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2016年3月11日 (金)

法人企業景気予測調査に見る企業マインドの低下と設備投資意欲やいかに?

本日、財務省から1-3月期の法人企業景気予測調査の結果が公表されています。統計のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断BSIは1-3月期▲3.2と3四半期ぶりにマイナスに転じ、4-6月期も引き続きマイナスで▲2.2を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1-3月の大企業景況感、3四半期ぶりマイナス 4-6月もマイナス
財務省と内閣府が11日発表した法人企業景気予測調査によると、1-3月期の大企業全産業の景況判断指数はマイナス3.2と、3四半期ぶりにマイナスとなった。前回の2015年10-12月期はプラス4.6だった。年初からの世界的な株安や円高・ドル安などを背景にした企業心理の悪化が鮮明になった。
1-3月期は大企業のうち製造業がマイナス7.9となり、10-12月のプラス3.8から大きく落ち込んだ。化学工業で原油価格の下落による販売価格の下落を懸念する声があったほか、食品業で販売競争の激化を指摘する声があった。
非製造業はマイナス0.7だった。金融市場の混乱による収益悪化懸念から、金融業・保険業の景況感が落ち込んだ。金融機関からは日銀が導入したマイナス金利の悪影響への懸念もあったようだ。
全産業の4-6月期の見通しはマイナス2.2だった。ただ7-9月期はプラス5.6となった。
16年度の全産業の設備投資は15年度と比べ6.6%減少する見通し。設備投資計画は当初の慎重な見通しが徐々に上方修正される傾向はある。15年度見込みは前年度比8.8%増となった。前回調査時点の7.5%増から上振れた。具体的にはスマートフォンや自動車向けの部品で生産能力を増強する動きがみられた。
今回の調査時点は2月15日。景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIをプロットしています。色が濃いのが実績で、4-6月期と7-9月期のやや薄いのが先行き予測です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo

続いて、今回調査の売上高見通し、経常利益見通し、設備投資見通しのテーブルは以下の通りです。上半期と下半期は季節調整されていない原系列の統計の前年同期比の増減率を示しています。設備投資はソフトウェアを含み土地を含まないベースです。なお、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で財務省の法人企業景気予測調査のサイトからお願いします。

  2015年度  2016年度  
   上期下期 上期下期
売上高見通し
 全産業▲0.4%+1.1%▲1.8%+0.1%▲0.6%+0.7%
 製造業▲0.3%+1.2%▲1.8%+0.3%▲0.5%+1.1%
 非製造業▲0.4%+1.0%▲1.8%▲0.0%▲0.6%+0.5%
経常利益見通し
 全産業+4.8%+14.6%▲4.3%▲2.4%▲10.1%+5.9%
 製造業+0.7%+16.5%▲13.6%+0.4%▲10.9%+13.5%
 非製造業+6.8%+13.8%+0.2%▲3.3%▲9.8%+3.3%
設備投資見通し
 全産業+8.8%+11.3%+6.8%▲6.6%+3.5%▲15.0%
 製造業+11.1%+13.5%+9.3%+1.7%+15.0%▲9.7%
 非製造業+7.6%+10.2%+5.5%▲11.3%▲3.1%▲17.9%

まず、大企業全産業の景況判断BSIに着目すると、引用した記事にもある通り、年初来の株安や為替動向などの金融市場の混乱から企業マインドがかなり低下したと私は受け止めています。ただし、1-3月期に3四半期ぶりにマイナスに低下した大企業全産業の景況判断BSIも、4-6月期まではマイナスを続けるものの、年央を過ぎて7-9月期にはプラスに回復するとの見込みです。それでも、7-9月期でようやく+5.6ですから、景況感の回復はかなり緩やかであると覚悟すべきです。かつてのV字回復ではなさそうです。もちろん、マインドは金融市場の混乱からだけもたらされているわけでは決してなく、上のテーブルに見られるように、売上高、経常利益とも見通しが厳しくなっています。ただ、売上高と経常利益については2015年度下半期から2016年度上半期にかけてがほぼボトムとなり、来年度2016年度下半期からは緩やかな回復に向かうとの見込みが示されています。でも、現在進行形の春闘は企業業績が悪化する見込みの中で、どのような賃上げ結果がもたらされるのか注目しています。また、設備投資は売上高や経常利益から少しズレて、来年度2016年度上半期まで増加の勢いを示しています。少なくとも、この調査を見る限り、企業の設備投資意欲が大きく損なわれているとは感じられず、投資計画などの企業マインドのソフトデータと資本財出荷や機械受注などのハードデータの間にまだ乖離が残っていると、私は感じてしまいます。

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