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2015年11月12日 (木)

増加に転じつつある機械受注と下落幅を縮小する企業物価!

本日、内閣府から9月の機械受注が、また、日銀から10月の企業物価(PPI)が、それぞれ公表されています。機械受注のうちの船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は前月から+7.5%増加して8164億円を記録し、企業物価のうちの国内物価のヘッドライン上昇率は前月からやや下落幅を縮小させて▲3.8%となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、7-9月期10.0%減 5期ぶりマイナス、リーマン直後以来の下げ幅
内閣府が12日発表した機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の7-9月期の受注額(季節調整値)は前期比10.0%減の2兆3813億円だった。5四半期ぶりのマイナスに転じ、下落率はリーマン・ショック後の2009年1-3月期(11.4%減)以来の大きさだった。鉄鋼や電気機械、造船からの受注減で製造業が15.3%減った。金融業・保険業や農林漁業などの引き合いが弱かった非製造業は6.5%減だった。中国をはじめとする新興国の景気減速などを受け、企業が資金を設備投資に振り向ける動きはなお鈍い。
内閣府は3カ月ごとに調査対象企業に受注額の見通しを聞いている。8月時点では7-9月期に0.3%増えるとの見通しを示していた。当初見通しをどの程度、実現したかを示す達成率は93.3%と、4-6月期(111.3%)から大きく下振れし、14年4-6月期以来の低水準だった。
10-12月期の受注額(船舶・電力除く民需)は2.9%増の見通しとなった。製造業が6.0%、非製造業は2.5%増える見込み。前期と比べ、鉄道車両や道路車両などの受注増を想定している。
併せて発表した9月の受注額(同)は前月比7.5%増の8164億円だった。プラスは4カ月ぶり。QUICKの市場予想(4.3%増)を上回り、伸び率は14年3月以来、1年半ぶりの大きさだった。金融業・保険業や運輸業・郵便業などの発注が増えた非製造業が14.3%伸びた。一方、製造業は5.5%減。内閣府は機械受注の判断を「足踏みを示している」に据え置いた。
10月の企業物価指数、前年比3.8%下落 前月比は5カ月連続下落
日銀が12日発表した10月の国内企業物価指数(2010年=100)は101.5で、前年同月比3.8%下落した。比較の対象となる前年の物価が原油安の影響で下がっており、下落率は9月から0.2ポイント縮小した。前月比では0.6%下落と5カ月連続でマイナスとなった。
前月比で下落の大きな要因となったのは、電力・都市ガス・水道と石油・石炭製品だった。電力価格は夏季の割増料金がなくなった。石油価格は今年度に入ってからの一段の原油安を反映した。鉄鋼や非鉄金属も下落した。今後の動向について日銀は国際商品市況の動向次第で読みにくいものの「大きな下落はないだろう」(調査統計局)とみている。
前年同月比での下落率は縮小した。原油価格の急落を受けて前年の秋ごろから企業物価指数が大きく下がり始めたためだ。このため前年比のマイナス幅は当面は縮小傾向となりそうだ。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している814品目のうち、前年同月比で上昇したのは295品目、下落は395品目となった。下落品目と上昇品目の差は9月確報から縮小した。

いずれも、よく取りまとめられた記事だという気がします。でも、機械受注では9月統計よりも7-9月の四半期統計にやや注目が偏った印象ですし、また、別の観点から、2つの経済指標を一気に並べるとやや長くなってしまいました。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、まん中は需要者別の機械受注を、下は四半期データで達成率を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。景気後退期のシャドーについては企業物価上昇率も同じです。

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中国をはじめとする新興国の景気減速に起因する世界経済の低迷から、我が国の設備投資とその先行指標である機械受注ないしコア機械受注は、引用した記事にもある通り、4-6月期に大きくブレーキがかかってしまい、下のパネルの達成率で見ても、エコノミストの経験則による景気転換点である90%にかなり近づきました。しかしながら、今日発表の統計を見る限り、単月の統計から見てほぼ下げ止まったようですし、コア機械受注のベースの10-12月期の受注見通しも+2.9%増ですから、機械受注は先行き増加に転じ、GDPベースの設備投資も回復に向かう可能性が高いと私は受け止めています。ただ、どのくらいの反転増加かというと見方は分かれそうです。日銀短観などで示されている今年度の設備投資計画に沿った増加であれば、ものすごい急回復で増加する可能性があるものの、10-12月期の受注見込みですら+3%程度で、しばしば実績はこの受注見込みを下回ることもありますから、今後の回復も緩やかと見るエコノミストも少なくありません。私はどちらかと言えば後者の緩やか回復派に近いと考えています。

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次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の、下のパネルは需要段階別の、それぞれの上昇率をプロットしています。いずれも前年同月比上昇率です。ヘッドラインの国内物価上昇率は、今年4月統計で昨年の消費増税の影響が一巡して▲2.1%を記録してから、月を追うごとに下落幅を拡大して、5月▲2.2%、6月▲2.4%、7月▲3.1%、8月▲3.6%、9月▲4.0%から、今日発表の10月統計では▲3.8%と、マイナス幅を縮小させています。とはいっても、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲3.5%でしたので、縮小度合いは物足りないと考える向きがあるかもしれません。もちろん、国際商品市況における石油や金属などの価格下落に伴う物価低迷であり、さらに国際商品市況の下落の背景には中国をはじめとする新興国の景気の強烈な減速があるわけで、引用した記事にもある通り、国際商品市況に伴う物価下落もほぼ一巡し、前年同月比のマイナス幅は先行き縮小する可能性が高いと見込まれています。これも、どこまで縮小するかで見方は分かれますが、私はゼロからプラスまで半年から1年で戻る可能性も小さくないと受け止めています。ただし、その後には2017年4月からの消費税率の再引上げが待っていたりもします。

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