療の提供などではあり得ません。ですから、低スキル雇用への何らかの否定的な影響が生じる可能性、すなわち、低スキル雇用における失業の増加、あるいは、賃金低下の圧力となる可能性が、あくまで可能性ながら、あり得るんではないかと私は憂慮しています。そうであれば格差の拡大につながりかねません。また、提供されるサービスの質、あるいは逆から見て、サービスを受ける購入者の質については、著者はあくまで市場による規律付けを重視しているようですが、かなりナイーブに過ぎる気がします。保険でカバーされる部分もあるでしょうが、生命の危険が及ぶ場合をどう考えるかなど、我が国経済社会を前提にすれば、解決すべき課題はまだまだ多いと覚悟すべきでしょう。

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次に、NHKスペシャル取材班『老後破産』(新潮社) です。昨年2014年9月に放送された番組の取材結果を取りまとめており、タイトル通り、老齢世代の生活不安を取り上げています。全体のトーンとして、年金の増額や生活保護の拡充などを訴えようとしているようです。高齢世代の人口や投票率の高さなどを基礎とするシルバー・デモクラシーとともに、こういったマディアの活用により着実に高齢者に偏った社会保障政策への方向付けがなされんとしているように見えますが、私には大いに疑問です。逆に、子供達、就学前や義務教育段階の子供達への社会保障こそ充実させるべきと私は考えています。まず第1に、子供と老齢者ではいわゆる「自己責任」の重さが違います。子供には何の自己責任も問えませんが、高齢者はそれなりの自己責任を負うべきと私は考えます。本書でも、勤務先の会社が年金保険料の支払いを怠っていたために無年金となった例が散見されますが、最初の取材先では「多くを語ろうとしない」で済ませているように、パーソナル・ヒストリーの中で解決できる部分まで公的な援助に頼ろうとしているのであれば、もしそうなのであれば、決して好ましくないと考えるべきです。現在の日本の高齢者は、特に、高度成長期という日本の歴史上でも希な黄金時代を生きて来たんですから、そういった高齢者に対して、バブル崩壊後の「失われた20年」しか知らない世代に負担を求めて、あるいは、さらにその先の世代に負担を先送りして、高齢者に財政リソースを分配するのが、果たして社会的に許容されるかどうかは疑問が残り、少なくとも、国民的な議論がなされるべきではないかとも思います。本書でも、昔の良かった時代を懐かしむ高齢者の声が収録されていますが、そんな時代の再現が可能だとは私にはとても思えません。また、米国では行動経済分析のセイラー教授などを典型として貯蓄推進に関する研究が少なくないんですが、日本では少し前までマクロの貯蓄率が桁外れに高かったためか、貯蓄に関する経済学的な研究の蓄積が決して厚くなく、老後に必要な資金を貯蓄する観点をまったく取材で追っていないにもかかわらず、あとがきでチラリと触れるだけというのは不自然に映ります。最後に、組織化されていないので目に見えにくいながら、高齢者世代は最大の圧力団体と化しており、シルバー・デモクラシーはとても強力なパワーとなっていなすから、メディアはこのような強者の提灯持ちをするべきではありません。本当に光を当てるべき弱者は誰かを冷静に見極める視点が必要です。

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次に、ジョーダン・エレンバーグ『データを正しく見るための数学的思考』(日経BP社) です。英語の原題は How Not to Be Wrong: The Power of Mathematical Thinking となっており、2014年昨年の出版です。著者は米国ウィスコンシン大学の数学の研究者であるとともに、数学に関するサイエンス・ライターのような仕事もしているようです。表題からも理解できる通り、数学的な思考でデータを正しく理解する目的ですから、確率や統計に重点が置かれています。そして、そういった観点で数学的な思考が要求されるわけですから、実学としては経済学と医学が中心となります。統計的な数字を線形で見る誤りを正そうという議論から始まって、統計的な有意性の検定、あるいは、平均への回帰や世論の見方と社会的な選択理論、などなどです。ただ、私は第3部の期待値などで展開されている宝くじビジネスについては、誠に残念ながら、サッパリ理解できませんでした。なお、経済学的な観点から、第12章で展開されている貨幣と効用の関係は線形と考えていますので付け加えます。それから、本書との関係で経済学でも重要な観点として、カーネマン・トヴェルスキーのプロスペクト理論(p.436)、推移率がループするために社会的厚生関数が成立しないアローの不可能性定理(p.626)なども取り上げられており、エコノミストとしては十分と考えていますが、確率論のトピックとしてはモンティ・ホール問題を取り上げて欲しかった気がしないでもありません。

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次に、マーク・マゾワー『国際協調の先駆者たち』(NTT出版) です。著者は英国出身でオックスフォード大学で博士号を取得し、現在はニューヨークにあるコロンビア大学の歴史学教授を務めています。本書の原書は2012年の出版であり、19世紀初めのナポレオン戦争終了後のウィーン体制から200年にわたる外交や国際協調の歴史を概観しています。戦争の防止と平和の構築、さらに国際秩序の維持などにおいて国際協調、本書の構成に従えば、第Ⅰ部では、宗教的=キリスト教に基づく協調、国際法の構築による協調、さらに、国際機関の創設による協調などを分析しています。その上で、第Ⅱ部では、世界の警察官たる米国による世界統治を論じています。第Ⅱ部の最後では狭義の安全保障や外交にとどまらず、私の専門分野である途上国の開発問題まで踏み込んでいます。

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次に、八木久美子『慈悲深き神の食卓』(東京外国語大学出版会) です。著者は東京外語大学のイスラム教などの宗教学の研究者です。主としてエジプトのイスラム教の食について紹介しています。まあ、私がチリにいた20年前の感じたんですが、日本において情報の少ないカテゴリーだけに、事実を淡々と記述するだけでそれなりに受け入れられる素地がある気がするんですが、それにしても、やや偏った印象を持ちました。私も今世紀初頭の3年間にインドネシアの首都ジャカルタに3年間の現地生活を家族とともに送りましたが、本書ではあくまでエジプトのイスラム教徒の食を取り上げており、余りに当たり前かもしれませんが、すべてのイスラム教の食に普遍的に関して取り上げているわけではなく、著者の体験という極めて狭い範囲の事実に基づく記述である、という点は十分に留意して読み進むべきだという気がします。特に、ハラルについては中東とマレーシア・インドネシアといった東南アジアのイスラム教とではかなり大きな違いがあることは認識すべきかと考えます。宗教的な側面を取り上げており、私自身は宗教とは非合理的なものであると認識していますが、著者はそれをいかにして合理的に解釈すべきかと腐心している様子が目に浮かびます。非合理的な宗教はそのままに理解すべきではないでしょうか。また、豚肉や豚については、本書ではタイトル通りに食の観点からのみ取り上げられていますが、私の実感では豚肉を食べることはもちろんですが、豚や豚肉を手で触ったり、あるいは、極端な場合、視界に入ることさえ嫌うイスラム教徒が少なくないような印象を持っています。ご参考まで。

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次に、上田岳弘『太陽・惑星』と『私の恋人』(新潮社) です。今週の読書ではこれらだけがフィクションの小説です。『太陽・惑星』には新潮社新人賞を受賞した「太陽」と芥川賞候補に上げられた「惑星」が収録されており、『私の恋人』も「太陽」と「惑星」とほぼ同じくらいのボリュームの中編といえ、三島賞を受賞しています。3篇とも『新潮』に収録されています。なお、単行本としては、『太陽・惑星』は昨年2014年11月の出版、『私の恋人』は今年2015年6月の出版です。私の友人の元文学少女は『太陽・惑星』を読んでとても感激し、とんでもない新人が出てきたと大騒ぎしていましたが、この夏に『私の恋人』が出版された段階で私も前作までさかのぼって読んでみました。「太陽」と「惑星」はほぼ対をなしているので、この単行本の出版は編集者が作品を正しく読めている証拠だと思います。でも、かなり難解な小説であることは確かです。私は3篇の中編の中では「太陽」をもっとも高く評価しています。他にもそういった読書子は多いと思います。例えば、日経新聞の書評で、「ひょっとしたら、いま読んでいる小説は傑作じゃないのか! と、読んでいる最中に興奮してくる作品にはめったにお目にかからない。」と言わしめただけの内容はあります。おそらく、これらの作品はそれほど多くの読者にはアピールしないでしょうから、図書館ですぐに借りられるんではないかと思います。今日のエントリーである今週の読書の中では一番のオススメです。

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次に、中田安彦『ネット世論が日本を滅ぼす』(ベスト新書) です。いろいろと書いていますが、著者が訴えんとしてているのは、ネット世論は自分が得するようなポジショントークが多くて、しかも、右翼にせよ左翼にせよ極端に走るので、決して日本をよくするとは思えない、ということなんだろうと思います。私も半分賛成で半分疑問です。疑問点のみ記すと、まず、著者は明記していませんが、極端に走る前提であるネットの匿名性については、前の『シェアリング・エコノミー』でも論じられていましたが、まじめなネット・コンテンツでは崩れつつあると考えるべきです。さらに、本書のタイトル自身が「日本を滅ぼす」という極端でキャッチーな表現をしていますし、本書の中でもこの本はポジション・トークではないことを強調しているほどであり、本書の主張はそのまま著者に跳ね返りかねないという意味で、いわゆる「天に唾する」と称される極めて怪しげな内容であることは自覚しつつ読み進むべきです。もちろん、それ相応に正しい見方を示している部分も少なくありません。

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最後に、藤田孝典『下流老人』(朝日新書) です。本書も基本ラインは『老後破産』と同じで、高齢者の老後の生活を金銭面で分析して、老後の資金が足りないことを強調しています。同じような内容なんですが、『老後破産』よりも数段出来がいいと感じました。統計として押さえておくべき数字は把握しているし、制度上の問題点もよく理解されていると感じます。その上で、結局、同じ疑問なんですが、現在の日本の高齢者は、特に、高度成長期という日本の歴史上でも希な黄金時代を生きて来たんですから、そういった高齢者に対して、バブル崩壊後の「失われた20年」しか知らない世代に負担を求めて、あるいは、さらにその先の世代に負担を先送りして、高齢者に財政リソースを分配するのが、果たして社会的に許容されるかどうかは疑問が残り、少なくとも、国民的な議論がなされるべきではないかと思います。また、第4章 「努力論」「自己責任論」があたなを殺す日、は十分に説得力があります。ただ、この第4章は著者のポジション・トークなんでしょうが、社会保障の対象となる人々にはすべて当てはまることを忘れるべきではありません。高齢者だけがこの第4章の議論の対象となっているわけではなく、子供やワーキング・プアの若者も同じく社会保障の網から漏らされるべきではありません。その上で、『老後破産』と同じことを書いても仕方がないので、別の観点から3点だけ指摘すると、第1に、社会保障の緊急性としては、私は子供や若者に軍配を上げるべきではないかと考えています。もちろん、余命の問題はありますが、高齢者は10年後も高齢者である一方で、小学生は10年後は義務教育期間を過ぎているおそれが高く、適切な時期に教育や訓練を受ける必要があります。第2に、年金額の不満はあるのかもしれませんが、議論が不透明です。頭の体操で、仮定的な議論かもしれませんが、例えば、年金がどれくらいあれば老後の生活に十分なのか、誰か試算でもしている人の例はないんでしょうか。そうでなければ、いくら年金を増額しても一定の不満は残る可能性があり不毛の議論に陥るかもしれません。第3に、社会保障制度には我が国の財政制度の問題が凝縮されています。すなわち、北欧諸国のように、徴税で集めた資金を社会保障で国民に還元する「福祉国家」ではなく、我が国は公共事業で還元する「土建国家」となっていますので、社会保障の機能に不満が残ることとなります。その上、本書で見指摘されているように、企業が賃上げをせずにキャッシュを溜め込めばどうしようもありません。この根本的な部分にメスを入れなければ、年金を増額するだけでは問題の解決にならないような気もします。最後に、『老後破産』ではNHKという天下のメディアが強者たる高齢者の提灯持ちをするべきではないと指摘しましたが、本書では著者のポジションが明確であり、その点では好感が持てます。でも、繰り返しになりますが、著者が指摘する我が国社会保障制度の問題点、さらに社会的な雰囲気とでもいうべき第4章の議論は、高齢者向けの社会保障だけに当てはまるわけではありません。子供や母子家庭、ワーキング・プアの若者など、すべての社会保障対象者に恩恵が及ぶことを私は願っています。

本日取り上げた本のうち、最後の『下流老人』以外はいつもの通り図書館で借りて読んでいますが、『下流老人』だけはもらい受けました。今までも、何冊かご著者からご寄贈いただいた経験はあるんですが、私独特の「買う本」と「借りる本」のカテゴリ分けに加えて、極めて数は限られるながら、「もらう本」というのもあるのかもしれません。

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2015年9月18日 (金)

決定打もベンチワークもなく横浜に逆転負け!!

  HE
阪  神100000100 280
横  浜00000201x 360

相変わらず、横浜の6安打を上回る8安打を放ちながら、打線に決定打なく、ベンチに策なしで横浜に逆転負けでした。とても雰囲気の悪い負け方でしたので、明日が心配です。このあたりで優勝争いはもちろん、クライマックスからも脱落した印象のある横浜に連敗でもすると、この12連戦中に広島に入れ替わって3位転落ということにもなりかねません。

明日は、
がんばれタイガース!

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経済協力開発機構 (OECD)「中間経済見通し」Interim Economic Outlook やいかに?

昨日、経済協力開発機構(OECD)から「中間経済見通し」Interim Economic Outlook が公表されています。ヘッドラインとなる世界経済の成長率は、最近時点での中国をはじめとする新興国経済の低迷などの要因により、6月の「経済見通し」から2015年▲0.1%ポイント、2016年▲0.2%ポイントと、いずれも下方修正されています。まず、リポートから日本経済の現状と見通しを要約したパラグラフを引用すると以下の通りです。

Quarterly GDP growth in Japan has been erratic. Activity and employment appear to be on an improving path since the 2014 post-tax-hike contraction and the Bank of Japan's re-calibration of its monetary easing. On the other hand, inflationary pressure is virtually nil and tightening labour markets have yet to feed into the higher wages needed to sustain a stronger recovery in consumption and meet inflation objectives. Exports were growing solidly until recently, but despite further yen weakness they fell sharply in the second quarter.

要するに、4-6月期のGDP統計などから景気回復の強さに疑問が提起されており、消費の力強い回復や日銀のインフレ目標の達成にふさわしい賃金上昇にはつながっていないと主張しています。また、円安にもかかわらず4-6月期に輸出が落ち込んだとも指摘しています。今年の3月まで、このリポートは Interim Economic Outlook ではなく、Interim Economic Assessment と称されていたんですが、名称の変更があったようです。また、副題は Puzzles and uncertainties となっています。国際機関のリポートを取り上げるのは、私のこのブログの特徴のひとつですし、いくつかリポートからグラフを引用して簡単に紹介しておきたいと思います。まず、成長率見通しの総括表を引用すると以下の通りです。

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上の総括表を見れば明らかなんですが、我が国成長率の下方修正幅は世界経済全体とまったく同じになっています。他方、米国とユーロ圏欧州の成長率の修正幅を見ると、今年2015年が上方修正された上で、来年2016年が下方修正となっています。ただし、修正幅ではなく成長率そのものに目を転ずると、日米欧とも今年2015年から来年2016年にかけて、緩やかながら成長が加速するシナリオが示されています。その上で、成長率の水準としては米国が最も高く、逆に、我が国が最も低くなっています。ユーロ圏欧州は日米の中間的な成長率水準です。

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昨夜のブログで少し触れた中国経済の影響の試算結果は上のグラフの通りです。中国の国内需要成長率が2年間にわたって▲2%ポイント下振れし、かつ、世界各国で株価が▲10%下落して+20ベーシス・ポイントの株価のリスク・プレミアムの上昇を仮定したNiGEMモデルの試算結果です。我が国なんかは、リポートにある "heavily exposed" の国らしく、欧米が▲0.25%ポイントほどのインパクトでとどまっているところ、日本の成長率への中国の影響は欧米の2倍くらい大きい、との結果が示されています。

最後に、米国の連邦準備制度理事会(FED)の公開市場委員会(FOMC)で利上げが見送られましたが、このリポートでは、"rates should need to rise only at a gradual pace. In this context, the timing of the first rate rise will make little difference to the outcome" と主張し、いつ開始するかの利上げのタイミングよりも、そのペースが緩やかであるように配慮すべき、と主張しています。

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2015年9月17日 (木)

貿易統計に見る輸出はこの先も減少が続くのか?

本日、財務省から8月の貿易統計が公表されています。ヘッドラインとなる輸出額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+3.1%増の5兆8815億円、輸入額は▲3.1%減の6兆4511億円、差引き貿易収支は▲5697億円の赤字でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易赤字、8月は5697億円 5カ月連続赤字、輸出数量は減少
財務省が17日発表した8月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5697億円の赤字だった。赤字幅は前年同月の9532億円から改善した。赤字幅はQUICKが事前にまとめた市場予想の中央値(6204億円)より小さかった。一方で、貿易赤字は5カ月連続で、赤字幅は7月の2684億円から拡大した。輸出の数量指数もマイナスだった。中国向けの自動車部品の輸出が減少した。米アップルが新型スマートフォン(スマホ)「iPhone6」を発売した昨年と比べると、スマホ部品の対中輸出が鈍い。欧州の高額な医薬品が医療費助成の対象になったことも赤字要因になった。
輸出額は3.1%増の5兆8815億円と、12カ月連続で増えた。米国向けの自動車輸出が好調だった。半面、輸出の数量指数は4.2%減と、2カ月連続で低下した。輸出額は円安が進んだことで増加したものの、数量指数は対米で7.7%減、中国で9.2%減と大幅に落ち込んだ。
輸入額は3.1%減の6兆4511億円だった。減少は8カ月連続。中東地域から原油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が減った。輸入の数量指数も0.7%下落した。

なかなかコンパクトに取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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8月の貿易統計は中国経済の停滞はもちろん、先進国経済にも停滞感が広がっていることを我が国の貿易の観点から再確認してしまった気がします。おおもとの原因は中国経済であることはかなり確度が高いと考えられるんですが、中国経済の低迷が国際商品市況における石油などの資源価格の低下をもたらして、ロシアなどの資源国経済の低迷につながり、最終的には先進国経済にも波及を見せているようです。ですから、ここしばらくこのブログでも主張している通り、貿易に関してはやや膠着した状態が続いて、我が国の貿易収支もゼロ近傍ないしやや赤字が続く可能性が高いと私は予想しています。ただし、季節調整していない原系列の統計で見ても、季節調整済みの系列で見ても、月次で一時▲1兆円を超えるような貿易赤字ほど大きな赤字には至らないのではないかと考えています。

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上のグラフはいつもの輸出の推移をプロットしています。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量汁宇都価格指数で寄与度分解しており、下のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同期比を並べてプロットしています。ただし、OECD先行指数は1か月のリードを取っています。円安による為替の価格効果はあるんでしょうが、上のグラフのうちの下のパネルの通り、先進国の景気もやや低迷気味の上に中国経済がここまで悪化すれば、価格効果を上回る所得効果により我が国の輸出が低迷しています。特に、中国経済の低迷の影響は輸出に限らず我が国に大きなインパクトを及ぼしているようです。すなわち、本日公表された経済協力開発機構(OECD)の「中間経済見通し」Interim Economic Outlook では p.5 に GDP growth impact of an adverse domestic demand shock in China と題するグラフがあり、中国の内需減少のインパクトが示されているんですが、米国やユーロ圏諸国に比べて、特に我が国への影響が大きいと試算されています。このリポートについては日を改めて取り上げる予定です。

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2015年9月16日 (水)

帝国データバンクの「日本企業に迫るチャイナリスクの脅威」やいかに?

やや旧聞に属する話題ながら、毎月の倒産集計を公表している帝国データバンクの8月の「全国企業倒産集計」が9月8日に公表されているんですが、「日本企業に迫るチャイナリスクの脅威」と題する別紙が付属しています。我が国をはじめとする世界の株式市場に乱高下をもたらしている中国経済のリスクが改めて認識されつつあるところ、倒産や倒産につながりかねない会計上のチャイナリスク限定ながら、とても興味深い実例をいくつか提供しているような気がします。

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まず、上のグラフは帝国データバンクから6月8日に発表された「第3回: 中国進出企業の実態調査」から中国進出企業数の推移を示しています。人件費の安さに着目した製造業が多くなっているのが見て取れます。
ということで、東証1部上場クラスでは、倒産や上場廃止などにつながりかねない会計上のチャイナリスクの実例として、4月30日に江守グループホールディングス(株) (元・東証1部) が、中国子会社における売掛債権の回収難から約462億円の特別損失を計上し債務超過に転落、東京地裁へ民事再生法の適用を申請した例、また、6月3日に(株) LIXILグループ (東証1部) が、中国で事業を展開する子会社の破産手続きに伴い、2015年3月期の業績予想を下方修正し、損失は最大662億円にのぼる可能性があると発表した例、などを上げ、表面化こそしていないものの、中国法人や現地法人からの未回収金が長期滞留している中小企業、人件費上昇などコスト増から採算確保が困難になっている中小企業、また、そうした状況を理由に事業の撤退を検討している中小企業は、水面下で多数存在することが予想され、中国向け債権管理の状況とともに処理のゆくえが注目される、と警告しています。
特にリポートでは、中小企業などにおいて、中国事業が倒産の要因となった主な事例として以下の5つのカテゴリーを取り上げています。第1に、コスト負担増による倒産です。中国国内における人件費高騰と人員定着率の悪化や工賃の上昇などが原因となった倒産です。第2に、資金回収難、条件変更による倒産です。仕入れ先である中国工場から入荷が大幅に遅れ、販売できなくなったほか、入金がずれ込んだことで資金繰りが悪化しての倒産です。第3に、中国政府による工場移転命令等の影響による倒産です。私にはまったく理解できないんですが、工場に公安が入ったり、中国政府より工場の移設を指示されたりして、結局、倒産に至るケースもあるらしいです。第4に、品質問題による倒産です。中国産冷凍餃子を原因とする薬物中毒事件の影響を受けた倒産も2社報告されています。最後、第5に、反日感情の高まりに伴う日本製品の不買行動、日本企業との取引縮小による倒産も上げられていますが、これについては実例は報告されていませんでした。

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2015年9月15日 (火)

ピュー・リサーチ・センターのアジア諸国の好感度に関する世論調査結果やいかに?

早く取り上げようと考えつつ、ついつい遅くなりましたが、9月2日に米国の世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから How Asia-Pacific Publics See Each Other and Their National Leaders と題するアジアの好感度に関する世論調査結果が公表されています。お互いの国についてどのように感じているかとともに、日本・中国・インドの指導者についての見方も明らかにされています。まず、ピュー・リサーチ・センターのサイトからリポートの最初のパラだけ引用すると以下の通りです。

How Asia-Pacific Publics See Each Other and Their National Leaders
The coming decades promise to be the Asian Century, when the most populous region, with some of the world's fastest growing economies, is likely to become the global nexus of commercial, cultural and geopolitical activity. For this reason, how people in the Asia-Pacific region, including Australia, see each other and their leaders is of growing importance.

「アジアの世紀」がやって来るということで、ピュー・リサーチ・センターのサイトからいくつが図表を引用しつつ、このアジア各国における世論調査結果について簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、国としてのイメージですが、日本、中国、インド、韓国の4国について、上のグラフの通りです。要するに、アジアの4国の中では、我が日本がもっとも好感を持たれている favorable 上に、嫌われている unfavorable 比率も一番低い、という結果が示されています。私は決してナショナリストではないんですが、他国や他人からどう見られているかを気にしがちな国民性もありますし、なかなか気分よく受け入れることができる調査結果ではないでしょうか。中国、インド、韓国がこの順で好感を持たれている favorable んですが、同時に、嫌われている unfavorable 比率も同じ順で高い、という結果になっています。やや不思議な気もしますが、関心が高い順なんだろうと私は受け止めています。また、グラフやテーブルはありませんが、ピュー・リサーチ・センターのリポートでは日本に対する好感は年代により差があり、若い人ほど日本に好意的、"there is a significant generation gap in views of Japan. Respondents ages 18 to 29 are more favorably disposed toward Japan than people ages 50 and older" と報告しています。

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次に、同じく国のイメージなんですが、from/to のあるイメージのよし悪しのテーブルは上の通りです。to に日本を置いて、我が国に対して好感を持っている比率が高いのは、マレーシア、ベトナム、フィリピン、オーストラリア、インドネシアの順となっており、逆に、好感の比率が低いのは中国や韓国となっています。同様に、from に日本を置いて、我が国の国民はインドに対してはそこそこ好感を持っているんですが、中国や韓国、特に中国に対して好感を持っている人の割合が極端に低くなっているのが見て取れます。なお、ピュー・リサーチ・センターのサイトには地図が示されており、国境紛争のある隣国同志は好感比率が低いことが明らかにされています。まあ、当然なんでしょう。上のテーブルでは、我が国と中国や韓国のほか、ベトナムと中国、インドとパキスタンなどが上げられます。ただ、パキスタンから見た韓国の好感度の低さについては不明です。

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最後に、国ではなく、各国指導者の好感度に関する調査結果は上のテーブルの通りです。なぜか、韓国の朴大統領が入っていないんですが、中国の習主席、日本の安倍総理、インドのモディ首相が対象となっています。傾向としては国の好感度とほぼ同じ結果なんですが、中国の習主席が安倍総理よりも好感度が高くなっています。でも、テーブルのタイトル通り、どの指導者もメディアンで見て過半数を制するところまでは達していないようです。

また、同じピュー・リサーチ・センターから9月9日付けで Americans' Concerns about China: Economics, Cyberattacks, Human Rights Top the List と題する米中2国に絞った世論調査結果も明らかにされています。タイトルを読めば分かると思いますが、米国は中国に関して経済、サイバー攻撃、人権の3点にプライオリティを置いて対応すべきと米国民は考えているようです。

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2015年9月14日 (月)

今日は私の誕生日!

今日は私の誕生日です。定年まで指折り数えられるくらいの年齢に達してしまいました。一休和尚ではありませんが、そろそろ「めでたくもあり めでたくもなし」なのかもしれません。でも、めでたいとお考えの向きは、下の倅の誕生日の際には忘れていた我が家恒例のジャンボくす玉を置いておきますので、クリックして割って下されば幸いです。

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2015年9月13日 (日)

またまたマエケンを打てずホームスチールも決められて広島に完敗!!

  HE
広  島010001001 380
阪  神000000000 030

阪神5番目の先発投手岩崎投手の出来はよかったんですが、広島先発のマエケンをまったく打てす、前にも見たようなホームスチールを決められ、広島に完敗でした。広島はクローザーを温存した一方で、阪神は呉投手まで登場させてダメ押し点を取られたりしています。
この甲子園での広島3連戦を1分け2敗で終えたのは、ペナントレースの優勝争いとしては、ほぼ最悪の結果といえます。勝負の9月か、失速の9月か、残り20試合を切った9月の時点で大きく失速するのは昔の話かと思っていますので、今年はそうならないことを願っています。問題は打線の得点力です。

明後日の中日戦は、
がんばれタイガース!

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2015年9月12日 (土)

打線に決定力なく延長12回広島と引き分け!!

 十一十二 HE
広  島100100000000 280
阪  神100010000000 2120

広島の8安打を上回る11安打を放ちながら、打線に決定力なく延長12回引き分けでした。野手を全員使い切って、島本投手を代走に起用して、それでも決勝点は取れませんでした。

明日の広島戦は、
がんばれタイガース!

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今週の読書はかなり大量ながらハズレもちらほら!!

今週はかなりたくさん読みました。ただ、少しピントの外れた本もありました。

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まず、野口悠紀雄『戦後経済史』(東洋経済) です。一応、このタイトルに不満はないんですが、いきなり米軍の爆撃を避けた防空壕から生き延びた経験から本書は始まっており、政治経済を跡付けただけの経済史ではなく、かなりパーソナルに自分史を語っている部分が少なくありません。その点は留意されるべきかという気がします。ということで、著者の主張は戦時総動員態勢を敷いた1940年体制がそのまま戦後に持ち越され、市場における価格による調整ではなく、政府による数量の調整が色濃く残った点を重視しています。占領軍のいわば「経済オンチ」によって経済官庁がほぼ戦前のままに残され、ドッジ・プランもシャウプ税制も当時の大蔵省が振り付けた結果、と著者は解釈しています。1970年代の石油危機から量ではなく価格による調整の時代に入ったと著者は考えているようです。いずれにせよ、1940年体制の政府による統制色が強くて価格による調整の不完全な日本経済が閉塞感を募らせている、という解釈のようです。また、著者の個人的なパーソナル・ヒストリーが多すぎる気がして、私はあまりオススメできません。

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次に、西野武彦『ケインズと株式投資』(日本経済新聞出版社) です。著者は経済ジャーナリストです。ほぼ、タイトルそのままの内容なんですが、もちろん、投資家あるいは投機家としてのケインズに焦点を当てていますので、株式投資だけでなく債券投資や為替投資も取り上げています。特に根拠ない私の感触では、ケンズは株式投資よりも為替投機で大きな収益を上げたような印象を持っていたりします。ケインズの株式投資は英国株式だけでなく、米国株式にも及び、しかも、英国株式はリターン・リバーサルで逆張りが有効なのに対して、米国株式はモメンタムで順張りが有効ということまで理解していたとは大きな驚きです。現在でも、日本株式は順張りが有効で米国株式は順張り、というのは計量経済分析からすると明白な事実なんですが、それを数十年も前に理解していたのはさすがというか、さすがにケインズくらいのエコノミストになれば、当時の株式市場を手玉にとって収益を上げるのは、さほど難しいとは考えられなかったんではないかという気がします。

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次に、那須正彦『ケインズ研究遍歴 増補第2版』(中央公論事業出版) です。著者は銀行エコノミストから学界に転身したケインズ研究者です。この本は自費出版されていますが、我が家の近くの図書館で所蔵していました。自費出版らしく、3部構成のうち第3部は「自分史」と題していて、誠に申し訳ないながら、私は読み飛ばしました。第2部でケインズのゴルフの腕前について取り上げているエッセイがあり、ケインズの平均スコアは110前後でハンディは27だったそうです。ほぼ30代のころの私の腕前に匹敵します。私がもっともゴルフをプレーしていたのは1990年代前半の在チリ大使館勤務のころであり、もっともよかった時のハンディは26でした。
なお、本書とその前の本を合わせた感想ですが、ケインズは経済学の博士号を取得するわけでも、大学教授になったこともなく、しかも、エコノミストとして以外にも投資家や国際金融会議における政府代表などとしても有能な実績を上げており、問題なく20世紀最大の経済学者だったと私は思っています。しかしながら、ケインズが支持する自由党があそこまで凋落して労働党に取って代られていなければ、ひょっとしたらひょっとして、国会議員というか政治家になっていた可能性もあり、選挙に出馬しなかったのがエコノミストとして大成したひとつの要因かもしれないと私は考えなくもありません。

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次に、井上寿一『終戦後史 1945-1955』(講談社選書メチエ) です。著者は歴史研究者であり、前の学習院大学学長です。タイトルとおりに終戦後10年間の歴史を振り返った本であり、終戦を境とした日本人の価値観の大きな転換を背景に、当時の米ソの冷戦下で我が国の対米従属が進んだんですが、本書ではもう一つの道、すなわち、政権交代をともなう二大政党制の下で、日本が国連・アメリカ・アジアの三者間の均衡において自立的な外交を展開する可能性があった、と主張しています。逆にいえば、いわゆる吉田ドクトリン、すなわち、安全保障で米国の核の傘に入って軍事支出を少なくし、持てるリソースを経済復興につぎ込む、という歴史的事実の否定であり、ひょっとしたら、政治的に中立かつ自主外交を推進できたかもしれませんが、経済的には「奇跡の復興」が出来なかった可能性にも考慮すべきかという気がします。どちらがよかったかは、現時点から振り返れば何ともいえません。

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次に、スヴァンテ・ペーボ『ネアンデルタール人は私たちと交配した』(文藝春秋) です。著者はスウェーデン人ながらドイツのマックス・プランク進化人類学研究所の研究者で、本書のタイトルに示唆されている通り、DNAシークエンスの解明により人類の進化をさかのぼって明らかにする研究に携わっています。実は、本書は数週間前の朝日新聞か読売新聞の日曜日の書評欄で小説家の三浦しをんが評していて、まあ、彼女に理解できて書評が書けるくらいなら私にも分かるんではないかと思って借りて読んだんですが、なかなか難しい本です。しかも、学術面ばかりでなく、著者がノーベル賞受賞者の婚外子でゲイだとか、あるいは、対立する説を支持する研究者に対する態度なども、決して模範的なものではなく、さらに、著名な科学誌である『サイエンス』や『ネイチャー』についても学術的な価値よりもメディアで取り上げられる商業的な注目度を重視しているきらいがあると示唆したりして、科学者らしからず人間臭い面も読み取れたりします。でも、それまでネアンデルタール人から現代人へのDNA上の影響を否定していた著者が、本書のタイトルの方向にコロリと宗旨替えした経緯については、実にアッサリとしか記述されておらず、まあ気恥ずかしく、カッコ悪く感じかねないのは分からないでもないんですが、やや物足りない気がします。

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次に、薬丸岳『誓約』(幻冬舎) です。この著者らしく、犯罪と人生の関係について深く考えさせられる小説です。私のような何の変哲もなく犯罪に関係なく生活している一般市民には想像も出来ませんが、何らかの事情により犯罪の加害者、あるいは、被害者になり、そのために自分自身はもちろん家族や周囲の人々まで、大きくその後の人生が影響を受けるというのは分からなくもありません。ミステリとしては私にも謎解きが出来るくらいの簡単な犯人探しではありますが、とても私なんかには考えつかないプロットで、警察に届けることも、家族に打ち明けることも出来ない主人公の悲しみが胸に迫ります。ただ、裁判人裁判制度の導入があって、犯罪の厳罰化が徐々に進行しているのも事実であり、犯罪が多くの人の人生を狂わせること自体が犯罪の抑止力になるかどうか、日本の社会が試されているような気がします。

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次に、上田早夕里『薫香のカナピウム』(文藝春秋) です。私はこの著者のSF小説は大好きで、日本SF大賞を受賞した『華竜の宮』や続編の『深紅の碑文』などのオーシャンクロニクルのシリーズも読んでいて、この9月に新刊として『セント・イージス号の武勲』を出版すると聞いたところ、今年の2月にすでに本書『薫香のカナピウム』が出ていたらしいと聞き及び、近くの図書館で大至急借りた次第です。舞台は遠い未来の赤道直下のジャングルで、カナピウムと呼ばれる地上40メートル級の林冠部で生活する樹上生活車となった人類と月や宇宙に住む<巨人>との関係、あるいは地上人類間の関係などがあぶり出されます。地上人類と<巨人>との関係はものすごいネタバレですし、本書第4章で詳細に明らかにされます。ただ、私は貴志祐介の『新世界より』におけるPKの使える人類とバケネズミの関係を思い出してしまいました。最後は主人公の少女たちは黒潮に乗って北に旅立ちます。すでに9月9日に出版された『セント・イージス号の武勲』は違いますが、日本近辺を舞台にした本作品の続編があるものと期待しています。

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次に、宮内悠介『エクソダス症候群』(東京創元社) です。これもSF小説で、火星唯一の精神病院であるゾネンシュタイン病院を舞台にしています。私はこの著者も好きで、作品は単行本で出版されている『盤上の夜』と『ヨハネスブルグの天使たち』は読んでいます。本書『エクソダス症候群』のテーマはおぞましい部分も含んだ精神医療の歴史であり、別の面から見れば主人公カズキの亡くなった父親の探求、ということになるかもしれません。突発性希死念慮(ISI)と本書のタイトルにもなっている脱出願望のエクソダス症候群の関係が解き明かされ、主人公のなくなった父親の目論見が再び追求されます。ひとつ前に取り上げた上田早夕里女史のSF作品が、例えば、魚舟と獣舟のように現人類との肉体的な面に焦点を当てるのに対して、宮内作品は本作や囲碁を取り上げた『盤上の夜』も含めて、精神的な面に焦点を当てる作品が多いような印象があります。

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最後に、若宮みどり『カール・ポランニーの経済学入門』(平凡社新書) です。著者は経済学の研究者です。私は大学生のころにポランニーの『大転換』を読んだ記憶があるんですが、すっかり忘れました。大学生のころから経済学に関する能力が落ちているとは決してい自覚していないんですが、この新書は『大転換』よりも難しかったような印象があります。もちろん、本書には著者の意向により『大転換』以外のさまざまなポランニーの主張を取り入れているためであるという面はありますが、私は古典を重視する読書・勉強を大学時代には実践してきており、経済官庁に就職する際の面接でも、学生時代にはスミス『国富論』、リカード『経済学及び課税の原理』、マルクス『資本論』、ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』などを読んだと自慢したくらいですので、ホントにポランニーを読んだといいたければ、本書よりも『大転換』を読んだ方がいいんではないかという気がしています。ポランニーの主張は、私の理解にも似通っており、民主主義がかなり厳密な1人1票に基づく自然人間の平等主義であるのに対して、経済の市場においては自然人だけでなく法人も含めた各人の持っている購買力に応じた株主総会的な格差を是認しているため、市場経済の効率性を追求するあまり民主主義が犠牲になることは好ましくない、むしろその逆である、という1点に尽きます。本書はポランニーのエッセンスを無視しているとまではいいませんが、無駄な部分が多すぎる気がしないでもありません。

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2015年9月11日 (金)

やや企業マインドが改善した法人企業景気予測調査の結果はどこまで信用できるか?

本日、財務省から7-9月期の法人企業景気予測調査の結果が公表されています。ヘッドラインとなる大企業の景況判断指数BSIは▲1.2とマイナスに転じた4-6月期からリバウンドを示し、7-9月期にはプラスに転じて+9.6を記録しています。ただし、10-12月期以降はプラス幅を縮小すると見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業景況判断指数、7-9月は2期ぶりプラス 自動車が改善
内閣府と財務省が11日発表した7-9月期の法人企業景気予測調査によると、大企業全産業の景況判断指数はプラス9.6だった。プラスは2四半期ぶり。前回調査時に低調だった自動車関連が大きく改善したことが寄与した。ただ今回の調査は8月15日時点で、8月下旬以降に国内外の株価が大幅に下落する前に実施された。
先行き10-12月期の大企業見通しはプラス7.7、2016年1-3月期はプラス7.0と、今後も景況の改善を見込んでいる。ただ、10-12月期の見通しは前回調査時の8.9からは低下した。
大企業のうち製造業はプラス11.0となり、4-6月期のマイナス6.0から改善した。前回調査時に新車投入のはざまで落ち込んだ自動車・付属品製造業がプラス24.4と、大幅に回復した。非製造業もプラス8.9となり、4-6月期からプラスの幅が広がった。サービス業や情報通信業の景況感が上向いた。
2015年度の全産業の設備投資見通しは前年度と比べ6.1%増だった。前回3月調査時点の5.9%増からやや増えた。引き続き通信機器向けの部品関連などで投資に前向きな動きが出ている。
調査は資本金1000万円以上の1万6142社を対象に実施し、回答率は81.7%だった。同調査は日銀の企業短期経済観測調査(短観)の内容を予測する手掛かりとしても注目されている。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIをプロットしています。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と青の折れ線の色分けは凡例の通りです。色が濃いのが実績で、薄いのが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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従来は「貴社(=自社)の景況」よりも「国内の景況」の方が振れが激しく、プラスでもマイナスでも後者の方が前者よりも絶対値でDIが大きくなっていたのがこの調査の特徴なんですが、最近時点から先行きにかけては、ほぼ一致するようになった気がします。「隣の芝生は青い」日本的な見方が変わりつつあるのかもしれません。それはともかく、引用した記事にもある通り、8月下旬以降の株価乱高下の前までは、少なくとも企業マインドは決して悪くなかった、ということが確かめられたような気がします。でも、中国経済に由来する株価の乱高下から先行きについては、この調査結果は決して当てにはならないと見るべきです。例えば、日銀短観の基準日については私には情報はありませんが、おそらく、8月末から9月半ばまでの記入が多いと想像され、確実に株価乱高下の影響が出ると覚悟すべきです。要するに、この法人企業景気予測調査の景況感よりは足元で悪化している可能性が高いといえます。また、先行きの景況感については、日銀短観では来週9月16-17日の米国連邦準備制度理事会(FED)の公開市場委員会(FOMC)を待って判断する大企業も少なくない気がします。ということで、自分のブログに取り上げておきながらやや無責任なんですが、今日公表された法人企業景気予測調査に示された企業マインドはあまりロバストでないような気がしています。

その意味で、日銀短観が待ち遠しいです。企業マインドは向上して賃上げや設備投資増の方向にあるんでしょうか?

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2015年9月10日 (木)

長打力の差で巨人に競り負ける!!

  HE
読  売020002010 571
阪  神000001210 491

ジャイアンツの7安打を上回る9安打を放ちながら、長打力の差で巨人に競り負けました。ゴメス選手も打点を上げ、だんだんとまぐれの範囲が広がっているような気がしますが、今夜はタイムリーエラーと2併殺のマートン選手がブレーキでしたし、昨夜の勝ち投手の安藤投手も今日はホームランを浴びました。まあ、下位から追い上げているわけでもないんですから、1勝1敗でOKと考えるべきなのかもしれません。

明日からの広島戦は、
がんばれタイガース!

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本日発表の機械受注と企業物価は日本経済の停滞を示唆しているか?

本日、内閣府から7月の機械受注が、また、日銀から8月の企業物価 (PPI)が、それぞれ公表されています。機械受注のうち電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済み前月比は▲3.6%減の8,056億円を記録し、企業物価のうちの国内物価の前年同月比上昇率は▲3.6%の下落を示しました。いずれも、市場の事前コンセンサスを下回っています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、7月3.6%減 基調判断「持ち直し足踏み」に下方修正
内閣府が10日発表した7月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月比3.6%減の8056億円だった。受注額は昨年11月以来、8カ月ぶりの低水準。6月(7.9%減)に続くマイナスで、2カ月連続の受注減は消費増税後の14年4-5月以来だった。QUICKがまとめた市場予想(3.7%増)に反しマイナスとなった。内閣府は機械受注の基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」とし、従来の「持ち直している」から下方修正。昨年11月以来、8カ月ぶりに判断を引き下げた。
主な機械メーカー280社の製造業からの受注額は前月比5.3%減の3594億円と、6月(14.0%減)から2カ月連続で減った。業種別では、電気機械から電子計算機や電気計測器の発注が減少。食品製造業から運搬機械、造船業では内燃機関などの引き合いも低迷した。
非製造業からの受注額は6.0%減の4494億円。マイナスは2カ月ぶりだった。農林用機械や情報サービス業からの電子計算機などの受注が減った。通信業では高速データ通信「LTE」に絡む設備投資に一服感も出ているといい、通信機の発注が減少した。
内閣府は8月、7-9月期の船舶・電力除く民需の受注額が前期比0.3%増えるとの見通しを示していた。8月と9月がそれぞれ前月比9.6%増えなければ、当初見通しは達成できない。
国内企業物価、8月3.6%下落 原油安の影響など
日銀が10日発表した8月の国内企業物価指数(速報値)は、前年同月比3.6%下落した。前年を下回るのは5カ月連続で、下落幅は2009年12月以来5年8カ月ぶりの大きさとなった。中国経済の減速が原油や鉄鉱石など国際商品市況の悪化につながり、企業物価を押し下げた。
企業物価指数は出荷や卸売り段階で取引される製品の価格水準を示す。
原油安の影響でガソリンや軽油など石油・石炭製品が前年同月比26.2%下がった。需要国である中国経済の減速を受けて、鉄くずなどスクラップ類も同22.3%下落した。一方、畜産農家の減少などの影響で農林水産物は同1.3%上昇した。
全814品目のうち310品目が前年同月比で上昇し、376品目が下落した。消費増税の影響を除くと8カ月連続で下落品目が上昇を上回った。下落と上昇の差は66と、13年5月以来2年3カ月ぶりの大きさだった。
日銀は「8月の企業物価の変動は商品市況悪化による影響がほとんどだった」として「商品市況への影響が大きい中国経済の動向は、物価の変動要因として今後も注目していく」(調査統計局)としている。

いずれも、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は、次の企業物価上昇率のグラフとも共通して、景気後退期を示しています。

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まず、機械受注ですが、電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注は、上のグラフの太線で示した6か月後方移動平均でもハッキリと下向きに転ずるなど、かなり下振れの動きを示しています。さらに、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは7月コア機械受注は前月比で+3%を上回る増加が予想されていました。先月6月統計ではコア機械受注は前月比▲7.9%の減少と大きなマイナスを記録し、リバウンドが予想された今月も連続で前月比マイナスですから、これらを総合的に勘案して、統計作成官庁である内閣府では、引用した記事にもある通り、基調判断を「持ち直している」から「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に下方修正しています。先月の6月統計が取りまとめられて発表された時点で、7-9月期のコア機械受注は+0.3%増とほぼ横ばいとなる見通しが内閣府から明らかにされており、7-9月期の停滞は事前に予想された通りかもしれません。一昨日のGDP統計発表時にも、景気の先行きのカギは消費、設備投資、輸出の3点にあるとこのブログでは言明し、その時点では設備投資がもっとも堅調と私は実は考えていたんですが、本日の機械受注から設備投資の先行きにも暗雲が出て来た気がします。私の景気先行き楽観論にも陰りが見え始めたのかもしれません。

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次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の、下のパネルは需要段階別の、それぞれの上昇率をプロットしています。いずれも前年同月比上昇率で、影をつけた部分は、機械受注と同じで、景気後退期を示しています。ということで、中国などの新興国経済の減速に起因する国際商品市況の石油や金属などの価格下落により、サービスではない財貨の企業物価上昇率は下落を続けています。これも、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲3%余りの下落予想だったんですが、下落幅はこれを上回り、日本経済の現状はかなり下振れしている印象です。日経新聞のサイトにあるニュースを見れば、今日の参議院財政金融委員会で黒田日銀総裁は2%のインフレ目標について、「原油価格の動向で前後する可能性がある」と述べたと報じられており、まさにその通りなんだろうと私は受け止めています。ただし、2%の目標に物価上昇が達しない、もしくは、2%に達するのがとても遅れる、という蓋然性が高いのであれば、何らかの追加金融緩和が必要になる可能性は残ります。

いずれにせよ、本日公表の機械受注と国内物価の2つの指標については、日本経済が今までの予想されたパスに比べてかなり下振れしている実態が明らかにされた、と受け止めるエコノミストが多そうです。私もそうです。しかしながら、これまた、日経新聞のサイトにあるニュースを見れば、今日の参議院財政金融委員会で黒田日銀総裁は、7-9月期の実質成長率について「プラスになる可能性が高い」と発言したそうです。私はそこまで言い切る自信はなく、この先の消費と輸出も含めた景気の動向が気がかりです。

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2015年9月 9日 (水)

延長戦をマートン選手のサヨナラ打で制して首位固め!!

 十一 HE
読  売00010020000 380
阪  神00100020001x 492

先発藤浪投手がつまらない失点をしたりしましたが、最後はマートン選手のサヨナラ打で巨人に勝利しました。ゴメス選手も打点を上げましたが、まだまだ信頼感はイマイチといったところでしょうか。11回オモテを3人で締めた安藤投手のピッチングも光りました。

明日は2タテを目指して、
がんばれタイガース!

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前月から上昇した消費者態度指数はマインド改善を示唆するのか?

本日、内閣府から8月の消費者態度指数が公表されています。昨日公表された景気ウォッチャーが供給サイドのマインド指標であるのに対して、本日公表の消費者態度指数は典型的な需要サイドのマインド指標です。前月から+2.0ポイント上昇して41.7となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の消費者態度指数、1.4ポイント上昇の41.7 判断は据え置き
内閣府が9日発表した8月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比1.4ポイント上昇の41.7だった。2カ月ぶりの改善となった。「暮らし向き」や「雇用環境」など4つの意識指標が全て上昇した。ガソリン価格の低下などが消費者心理の支えになったもようだ。
もっとも今春以降は小幅な動きが続いていることを受け、内閣府は消費者心理の基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いた。調査基準日は8月15日で、8月下旬からの世界的な株価下落が始まる前におおよその回収を終えていた。
意識指標では「暮らし向き」が2.0ポイント上昇したほか、「雇用環境」も1.6ポイント上昇した。「耐久消費財の買い時判断」も1.5ポイント上昇した。
1年後の物価見通しについて「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月から2.2ポイント減少し、85.5だった。
調査は全国8400世帯が対象で、有効回答数は5518世帯(回答率は65.7%)だった。

いつもながら、簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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8月の消費者態度指数を前月差でみると、「暮らし向き」が+2.0ポイント上昇し40.1、「雇用環境」が+1.6ポイント上昇し46.3、「耐久消費財の買い時判断」が+1.5ポイント上昇し40.3、「収入の増え方」が+0.3ポイント上昇し39.9と、すべてのコンポーネントが上昇を示しました。消費者態度指数の+2.0ポイントの上昇というのは大きく見えるんですが、7月がすべてのコンポーネントでマイナスを記録した翌月のリバウンドであり、天候不順等の影響を受けた7月から、その前の6月の水準に戻っただけで、特に大きく消費者マインドが改善したと考えるべき根拠はありません。従って、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣では基調判断を「足踏み」に据え置いています。昨日発表の景気ウォッチャーとともにマインド指標はいずれもかなり弱いと私は受け止めています。一例として考えるべきポイントは、「収入の増え方」が前月からわずか+0.3ポイントしか上昇しておらず、ほぼ横ばいであるにもかかわらず、「暮らし向き」が+2.0ポイント上昇したのは、明らかに何らかの物価が落ち着きを見せているからであり、引用した記事には「ガソリン価格の低下」とあります。いうまでもなく、原油をはじめとする国際商品市況の低迷がガソリン価格を押し下げており、相対価格の変化として生活必需品価格の低下につながっているわけですが、アベノミクスの本来の眼目や日銀のインフレ目標からすれば、物価の下落を原因としてではなく収入の増加により暮らし向きが改善されるのが望ましい姿と考えるべきです。その点からも、企業が内部留保しているキャッシュを何らかの所得分配機能を活かしつつ、家計に還元して所得の増加につなげることが必要です。

昨日の景気ウォッチャーと今日の消費者態度指数を見る限り、所得が伸びずマインドも好転せず、消費の回復にはかなり時間がかかる可能性があると考えざるを得ません。新興国をはじめとする世界経済の先行きを考えると、何らかの追加の金融緩和や経済対策が必要なのかどうか、考えるべき時期に達しているのかもしれません。

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2015年9月 8日 (火)

4-6月期GDP統計2次QEから景気の先行きをどう考えるか?

本日、内閣府から4-6月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの系列の前期比▲0.3%、前期比年率▲1.2%のマイナス成長を記録しています。マイナス成長ながら、先月公表の1次QEからは上方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4-6月の実質GDP改定値、年率1.2%減に上方修正
内閣府が8日発表した4-6月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除く実質で前期比年率1.2%減と、速報値の1.6%減から上方修正された。前期比は0.3%減と、速報値から減少幅が0.1ポイント縮んだ。設備投資は下方修正されたが、消費や輸出の停滞で製造業の抱える在庫が積み上がり、結果としてGDPの上方修正につながった。
前期比年率の改定値は市場予測(1.6%減、QUICKまとめ)を上回った。ただエコノミストの間では「設備投資の落ち込みをみると、内容は速報段階よりも悪化した」(野村証券の木下智夫氏)との声が多い。生活実感に近い名目GDPは前期比0.1%増、年率換算で0.2%増と、それぞれ速報値から0.1ポイント上方修正された。
設備投資は法人企業統計の内容を反映させた結果、実質で前期比0.9%減と、速報値の0.1%減から減少幅が拡大した。化学や食料品、鉄鋼などの製造業で設備投資が落ち込んだ。
民間在庫投資のGDP押し上げ幅は0.3%分と、速報値の0.1%分から広がった。法人企業統計などから製造過程に入る前の原材料を中心に在庫が増えていたことが分かり、押し上げ幅が大きくなった。
民間在庫の増加はGDPを押し上げるが、消費や輸出の停滞を反映する場合もあり、経済にプラスの材料とは言い切れない。甘利明経済財政・再生相は8日の閣議後の記者会見で「在庫はすぐにはけると見込んだ積極姿勢が大多数ではない」との認識を示した。
GDPの約6割を占める個人消費は0.7%減と、速報値の0.8%減から小幅な上方修正。自動車のほか、飲料や調味料・弁当などの食料品の落ち込みが速報段階よりも和らいだ。
公共投資は2.6%増から2.1%増に下方修正された。輸出は4.4%減、輸入は2.6%減で、ともに速報値と同じだった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2014/4-62014/7-92014/10-122015/1-32015/4-6
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)▲2.0▲0.3+0.3+1.1▲0.4▲0.3
民間消費▲5.0+0.3+0.3+0.4▲0.8▲0.7
民間住宅▲10.9▲6.3▲0.6+1.7+1.9+1.9
民間設備▲4.2▲0.2+0.1+2.6▲0.0▲0.1
民間在庫 *(+1.2)(▲0.5)(▲0.2)(+0.5)(+0.1)(+0.3)
公的需要+0.1+0.6+0.2+0.0+0.8+0.7
内需寄与度 *(▲2.8)(▲0.4)(+0.0)(+1.2)(▲0.1)(▲0.0)
外需寄与度 *(+0.9)(+0.1)(+0.3)(▲0.1)(▲0.3)(▲0.3)
輸出+0.6+1.8+2.8+1.6▲4.4▲4.4
輸入▲3.9+0.9+0.8+1.8▲2.6▲2.6
国内総所得 (GDI)▲1.6▲0.6+0.5+2.2▲0.0+0.1
国民総所得 (GNI)▲1.3▲0.2+1.6+1.3+0.5+0.6
名目GDP+0.2▲0.6+0.8+2.1+0.0+0.1
雇用者報酬▲1.4+0.4▲0.0+0.6▲0.2▲0.2
GDPデフレータ+2.2+2.1+2.4+3.5+1.6+1.5
内需デフレータ+2.5+2.3+2.1+1.5+0.1▲0.0

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2015年4-6月期の最新データでは、前期比成長率がマイナスに転じ、特に、赤の民間消費と黒の外需のマイナス寄与が他のコンポーネントと比較して大きいのが見て取れます。

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先週木曜日のこのブログで表明した通り、私自身は2次QEは1次QEから「上方改定よりは下方改定の可能性が大きい」と考えていたんですが、逆に上方修正されました。しかし、予想に一致したのはGDP需要項目の修正方向で、これも「設備投資が下方改定される一方で、在庫投資が上方改定される可能性が高く、景気の現状に対する見方がややネガティブに傾く」と書きましたが、その通りというカンジです。上の寄与度のグラフに見る通り、マイナス寄与は消費の▲0.4%、外需の▲0.3%、設備投資の▲0.1%となっており、逆に、プラス寄与の大きい需要項目は在庫であり、1次QEの+0.1%から2次QEでは+0.3%に上方改定されています。マイナス寄与の需要項目から明らかな通り、景気の先行きについては、消費の回復、輸出の動向、設備投資の伸びの3点がカギを握っていると見なして差支えありません。消費については、4-6月期には天候条件から下押し要因となった面があり、8月の猛暑などから7-9月期はリバウンドした可能性もあるものの、ここ1-2週間のお天気も雨が続き台風の接近もあるなど、天候で消費が振れやすいのは相変わらずかもしれません。また、この後にグラフだけ示しますが、8月の景気ウォッチャーの現状判断DIが前月から▲2.3ポイント低下の49.3を記録しており、マインドも悪化を示しています。お天気に頼る景気対策ではなく、消費拡大のためには所得増加が必要であり、賃上げを促進する何らかの方策が求められるんではないかという気がします。輸出については中国をはじめとする新興国の景気に依存する部分が決して無視できません。為替がさらに円安に振れるとも考えにくいことから、価格効果よりも所得効果が重要となる可能性が高いんですが、米国金融政策当局の利上げ動向とともに、新興国経済のゆくえが、我が国にはどうしようもないながら、気にかかるところです。企業が有り余るキャッシュフローを人件費や設備投資に振り向けてくれないことには、本格的な景気回復パスに戻るのに時間がかかるかもしれません。ということで、金融政策の発動余地も気にかかります。

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最後に、GDP統計を離れると、今日は内閣府から8月の景気ウォッチャーが、また、財務省から7月の経常収支が、それぞれ公表されています。いつものグラフだけ示しておきます。

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2015年9月 7日 (月)

本日公表の景気動向指数から踊り場脱却は読み取れるか?

本日、内閣府から7月の景気動向指数が公表されています。ヘッドラインとなるCI一致指数は前月から▲0.1ポイント下降して112.2を、CI先行指数も▲1.6ポイント下降の104.9を、それぞれ記録しています。一致指数は2か月振りの下降、先行指数は5か月振りの下降となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の景気一致指数、2カ月ぶり低下 先行指数は5カ月ぶり悪化
内閣府が7日発表した7月の景気動向指数(速報値、2010年=100)は、景気の現状を示す一致指数が112.2と、前月比0.1ポイント低下した。小幅ながら2カ月ぶりに悪化した。一致指数はこのところ一進一退の動きを続けている。内閣府は一致指数の動向から機械的に求める景気の基調判断を「足踏みを示している」とし、従来の表現を据え置いた。
一致指数を構成する10指標のうち、4指標がマイナスに働いた。鉱工業用生産財と中小企業(製造業)の出荷指数、商業販売額(卸売業)、鉱工業生産指数が前月から下振れした。中国向けのスマートフォン(スマホ)関連部品の需要が鈍った影響が出た。半面、有効求人倍率や耐久消費財出荷指数はプラスに寄与し、一致指数を下支えした。
数カ月先の景気を示す先行指数は1.6ポイント低下の104.9だった。悪化は5カ月ぶり。マイナス幅は14年5月(1.6ポイント低下)以来1年2カ月ぶりの大きさだった。新設住宅着工床面積が前月に大きく伸びた反動で、先行指数にマイナスに働いた。原油安で日経商品指数が下振れしたほか、東証株価指数、消費者態度指数もマイナス要因となった。景気に数カ月遅れる遅行指数は0.1ポイント上昇の115.7と、小幅ながら2カ月連続で上昇した。
指数を構成する経済指標のうち、3カ月前より改善した指標の割合を示すDI(最高は100)は一致指数が37.5、先行指数は44.4だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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CI一致指数・先行指数ともに前月から下降を示しており、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府は基調判断を「足踏み」で据え置いています。5月統計から3か月連続です。上のグラフの上のパネルから明らかな通り、CI一致指数は昨年年央から、CI先行指数は性格通りにその少し前から、ほぼ横ばいを続けています。ただ、下のパネルのDI一致指数は50近辺の小さな振幅の動きながら、ならして見ればやや50を超えるレベルで推移しています。ですから、少なくとも、下降一辺倒ではなく、現状の基調判断の「足踏み」から連続的に「下方への局面変化」につながるわけではないんではないか、と私は考えています。ほかのエコノミスト諸氏がどのように考えているかは定かには私に分かりませんが、私についてはそういう意味で、景気は踊り場にあると考えています。基本は、もう一度景気回復ないし拡大に向かうと期待しつつも、当然ながら、このまま悪化に向かう可能性もゼロではない、と考えているわけです。CI一致指数の7か月後方移動平均が下降していることからも、景気悪化の可能性はある程度リスクとして認識しておく必要があります。そのリスクを顕在化させるのは中国をはじめとする新興国景気のいっそうの悪化である可能性が高く、あくまで可能性の問題ながら、さらに新興国景気の悪化の引き金になるのは米国金利の上昇かもしれません。なお、7月のCI一致指数に対する絶対値0.1以上のプラスもしくはマイナスの寄与を示した項目は、プラスの方では、有効求人倍率(除学卒)、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数(除輸送機械)が、また、マイナスでは、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、生産指数(鉱工業)が、それぞれ上げられています。

明日は4-6月期の2次QEの発表ですが、先行きの景気を考えると、過去の数字であったGDP統計よりも、今週公表の指標の中では、景気ウォッチャーや消費者態度指数といったマインドに関する統計が私には気にかかります。

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2015年9月 6日 (日)

ゴメス選手の打撃不振と継投の失敗で中日にボロ負け!!

  HE
阪  神000000000 050
中  日00000023x 590

死に馬に蹴られるとはこのことで、中日にボロ負けでした。昨日は「ゴメス選手もお目覚めか?」と書きましたが、私の大きな誤解でした。昨日の3安打は単にまぐれだったようです。1回の満塁機にせめて外野フライでも上がっていれば、あるいは、8回の1-2塁で得点できていれば、少しは試合いの流れも変わっていたかもしれませんが、ゴメス選手は三振するために登場したようなもんです。先発岩崎投手は決して悪くなかったんですが、疑問だらけの7回オモテの攻撃の采配に続いて、7回ウラの中日の攻撃では、中日の代打策が当たったというか、阪神の継投が大きく外れたというか、いずれにせよ、ベンチワークの差を見せつけられました。

巨人戦は、
がんばれタイガース!

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先週の読書は『大分岐』をはじめ7冊ほど!

先週の読書は楽しみにしていたポメランツ教授の『大分岐』をはじめ、経済書と専門書・教養書と小説まで含めて以下の7冊です。

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まず、何といっても、K. ポメランツ『大分岐』(名古屋大学出版会) です。著者は経済史の研究者であり、現在はシカゴ大学に在籍していますが、本書が執筆・出版された時点ではカリフォルニア大学アーバイン校に所属しており、いわゆるカリフォルニア学派と見なされています。ということで、本書は2000年に出版されており、いわゆるグローバル・ヒストリーを代表する経済史の学術書と私は受け止めています。ですから、邦訳に15年を要したのが不思議なんですが、私でも本書の概要について何となく情報を得ており、産業革命期を1750-1830年と考え、この前の時期からすでにヨーロッパはアジア、特に中国に対して経済的、というか、生産性や生産力で上位にあった、という既成史観を否定しつつ、新たな観点から産業革命の起源について分析しています。もちろん、私がこのブログで以前から表明している通り、欧州あるいは欧米とアジアをはじめとする他の地域の違いは産業革命に起源しており、これを本書のタイトルである「大分岐」と言うか言わないかは別にして、その産業革命が18世紀のイングランドにおいて始まった理由は、少なくとも多くの歴史家が一致する見方は現時点で存在しない、というものです。そして、本書では産業革命がイングランドで開始された要因についても、中国とイングランドの平均余命から生活水準を推計したり、土地取引の活発さなどを比較して、従来の「自由と専制」説や高賃金説などを否定し、石炭のロケーションと北米からの食糧や原材料供給によるイングランドの土地制約の緩和という偶然性の強い事実に求めています。この産業革命の起源に関する見解はかなり凡庸と考えるべきで、むしろ産業革命以前の中国とイングランドの比較、市場の広がりに基礎を置いあた分業の進化に成長の源泉を求めるスミス的な成長経路が重視されていると考えるべきです。最後に、本書は経済史の学術書であり、一般向けの教養書ではありません。ボリュームも難易度もそれなりのレベルに達していますので、読み進む場合には覚悟が必要です。

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次に、トーマス・セドラチェク『善と悪の経済学』(東洋経済) です。著者は金融界で活躍する気鋭のチェコ人エコノミストだそうで、本書は2012年にドイツのベスト経済書賞を受賞したベストセラーと聞き及んでいます。タイトルの通りに経済学を対象にした考察を加えていますが、経済学が社会科学であることは当然としても、本書では規範性、すなわち、善悪を排した自然科学的な科学ではありえない点を強調しています。ひとつには、経済予測がほとんど当たらないのは、人間行動の複雑性やその背後にある動機の多様性のためであり、残念ながら経済モデルは、これらすべてを記述し尽くすことに成功していないと主張しています。ですから、私の方からの反論としては、マイクロな経済学において、いわゆるビッグ・データが活用可能になり、さらにハードウェアが発達して情報処理能力が向上することにより、多くのパラメータを有する複雑なモデルが構築できれば、マイクロな経済学のレベルでは著者の主張は将来的に反論可能となるような気がします。でも、問題はマクロ経済学のレベルの成長や景気循環であり、経済成長が十分でない発展途上国の問題や先進国でも景気後退時の失業問題など、マクロの問題はビッグ・データの活用もできず、本書のような主張が当てはまりそうな気もします。本書では、かなり明示的に経済学と倫理学の結合から、資源配分に偏った現在の経済学から人間の登場する舞台で所得の分配も視野に入れた経済学への転換を示唆しています。私には共感する部分も少なくありませんでした。でも、ここまで風呂敷を広げなくても論証は可能なハズで、もっと平易で深い議論が求められそうな気もします。

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次に、柳田辰雄『貨幣ゲームの政治経済学』(東信堂) です。実は、柳田教授とはジャカルタに赴任していたころの知り合いで、柳田教授が財務省に、私が国家開発企画庁に、それぞれJICA専門家として国際協力に当たっていた記憶があり、私の論文のプレゼンにご出席いただいたり、日本から短期専門家を招聘した際に会議でごいっしょしたりと、何度かお会いした記憶があります。ということで、近くの図書館で借りて読んでみたんですが、ややタイトルから受ける印象とは異なる本でした。すなわち、タイトルにある「貨幣ゲーム」はそのまま直訳すると「マネー・ゲーム」なんですが、本書はマクロ経済学の正統的なモデルの解説に終始しており、この時期に発行されるこのタイトルの本であれば、サブプライム・ローン問題に関する「マネー・ゲーム」を扱っているやに想像される中身とはかなり違います。ただ、欧州におけるユーロの共通通貨導入に関しては、標準的なモデルに基づきつつ、それなりの論理展開をしています。p.195 で「域内貿易が過半数を超える東アジアは、国際貿易に伴う不果実制の縮減のために東アジア共通通貨をめざさなくてはならない」と明示的にアジアにおける共通通貨圏を評価しており、ある意味で、欧州通貨統合という「貨幣ゲーム」を分析しつつ、将来のアジアへのインプリケーションを探る意図があるのかもしれません。

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次に、エドワード・フレンケル『数学の大統一に挑む』(文藝春秋) です。著者はロシア生まれで米国のカリフォルニア大学の旗艦校であるバークレイ校の数学研究者です。タイトルは極めて大きいんですが、ほぼこれはラングランズ・プログラムのことを指しているようです。著者ご自身の半生を自伝的に跡付けるとともに、その重要な要素としてラングランズ・プログラムを指して「数学の大統一」と見なしているようです。人によっては反論あるかもしれませんが、私はラングランズ・プログラムを数学の大統一と見なす見解に大きな反対はないんではないかと受け止めています。ただ、著者の自伝部分で旧ソ連のユダヤ人差別などについては、自慢話に終始していますので、「数学の大統一」をもしも本論とするのであれば、その本論から外れているように感じる読者もいそうな気がします。冒頭に一般読者を対象とする本であると著者は考えている旨が記されていますが、それでも、第5章でブレードが出てくるあたりからそれなりの数学的な知識は必要とされます。第13章では当然のように微分方程式が出て来ます。少なくとも、私のような専門外のエコノミストには、ラングランズ・プログラムは数論と解析学の対応関係として理解している限りであり、幾何学まで含めようとし、さらに、量子力学まで拡張する部分はまったくついて行けません。それでも、ユークリッド的幾何学あるいはニュートン・ライプニッツ的解析学などの古典数学がニュートン物理学に対応しているとすれば、経済学はまだこの段階ですが、アインシュタイン物理学は本書にも登場するリーマン幾何学・解析学に基づいているような気がします。経済学がこの段階に達するのはいつになるんでしょうか?

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次に、鵜飼秀徳『寺院消滅』(日経BP社) です。著者は日経BP社の雑誌記者であるとともに、僧籍を有する副住職だったりします。読ませどころは第1部のルポルタージュです。日本では、私のような京都出身者でなくても、お寺や神社は宗教法人として何らかの優遇を受けているような印象があり、例えば「坊主丸儲け」という言葉があったりします。すでに私が京都を離れた後ですが、京都では1980年代後半に古都税論争がありました。ざっくりいえば、お寺や神社の拝観料に京都市が課税するかどうかで議論されたと記憶しています。これも寺院や神社の何らかの恵まれた立場に目を付けたものだという気もします。幼稚園を併設して、かなり金回りのいいお寺があることも事実ですが、本書では全国約7万7000か寺のうちの2万か寺が、住職のいない無住寺院であり、さらに宗教活動を停止している不活動寺院が2000か寺以上に上るとの事実を明らかにしつつ、インタビューや取材により寺や墓の維持が難しくなっている地方寺院の実情を明らかにしようとしています。さらに、第2章では寺の僧侶へのインタビューがあり、第3章では明治初期の廃仏毀釈により仏教寺院が大きなダメージを受けた事実、また、第2次大戦終戦直後の農地解放により小作料収入を絶たれた事実などを上げて、お寺の存続の難しさを強調しています。ただし、著者が理解しているのは、寺、というか、宗教というのはいわゆる「上部構造」であって、下部構造の経済社会の影響をモロに受ける一方で、お寺や神社が町おこしや観光に寄与できる力は極めて限定的である、というポイントです。ということは、人口減少が続いて過疎化が進む地方では、オテラやお墓の維持が今後もいっそう困難を増すということなのかもしれません。

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次に、岡本正明『暴力と適応の政治学』(京都大学学術出版会) です。本書の著者は京都大学東南アジア研究所准教授であり、なぜか偶然なんですが、先ほどの柳田教授と同じで、私のジャカルタ滞在中にインドネシアでごいっしょしました。私が帰国の半年余り前に、ジャカルタから岡本さんの赴任先であるスラウェシに出張した際に、いろいろとお世話になった記憶があります。というか、実は、現地職員のヘンキーさんだか、ヘルキーさんだかの方に主として世話になったんですが、その上司が岡本さんだったわけです。本書の中には何枚か写真が収録されており、著者の風体も明らかですので、まったく専門外ながら、私の知っている研究者だと確信しています。ということで、本書の副題は「インドネシア民主化と地方政治の安定」となっており、インドネシアの首都ジャカルタから西方に位置するバンテン州における暴力集団「ジャワラ」を取り上げています。私はジャカルタに3年も暮らしていながら知らなかったんですが、ハッキリいうと「ジャワラ」とは日本の暴力団のような存在らしいのですが、民主化前のインドネシアを牛耳っていたゴルカルと組んだりして、地方政治に進出したり、開発に伴うインフラ整備に食い込んだり、といった活動をしているそうです。ある意味で、インドネシアの民主主義の未成熟な面を取り上げているんですが、IMFの最近のプレスリリースによれば、2018年のIMF世銀総会はインドネシアのバリ島で開催される予定となっており、東南アジアの大国としてASEAN本部も置かれているインドネシアのさらなる経済的な発展とともに、民主主義の定着に向けた活動も重要と私は考えています。なお、学術書なんでしょうが、なぜか、著者の個人的な体験が多く語られており、やや異例な気がします。それにしても、単なる感想なんですが、日本の暴力団は少なくとも明示的には政治の世界に進出していませんが、インドネシアでは地方政界とはいえ政界に暴力集団が進出しているわけですから、著者の専門である政治学からすれば、繰返しになるものの、インドネシアの民主主義が未熟ということになるのかもしれませんが、私の専門である経済学からすれば、相対的ながら、インドネシアの政治は日本よりも収益性の高いビジネスなのかもしれません。また、最後に、インドネシアにおいて隠然たる影響力を持つ華人社会との関係についても不明な点が残ります。

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最後に、黒川博行『後妻業』(文藝春秋) です。『破門』で『直木賞を受けた作者の受賞後第1作です。ですから、出版から1年余りを経て、ようやく図書館で借りることが出来ました。本作品を原作として映画化が進んであり、来年2016年の公開が計画されているようです。詳しくは映画「後妻業」のサイトに情報があろうかと思います。ということで、タイトルから明らかな通り、相続を受けることを目的として裕福な男性独身老人の後妻に入る女性に焦点を当てた作品です。その女性だけでなく、ウラで操る結婚紹介所についても含まれています。ただ、この作者の作品は「疫病神」シリーズもそうなんですが、ウラ社会における人間間の動向を中心にしており、ウラ社会とオモテ社会のインタラクティブな関係には焦点が当てられていません。ですから、裕福な高齢単身男性に後妻業の女性がどのように接近するか、などの記述が皆無となっています。さらに、この作品でポイントを下げているのは結末です。最初から最後に向けて、暴力シーンが徐々に増えていくとともに、それなりに「雰囲気」の盛上りも見せるんですが、この結末は読者をバカにしているような気がします。もうちょっとマシな結末の付け方のプロットは思いつかなかったんでしょうか。もともと、ウラ社会に対するのぞき趣味的な作風であるため、本格推理とは違って論理的な結末なく、何となくのなし崩し的な結末の多い作品のような気もしますが、作家としての力量が問われます。例えば、再婚しては再婚相手を手にかけるという意味で、よく似ていながら後妻業とは少し違った作品ながら、このブログの3月21日付けのエントリーで取り上げた葉真中顕『絶叫』のラストの負の連鎖の断ち切り方のプロットの見事さには及びもつきません。

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2015年9月 5日 (土)

大量点に守られて能見投手10勝目!!

  HE
阪  神007010000 8100
中  日000001100 261

3回のビッグイニング一挙6点の大量点に助けられて能見投手が中日を抑えて10勝目を上げした。3回はわずか3安打だったんですが、相手エラーにフォアボールや効果的な犠打もあって大量点につながりました。能見投手は7回途中まで2失点ですから十分なQSといえます。終盤は細かく投手をつないで逃げ切りました。ゴメス選手も3安打でいよいよお目覚めか?

巨人戦の前に勢いをつけるべく明日も、
がんばれタイガース!

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8月の米国雇用統計でFEDの金融政策はどう動くか?

日本時間の昨夜、米国労働省から米国雇用統計が公表されています。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月から+173千人増加し、失業率は前月から▲0.2%ポイント低下して5.1%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから記事を最初の4パラだけ引用すると以下の通りです。

Jobs Report Gives Ammunition to Both Sides of Fed Rate Debate
Despite disappointing job growth last month, the unemployment rate fell to its lowest level since early 2008, sharpening the debate within the Federal Reserve over whether to raise interest rates when policy makers meet in two weeks.
Friday's report from the Labor Department - which estimated that employers added a less-than-expected 173,000 jobs in August even as the official jobless rate dipped to 5.1 percent - provided evidence for both camps to make their cases.
The slowdown in job growth and the absence of any significant wage pressure could strengthen the arguments of those who see little risk in keeping monetary policy accommodative and waiting not just for more positive data but also for unruly markets to settle down.
On the other side, there were enough positive indicators to keep a September tightening in play, even as Wall Street turns more attention to the possibility of a Fed move in October or at the central bank's last meeting of the year, in December.

やや長く引用してしまったものの、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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非農業部門雇用者数の伸びがやや鈍化し、米国連邦準備制度理事会(FED)が雇用改善の目安としている言われる+200千人増にやや届かず、市場の事前コンセンサスだった220千人も下回ったものの、失業率が低下していますので、米国雇用は底堅いと評価してよさそうに私は考えています。特に、雇用者数について6月と7月の前月差増加幅は、それぞれ231千人と215千人からいずれも245千人に上方修正していますので、直近3ヶ月でならせば200千人と見ることも出来ます。ただし、今月9月16-17日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)ですんなりと利上げに踏み切るかどうかはビミョーなところです。すなわち、雇用統計などを見る限り、米国の国内景気はそこそこ堅調な一方で、新興国、特に中国経済の減速を発端とする金融市場の動揺はまだ収まっているとは言いがたく、総合的に考えると、利上げを見送る公算が大きいのではないか、と多くのエコノミストは考えているように私には見受けられます。しかし、私自身は利上げの確率のほうがやや高く、6-4で利上げと考えているんですが、世間のエコノミストは逆の目を予想しているようです。あと2週間で明らかになります。

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また、日本やユーロ圏欧州の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。サブプライム・バブル崩壊前の+3%超の水準には復帰しそうもないですが、まずまず、コンスタントに+2%のライン周辺で安定していると受け止めており、少なくとも、底割れしてかつての日本や最近の欧州ユーロ圏諸国のようにゼロやマイナスをつけてデフレに陥る可能性は小さそうに見えます。

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2015年9月 4日 (金)

毎月勤労統計に見る実質賃金の上昇は消費の伸びにつながるか?

本日、厚生労働省から7月の毎月勤労統計が公表されています。ヘッドラインとなる現金給与総額は季節調整していない原系列で見て前年同月比+0.6%の増加を示した一方で、景気と相関の高い所定外労働時間は季節調整済みの系列で前月から▲1.8%の減少を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質賃金2年3カ月ぶり増加 7月0.3%、所定内給与伸びる
厚生労働省が4日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、現金給与総額から物価変動の影響を除いた実質賃金指数は前年同月比0.3%増となり、2年3カ月ぶりに増加に転じた。基本給や家族手当にあたる所定内給与が名目で0.6%増えたことが寄与した。ベースアップ(ベア)が徐々に広がり、所定内給与の伸び率は2005年11月以来9年8カ月ぶりの大きさになった。
従業員1人当たり平均の現金給与総額(名目賃金)は0.6%増の36万7551円だった。増加は2カ月ぶり。所定内給与も0.6%増の24万983円で、5カ月連続で増加した。残業代などの所定外給与も0.6%増の1万9476円と、5カ月ぶりに増加した。厚労省は「名目賃金は順調に上昇している」としている。
ボーナスが中心の特別給与は0.3%増の10万7092円。6月は6.7%減と大幅に落ち込んでいたが、力強い回復はみられなかった。焦点になったボーナス支給比率は、7月に相対的にボーナスが多い30人以上の事業所で39.4%(前年同月は38.6%)だった。変動の大きいボーナスの動向については、8月分の動向もみる必要がありそうだ。1月確報から調査対象の事業所を入れ替えたことが影響している可能性もある。
所定外労働時間は0.7%減の10.9時間。製造業の所定外労働時間は0.6%減の15.8時間だった。

いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは調査産業計の賃金の季節調整していない原系列の前年同月比を、下のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、それぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。

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引用した記事にもある通り、実質賃金が前年同月比で2年余り振りに増加に転じています。ただ、名目の賃金上昇はまだわずかであり、国際商品市況における原油価格の下落に伴う物価上昇の鈍化が主たる要因です。それにしても、先月の大きな特別給与の落ち込みが何だったのかは不明です。サンプル替えの影響は否定できませんが、私のような統計ユーザからは確認のしようもありません。なお、従来から、我が国の消費は現金給与総額ではなく、いわゆる恒常所得部分に対して相関が高いと見なされており、上のグラフの上のパネルに見られる通り、所定内給与が名目でプラス幅をジワジワと緩やかながら拡大しているのは消費の拡大につながる動きと考えるべきです。もちろん、実体経済面での所得の増加の効果とともに、先行き見通しを明るくするという意味で、マインドからも消費拡大をサポートすることを私は大いに期待しています。
製造業の所定外労働時間は、月曜日に取り上げた生産指数脳動向に合わせて低下しています。それにしても、上のグラフの下のパネルに示した製造業所定外労働時間指数は、直近のピークを今年2015年1月にしてトレンド的に低下しているように見えます。生産が今年2月の春節ショックによる例外を除けば、ほぼ横ばいであるのに対して、所定外労働時間が傾向的に低下しているのはやや不思議な気がします。

来週になれば、景気ウォッチャーや消費者態度指数などのマインド指標が公表されます。ハードデータの所得とともにソフトデータのマインドについても注視したいと思います。なお、すでに米国雇用統計が公表されていますが、日を改めて取り上げるべく予定しています。

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2015年9月 3日 (木)

先発藤浪投手が苦しみながらも広島を7回1失点に抑えて連敗脱出!!

  HE
広  島000010000 150
阪  神10000130x 5100

やっぱり、連敗ストッパーは藤浪投手でした。ハッキリ言って、内容はサッパリよくなく、特にフォアボールを連発していましたが、7回1失点であれば結果オーライということだと理解します。打線はクリンナップだけ組み替えての対応でしたが、3番と4番がヒーロー・インタビューですから、これも結果が出たということなのかもしれません。ゴメス選手はもっとシビアな扱いが必要かもしれず、競争がない阪神ではムリでしょうか?
それにしても、勝ったとはいえ藤浪投手のピッチング内容は必ずしも評価できるものではなく、キチンと投手ローテーションの間隔を考慮すべき段階ではないでしょうか。このまま失速しないようにしてもらいたいものです。

ナゴヤドームでも、
がんばれタイガース!

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来週9月8日公表予定の4-6月期2次QE予想やいかに?

来週火曜日の9月8日に今年2015年4-6月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。今週月曜日の法人企業統計の公表をはじめとして、必要な経済指標がほぼ明らかにされ、シンクタンクや金融機関などから2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、先行きの今年7-9月期以降を重視して拾おうとしたんですが、明示的に取り上げているシンクタンクはみずほ総研だけでした。超長めに引用してあります。ほかはアッサリした発表のリポートが多かった印象です。何分、2次QEですから仕方ありません。いくつかの機関のリポートでは法人企業統計のついでになっていたりします。ただ、伊藤忠経済研の設備投資と企業の所得分配機能に関する見方だけは私も注目しました。これも長めに引用してあります。なお、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲0.4%
(▲1.6%)
n.a.
日本総研▲0.3%
(▲1.1%)
設備投資、在庫投資、公共投資がそれぞれ小幅上方修正される結果、成長率は前期比年率▲1.1%(前期比▲0.3%)と1次QE(前期比年率▲1.6%、前期比▲0.4%)から上方修正される見込み。
大和総研▲0.4%
(▲1.6%)
一次速報から大きな変化はないとみている。設備投資、公共投資については下方修正される見込みだが、民間在庫が上方修正される公算だ。
みずほ総研▲0.4%
(▲1.5%)
2015年7-9月期は回復軌道に復するものの、そのペースは緩やかなものになると見込んでいる。天候不順などの一時的な下押し要因がはく落する中、賃上げや夏季ボーナスの増加による所得改善もあって、個人消費は持ち直すと予想される。設備投資も、製造業を中心に積極的な投資が計画されており、増加に転じるだろう。一方、輸出については、4-6月期までの減少には歯止めがかかるものの、新興国経済の減速の影響などからアジア向けが伸び悩んでいるほか、米国向けの回復も力強さに欠けているため、緩慢な伸びにとどまるとみられる。生産計画の回復の鈍さを踏まえると、民間在庫投資の成長率への寄与もマイナスに転じる可能性が強い。これらから、7-9月期の成長率は前期比年率+1%程度にとどまると見込んでいる。
ニッセイ基礎研▲0.5%
(▲2.0%)
下方修正されると予測する。
設備投資は前期比▲0.1%から同▲1.6%へと下方修正されるだろう。
第一生命経済研▲0.4%
(▲1.6%)
ヘッドラインの数字に変化はないとみられるが、「設備投資の下方修正+在庫投資の上方修正」という組み合わせはネガティブで、内容は1次速報から悪化するだろう。
伊藤忠経済研▲0.6%
(▲2.2%)
設備投資の下方修正は、先行指標である機械受注や、日銀短観の設備投資計画などで比較的堅調な拡大傾向が示唆されていたことから判断して予想外である。ただ、仮に下方修正されたとしても、設備投資は拡大基調を維持しており、頭打ちしたと判断するには至らない。
(中略)
企業が潤沢なキャッシュフローを内部に留め置いている状況も明らかとなった。停滞気味の景気が再び回復に向かうためには、企業が従業員への還元や投資拡大の動きを強めるかどうか一つの大きなカギを握っていると言えよう。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券▲0.3%
(▲1.1%)
1次速報の前期比年率マイナス1.6%から同マイナス1.1%に上方修正されると予想している。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.4%
(▲1.5%)
全体の修正幅は小さいが、設備投資の落ち込み幅が拡大し、公共投資の増加幅が縮小する一方で、在庫投資の寄与度が上方修正されると見込まれることから、景気の見方がやや厳しさを増す可能性がある。
三菱総研▲0.3%
(▲1.3%)
小幅上方修正と予測する。

上のテーブルを見れば明らかな通り、2次QEは1次QEから小幅な改定にとどまると見込まれています。私はどちらかと言えば、上方改定よりは下方改定の可能性が大きいと考えているんですが、ニッセイ基礎研や伊藤忠経済研ほど、すなわち、年率で▲2%に達するほどではないような気がしています。ただ、大和総研、第一生命経済研、三菱UFJリサーチ&コンサルティングなどのヘッドラインに引用している通り、設備投資が下方改定される一方で、在庫投資が上方改定される可能性が高く、景気の現状に対する見方がややネガティブに傾くんではないかという気はします。もっとも、みずほ総研や伊藤忠経済研のリポートにあるように、4-6月期はマイナス成長ながら先行きは緩やかな回復が見込まれており、特に、4-6月期にマイナスが予想されている設備投資も先行きは拡大基調を維持する可能性が高いと私も考えています。伊藤忠経済研のヘッドラインに引用した後段の企業の分配についての責任も十分考慮する必要がありそうです。
メディアで私が見かけた範囲の2次QE予想に関する記事は以下の通りです。

  1. 日経新聞: 4-6月期GDP改定値、1.6%減 民間予測
  2. 朝日新聞: GDP修正、割れる見方 4-6月、設備投資5.6%増

最後に、下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。ご参考まで。

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2015年9月 2日 (水)

マエケンをまったく打てず広島に負けて3連敗!!

  HE
広  島000140000 570
阪  神100000000 170

やっぱり、マエケンを打てずに広島に敗戦でした。岩田投手は4回に崩れて、それ以降は両チームともヤル気が見られず、ズルズルと阪神打線はチャンスを逃し続けます。両チームともに7安打なんですが、得点差の一部は4番の外国人選手の打棒にあるのかもしれません。和田監督は「勝負の9月」と発言していますが、投手ローテーションがガタガタで、これだけ間を詰めて登板させれば、かつてのような「失速の9月」になりかねません。明日の藤浪投手を見て、投手ローテーションは見直すことも視野に入れるべきではないでしょうか。

連続で広島に2タテは避けるべく、
がんばれタイガース!

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防災対策に関するアンケート調査結果やいかに?

昨日、9月1日は防災の日でした。私も役所から安否確認メールを受けて、報告を返信したりしていました。ということで、8月26日にアサヒグループ・ホールディングスから防災に関するアンケート調査の結果が公表されています。まず、アサヒグルーピ・ホールディングスのサイトから調査結果のポイントを7点引用すると以下の通りです。

防災対策は万全ですか?
  • 2割以上が「(防災の日を)知らない」- 若者を中心に「防災意識」が低下へ
  • 一番怖い災害は、前触れなくやってくる「地震」- 過去の震災経験がトラウマに
  • 地球温暖化が原因!?「大型台風」「ゲリラ豪雨」が増加し、河川の氾濫や土砂崩れも
  • 4割近くが「(自分が住む地域が)危険だと感じている」- 家が古い、河川の近くなど
  • 半数以上が「『準備しなければ』と考えているものの…」- 定期的な見直しや入れ替えが面倒
  • 人間の生命線である「水」の買い置きが第一優先 - 残り湯も捨てずに張ったままに
  • 「コンロ」「発電機」「タンスの転倒防止」など、苦い教訓から事前準備する人も

ということで、もう少しポイントを絞って、ホンの2-3点で示してほしい気もするんですが、それはさておき、私自身が重要と考える点について、図表を引用して簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、上のテーブルは身近に感じる災害についての問いに対する回答結果です。見れば明らかなんですが、「地震」(80.5%)、「台風」(61.9%)、「集中豪雨」(39.6%)の順になっています。台風と豪雨は一緒にやって来る可能性もあるんではないかと私は危惧しています。一方で、4年前の東日本大震災で大きな被害をもたらした「津波」は地域的な限定性もあるんでしょうが、10%を下回っており、むしろ、「竜巻」の方が上位に位置しています。私は先週の読書感想文のブログで高嶋哲夫『富士山噴火』を取り上げましたし、昨年は御嶽山の噴火もありましたが、まだまだ火山の「噴火」は身近に考えられていないのかもしれません。わずか5.9%でした。

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次に、上のグラフは家や近所が災害に対して安全な場所かどうかについての問いに対する回答結果です。これも見れば明らかなんですが、「どちらかといえば安全」が過半に達している一方で、「とても危険」や「やや危険」が無視できない比率を占めています。我が家は3年前の2012年に引っ越したばかりですし、自分では勝手に「とても安全」と見なしています。なお、安全か危険かにもよりますが、この後に、防災の準備に関する問いがあり、「以前から防災袋や、防災に備える様々な準備をしている」という回答が40.1%に対して、「『準備をしなければ』と考えているものの、まだ行っていない」という回答は53.3%に上っています。その準備のひとつの防災グッズに関する質問が最後に置かれています。

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ということで、最後に、上のグラフは日ごろから準備している「防災グッズ」についての問いに対する回答結果です。これも見れば明らかなんですが、飲料水や食料、明かりになる懐中電灯・ロウソク、さらに、情報を得るためのラジオ・テレビなどが防災グッズに上げられています。我が家では、私が2年続けて年末の忘年会のビンゴで非常持出し用品一式のリュックとか、LEDランタンを引き当ててしまいましたし、長崎の単身赴任から電池式のラジオを5年前に持ち帰りましたので、何となくそれらに頼ろうと考えています。どうでもいいことかもしれませんが、最近の世間一般の防災意識に高まりに伴って、忘年会のビンゴの景品も防災グッズが増えた気がします。

この調査結果だけではなく、9月1日の防災の日にちなんで、楽天リサーチでも8月27日に「住まいと防災に関する調査」を公表しています。ご参考まで。

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2015年9月 1日 (火)

4-6月期法人企業統計に見る企業の設備投資やいかに?

本日、財務省から4-6月期の法人企業統計が公表されています。季節調整していない原系列のベースで統計のヘッドラインを見ると、売上高は前年同期比+1.1%増の318兆5957億円、経常利益は円安などに助けられ+23.8%増の20兆2881億円、設備投資は+5.6%増の9兆385億円を、それぞれ記録しており、収益をはじめとする堅調な企業活動がうかがえます。ただし、設備投資は季節調整済みの系列で前期1-3月期から▲2.7%の減少を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4-6月期設備投資、前年比5.6%増 法人企業統計
財務省が1日発表した2015年4-6月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比5.6%増の9兆385億円と、9四半期連続で増えた。円安や原油安などを背景に企業業績が好調で、一定の資金を投資に振り向ける動きが続いた。もっとも市場の事前予想では伸び率が1-3月期(7.3%増)を上回るとの見方も多かった。前四半期から勢いは鈍った。
産業別の設備投資の動向は、製造業が11.6%増と4四半期連続で伸びた。非製造業は2.6%増で9四半期連続のプラスだった。製造業では新型車向けの生産能力増強や研究開発(R&D)、スマートフォン(スマホ)向け電子部品の増産投資などが伸びた。非製造業では娯楽業や飲食サービス業の新規出店拡大に向けた投資も寄与した。
一方、国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となり、注目度の高い「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は季節調整済みの前期比で2.7%減った。1-3月期(6.0%増)から一転マイナスとなり、12年4-6月期(季節調整済みで3.4%減)以来、3年ぶりの減少幅を記録した。非製造業が4.4%減、製造業は0.4%増だった。
経常利益は前年同期と比べ23.8%増の20兆2881億円と、比較可能な1954年4-6月期以降の最高額を記録した。プラスは14四半期連続。うち製造業は29.6%増、非製造業は20.8%増だった。円安効果に加え、原油価格の下落に伴う原料コストの低減などが寄与した。
全産業の売上高は前年同期比1.1%増の318兆5957億円と、2四半期ぶりに増収となった。製造業が1.2%増、非製造業は1.1%増だった。
併せて発表した14年度の法人企業統計では、金融機関を除く全産業の設備投資が前年比7.8%増の39兆8228億円となった。経常利益は8.3%増の64兆5861億円で過去最高を更新。売上高は2.7%増えた。
同統計は資本金1000万円以上の企業の収益や投資動向を集計。今回の15年4-6月期の結果は、内閣府が8日に発表する同期間のGDP改定値に反映される。

かなり長いんですが、よくまとまった記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のパネルの季節調整済みの売上げについては、今年2015年1-3月期に前期比▲0.7%減の後、今日公表された4-6月期も▲0.0%減とほぼ横ばいが続いていますが、経常利益については4-6月期は前期比で+14.8%増と大きく伸びました。円高効果が大きいと見られ、製造業が+23.8%増、非製造業が+10.3%増を示しています。季節調整済みの経常利益は産業別では公表されていないので、季節調整していない原系列の経常利益を産業別に増減で見ると、前年同期比+13.6%増の輸送用機械や+67.4%の情報通信機械では自動車・関連部品が好調だったほか、+38.5%の伸びの化学では原材料費の低下で利益率が改善し、さらに、外国人観光客によるインバウンド消費により化粧品の購入も増益につながっています。また、電気業は前年同期比で5倍超の伸びだったんですが、原油価格の下落に伴う料金改定により売上げは減ったものの、原油価格の差益により経常利益は増加しています。これらを総合すれば、引き続き、企業活動の水準は高いと私は評価しています。
下のパネルの設備投資については、季節調整済みの系列で製造業は前期比+0.4%増とほぼ横ばいだったんですが、非製造業が▲4.4%減と大きく減少しています。中国をはじめとする新興国経済の低迷や金融市場の混乱などから、企業がかなり先行き不透明感を感じ始めており、要素需要、すなわち、雇用と設備投資に慎重な姿勢が現れ始めている可能性が考えられます。ただ、経常利益の大きな伸びに比べて設備投資がこの程度ですから、人件費に回る可能性もなくはないですし、この先、世界経済が安定感を増すと設備投資も伸びを高める可能性も残っています。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出しています。このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。いずれも、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下しました。また、最初にお示ししたグラフでは季節調整済みの設備投資はこの4-6月期にやや減少したため、キャッシュフローとの比率で見れば設備投資は50%台後半で停滞が続いています。これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。雇用の量的な増加や質的な改善のひとつである賃上げ、もちろん、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないかと私は期待しています。

最後に、これらの法人企業統計を大雑把に見て、来週9月8日公表予定の4-6月期2次QEでは設備投資が素直に下方修正されるものと予想しています。近く、2次QE予想がシンクタンクなどから出そろったら、日を改めて取り上げたいと思います。

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