明日公表の1-3月期GDP統計1次QE予想やいかに?
必要な統計が出そろい、明日の5月18日に1-3月期GDP速報が内閣府より公表される予定となっており、シンクタンクや金融機関などから1次QE予想がほぼ出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の今年4-6月期以降を重視して拾おうとしています。明示的に取り上げているシンクタンクは、日本総研、大和総研、みずほ総研に加えて三菱総研の4機関だけでした。それらについては、可能な範囲で、ヘッドラインを気持ち長めに引用してあります。特に、みずほ総研は足元の4-6月期だけでなく、7-9月期まで言及していましたので、超長めに引用しています。なお、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
日本総研 | +0.2% (+0.9%) | 4-6月期を展望すると、在庫調整圧力が引き続き企業の生産活動の重石となるほか、熊本地震による生産・消費・観光の下振れも一時的に景気下押しに作用。うるう年による消費上振れの反動も見込まれることから、GDPは下振れしやすい状況に。もっとも、①2015年度補正予算・16年度予算の前倒し執行を受けた公共投資の持ち直し、②人手不足などを背景とした所得雇用環境の改善傾向の持続、などが景気下支えに作用することで、景気が持続的に落ち込む事態は回避される公算。 |
大和総研 | +0.1% (+0.5%) | 先行きの日本経済は、基調として緩やかな拡大傾向へと復する公算であるが、世界経済の減速や4月に発生した熊本地震の影響といった下振れリスクが浮上している点には警戒が必要だ。 個人消費は非常に緩やかながら拡大基調に復すると見込んでいるが、足元で個人消費を取り巻く環境は厳しさを増している。確かに、労働需給は引き続きタイトであり、このことが雇用者報酬の増加を通じて個人消費を下支えするとみている。加えて、政府が景気対策として実施する低所得の年金受給者に対する給付金も先行きの個人消費を下支えするだろう。しかし、今年のベースアップの増加幅が昨年より縮小したことや株安が消費マインドを抑制する一因となるほか、原油価格が上昇に転じた結果、実質賃金の増加ペースが鈍化するとみられることも消費を抑える要因となろう。更に、熊本地震を受けて、国内において消費自粛ムードが高まってくることになれば、個人消費の停滞が長期化する公算が大きい。 |
みずほ総研 | +0.1% (+0.5%) | 4-6月期の日本経済は、在庫調整圧力が残る中で、熊本地震による生産停滞が下押しとなるため、景気の足踏みが続くとみられる。 報道等によれば、自動車部品工場の被災によって大手自動車メーカーが全国的に工場を閉鎖した影響で、自動車生産は9万台程度下振れした模様である。機械的に試算すると、上記減産によって、4月の生産全体は1%強下押しされる計算だ。 ただし、4月末にかけて、自動車メーカーの生産停止は解消しつつある。今後、他の部品で供給制約が再び顕在化する可能性は残存しているが、仮に5月以降の生産が従来の計画水準に復すれば、4-6月期を通した生産の下振れは0%台にとどまり、実質GDPの下押しも0.1%程度に抑えられるだろう。物流停滞に伴う消費下振れなどの影響を考慮に入れても、現時点では、熊本地震による日本経済全体への影響を、過度に悲観的にみる必要はないと判断される。過去の事例として、熊本地震と同程度の被害がみられた新潟県中越地震、および同程度の地震規模(マグニチュード)だった阪神淡路大震災時の経済指標(鉱工業生産、実質GDP)を確認しても、①地震発生直後こそ生産が減少したものの、1-3か月後には持ち直したこと、さらに②実質GDPは必ずしも明確に下振れしたわけではないことなどが見て取れる。 7-9月期以降については、熊本地震に伴う消費者マインド低迷の長期化などに注意は必要だが、生産下振れ分の挽回生産が続くとともに、欧米を中心とした海外経済の緩やかな回復により輸出の下支えも見込まれることから、景気は緩やかに持ち直すと見込んでいる。 |
ニッセイ基礎研 | +0.1% (+0.6%) | GDP統計では季節調整をかける際にうるう年調整が行われていないため、1-3月期の成長率は日数増によりかさ上げされている可能性がある。当研究所では1-3 月期の成長率はうるう年の影響で前期比年率1%程度押し上げられた(民間消費は前期比0.4%程度)と試算しており、この影響を除けば小幅なマイナス成長と考えられる。 |
第一生命経済研 | +0.4% (+1.4%) | 1-3月期のGDPは、表面上の数字こそ高めになると思われるが、これはうるう年による日数増の要因によって、見かけ上押し上げられていることによるものである(前期比年率で+1.2%Pt程度の押し上げと試算される)。この押し上げ分を除けば概ねゼロ成長とみられる。15年10-12月期がマイナス成長だった後にもかかわらずゼロ成長ということであれば、弱い結果という評価で問題ない。日本経済の停滞が持続していることを示す結果といって良いだろう。 |
伊藤忠経済研 | +0.1% (+0.2%) | 1-3月期の実質GDP成長率は前期比+0.1%(年率+0.2%)と2四半期ぶりの前期比プラス成長になった模様。ただし、輸出の持ち直しが主因であり、内需は総じて低調。さらに、10-12月期の落ち込みを埋め切れておらず、日本経済は停滞局面が続いている。こうした中で日銀は追加の金融緩和を見送り、デフレ脱却期待は後退した。 |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | +0.1% (+0.6%) | 2四半期ぶりの実質プラス成長が見込まれるものの、成長ペースは緩やかにとどまった模様である。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | 0.0% (0.0%) | 個人消費は、雇用・所得情勢が緩やかに持ち直しているほか、うるう年効果による押し上げがあったと考えられるものの、消費者マインドの悪化による節約志向の高まりなどにより、小幅の伸びにとどまった模様である。設備投資は、業績改善が一服していることもあって、企業の新規投資に対する慎重姿勢が強まっていると考えられ、前期比でマイナスに転じたと予想される。一方、輸出が比較的底堅く増加している半面で、輸入の伸びが小幅にとどまったため、外需寄与度は3四半期連続でプラスとなったと見込まれる。 |
三菱総研 | +0.4% (+1.6%) | 2016年4-6月期は、うるう年要因が剥落することから、消費が前期比マイナスに転じると見込む。GDP全体としても小幅マイナス成長となる可能性があり、景気の回復力が鈍い状況が続くであろう。 |
要するに、ほぼカツカツのプラス成長で、しかも、輸出とうるう年要因によるプラス成長であり、経済の実態はまだまだ本格回復にはほど遠いと受け止めています。1-3月期で90日からうるう年は1日増えますので、日数だけからすれば単純に消費は3%強増える計算になりますが、月極で料金が決まっているものもありますから、それほどでもありません。でも、軽く1-2%の消費押し上げ効果はあり、GDPベースに引き直しても1%ないし1.5%くらいはあるんだろうと思います。ですから、うるう年効果なければ、ほぼゼロ近傍の成長率にとどまっていたか、あるいは、マイナス成長だったかもしれません。逆に、もしも公表値がマイナスであれば、かなりのネガティブなサプライズということになりかねません。足元から先行きの景気動向については、基本的に、緩やかな回復が続くと私は見ているんですが、熊本地震の終息と世界経済の回復が前提になります。ですから、リスクは下振れリスクの方が大きいと考えるべきです。
下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。
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