堅調な米国雇用統計から米国の利上げを考える!
日本時間の昨夜、米国の労働省から11月の米国雇用統計が公表されています。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月から+211千人増加し、失業率は前月と同じ5.0%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから記事を最初の4パラだけ引用すると以下の通りです。
Robust Jobs Report All but Guarantees Fed Will Raise Rates
Consider it a done deal.
American employers expanded their payrolls at a robust pace in November, the government reported Friday, all but guaranteeing policy makers at the Federal Reserve will raise interest rates for the first time in nearly a decade when they meet later this month.
In addition to 211,000 new hires last month — a bit more than Wall Street had expected — the Labor Department also revised upward its earlier estimate of job creation in September and October by a total of 26,000. The unemployment rate was unchanged at 5 percent.
The labor market strength evident in the November data removes the last major uncertainty before the Fed decision.
この後にエコノミストなどへのインタビューが続きます。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。
非農業部門雇用者数の増加について、市場の事前コンセンサスはほぼ200千人でしたから、統計の実績はこれを上回りましたし、前月10月と前々月9月の雇用者の増加も上方改定されています。最近3か月の雇用者増は平均で218千人、今年に入って11月までの雇用増は月平均で21万人、11か月合計では軽く2百万人を超えています。さすがに失業率は5%でほぼ完全雇用水準に達したようで、ここからさらに低下するには時間がかかる可能性が高いと私は考えていますが、誰がどう見ても米国雇用は実に堅調であり、米国連邦準備制度理事会(FED)が今月15-16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げに踏み切るのは間違いないと私は受け止めています。12月2日のイエレン議長の講演と昨日発表されたこの米国雇用統計とを合わせて見る限り、多くのエコノミストも同じように考えていると私は理解しています。
また、日本やユーロ圏欧州の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。サブプライム・バブル崩壊前の+3%超の水準には復帰しそうもないんですが、まずまず、コンスタントに+2%のラインを上回って安定して推移していると受け止めており、少なくとも、底割れしてかつての日本や欧州ユーロ圏諸国のようにゼロやマイナスをつけてデフレに陥る可能性は小さそうに見えます。
今月に入って、友人であるシンクタンクのエコノミストととても非公式に意見を交わす機会がありました。12月中の米国の利上げはほぼ市場でも織り込まれつつある一方で、日本経済への影響は限定的と見ているエコノミストが多いものの、私もそれなりに注目しています。
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