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2016年2月26日 (金)

前年比で横ばいを記録した消費者物価上昇率の先行きやいかに?

本日、総務省統計局から1月の消費者物価(CPI)が公表されています。生鮮食品を除くコアCPI上昇率は前年同月と比べて横ばいとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

全国消費者物価、1月は横ばい 市場予想と一致、12月から鈍化
総務省が26日発表した1月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合が102.6と、前年同月比では6カ月ぶりに横ばいとなった。QUICKの市場予想(横ばい)と一致した。同指数は15年10月に0.1%下落後、12月までは2カ月連続で0.1%上昇していた。原油安で灯油やガソリン、電気代などエネルギー関連品目が下振れし、前月から物価上昇の勢いが鈍った。
1月の食料(生鮮食品除く)価格は2.1%上昇した。ただ前年同月に外食をはじめ幅広い品目でみられた値上げに一巡感も出てきたといい、物価の勢いは12月よりやや鈍った。家庭用耐久財では、暖冬で需要が高まらなかったルームエアコンの値引きセールの影響もあったという。食料・エネルギーを除く「コアコア」の指数は100.9で0.7%上昇し、12月(0.8%)から伸びが縮小。生鮮食品含む総合は横ばいだった。
先行指標となる東京都区部のCPI(中旬速報値、10年=100)は、2月の生鮮食品除く総合が101.3と、前年同月から0.1%下落した。下落率は15年12月と同じで、2カ月連続のマイナスとなった。原油価格の下落でエネルギー関連が軒並み下がった。一方、コアコアCPIは0.5%上昇し、前月から伸び率が拡大。宿泊料や外国パック旅行が値上がりした。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが2月中旬値です。いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。

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日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではコアCPI上昇率は横ばいとされていましたので、ジャストミートしました。コアCPI上昇率の大きな鈍化は国際商品市況における石油価格の下落に伴うものです。例えば、グラフは示しませんが、財サービス別のCPI前年同月比上昇率を見ると、1月では財が▲0.5%の下落を示した一方で、サービスは+0.4%の上昇を記録しています。すなわち、石油価格下落の影響が大きい財価格が下落を示している一方で、人手不足の影響を受けやすいサービス価格は上昇を記録している、ということになります。さらに、物価の先行きについて考えると、コアCPI上昇率は早ければ来月公表の2月統計から再びマイナスになり、年央から夏場にかけて最大で▲1%近い下落を見せる可能性があると私は受け止めています。というのは、たとえ国際商品市況における石油価格がこの先2-3月でバレル30ドル近辺で底を打つと仮定しても、電気代・都市ガス代の改定は制度上1-2四半期遅れるため、消費者物価に反映される国内のエネルギー物価は少なくとも年央ないし夏場くらいまでは下落幅が拡大しかねないからです。現時点では、コアCPI上昇率がゼロを示す中で、上のグラフに見える通り、私の計算に従えば、1月の寄与度ベースでエネルギーは▲0.99%、生鮮食品を除く食料が+0.48%、それ以外のいわゆるコアコア部分が+0.51%となっており、このエネルギー部分がコアCPI上昇率に対してマイナス寄与を拡大すると考えられます。加えて、先行きで円高が進めばCPI上昇率がさらに下振れする可能性も否定できません。例えば、毎年の Byron Wien による The Ten Surprises of 2016 では米国連邦準備制度理事会(FED)の利上げペースが2016年中は1回にとどまるとのサプライズ予想もあったりしますので、為替相場の動向は不透明です。

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最後に参考まで、上のグラフは勤労者世帯の所得分位別で見た消費者物価上昇率の推移をプロットしています。ただし、もっとも所得の低い第Ⅰ分位と逆にもっとも所得の高い第Ⅴ分位だけを抜き出してプロットしています。なお、総務省統計局の解説に従えば、第Ⅰ分位と第Ⅱ分位の境界は年間所得で430万円、第Ⅳ分位と第Ⅴ分位の境界は919万円です。上のグラフを見れば明らかなんですが、2011-12年くらいまではともかく、2014年の消費税率引上げから最近時点まで、所得の高い第Ⅴ分位の消費バスケットに対する消費者物価上昇率が所得の低い第Ⅰ分位の物価上昇率を上回って推移しているようです。

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