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2015年11月10日 (火)

ほぼ下げ止まった景気ウオッチャーと黒字が定着する経常収支!

本日、内閣府から10月の景気ウォッチャーが、また、財務省から9月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーは代表的な供給サイドのマインド調査ですが、10月の現状判断DIは前月から+0.7ポイント上昇して48.2を、また、先行き判断DIは前月と同じ49.1を記録しています。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で1兆4684億円の黒字となりました。まず、それぞれの統計のヘッドラインを報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

10月街角景気、現状判断指数3カ月ぶり改善 判断は据え置き
内閣府が10日発表した10月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比0.7ポイント上昇の48.2となった。改善は3カ月ぶり。家計と企業動向の指数が前月から上昇した。ただ、現状判断指数は好況の目安となる50は下回った。内閣府は景気判断について「中国経済に関わる動向の影響などがみられるが、緩やかな回復基調が続いている」との見方を変えなかった。
家計動向は小売りと飲食、サービスと住宅の全項目が改善した。家計に関して「今月(10月)は天候に恵まれ、台風の影響もなく、久しぶりに来客数が増加し、売り上げも順調である」(四国のスーパー)との声がある一方、食料品の値上げで消費者の節約志向が強いとの見方も出た。旭化成建材の杭(くい)打ち工事によるマンション傾斜問題の影響で「問い合わせがあっても、安全性に関する話ばかりで、マンションへの購入意欲が低下していると実感する」(東海の建設業)との指摘もあった。中国の景気不安に対するコメントも根強く見られた。
2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は、前月から横ばいの49.1だった。家計動向が改善する一方、企業動向と雇用関連の指数は低下。設備投資を巡り「案件は増えてきているが、建設コストが上がっているため投資への金額が予算超過になることが多く、不調の案件も増えている」(南関東の建設業)との声があった。内閣府は先行きについて「冬のボーナスへの期待などがみられるものの、中国経済の情勢や物価上昇への懸念などがみられる」と指摘した。
経常黒字、4-9月は8兆6938億円 5年ぶり高水準
旅行収支が黒字に

財務省が10日発表した2015年度上半期(4-9月)の国際収支状況(速報)によると、モノやサービスなど海外との総合的な取引状況を表す経常収支は8兆6938億円の黒字だった。黒字額は前年同期(2兆8億円)と比べて大幅に増え、4-9月としては5年ぶりの高水準だった。原油をはじめとする資源価格の下落で輸入額が減ったうえ、旅行収支が黒字になった。企業が海外の子会社や投資先から受け取る第1次所得収支も、円安を背景に85年以降で過去最大になった。
欧米向けの自動車輸出が伸び、輸出額が37兆2189億円と、前年同期に比べて2.8%増えた。一方、原油安で輸入額は37兆6386億円と7.4%減った。第1次所得収支の黒字は18.1%増の10兆8342億円となった。
サービス収支の赤字額は7976億円(前年同期は1兆8025億円)だった。統計上でさかのぼれる1996年以降で赤字幅は最小になった。旅行収支の黒字や特許収入が拡大した。旅行収支は1996年以来赤字が続いていたが、訪日客の急増によって上半期は6085億円の黒字になった。自動車などを海外生産した際に得られるロイヤルティー収入も最大だった。
財務省は今後について、中国経済の減速や原油価格の動向が貿易収支や旅行収支に与える影響を注視したいとしている。
同時に発表した9月の経常収支は1兆4684億円の黒字(前年同月は9780億円の黒字)と、15カ月連続で黒字だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値(2兆2273億円の黒字)を下回った。貿易収支は823億円の黒字(同7112億円の赤字)、第1次所得収支は1兆6694億円の黒字(同2兆393億円の黒字)だった。

2つの記事を引用したのでやや長くなったものの、いずれも、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気ウォッチャーのグラフは以下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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現在の我が国景気の踊り場的な状況は、中国などの新興国の経済低迷に端を発していると私は受け止めているんですが、少なくとも、供給サイドのマインド調査の代表である景気ウォッチャーにすいては、ほぼ下げ止まった気がします。後は上がるだけと言いたいところですが、少なくとも10月については気候にも恵まれて、家計部門が堅調に推移したと想像されますが、企業部門か家計部門か、どちらが景気をけん引するかについてはまだ明らかではなく、その意味で、方向感は現状では定まっているとは言い難く感じています。現状判断DIは家計部門がプラスで、先行き判断DIも家計部門がプラスの一方で、雇用や企業部門はマイナスでしたので、マインドが向上するとしても緩やかな動きにとどまる蓋然性が高いと私は考えています。毎月勤労統計に見る賃金動向がやや統計の信頼性に疑問が残るものの、また、日銀の物価目標からは遠ざかるとはいえ、物価が前年比で下がり始めているのは家計の所得を実質価値で押し上げる効果があると考えるべきですから、現状で設備投資に慎重な姿勢が崩れない企業部門よりは家計部門が先に回復軌道に戻る可能性が高そうな気もします。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列であり、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基いているため、少し印象が異なるかもしれませんが、経常収支についてもかなり震災前の水準に戻りつつある、と私は受け止めています。ただ、経常収支ベースですから通関統計と違って数量指数などがなく、私の直感ながら、輸入についてはまだ数量ベースでは原油や天然ガスの輸入数量は決して減少したわけではなく、エネルギー輸入に関する価格指数が国際商品市況にともなって大きく下落した結果として、輸入額が減少していると考えるべきです。輸出が勢いを取り戻しているというわけではないようです。ただし、引用した記事にもある通り、季節調整していない原系列の統計ながら旅行収支が黒字化しつつあり、正確な表現ではないかもしれませんが、いわゆる「稼ぐ力」を取戻つつあるのは事実だろうと私は考えています。加えて、そんなにすぐに効果が出るわけではありませんが、TPP合意により中長期的に輸出が増える方向にあることも確かです。

昨日11月9日、経済協力開発機構(OECD)から「経済見通し」Economic Outlook が公表されています。諸般の事情により、日を改めて取り上げたいと思います。

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