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2015年12月 4日 (金)

いずれも改善を示す消費者態度指数と毎月勤労統計から何が読み取れるか?

本日、内閣府から11月の消費者態度指数が、また、厚生労働省から10月の毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。消費者態度指数は前月から+1.1ポイント上昇して42.6を示し、毎月勤労統計の現金給与総額は季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比+0.7%増、うち所定内給与も+0.1%増となり、また、景気に敏感に反応する製造業の所定外労働時間は季節調整済みの系列で前月比+0.4%増を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の消費者態度指数、1.1ポイント上昇 基調判断上げ
内閣府が4日発表した11月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比1.1ポイント上昇の42.6だった。株式相場が上昇したほか、ガソリンや生鮮野菜などの値下がりが寄与した。内閣府は消費者心理の基調判断を「足踏みがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」に引き上げた。
「暮らし向き」や「収入の増え方」など4つの意識指標が2カ月連続で全て上昇した。基調判断の上方修正は3月以来、8カ月ぶり。
意識指標では「暮らし向き」と「耐久消費財の買い時判断」がそれぞれ1.3ポイント上昇した。「収入の増え方」も1.1ポイント上昇した。
1年後の物価見通しについて「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月から1.1ポイント上昇し、82.1だった。
調査基準日は11月15日。全国8400世帯が対象で、有効回答数は5572世帯(回答率は66.3%)だった。
10月実質賃金、0.4%増 4カ月連続増 毎勤統計 残業代など伸びる
厚生労働省が4日発表した10月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、現金給与総額から物価変動の影響を除いた実質賃金指数は0.4%増だった。残業代などの各項目が伸び、4カ月連続で増加した。
従業員1人当たり平均の現金給与総額(名目賃金)は前年同月比0.7%増の26万6309円だった。増加は4カ月連続。
基本給や家族手当にあたる所定内給与は0.1%増の23万9640円だった。ベースアップ(ベア)により8カ月連続で増えているが、伸び率は緩やかだ。厚労省は平日が昨年より1日少なかったことで、時給制で働くパートタイム労働者の所定内給与が0.4%減となったことが響いたとしている。パートでない一般の労働者は0.1%増だった。
一方、ボーナスにあたる特別給与は23.9%増の6810円。残業代など所定外給与は1.2%増の1万9859円だった。比較的規模の大きい企業で労働時間が増えたことが要因。厚労省は「賃金は名目、実質ともに伸びており、各項目でも増えている」とし「賃金は緩やかに増加している」という。

いつもながら、簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、次の毎月勤労統計とも共通して、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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今年春先の3-4月くらいから消費者態度指数はややジグザグな動きを示しつつ、ほぼ横ばいの圏内で推移していたように私は見ていましたが、11月指数では少し上向き基調が読み取れる水準まで達したような気がします。もっとも、マインドを調査したソフトデータですので、何かの拍子に大きくスイングする可能性もあり、ハードデータに裏付けられた足元の景気も回復しているように見えても、その動向は極めて緩やかな回復ですから、消費者マインドの先行きに関しては何とも見通しがたいところです。なお、11月の消費者態度指数を詳しくコンポーネントごとに前月差で見ると、「暮らし向き」が+1.3ポイント上昇し40.9、「耐久消費財の買い時判断」が+1.3ポイント上昇し41.6、「収入の増え方」が+1.1ポイント上昇し41.1、「雇用環境」が+0.8ポイント上昇し46.7をそれぞれ記録し、すべての消費者態度指数の構成項目がそれなりの幅で前月からプラスを示しています。しかも2か月連続です。従って、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では消費者心理の基調判断を従来の「足踏み」から「持ち直しの動き」に上方修正しています。ただし、繰り返しになりますが、このまま1本調子で消費者心理が上向くかどうかについては、現時点では私は確信は持てません。いくぶんなりとも12月のボーナスにも影響されそうな気もします。しかも、次に取り上げる毎月勤労統計のボーナス統計が信頼性低くみなされているので、多くのエコノミストは戸惑っていたりします。

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次に、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。順に、上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、まん中のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与の季節調整していない原系列の前年同月比を、下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の前年同月比伸び率である就業形態別の雇用の推移を、それぞれプロットしています。いずれも影をつけた期間は景気後退期です。まず、上の所定外労働時間の動きについて、月曜日に公表された鉱工業生産指数の季節調整済みの前月比は+1.4%増でしたから、所定外労働時間が前月比でプラスを記録したのと整合的なんですが、+0.4%増はやや幅が小さい気もしないでもありません。下のパネルの賃金の動向については、特に、太線の所定内賃金の前年同月比は緩やかながら徐々に上昇幅を拡大しており、6月の現金給与総額が所定外給与の変動によって一時大きく落ち込んだ要因はいまだに不明ながら、いわゆる恒常所得部分である所定内賃金は着実に増加を示しています。人手不足から労働力確保のためにベアの実施をはじめとする雇用条件の改善が進む方向にあるといえます。ただし、7-9月期がほぼゼロ成長と見込まれ、足元の10-12月期の景気も回復がかなり緩やかになっている中で、量的及び質的に急激な雇用の改善が進行するとは私は考えていませんが、少なくとも、量的にはほぼ完全雇用となっている中で雇用の増加の足取りは落ち着きを見せる可能性が高い一方で、下のパネルに見えるように、まだパートタイム労働者の伸びの方が高いものの、フルタイムも伸びを高めつつあり、質的には賃金上昇や正規雇用の増加などが徐々に進む方向にあるものと期待しています。

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