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2015年12月 9日 (水)

大きく増加した機械受注は設備投資の爆発を示唆するのか?

本日、内閣府から10月の機械受注が公表されています。電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注は季節調整済みの系列で前月比+10.7%増の9038億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月機械受注、10.7%増 基調判断を上方修正
内閣府が9日発表した10月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月と比べ10.7%増の9038億円だった。増加は2カ月連続。QUICKが事前にまとめた市場予想(1.2%減)に反し、大幅なプラスとなった。伸び率は9月(7.5%増)から一段と拡大し、2014年3月(12.3%増)以来、1年7カ月ぶりの大きさだった。
内閣府は機械受注の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」とし、前月までの「足踏みがみられる」から上方修正した。判断の引き上げは4月以来6カ月ぶりとなる。受注額(船舶・電力除く民需)の原数値は前年同月比で10.3%増。同受注に100億円以上の大型案件はなかった。
主な機械メーカー280社の製造業から受注した金額は前月比14.5%増の3765億円と、5カ月ぶりに増加した。製造業で化学機械や火水力原動機、内燃機関や風水力機械といった機種の受注が増えた。非製造業は10.7%増の5341億円で、プラスは2カ月連続。運輸業・郵便業からの鉄道車両や、農林漁業から農林用機械などの受注が伸びた。
内閣府は10-12月期の受注額(船舶・電力除く民需)について、前期比2.9%増になるとの見通しを示している。11、12月がともに前月比9.9%減でもこの見通しは達成できる。両月が横ばいなら、10-12月期は13.9%増になるという。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。

photo

前月9月統計が季節調整済みのコア機械受注で見て前月比+7.5%の大幅増を受けて、今月10月の統計では反動減が見込まれ、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは中心値では▲1.5%減、レンジでも▲3.7%減から+3.1%増とされていたところ、これを大幅に上回る2ケタ増には私も少しびっくりさせられました。漏れ聞くところによれば、鉄道車両などの大型受注が入った特殊要因もあるとかで、どこまでがいわゆる「実力」なのかは不明ながら、今年に入ってから春以降くらいの不透明な経済状況の中で、設備投資が先送りされ、同時に、機械受注が伸び悩んでいたところ、ある程度は設備投資の先送りにも限界が来ている可能性が示唆されていると受け止めています。すなわち、ソフトデータに近い印象の各種の設備投資計画が昨年度からの前年比で大幅増を示す中で、ハードデータである機械受注や資本財出荷などに計画された増加傾向が現れないと感じていましたが、ここに来て、機械受注にも設備投資計画と整合的な動きが出始めた可能性があります。まだ単月の統計ですから、一挙に機械受注も増加に向かうとまで結論することはできないものの、企業収益から見ても、キャッシュフローから見ても、そろそろ設備投資は単純な更新投資すら追いつかないレベルまで低下して来ていましたので、さすがに反転増加するタイミングなのではないかという気もします。それに、ほぼ完全雇用に達した労働市場における人手不足に起因して、労働から資本ストックへの代替も進む可能性が高いという要因も見逃せません。なお、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府は基調判断を「足踏み」から「持ち直しの動き」に明確に1ノッチ上げましたが、単月の大幅増を反映してではなく、こういったバックグラウンドの要因を合わせて考慮して、基調判断が上方改定されたんではないか、と私は勝手に想像しています。

他方、9月+7.5%増に続く、10月10.7%増ながら、この2ケタ増やそれに近いペースでの増加がこの先も続くと予想するエコノミストは少なく、足元での2ケタ増はややイレギュラーな要因も含めた結果とも考えられます。そのうちに反動減もあるかもしれません。ということで、今夜のタイトルの「設備投資の爆発」ではなく、年度後半にかけて設備投資は緩やかな回復軌道に戻る可能性が高いと私は予想しています。来週公表予定の日銀短観の設備投資計画にも注目したいと思います。

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