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2015年11月 9日 (月)

毎月勤労統計に見る不可解な夏季ボーナスの減少をどう考えるのか?

本日、厚生労働省から9月の毎月勤労統計の結果が公表されています。ヘッドラインとなる現金給与総額は季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比+0.6%増、うち所定内給与も+0.4%増となり、また、景気に敏感に反応する製造業の所定外労働時間は季節調整済みの系列で前月比+0.2%増を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質賃金、9月は0.5%増 3カ月連続増 名目は0.6%増 毎勤統計
厚生労働省が9日発表した9月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、現金給与総額から物価変動の影響を除いた実質賃金指数は0.5%増だった。7月に2年3カ月ぶりにプラスに転じた実質賃金は、3カ月連続で増加し、増加傾向が確認できる内容だった。
従業員1人当たり平均の現金給与総額(名目賃金)は前年同月比0.6%増の26万5527円だった。増加は3カ月連続。ベースアップ(ベア)によって基本給が増えている。残業代など基本給以外の給与も増加し、賃金を押し上げた。
基本給や家族手当にあたる所定内給与は0.4%増の24万538円だった。7カ月連続で増加した。残業代など所定外給与は1.4%増の1万8997円、ボーナスなどの特別給与は14.0%増の5992円。厚労省は「主要な項目が全て増加しており、堅調に伸びている」としている。
所定外労働時間は1.8%減の10.7時間。製造業の所定外労働時間は1.2%増の16.0時間だった。
同時に発表した2015年夏(6-8月支給分)の1人あたり平均賞与は前年同期比2.8%減の35万6791円だった。昨年は2.7%増と23年ぶりの高い伸び率を記録したが、2年ぶりに減少した。従業員が5-29人の事業所では0.8%増えた一方、従業員が30人以上の事業所で3.2%減と大幅に減少したことが響いた。厚労省は2-3年に一度、調査対象の全3万3000事業所の約半数にあたる「30人以上の事業所」を入れ替えている。相対的に賃金が高いとされる「30人以上の事業所」を今年1月に入れ替えたことが影響しているとの指摘がある。

いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、下のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与の季節調整していない原系列の前年同月比を、それぞれプロットしています。いずれも影をつけた期間は景気後退期です。

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まず、上の所定外労働時間の動きについて、先々週公表された鉱工業生産指数の季節調整済みの前月比は+1.0%増でしたから、所定外労働時間が前月比でプラスを記録したのと整合的なんですが、やや幅が小さい気もしないでもありません。最近2-3か月をならしてみる必要があるんでしょう。いずれにせよ、方向感の定まらない景気の踊り場ですので、月単位の統計ではあり得る動きかもしれないと受け止めています。賃金の動向については、特に、太線の所定内賃金の前年同月比は緩やかながら徐々に上昇幅を拡大しており、6月の現金給与総額が所定外給与の変動によって一時大きく落ち込んだ要因はいまだに不明ながら、いわゆる恒常所得部分である所定内賃金は着実に増加を示しています。人手不足から労働力確保のためにベアの実施をはじめとする雇用条件の改善が進む方向にあるといえます。ただし、足元の景気はかなり踊り場的な様相を呈しており、来週公表予定の7-9月期のGDP成長率も4-6月期に続いて2四半期連続のマイナスを見込むエコノミストも少なくない中で、量的及び質的に急激な雇用の改善が進行するとは私は考えていませんが、少なくとも、量的にはほぼ完全雇用となっている中で雇用の増加の足取りは落ち着きを見せる可能性が高い一方で、質的には賃金上昇や正規雇用の増加などが徐々に進むものと期待しています。

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さらに、今夏のボーナスについては上のグラフの通りです。上から順に、前年比伸び率の時系列推移、産業別支給額、産業別伸び率をそれぞれプロットしています。一番上のパネルを見れば明らかな通り、何と、大方の予想や経団連の集計に大きく反して、今年の夏季ボーナスは前年から減少との統計でした。しかも、5人以上事業所では▲2.8%減、30人以上では▲3.2%減と、規模の大きい事業所の方が減少率が大きく、産業別の額と前年比のグラフも書いてみましたが、昨年からの反動減の可能性もなくはないとはいうものの、現時点では極めて不可解な結果と受け止めています。引用した記事の最後のパラでは、統計のサンプル替えが結果に影響している可能性を示唆していますが、それはともかく統計が正しいと仮定すれば、企業収益がかなり伸びている中で、ボーナスは減少し設備投資も盛り上がらないわけですから、我が国企業の行動パターンは私には理解が難しいと言わざるを得ません。

実は、去る11月4日の経済財政諮問会議に提出された民間議員ペーパー「経済統計の改善に向けて」において、厚生労働省の毎月勤労統計は総務省統計局の家計調査や財務省の法人企業統計季報とともに、改善を要する3つの統計として明確に名指しで取り上げられていたりしますので、改めて信頼性に疑問が生じているところなんですが、他に代替する政府統計もなく、賃金動向や残業時間などについては毎月勤労統計に頼らざるを得ません。

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