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2016年1月 8日 (金)

足踏みを続ける景気動向指数と賃金上昇が止まった毎月勤労統計!

本日、内閣府から景気動向指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。いずれも11月の統計です。景気動向指数のヘッドラインとなるCI一致指数は前月から▲1.7ポイント下降して111.6となり、CI先行指数も▲0.3ポイント下降して103.9を記録しています。また、毎月勤労統計の現金給与総額は季節調整していない原系列の統計で見て前年同月と比べて横ばい、ただし、所定内給与は+0.5%増となり、さらに、景気に敏感に反応する製造業の所定外労働時間は季節調整済みの系列で前月比+0.2%増を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の景気一致指数、2カ月ぶりマイナス 基調判断変えず
内閣府が8日発表した2015年11月の景気動向指数(2010年=100、速報値)によると、景気の現状を示す一致指数は111.6で、前月から1.7ポイント下がった。マイナスは2カ月ぶり。10月(改定値)は1.5ポイント上昇の113.3だった。直近数カ月の平均値などから機械的に判断する景気の基調判断は、昨年5月以降の「足踏みを示している」から変えなかった。
前月と比較可能な構成8指標のすべてが一致指数の低下につながった。全指標がマイナス寄与となるのは、現行系列ベースで12年9月以来という。11月の一致指数の悪化に最も影響したのは中小企業出荷指数(製造業)で、電気機械や金属製品などの業種が振るわなかった。自動車や薄型テレビなどが低迷した耐久消費財出荷指数のほか、鉱工業用の生産財出荷指数や商業販売額の低迷も重荷となった。
数カ月先の景気を示す先行指数は0.3ポイント低下の103.9で、2カ月ぶりに低下した。最終需要財の在庫率指数や、日経商品指数などが先行指数の押し下げ要因となった。
実質賃金、11月は0.4%減 5カ月ぶり減少、名目は横ばい
厚生労働省が8日発表した2015年11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、現金給与総額から物価変動の影響を除いた実質賃金指数は前年同月比0.4%減と、5カ月ぶりに減少した。名目賃金が横ばいにとどまった半面、消費者物価指数がプラスになったことが響いた。賞与や定期代などが含まれる特別給与が大幅に減少した。一方で基本給や残業代などは増えており、厚労省は「名目賃金は緩やかな増加基調」にあるとみている。
従業員1人当たり平均の現金給与総額(名目賃金)は横ばいの27万4108円だった。15年10月まで4カ月連続で増加していたが、11月は前年並みにとどまった。特別給与は8.6%減の1万4097円だった。厚労省は15年1月に調査の約半数にあたる、30人以上の事業所の調査対象を入れ替えた影響があったとみている。一方、基本給や家族手当にあたる所定内給与は0.5%増の23万9818円。昨春のベースアップにより9カ月連続で増加した。残業代など所定外給与は1.1%増の2万193円だった。
所定外労働時間は0.9%減の11.2時間。製造業の所定外労働時間は横ばいの16.6時間だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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景気動向指数はCI一致指数、CI先行指数とも11月は下降しました。特に、CI一致指数は10月統計で久し振りに3か月後方移動平均がプラスに転じましたので、このまま1標準偏差以上にプラスに振れると、「『CIによる景気の基調判断』の基準」に示されている通り、基調判断が「下げ止まり」に上方修正される可能性が出て来たと感じないでもなかったんですが、結果はそうなりませんでした。すなわち、11月の1次統計についてはすでにかなり明らかになっており、景気との相関の高い鉱工業生産指数のうちの生産指数と出荷指数がともにマイナスでしたから、大方のエコノミストにはCI一致指数もマイナスというコンセンサスがあったように受け止めています。ですから、もともと2次統計で透明性の高い統計とはいうものの、CI一致指数に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスはドンピシャの▲1.7ポイント下降でした。くわしくCI一致指数の系列別の寄与度を見ると軒並みマイナスばかりで、中小企業出荷指数(製造業)、耐久消費財出荷指数、商業販売額(小売業)(前年同月比)、鉱工業用生産財出荷指数、投資財出荷指数(除輸送機械)、生産指数(鉱工業)などとなっています。12月の年末ボーナスがまずまずではなかったか、と私は考えていますので、これから明らかにされる12月統計に期待したいと思います。

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次に、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。順に、上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、まん中のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与の季節調整していない原系列の前年同月比を、下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の前年同月比伸び率である就業形態別の雇用の推移を、それぞれプロットしています。いずれも影をつけた期間は最初の景気動向指数のグラフと同じで景気後退期です。11月の賃金は前年同月と比べて横ばいとなり、物価上昇分を差し引いた実質賃金はマイナスとなった点を引用した記事では強調している一方で、同様に、記事では昨年1月からの統計のサンプル替えの影響も指摘しており、重点がどこにあるのかはよく分かりませんが、少なくとも、とても緩やかながら賃金が上昇しているのは事実と考えるべきです。もちろん、巷間いわれるような人手不足に比較して賃金の上昇が鈍いのは事実であり、私の考えるようなタイムラグの問題なのか、労働市場の構造的な問題なのか、そのあたりは足元のデータの不足もあって分析不足かもしれません。でも、経団連による「2015年年末賞与・一時金 大手企業業種別妥結結果」によれば、加重平均で大手企業の年末ボーナスは前年比+3.79%ぞうですから、12月統計に期待が持てそうな気もします。また、大きな流れとして、少なくとも、量的な雇用の増加から質的な賃金上昇や正規雇用の増加へのルートに乗っていることは事実であろうと私は受け止めています。問題はそのテンポです。賃上げについては、過去の数字ながら年末ボーナスとともに、先行きは今春闘の妥結状況を注目したいと思います。

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最後に政府統計を離れて、一昨日1月6日に、世銀から「世界経済見通し」Global Economic Prospects が公表されています。上の画像は縮小をかけたので見づらいんですが、世銀のサイトにアップされている Infographic です。もちろん、300ページ近いpdfの全文リポートもアップされています。
昨年2015年の実績見込の世界経済の成長率は+2.4%と、昨年6月時点の見通しから▲0.4%ポイント下方修正し、今年2016年も+2.9%と、昨年よりは上向くものの2015年6月時点から▲0.4%ポイントの下方修正となっています。日本経済については2016年の成長率を+1.3%とまずまずの水準に見込んでいます。でも、これも世界平均と同じで前回見通しよりも▲0.4%ポイント下振れしています。また、Chapter 4でTPPの経済効果と為替の2つのトピックを取り上げており、前者のTPPの分析では2030年までに日本のGDPを+2.7%押し上げると試算しています。一昨日に取り上げた政府試算とほぼ同じと受け止めています。でも、p.227 の FIGURE 4.1.6 Country specific impact of TPP: GDP and trade by 2030 を見る限り、TPPのメンバー国の中でGDPの増加幅が大きいのは、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、ニュージーランド、シンガポーツに次いで6番目となっており、TPPメンバー12国の中では平均的なのかもしれません。それから、よく読んでいないんですが、Chapter 3のタイトルが奮っていて、Who Catches a Cold When Emerging Markets Sneeze? となっています。その昔、「米国がくしゃみをすれば日本が風邪をひく、米国が風邪を引けば日本は肺炎になる」とか表現された時代もありましたが、現在では世界経済の中心は新興国なのかもしれません。

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