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2016年1月13日 (水)

日本財団「子どもの貧困の社会的損失推計」の詳細結果やいかに?

12月6日付けの読書感想文で少しだけ触れて、メディアの記事のリンクだけ示した日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる「子どもの貧困の社会的損失推計」の結果が、旧聞に属する話題ながら12月21日に明らかにされています。詳細なリポートもアップされています。とても興味ある調査結果ですので紹介しておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、リポートから p.26 図表 22 性別・経済状態別の最終学歴人口割合 を引用しています。リポートでは、最初にノーベル賞経済学者であるヘックマン教授の論文 "Skill Formation and the Economics of Investing in Disadvantaged Children" (Science, Vol.312 no.5782) から就学前、就学中、就学後の3段階の人的資本投資の収益率のグラフを示し、「子どもたちに対する投資は、公平性や社会正義を改善すると同時に、経済的な効率性も高める非常にまれな公共政策である」と指摘しています。その意味で、ひとつの指標としての教育の結果たる学歴はそれなりの意味を持つと私は考えています。上のグラフから明らかなように、「非貧困」家庭に置いては大卒の割合が、「生活保護」、「児童養護施設」、「ひとり親」と比較してかなり高いのが見て取れます。逆に、特に「生活保護」と「ひとり親」では中卒の割合が高いのも見て取れます。

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次に、上のグラフは、リポートから p.46 図表 44 学歴別人口および就業形態の推計結果 を引用しています。最初にお示しした学歴構成に加えて、その結果たる正規雇用と非正規雇用などの就業形態別人口に平均所得を乗じ、そこから社会全体での所得額や社会保障負担などを推計しています。上のグラフはその途中段階なんですが、海外の先行研究であるペリー就学前教育計画やアベセダリアン・プロジェクトなどを参考に、子供の貧困に対応した教育プログラムを採用すると仮定して、見れば明らかな通り、上半分の「現状シナリオ」では下の「改善シナリオ」と比べて、大卒がほぼ倍増する一方で中卒が激減し、正規職員が増加して非正規職員や無職者がやや減少する、という結果が示されています。

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最後に、上のグラフは、リポートから p.47 図表 45 社会的損失の推計結果の概要 を引用しています。差分がマイナスで示されているのがやや不思議なんですが、改善シナリオでは所得が+2.9兆円増加し、税・社会保障負担も+1.1兆円の増加が見込める、との結果が示されています。もちろん、符号をマイナスのままで示せば、現状を継続して改善を実施しない場合、所得で▲2.9兆円のロスを生じ、税・社会保障負担でも▲1.1兆円の社会的損失につながりかねない、という含意であることは明らかです。

最後に、私の従来からの主張なんですが、現在の日本の社会保障はシルバー・デモクラシーによって大きく歪められており、高齢者に偏りが見られます。高齢者は10年を経ても高齢者のままであるのに対して、子供や若年者は10年を経過すれば立派な社会人や納税者になる可能性を秘めていることは忘れるべきではありません。また、リポートp.50以下に今後の課題がいくつか記載されていますが、本リポートのひとつの欠点は供給サイドに偏った分析であるという点です。「大学は出たけれど」という言葉があるように、教育投資に見合う雇用がなければその力量を社会的に発揮できない可能性もあります。子供に限らず貧困対策のひとつの柱として、需要サイドの重要性も主張しておきたいと思います。

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