本日公表の機械受注は先行き設備投資の増加を示唆しているか?
本日、内閣府から12月の機械受注が公表されています。船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比+4.2%増の8066億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
機械受注、12月は前月比4.2%増 金融など非製造業がけん引
内閣府が17日発表した機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の2015年12月の受注額(季節調整値)は前月比4.2%増の8066億円だった。同年11月に14.4%減と大きく落ち込んだ反動が出て、2カ月ぶりにプラスとなった。製造業(3.4%減)が2カ月連続で減る一方、非製造業が8.5%伸びた。金融業・保険業や通信業から通信機や電子計算機の受注が増えた。機械受注の基調判断は前月と同じ「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
内閣府は3カ月ごとに、調査対象企業に受注額見通しを聞いている。
16年1-3月期の受注額は前期比8.6%増になる見通しで、四半期の伸び率の見通しとしては過去2番目となる。製造業は12.0%増、非製造業は5.5%増の見込みとなった。バスなどを含む道路車両や鉄道車両、原動機などの機種が伸びるとみている。
ただ内閣府は「製造業をここまで大きく押し上げるような背景は見当たりにくい」と説明。企業の見込み額を集計し、過去3四半期の達成率を計算に入れて見通しを出すため、製造業は4-6月期の達成率が記録的な高さだった影響も含まれているという。内閣府の見通しを達成するには、1月以降の単月の伸び率で前月比5.6%以上が必要になる。
15年10-12月期実績は前期比4.3%増の2兆4842億円となり、当初の内閣府見通し(2.9%増)を上回った。運輸業・郵便業や通信業といった非製造業がけん引した。当初見通しをどの程度実現したかを示す達成率は103.3%となり、7-9月期から上昇した。
15年暦年の受注額(船舶・電力除く民需)は前年比4.1%増の10兆891億円だった。08年以来、7年ぶりに10兆円を超えた。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。さすがに、景気敏感指標ですので、暦年統計への注目度はかなり低いようです。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスはコア機械受注の季節調整済みの前月比で+5.2%増でしたので、やや物足りない気がしないでもないものの、ほぼ市場に織り込み済みのレベルで着地したようです。また、コア機械受注の四半期データで見て、10-12月期は前期比+4.3%増で、うち製造業が+0.5%増、また、船舶・電力を除く非製造業は+6.9%増と、非製造業主導で増加を示し、さらに、先行き今年2016年1-3月期の見通しも前期比+8.6%増、うち製造業が+12.0%増、非製造業は+5.5%増と、今度は製造業主導の増加が見込まれています。ただし、四半期別では前期比で▲10.0%減を示した7-9月期からのリバウンドの要素が強く、上のグラフを見てもコア機械受注はようやく底入れしつつある段階だと私は受け止めています。1-3月期のコア機械受注の増加見通しをもって、日銀短観などで示されている設備投資計画に追いつくレベルにはまだまだ達しない、すなわち、ハードデータで見る設備投資とソフトデータで示された設備マインドにはまだ不整合が残っている、と考えるべきです。しかしながら、現在の人手不足は賃上げや正規職員増などの雇用における質の改善とともに、生産要素間の代替に伴う設備投資増も喚起する可能性が高く、短期の足元の動きはともかく、方向としては設備投資が増加するトレンドを示すものと見込まれます。
四半期データが利用可能になりましたので、上のグラフの通り、コア機械受注の達成率をプロットしてみました。景気局面の転換に当たる90%ラインの上で推移しています。このところ、四半期の先行き見通しがやや上方バイアスを示し、実績は見通しから下振れする傾向がありましたが、10-12月期は達成率100%を超え、実績が見通しを上回る結果となりました。ただ、1-3月期のコア機械受注見通し前期比+8.6%増が超過達成されて達成率100%を超えるかどうかは、現時点では何ともいえません。ただし、コア機械受注が増加の方向にあることは確認できると受け止めています。もっとも、年明け以降の金融市場の動揺などに現れている外部環境の変化が設備投資マインドを冷えさせる可能性については考慮する必要があるかもしれません。
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