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2015年10月14日 (水)

マイナス幅を拡大する企業物価をどう考えるか?

本日、日銀から9月の企業物価指数(PPI)が公表されています。ヘッドラインの国内物価上昇率は前年同月比で▲3.9%を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の企業物価指数、3.9%下落 下げ幅、09年11月以来の大きさ
日銀が14日発表した9月の国内企業物価指数(2010年=100)は102.2で、前年同月比3.9%下落した。市場予想の中心は3.9%下落だった。原油やガスなどの国際商品価格の下落を受け、マイナス幅は8月(3.6%下落)から拡大し、2009年11月以来、5年10カ月ぶりの大きさとなった。前月比では0.5%下落と4カ月連続でマイナスとなった。
前月比で見ると、下落の最も大きな要因となったのは「電力・都市ガス・水道」。液化天然ガス(LNG)の価格下落を背景に、産業用の電力料金などが下がった。原油安の影響で石油・石炭製品や化学製品も下げた。国際市況の低迷で鉄鋼や非鉄金属も下落した。
企業物価指数は出荷や卸売り段階で取引される製品の価格水準を示す。公表している814品目のうち、前年同月比で上昇したのは300品目、下落は383品目となった。下落品目と上昇品目の差は8月から拡大した。
円ベースの輸出物価は前年比で1.2%下落した。下落は1年4カ月ぶり。輸入物価は15.5%下落。9カ月連続の下落となった。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の、下のパネルは需要段階別の、それぞれの上昇率をプロットしています。いずれも前年同月比上昇率で、影をつけた部分は、景気後退期を示しています。

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ヘッドラインの国内物価上昇率は、今年4月統計で昨年の消費増税の影響が一巡して▲2.1%を記録してから、月を追うごとに下落幅を拡大して、5月▲2.2%、6月▲2.4%、7月▲3.1%、8月▲3.6%から、とうとう最新統計である9月には▲3.9%になっています。とはいっても、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスとピッタリ一致していますので、マーケットにはすでに織込み済みかもしれませんが、それにしても下落幅が大きいので私のような気弱なエコノミストにはちょっとショックだったりします。もちろん、国際商品市況における石油や金属などの価格下落に伴う物価低迷であり、さらに国際商品市況の下落の背景には中国をはじめとする新興国の景気の強烈な減速があるわけで、米国の連邦準備制度理事会(FED)のイエレン議長が何度か年内利上げに言及する中で、日銀がどこまで追加緩和を実施すべきかは議論のあるところかもしれませんし、物価の現在の傾向はほぼ年内に底打ちすると見込んでいるエコノミストもいますが、少なくとも昨日10月13日に日経センターから公表されたESPフォーキャスト10月調査結果によれば、次回の金融政策の変更の予想は、緩和が26名と前月の22名から増加した一方で、引締めは13名と前月の16名から減少しており、緩和の時期としては2015年10月ころが18名と一番多くなっているのも事実です。政府の月例経済報告でも総括判断が半ノッチ引き下げられていることから、日銀も政府と同じように景気判断を引き下げる可能性が十分あり、10月末の「展望リポート」見直しの際に追加緩和が実施されるものと、私も多数派のエコノミストと同じ見方をしています。
ただし、海外エコノミストの見方は少し違っている可能性があります。すなわち、同じく昨日10月13日に公表されたドイツの ZEW Indicator of Economic Sentiment とともに明らかにされている ZEW Financial Market Survey の10月調査結果を見ていると、ユーロ圏欧州・米国・日本・英国と並べてある短期金利 Short-term interest rates の先行き見通しについて、欧州と米国では上昇 increase の予想が減少しているのに対して、日本では大多数のエコノミストが不変 no change の96%、上昇がわずかに3%と、いずれも前月調査結果と同じでありながら、下落 decrease が2%から1%に減少しています。ごくわずかな差ながら、内外のエコノミストの日銀の金融政策の先行き予想に対する見方が少し違っているのが目につきました。海外のエコノミストの見方については、私にはにわかに理解できない点もありますが、参考までメモしておきたいと思います。

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