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2016年3月 4日 (金)

毎月勤労統計に見る雇用の質の改善やいかに?

本日、厚生労働省から1月の毎月勤労統計が公表されています。統計のヘッドラインとなる現金給与総額は季節調整していない系列の前年同月比で見て+0.4%上昇して消費者物価上昇率を上回り、景気に敏感な製造業所定外労働時間は季節調整済みの前月比で▲0.4%の低下を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質賃金、3カ月ぶりプラス 1月速報値0.4%増
厚生労働省が4日発表した1月の毎月勤労統計調査(速報値)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月より0.4%増えた。プラスは3カ月ぶり。ボーナスなどの特別給与の伸びが賃金の水準を全体に押し上げた。物価の伸びも横ばいだったため実質賃金が増えた。
基本給や残業代は伸び悩んでおり、実質賃金の増加傾向が続くかどうかは不透明だ。調査は従業員5人以上の事業所が対象。実質賃金がプラスだと、給与の伸びが物価上昇のペースを上回っていることを示す。
名目賃金にあたる1月の現金給与総額も前年同月比0.4%増の26万9725円だった。内訳をみると、ボーナスなど特別に支払われた給与は1万3114円と7.1%増えた。一方で、残業代などの所定外給与は1.3%減の1万9302円。基本給にあたる所定内給与も0.1%増の23万7309円と伸びは鈍かった。
産業別の特別給与では、情報通信業(前年同月比87.7%増)や飲食サービス業等(同66.7%増)などで伸びが目立った。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。順に、上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、まん中のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与の季節調整していない原系列の前年同月比を、下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の前年同月比伸び率である就業形態別の雇用の推移を、それぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。

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グラフのポイントについて、順に上から見ていくと、まず、景気に敏感な製造業の所定外労働時間は季節調整済みの指数で昨年2015年11月から3か月連続で低下しています。ほぼ鉱工業生産などの企業活動に沿った整合的な動きと私は考えており、月曜日の2月29日に取り上げた鉱工業生産指数は1月こそ中華圏の春節効果などから前月比プラスを示しましたが、ここ3か月は弱い動きを続けている通りで、10-12月期の法人企業統計にもハッキリと現れている通りです。その一方で、火曜日の3月1日に公表された雇用統計では引き続き雇用が量的に拡大していることが明らかにされ、失業率は低下して有効求人倍率が上昇し、人手不足は深刻さを増していることから、雇用の質的な改善が進む方向にあることは明らかです。季節調整していない系列の前年同月比で見た現金給与総額の上昇、特に消費者物価上昇率を上回っての実質賃金の改善は人手不足を背景にしていることはいうまでもありません。ただし、10-12月期に企業活動の現況や年明け以降の金融市場の混乱などを考慮すれば、今春闘でのベースアップなどは昨年ほど期待できない気がしないでもないんですが、政府が「同一労働同一賃金」を目標に掲げていることもあって、非正規雇用の賃金などの待遇の底上げが図られる可能性は十分あるんではないかと私は期待しています。3男目の一番下のパネルについては、1月単月ですし、速報段階でのイレギュラーな統計の可能性もありますが、季節調整していない系列の前年同月比で常用雇用指数を見ると、フルタイムの一般労働者が+2.1%増に対して、パートタイムが+2.0%増と、フルタイム雇用の増加率がパートタイムを上回っています。確報段階で修正されるのかもしれませんが、雇用の質の改善に関しては、賃上げよりも正規雇用の増加の方が早く始まる可能性が示唆されているのかもしれません。

もうすぐ、米国雇用統計が公表される予定ですが、日を改めて明日にでも取り上げたいと考えています。

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