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2016年1月12日 (火)

景気ウオッチャーと消費者態度指数に見るマインドの改善と震災前の水準に戻りつつある経常収支!

本日、内閣府から供給サイドと需要サイドの典型的なマインド指標である景気ウォッチャー消費者態度指数が、また、財務省から経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーと消費者態度指数は12月の統計で、経常収支は11月です。景気ウォッチャーの現状判断DIは前月から+2.6ポイント上昇して48.7を、また、先行き判断DIは前月と同じ48.2を記録し、消費者態度指数も+0.1ポイント上昇して42.7を示しています。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で1兆1435億円の黒字となりました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインなどを報じた記事を引用すると以下の通りです。

街角景気、現状判断指数は2カ月ぶり上昇 12月 基調判断は据え置き
内閣府が12日発表した2015年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比2.6ポイント上昇(改善)の48.7だった。改善は2カ月ぶり。好況の目安となる50に届かなかったものの、季節調整値では3カ月連続で50を上回った。家計動向と企業動向、雇用関連のいずれの指数も上昇した。ボーナスの支給などを背景に消費者心理が上向いた。
街角からは「年末、ボーナス時期のため来客数の動きが良い」(中国地方の家電量販店)、「ボーナス月などの影響もあって比較的高価格帯の国産ワインに人気が集まっている」(北関東の食料品製造業)との声が出ていた。半面、気温が高めに推移したため「冬物の売り上げが低迷している」(四国のスーパー)との見方もあった。内閣府は「中国経済に関わる動向の影響などがみられるが、緩やかな回復基調が続いている」との基調判断を変えなかった。
2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は、前月から横ばいの48.2だった。11月は前月比0.9ポイント低下していた。「年末でボーナスが出たのか来客数は増加したが、ボーナスの効果がなくなるとまた減少する」(近畿の一般レストラン)と警戒する声も出ていた。内閣府は先行きに関して「中国経済の動向など海外情勢への懸念がある一方で、観光需要や受注の増加、雇用の改善への期待などがみられる」とまとめた。
12月の消費者態度指数、0.1ポイント上昇の42.7 原油安が寄与
内閣府が12日発表した2015年12月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.1ポイント上昇の42.7だった。3カ月連続で前月を上回った。ガソリン価格の低下傾向が続いたことなどが寄与した。ただ株価の下落もあり、伸びは小幅だった。内閣府は消費者心理の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
4つの意識指標のうち、「暮らし向き」や「収入の増え方」が上昇した。その一方、「雇用環境」は前月から0.4ポイント低下した。「耐久消費財の買い時判断」は横ばいだった。
1年後の物価見通しについて「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月から1.0ポイント低下し、81.1だった。
調査基準日は12月15日。全国8400世帯が対象で、有効回答数は5493世帯(回答率は65.4%)だった。
経常黒字17カ月連続、15年11月1.1兆円 原油安で輸入減
財務省が12日に発表した2015年11月の国際収支統計(速報)によると、モノやサービスなどの海外との取引状況を表す経常収支は1兆1435億円の黒字だった。黒字は17カ月連続で、黒字額は前年同月比で7033億円増えた。原油価格の下落で輸入額が減った一方、海外から受け取る特許の使用料や配当収入などが増えた。訪日外国人の増加で旅行収支の黒字も拡大した。
経常黒字は15年7月以降、1兆円を超える水準が続いている。貿易収支は2715億円の赤字になったが、赤字額は前年同月と比べて3598億円減った。輸出額はアジア向けの鉄鋼などが低調で6.3%減だったが、輸入額も原油安で10.9%減ったことで貿易赤字が縮小した。
サービス収支は615億円の黒字になった。前年同月は978億円の赤字だった。このうち特許や著作権などの使用料は3835億円の黒字、訪日外国人の国内消費額を映す旅行収支は985億円の黒字だった。それぞれ11月として過去最大の黒字になった。
企業の海外での稼ぎを表す第1次所得収支は前年同月比2697億円増の1兆5423億円の黒字だった。海外の子会社などから受け取る株式配当が増えた。

3つの記事を引用したので、とても長くなってしまいました。でも、いずれも、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気ウォッチャーと消費者態度指数のグラフは以下の通りです。上のパネルの景気ウォッチャーのグラフには現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。色分けは凡例の通りです。下のパネルの消費者態度指数のグラフはピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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マインド指標は景気ウォッチャー・消費者態度指数とも12月統計では改善を示しています。要因として考えられるのは年末ボーナス効果と石油価格の下落です。この2つが相まって実質購買力が上昇したんではないかと私は考えています。例えば、自動車ユーザーにはガソリン価格低下は家計を助ける恩恵ですし、ボーナスで収入が増加していればなおさらです。ただ、景気ウォッチャーの先行き判断DIが横ばいだったのは、引用した記事にもある通り、ボーナス要因はサステイナブルではなく、先行きでは剥落する可能性が高いと考えるべきです。さらに、消費者態度指数のコンポーネントを見れば、暮らし向きや収入の増え方は前月から改善しているものの、雇用環境だけは前月から悪化を示しています。上のグラフを見る限り、消費者態度指数は2015年末から緩やかながら改善を続けているように見えますが、一直線でマインドが改善するとは私は考えていません。すなわち、景気ウォッチャーと消費者態度指数の両方のマインド指標に共通して、年明け以降の上海市場や東証などの株価の下落が、どのように我が国の消費者や消費者に近い供給サイドのマインドに影響するかが不透明です。今後の留意点となる可能性が高いと受け止めています。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれませんが、経常収支についてもかなり震災前の水準に戻りつつある、と私は受け止めています。例えば、私の方で経常収支黒字の名目GDP比を四半期ごとに計算したところ、2015年に入って、1-3月期+3.1%。4-6月期+3.4%、7-9月期+2.9%と、それなりの黒字幅を確保するようになっています。そして、経常収支のコンポーネントに着目すると、貿易収支が11月統計ではプラスを示しており、小幅の赤字にとどまったサービス収支と合わせた貿易サービス収支が黒字に転じています。2011年3月の震災以来、季節調整済みの系列で経常収支ベースの貿易サービス収支が黒字を記録したのは、2015年3月と11月だけであり、基本的には、輸出額の増加ではなく輸入額の減少、特に、国際商品市況における石油価格の低下に起因するとはいえ、貿易収支が赤字を脱しつつあることは事実であり、加えて、インバウンド観光客の「爆買い」により貿易サービス収支の黒字が早期に定着するする可能性は十分にあると私は受け止めています。

最後に、本日発表の経済指標を離れて、Financial Times (FT) と日経新聞で、FTのコラムニストのマーティン・ウルフがアベノミクスに対する悲観的な先行き見通しのコラムを書いています。このブログでも昨年大みそかの2015年12月31日付けのエントリーで、FTの2016年予想に "Will Abenomics fail in 2016?" というのがあると紹介しましたが、FTはアベノミクス失敗の予想のようです。リンクは以下の通りです。ご参考まで。

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