かなり減速した鉱工業生産指数と商業販売統計をどう見るか?
本日、経済産業省から11月の鉱工業生産指数と商業販売統計が公表されています。鉱工業生産は季節調整済みの系列で前月比▲1.0%減と3か月振りのマイナスを示し、商業販売統計のうちの小売業販売も季節調整していない原系列の前年同月比で同じく▲1.0%減を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
鉱工業生産3カ月ぶり低下 11月、基調判断は据え置き
前月比1.0%マイナス
経済産業省が28日発表した11月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は97.8と、前月から1.0%下がった。低下は3カ月ぶりで事前の市場予測(QUICKまとめ、0.5%低下)を下回った。生産用機械、自動車、電子部品など前月好調だった業種で反動が出て、輸出向け・国内向けともに減った。
経産省は生産の基調を前月と同じ「一進一退」とした。15業種中10業種で指数が前月より低かった。汎用・生産用・業務用機械は半導体製造装置や蒸気タービンなどで前月好調だった反動が出て、2.5%低下。自動車など輸送機械が0.6%低下、電子部品・デバイスが1.1%低下など、前月好調だった主要業種は軒並み減産となった。
出荷指数は前月から2.5%低い96.3と3カ月ぶりのマイナスだった。在庫は0.4%高い111.8と3カ月ぶりに上昇した。ただ前年同月比では0.5%低下と、1年7カ月ぶりに前年水準を下回った。
ただ12月上旬時点の生産見通しは12月が0.9%上昇、16年1月が6.0%上昇と2カ月連続のプラスとしている。11月は自動車やスマートフォン(スマホ)関連の一部部品が増産となったためだ。経産省は「翌月以降の生産のために部品や原材料を作りだめした」とみている。
11月の小売販売額、前年比1.0%減
経済産業省が28日発表した11月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比1.0%減の11兆5260億円だった。10月(確報)は1.8%増だった。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で0.8%減の1兆6501億円。既存店ベースの販売額は1.5%減だった。既存店のうち百貨店は2.6%減、スーパーは0.9%減だった。
コンビニエンスストアの販売額は4.2%増の8992億円。
いつもながら、網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は商業販売統計とも共通して景気後退期です。
まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比▲0.4%減でしたから、実績はこれをやや下振れしましたし、出荷指数の落ち込みは生産指数以上で▲2.5%に達してかなり大きく、統計のヘッドラインはかなりペシミスティックに受け止める向きが多そうな気もします。さらに、生産については何ともいえないジグザグ変動なんですが、11月統計では前月からの反動により、はん用・生産用・業務用機械工業、電気機械工業、輸送機械工業の主力3業種が軒並み前月比マイナスとなり、逆に、これまた11月統計のマイナスの反動で、製造工業生産予測調査による先行きの見込みは、はん用・生産用・業務用機械工業では12月、1月とも前月比プラス、電気機械工業と輸送機械工業では12月は小幅マイナスとなるものの、1月は大幅なプラス、という結果を示しています。据え置かれた基調判断の「一進一退」そのものという気もしないでもありません。先行きの製造工業生産予測調査は12月、1月ともプラスの結果を示しましたが、基本的には、年末ボーナスや労働市場における人手不足などから家計の所得環境は改善の方向にあり、また、12月調査の日銀短観に示された通り、企業部門における設備投資の増加意欲は堅持されているように見られます。ですから、ジグザグの「一進一退」の動きながら、先行きの生産・出荷は回復に向かうと私は期待しています。
続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は同じく景気後退期です。ということで、このブログでも軽く触れた通り、先週金曜日に発表された総務省統計局による11月の家計調査では、季節調整していない原系列の前年同月比で実質▲2.9%の減少を示したわけですが、商業販売統計でも家計調査ほどのマイナス幅ではありませんが、マイナスはマイナスということで、11月は暖冬による冬物衣類や暖房器具などの売上げ不振から、消費は低迷していることが裏付けられています。もちろん、11月だけでなく、今冬はおしなべて暖冬傾向が続くようですし、その意味では消費支出には悪影響が出るおそれが高いんですが、12月の年末ボーナスや所得環境の改善から、消費についても先行きは決して悲観する必要はないと私は考えています。
最後に、日銀から調査論文「2020年東京オリンピックの経済効果」が公表されています。上のグラフはそのイメージであり、リポートの p.13 【図表 16】東京オリンピック開催の経済効果 (イメージ) を引用しています。オリンピック開催に伴う訪日観光需要については「訪日観光客数」が2020年に3,300万人に達するペースでの増加が続くなどの仮定を置けば、2015-18年における我が国の実質GDP成長率を毎年+0.2から+0.3%ポイント程度押し上げ、また、2018年時点ではGDP水準の約1%(約5-6兆円)に達する、と試算しています。ただ、同時に、建設需要のGDP押し上げ効果は2018年でピークアウトしてしまうことから、各種の成長力強化に向けた取り組みを通じて、建設投資に代わる新規需要を掘り起こしていく必要がある、とも指摘しています。
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