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2016年2月15日 (月)

2015年10-12月期1次QEは前期比年率▲1.4%のマイナス成長!

本日、内閣府から昨年2015年10-12月期のGDP統計が公表されています。エコノミストの業界で1次QEと呼ばれているのは広く知られた通りです。季節調整済みの系列の前期比成長率で▲0.4%、前期比年率で▲1.4%のマイナス成長を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月実質GDP、年率1.4%減 2期ぶりマイナス
消費・住宅投資が低迷

内閣府が15日発表した2015年10-12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.4%減、年率換算では1.4%減だった。15年7-9月期(年率換算で1.3%増)から下振れし、2四半期ぶりのマイナス成長に転じた。個人消費や住宅投資など国内需要が低迷した。
QUICKが12日時点で集計した民間予測の中央値は前期比0.3%減、年率で1.3%減だった。
生活実感に近い名目GDP成長率は前期比0.3%減、年率では1.2%減だった。名目でも2四半期ぶりのマイナスとなった。
実質GDPの内訳は、内需が0.5%分のマイナス寄与、外需は0.1%分のプラス寄与だった。
項目別にみると、個人消費は0.8%減と、2四半期ぶりのマイナスだった。前四半期(0.4%増)から減少に転じた。暖冬で冬物衣料などの売れ行きが鈍かった。円安による食料品の値上げなどで消費者の節約志向が根強く、実質賃金の伸び悩みも低迷の一因となった。価格上昇を背景に住宅投資は1.2%減で4四半期ぶりマイナス、過年度の補正予算の効果が一巡した公共投資は2.7%減で2四半期連続のマイナスだった。
一方、設備投資は1.4%増と2四半期連続のプラスとなった。底堅い企業収益から更新需要などがみられた。企業が手元に抱える在庫の増減を示す民間在庫の寄与度は、0.1%のマイナスだった。
輸出は0.9%減、輸入は1.4%減だった。輸出は減少したが、原油安を受けて輸入量が減少し、GDP成長率に対する外需寄与度はプラスを確保した。GDPで個人消費ではなく輸出に計上されるインバウンド(訪日客)需要は輸出を下支えした。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス1.5%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.2%下落した。
2015年度の実質成長率が内閣府の試算(1.2%程度)を達成するには、16年1-3月期で前期比年率8.9%程度の伸びが必要になるという。
同時に発表した15年暦年のGDPは実質で前年比0.4%増、生活実感に近い名目で2.5%増となった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2014/10-122015/1-32015/4-62014/7-92015/10-12
国内総生産GDP+0.6+1.0▲0.3+0.3▲0.4
民間消費+0.6+0.2▲0.8+0.4▲0.8
民間住宅▲0.4+2.1+2.3+1.6▲1.2
民間設備▲0.0+2.8▲1.2+0.7+1.4
民間在庫 *(▲0.2)(+0.5)(+0.3)(▲0.2)(▲0.1)
公的需要+0.2▲0.4+0.9▲0.2▲0.1
内需寄与度 *(+0.3)(+1.0)(▲0.0)(+0.1)(▲0.5)
外需寄与度 *(+0.3)(▲0.0)(▲0.3)(+0.2)(+0.1)
輸出+3.2+2.1▲4.6+2.6▲0.9
輸入+1.1+1.9▲2.6+1.3▲1.4
国内総所得 (GDI)▲0.5+0.4+2.2+0.2▲0.3
国民総所得 (GNI)+0.7+2.0+0.1+0.4▲0.3
名目GDP+1.0+1.9▲0.0+0.6▲0.3
雇用者報酬 (実質)+0.1+0.8▲0.1+0.7+0.2
GDPデフレータ+2.3+3.3+1.5+1.8+1.5
内需デフレータ+2.1+1.4+0.0+0.0▲0.2

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2015年10-12月期の最新データでは、前期比成長率がマイナスに転じ、特に、赤い消費のマイナス寄与が大きい一方で、水色の設備投資と黒の外需がプラス寄与しているのが見て取れます。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは年率▲1.3%でしたから、ほぼジャストミートしたと私は受け止めています。ですから、市場の反応は対GDP統計に関してはほぼインパクトはなかったのではないかと私は想像しています。主たるマイナス成長要因は消費であり、暖冬などのイレギュラーな天候要因による衣料品や暖房器具などの季節商品の売れ行き不振と考えられます。設備投資は7-9月期に続いて2四半期連続で前期比プラスとなりましたが、まだ、日銀短観などで示された設備投資計画とは差があると受け止めています。輸出入については、輸出・輸入とも減少したため、外需の寄与度はほぼゼロなんですが、輸入の減少の方が大きくて寄与度はプラスとなっています。先行きについては、10-12月期の経済の姿から見て、消費がどこまで回復するかに依存します。多くのエコノミストの基本的な見方としては、人手不足に加えて政府の音頭取りもあって、賃金が企業収益に合わせた形で緩やかに上昇し、所得要因の改善から消費が持ち直す方向であり、このまま本格的な景気後退に陥る可能性は小さいと私は予想しています。おそらく、足元の1-3月期は小幅のプラス成長に戻ると考えられますが、それは今年がうるう年である効果も含んでのことであり、賃上げによる所得増加の効果が実感できるまでには少し時間がかかる可能性があります。年明け以降の金融市場の動揺の影響で、家計の所得とともに企業の業績が不透明感を増しており、先行き見通しとともに設備投資の方向感も日銀短観などに示された設備投資計画から異なってくる可能性も否定できません。

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最後に、本邦初公開のグラフで、インバウンド消費、すなわち、GDP統計では消費ではなく輸出に計上されている訪日観光客による「非居住者家計の国内での直接購入」のグラフは上の通りです。物価上昇の影響を除去した実質の実額であり、季節調整済みの年率の額です。2013年ころまでは年1兆円のペースだったんですが、今では2015年10-12月期には年3兆円のペースを越えています。季節調整済みの系列で見て2015年の各四半期の前期比伸び率は、1-3月期+16.7%、4-6月期+6.7%、7-9月期+8.3%、10-12月期+10.1%を記録しています。「爆買い」と称される実態が統計的に確認できると思います。

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