貿易統計に見る輸出はこの先も減少が続くのか?
本日、財務省から8月の貿易統計が公表されています。ヘッドラインとなる輸出額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+3.1%増の5兆8815億円、輸入額は▲3.1%減の6兆4511億円、差引き貿易収支は▲5697億円の赤字でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
貿易赤字、8月は5697億円 5カ月連続赤字、輸出数量は減少
財務省が17日発表した8月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5697億円の赤字だった。赤字幅は前年同月の9532億円から改善した。赤字幅はQUICKが事前にまとめた市場予想の中央値(6204億円)より小さかった。一方で、貿易赤字は5カ月連続で、赤字幅は7月の2684億円から拡大した。輸出の数量指数もマイナスだった。中国向けの自動車部品の輸出が減少した。米アップルが新型スマートフォン(スマホ)「iPhone6」を発売した昨年と比べると、スマホ部品の対中輸出が鈍い。欧州の高額な医薬品が医療費助成の対象になったことも赤字要因になった。
輸出額は3.1%増の5兆8815億円と、12カ月連続で増えた。米国向けの自動車輸出が好調だった。半面、輸出の数量指数は4.2%減と、2カ月連続で低下した。輸出額は円安が進んだことで増加したものの、数量指数は対米で7.7%減、中国で9.2%減と大幅に落ち込んだ。
輸入額は3.1%減の6兆4511億円だった。減少は8カ月連続。中東地域から原油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が減った。輸入の数量指数も0.7%下落した。
なかなかコンパクトに取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。
8月の貿易統計は中国経済の停滞はもちろん、先進国経済にも停滞感が広がっていることを我が国の貿易の観点から再確認してしまった気がします。おおもとの原因は中国経済であることはかなり確度が高いと考えられるんですが、中国経済の低迷が国際商品市況における石油などの資源価格の低下をもたらして、ロシアなどの資源国経済の低迷につながり、最終的には先進国経済にも波及を見せているようです。ですから、ここしばらくこのブログでも主張している通り、貿易に関してはやや膠着した状態が続いて、我が国の貿易収支もゼロ近傍ないしやや赤字が続く可能性が高いと私は予想しています。ただし、季節調整していない原系列の統計で見ても、季節調整済みの系列で見ても、月次で一時▲1兆円を超えるような貿易赤字ほど大きな赤字には至らないのではないかと考えています。
上のグラフはいつもの輸出の推移をプロットしています。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量汁宇都価格指数で寄与度分解しており、下のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同期比を並べてプロットしています。ただし、OECD先行指数は1か月のリードを取っています。円安による為替の価格効果はあるんでしょうが、上のグラフのうちの下のパネルの通り、先進国の景気もやや低迷気味の上に中国経済がここまで悪化すれば、価格効果を上回る所得効果により我が国の輸出が低迷しています。特に、中国経済の低迷の影響は輸出に限らず我が国に大きなインパクトを及ぼしているようです。すなわち、本日公表された経済協力開発機構(OECD)の「中間経済見通し」Interim Economic Outlook では p.5 に GDP growth impact of an adverse domestic demand shock in China と題するグラフがあり、中国の内需減少のインパクトが示されているんですが、米国やユーロ圏諸国に比べて、特に我が国への影響が大きいと試算されています。このリポートについては日を改めて取り上げる予定です。
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