本年最後の政府統計の発表から何を読み取るか?
本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局の消費者物価(CPI)が、さらに、日銀の企業向けサービス物価(SPPI)が、それぞれ公表されています。いずれも11月の統計です。失業率が全月から0.2%ポイント悪化して3.3%を記録した一方で、有効求人倍率は前月から+0.01ポイント改善して1.25倍となりました。消費者物価の前年同月比上昇率は生鮮食品を除くコア指数で見て5か月振りにプラスに転じて+0.1%を、企業向けサービス物価上昇率は逆にプラス幅を縮小させて+0.2%を、それぞれ示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
完全失業率、11月は3.3%に上昇 自己都合の退職や新規求職増える
総務省が25日発表した11月の完全失業率(季節調整値)は3.3%で、前月比0.2ポイント上昇した。悪化は3カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中央値は3.2%だった。雇用情勢の改善を受け、よりよい職を求めて自己都合で退職する人や新たに職探しをする人が失業者として加わった要因が大きい。総務省は雇用情勢について「引き続き改善傾向で推移している」と分析した。
完全失業者数は217万人で11万人増加した。うち勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は3万人減ったものの、「自発的な離職」は6万人、「新たに求職」している人は5万人それぞれ増えた。特に25-34歳の完全失業率の上昇が目立っており、若年層がよりよい職を求め退職している傾向があるという。
主な産業別の就業者数(原数値)は卸売・小売業や農業・林業で前年同月から減少した。一方で高齢化を背景に、医療・福祉は22カ月連続で増加した。製造業は女性の正社員雇用が進み、9カ月ぶりに増加した。
就業者数(季節調整値)は6358万人で、前月比38万人減少した。仕事を探していない「非労働力人口」は4492万人と23万人増えた。完全失業率を男女別にみると、男性が0.1ポイント上昇の3.5%、女性は0.4ポイント上昇の3.1%だった。
有効求人倍率、11月は1.25倍に上昇 23年10カ月ぶり高水準
厚生労働省が25日発表した11月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.01ポイント上昇の1.25倍と、1992年1月以来23年10カ月ぶりの高水準だった。改善は2カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中央値(1.24倍)を上回った。厚労省は「景気の回復傾向に伴って、求人の増加が続いている」としている。
雇用の先行指標となる新規求人倍率は0.10ポイント上昇の1.93倍と、大幅に改善した。1991年11月(1.94倍)以来24年ぶりの高水準。前年同月と比べた新規求人数(原数値)が9.3%と大幅に増えた。業種別では医療・福祉業が9.9%増、卸売・小売業が11.5%増、宿泊・飲食サービス業が19.6%増、製造業が9.7%増など、主要業種で求人が増えた。高齢化に伴って医療関係の求人も引き続き増えているほか、訪日外国人客の急増などを背景に小売業や宿泊業でも求人が出ている。
有効求人倍率はハローワークで仕事を探す人1人に対する求人件数を示す。倍率が高いほど求職者は仕事を見つけやすいが、企業は採用しづらくなる。11月は有効求職者数(季節調整値)は0.2%増えたものの、有効求人数も増えたことが倍率を押し上げた。正社員の有効求人倍率は0.79倍と、前月比0.02ポイント改善し、調査を開始した2004年11月以来で最高を更新した。都道府県別で最も有効求人倍率が高かったのは東京都の1.85倍、最も低かったのは鹿児島県の0.90倍だった。
全国消費者物価、5カ月ぶり上昇 11月はプラス0.1%
総務省が25日発表した11月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きの大きい生鮮食品を除く総合が103.4と前年同月比0.1%上昇した。QUICKがまとめた市場予想(横ばい)を上回り、5カ月ぶりに上昇した。10月までは3カ月連続で0.1%下落していた。食料(生鮮食品除く)の上昇基調が続き、原油安によるエネルギー品目の価格下落を補った。
食料価格は2.3%上昇し、10月(2.2%)から伸び率が拡大。焼き肉やチョコレートといった品目のほか、新米への切り替えが進んだコメ類の価格なども上昇したという。テレビをはじめ教養娯楽用耐久財も値上がりした。エネルギー関連では灯油やガソリンなど石油製品の価格下落が目立った。品目別では上昇が347、下落は132、横ばいは45だった。
食料・エネルギーを除く「コアコアCPI」は101.7と0.9%上昇し、10月(0.7%上昇)から強含んだ。総務省は物価動向について「エネルギー関連を除けば上昇基調」との見方を変えなかった。
先行指標となる12月の東京都区部のCPI(中旬速報値、10年=100)は、生鮮食品除く総合が101.9と0.1%上昇した。上昇は6カ月ぶり。横ばいだった11月から上振れし、6月(0.1%上昇)以来の水準だった。外食などの食料価格の上昇が目立った。コアコアCPIは0.6%上がり、伸び率は11月と同じだった。
11月の企業向けサービス価格、0.2%上昇 円安一服で伸び鈍化
日銀が25日発表した11月の企業向けサービス価格指数(2010年=100)は103.0と、前年同月に比べ0.2%上昇した。前年比で上昇するのは29カ月連続だが、伸び率は10月確報値の0.4%から0.2ポイント縮小、13年10月以来2年1カ月ぶりの小ささとなった。円安・ドル高の一服が影響した。前月比では0.2%上昇した。
品目別では広告価格が上昇した。単価の高いたばこ広告など新聞広告のマイナス幅が縮小。通信やトイレタリー関連のテレビ広告の上昇幅拡大が寄与した。事務所賃貸の上昇幅が拡大した不動産も全体を押し上げた。
一方、前年比の円安幅が縮小したことで外貨貨物輸送のマイナス幅が拡大した。中国の景気減速による鉄鉱石輸送の減少やドル高による競争力低下で米国からの穀物輸送が減少し、大型の不定期船の価格が下落した。
宿泊サービスも全体を押し下げた。パリの同時多発テロで欧州からの旅行客によるキャンセルがあったほか、韓国の中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)の終息で中国からの旅行客が韓国に向かったことが響き、伸び率は7.9%と5カ月ぶりに一桁台にとどまった。
上昇品目は57、下落は53。上昇品目と下落品目の差は4と、前月の12から縮小した。日銀は「プラス幅の縮小は国際運輸の市況などが主因で契約更改が集中する4月までは大きな動きは見込みにくい」(調査統計局)と説明している。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など企業間で取引されるサービスの価格水準を示す。
いずれも網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。しかし、4つもの統計の記事を一気に並べるとそれなりのボリュームになります。これだけでお腹いっぱいかもしれません。続いて、雇用については、以下のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。
有効求人倍率がさらに上昇して、基本的には人手不足が続いていることは明らかですが、11月単月の統計ながら、総務省統計局の労働力調査からは少しよからぬ傾向のデータが出始めていると私は受け止めています。すなわち、あくまで11月単月の統計ながら、供給サイドの労働力人口が前月から▲26万人減少し、需要サイドの雇用者数も▲38万人減少しています。労働市場において需要と供給ともに減少している点を重視して、極めて悲観的に見れば、人手不足から縮小均衡に陥る可能性があると見ることも出来ます。もちろん、重ねて主張しておくと、有効求人倍率はまだ改善を示していますし、先行指標である新規求人倍率も上昇しています。ですから、労働力調査における統計数値の綾だという気はしますが、あくまで超悲観論者の見方をすればそういう捉え方も出来なくはない、という程度のことであり、昨夜のブログでも指摘した通り、基本的には、労働需給は人手不足で推移しており、雇用の量的な拡大・増加から賃金上昇や正規雇用の増加などの質的な改善も見込める局面に差しかかっていると私は考えています。
次に、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが11月中旬値です。これまた、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。ということで、引用した記事にもある通り、コアCPI上昇率は5か月振りのプラスを記録しています。ただ、国際商品市況における原油価格の下落などのエネルギー価格次第の物価展開ともいえます。ですから、今年8月に+0.8%を記録してから、エネルギー・食料を除くコアコアCPIの上昇率は+1%に近い数字が続いており、11月には+0.9%に達しています。基本的には、物価はデフレを脱する方向にあると私は考えていますが、政府も力こぶを入れて民間企業に圧力をかけている賃金上昇との関係で、春闘が冴えない結果に終わるようであれば、日銀も本格的な追加緩和を模索する可能性が残されているような気がしています。
最後に、企業向けサービス物価上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしています。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。人手不足による賃金上昇などを背景に、企業向けサービス物価(SPPI)も基本的にはプラスを維持しており、変動の激しい国際運輸を除くコアSPPI上昇率は11月も先月や先々月と同じ+0.5%を示しています。寄与度で見て、運輸・郵便のほかに宿泊サービスもマイナスですが、広告や不動産のうちの事務所賃貸はプラスとなっています。大きな変動は見られないと受け止めています。
我が家で購読している朝日新聞の今日の夕刊1面では、このブログで取り上げたような指標ではなく、家計調査の落ち込みを報じていました。11月の家計調査は前年同月比で▲2.9%の落ち込みを記録しています。私のこのブログでは消費の動向は総務省統計局の家計調査ではなく、経済産業省の商業販売統計から追いかけています。来週月曜日に鉱工業生産とともに公表される予定となっていますので注目です。
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