連合総研 「連合の春闘結果集計データにみる賃上げの実態」やいかに?
今週の月曜日2月1日に、連合総研から「連合の春闘結果集計データにみる賃上げの実態」と題するリポートが公表されています。on-going の2016年春闘ではなく、昨年2015年春闘の賃上げ結果を取りまとめた分析結果ですが、一昨日2月2日と昨日の2月3日の日経新聞の経済教室で取り上げられていたように、今年の経済の動向を占ううえでも賃上げのゆくえは極めて重要であり、昨年の賃上げ結果とはいえ、このリポートから、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、リポートから定昇とベアの合計金額の賃上げの分布状況のグラフを引用すると上のグラフの通りです。単純集計ベースでは5000円以下も少なくないんですが、組合員数ベースでは6000-6500円に山があるように見えます。単純集計よりも組合員数の加重平均の方が分布が右寄りにシフトしているのは、明らかに、組合員が多い、すなわち、従業員規模の大きい企業の方が賃上げ額が大きくなっているためと考えるべきです。
ということで、次に、リポートから組合員ベースで定昇とベアの合計の賃上げについて、規模別賃上げ動向を引用すると上のグラフの通りです。明らかに、規模の大きい企業ほど賃上げ額も大きい、との結果が示されており、また、中央値と平均値の差は余りありません。ただ、規模別で同じセグメントであっても第1分位と第3分位で1.5倍近い差がある場合も散見されます。また、グラフの引用はしませんが、業種別賃上げ動向を見ると、アベノミクス下で為替の円安化などの恩恵を受けている製造業が平均を上回る賃上げ額を達成しています。
最後に、リポートから組合員ベースで定昇とベアの合計の賃上げについて、地域別賃上げ動向を引用すると上のグラフの通りです。地域別でありながら、「その他」というのはやや不明なんですが、「複数の都道府県で企業活動を行い特定の都道府県に属さない企業」という定義らしく、賃上げ額も大きくなっていますので、規模の大きな企業ではないかと想像しています。その「その他」を別にすれば、やはり、東海、関東、近畿といった都市部の比率の高い地域の賃上げが大きい、との結果が示されています。また、グラフは引用しませんが、北海道・東北、九州、四国ではベアゼロ企業の割合も高くなっています。
連合の昨年2015春闘の賃上げデータから、いくつかグラフを引用しましたが、引用したグラフなどから明らかな通り、規模別では大企業ほど、また、地域別でも都市部ほど賃上げが大きいという傾向が見られ、賃金引上げが中小企業や地方に波及するかどうかも今春闘の眼目となっています。加えて、テーブルは引用しませんが、リポート p.14 表5 賃上げの格差の動向 では、2014春闘より2015春闘の方が賃金引上げにおける格差が拡大している、との結果が示されています。賃金引き上げ幅の大きさとともに、規模別や地域別をはじめとする格差是正も今春闘の大きな注目点のひとつかもしれません。
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