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2016年5月 8日 (日)

先週の読書は難しい自然科学の教養書など計6冊!

昨日に米国雇用統計が割って入って、今週ではなくなった先週の読書は、やや経済書が少なく、自然科学の専門書・教養書のレベルが高すぎて、私の理解が追いつかないという悲しい読書だったりしましたが、以下の6冊です。

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まず、横山和輝『マーケット進化論』(日本評論社) です。著者は日本経済史の研究者であり、本書は『経済セミナー』に掲載されていた連載を単行本として取りまとめたものです。阪大の大竹先生がNHKの「オイコノミア」などでしきりに宣伝していたと聞き及んでいます。ということで、前半第7章までは律令制の荘園時代から昭和の戦前までを、おおむね時代を追って我が国の市場につき歴史的な展開を記述し、第8章以降は土地の度量衡、交通、金利計算や経済・金融教育などの横断的な亜トピックを取り上げています。『経済セミナー』連載ですから、大雑把に大学入学性位を対象にしているんではないかと思いますが、レベルやトピックによっては高校生でもタメになりそうな気がします。通常、私の想像もそうなんですが、マルクス主義的な経済史では本書のような市場という流通の場をかなり軽視して、工場などの生産の場における広い意味での技術や動力などに焦点を当てるんですが、本書では市場という流通の場に対して歴史的な観点からスポットを当てています。ただ、私の考える市場では、財サービスに加えて本書でも金融市場はカバーしているんですが、労働市場が本書ではスッポリと抜け落ちています。生産よりも流通を重視した本書のひとつの問題点かもしれません。でも、それはそれなりに面白く、特に、金融市場については徳川期の大坂で21世紀のデリバティブもかくやと思わせかねないような先物や空売りが行われていたという事実を改めて思い起こさせてくれました。徳川期には財力を背景にした商人の勢力は無視しがたく、寛政の改革や天保の改革などを主導した節約勤倹の改革派は市場重視で競争促進的な政策を実施した一方で、田沼などの金権派は市場の実勢に合わせて商人から冥加金とともに賄賂を取ったんだろうと、私は勝手に想像しています。昭和の戦前期で終わっているという意味で、やや中途半端な歴史書となっていますが、学術書というよりは雑学的な知識を求める向きにオススメかもしれません。

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次に、アレックス・メスーディ『文化進化論』(NTT出版) です。著者は英国の若手研究者で、生物科学部に所属しつつ、博士号の学位は心理学で取得しています。本書の原題は Cultural Evolution ですので、邦訳そのままです。2011年に出版されています。それほど賞味期限が短い種類の学術書ではないので、それなりに興味深く読むことが出来ると思います。北海道大学の竹澤先生が解説を書いていますが、私にはさほどインフォーマティブとも思われませんでした。本書は、基本的には、文化がダーウィン的な進化論と同じ進化をたどるかどうか、さらに、より厳密な意味でネオ・ダーウィニズム的な進化をたどるかどうかを検証しつつ、社会科学の統合についても考察を進めています。さらに、文化については、人類だけでなく模倣という観点から他の生物、哺乳類にとどまらず昆虫などについても対象を広げようとしていますが、ダーウィン的な継承の観点から、人類の文化だけが本書の対象とされています。最初に文化や情報の定義をしつつ、p.30では行動の違いのうち半分弱が遺伝子を原因とし、半分強が文化の影響との研究成果を持ち出して、文化の影響度の大きさを確認しています。その上で、文化の歴史的な変化がダーウィン的かスペンサー的か、あるいは、ダーウィン的かネオ・ダーウィン的か、についてミクロ的な観点とマクロ的な観点から分析を試みています。そして、人類学、考古学、経済学、歴史学、言語学、心理学、社会学などの極めて多様な社会科学の統合がこの文化の進化論的変容と関連させられています。私にはなかなか理解が進まなかったんですが、本書でも指摘されている通り、進化は進歩と同じではないですし、社会科学については社会をなして生産しつつある人間を分析するのであれば、かなりの程度に統合は可能であろうと私は考えています。その一つの視点はマルクス主義が与えてくれている可能性があります。でも、もっと平易に考えることも可能かもしれません。私が見た範囲では読売新聞でポケモンの進化と本書を結び付けて論じている書評がありました。ちょっと違う気もしました。

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次に、ピーター・ウォード/ジョゼフ・カーシュヴィンク『生物はなぜ誕生したのか』(河出書房新社) です。著者達は米国の生物学の研究者です。英語の原題は A New History of Life であり、2015年に出版されています。内容からして、現代の方がふさわしいと私は思います。すなわち、本書では、生物の定義として、カール・セーガン教授の流れを汲んだNASAの「ダーウィン進化が可能な化学的システム」を採用した上で、地球上における生物の誕生から包括的な進化の歴史を説き起こしています。どうでもいいことながら、前回の読書感想文で取り上げた『男子御三家』では、麻布中学校の入試でドラえもんが生物ではない理由を答えさせる問題を紹介していましたが、NASAの定義に従って、ドラえもんはダーウィン進化しない、と回答すればどのように採点されるのか、とても興味があります。まず、私のようなシロートがとても驚かされるのは、本書の著者達は約40億年前、大雑把に38-42億年前の地球上の生命の誕生について、40億年余り前に火星で誕生した生命が地球に到達した、との説をとっています。その昔のほのかな記憶をたどれば、海底の熱水が噴出しているあたりで生命が地球という閉じた系で誕生したのであり、地球より火星で先に生命が誕生して、その生命が火星から地球に到達した、たぶん隕石に乗って、というのは、生物学の業界では定説ではないまでも、決して驚くべき荒唐無稽な説ではないようです。エコノミストの私はあまりに専門外で理解がはかどりません。その生命の誕生から歴史をたどり、ビッグ・ファイブと呼ばれる5度の大絶滅、例えば、恐竜も絶滅に追いやった巨大隕石の飛来などに起因する何回かの大きな節目を経て、また、大気中の酸素濃度の変化により、生命がどのように進化を遂げ、現在に至るかを、極めて包括的に解説してくれています。おそらく、本書の著者たちの意図としては、決して学術書ではなく一般大衆向けの教養書のつもりだったんでしょうが、誠に残念ながら、私には難し過ぎる印象です。石炭紀の植物の根が浅くてすぐに倒れて石炭になった、などのように判りやすい部分もあるものの、全体として、用語も含めて私には理解が及ばない部分が少なからずあった気がします。突端の火星から地球に生命が到達した、というところで頭が混乱して、そのまま読み進んでしまったのかもしれません。いずれにせよ、それなりの難易度の本であることは覚悟すべきでしょう。でも、ポジティブな評価の表現として、私にはテンポのいいSF小説を読むようなカンジでした。

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次に、バリー・パーカー『戦争の物理学』(白揚社) です。著者は米国の物理学研究者で、英語の原題は The Physics of War ですから、そのままです。ローマ時代のチャリオットと呼ばれる馬に引かせる二輪戦車から始まって、第2次大戦時の原爆やその後の水爆まで、物理学が戦争にどのように応用されたのかを歴史的に概観しています。武器や兵器だけでなく、飛行機や通信手段、あるいは、人工衛星まで含んでいます。本書も『生物はなぜ誕生したのか』と同じで、それなりの難易度の教養書であり、数式もかなり出て来ます。でも、同時に、挿絵というか、図解も豊富です。戦争のいわゆる戦史を概観した後に、先方や戦術などとともに武器・兵器の物理学を解説しており、投石機の弾道学などから始まって、原爆や水爆の相対性理論物理学まで、幅広い物理学が応用されており、よくも悪くも戦争が物理学を進歩させた麺があることが理解できます。また、戦争だけでなく、産業革命といった経済社会の時代背景にも影響を強く受けているのが判るように工夫されています。ただ、ローマ人が典型なんですが、科学や特に物理学に興味がなくても、実用的な工学に秀でている場合もあり、それが実用や戦争に応用されるケースも紹介されています。生物学については、かなり純粋な科学的興味なんですが、物理学や化学は工学を通じて実用に供されます。ですから、核分裂も発電に用いるか、原爆を作るかで、実用化の方向が大きく異なります。そのこんpン的な学問の利用や実用化という面もスポットを当てて欲しかった気がします。また、チラチと感じただけなんですが、本書では極めて新規で破壊的な武器・兵器が開発されると、ある意味で戦争というか、戦闘が膠着状態になる可能性を示唆しています。例えば、機関銃の出現により塹壕戦になって戦線が膠着するとか、核兵器の極めて大規模な破壊力により戦争そのものが抑止される可能性などです。基本的に、勢力均衡というかなり古い考えに立脚した戦争・戦闘感ですが、まあ、そうなのかもしれません。戦争で使われる武器や兵器の解説がひとつのテーマですから、あまり愉快な本ではありません。でも、歴史を知って戦争に対処することも重要かもしれません。

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次に、有川浩『倒れるときは前のめり』(角川書店) です。著者はいうまでもなく人気の小説家で、本書は巻末に短編2編を含むものの、基本的にはエッセイです。神戸新聞と産経新聞大阪版夕刊が初出に多かった気がします。東京では産経新聞の夕刊は見かけないんですが、大阪版では夕刊があるんだと感激してしまいました。それはともかく、本書の著者の場合、ご自分でも認めているように、ライトノベルから初めて、さらに、自衛隊に深く傾倒して行った小説家ですから、かなり自衛隊や軍隊に対する思い入れが強く、反戦主義者などからは好ましくないと見られがちなんですが、作者は決して好戦的というわけでもありません。テレビのドラマにもなった『空飛ぶ広報室』に関して、軍国主義的なエンタメ小説により愛国心を煽る、といった批判がされたように本書でも反論していますが、戦争小説に関するエッセイ(p.146)でも、「日本が行った戦争の是非を問うことはなしにしたい」と侵略戦争を否定したいのだろうかといぶかしむ人も出そうな表現をしたりしています。そして、随所に出て来るんですが、嫌いという表現はよくない、という趣旨のエッセイがかなりあります。要するに、「嫌いと言われるのは嫌い」と言っている自分に気づいていない可能性があり、ある意味で正直なもんですから、やや微笑ましい気もします。ただ、肯定的でほめるエッセイよりも、批判する傾向のあるエッセイが比較的多かったような気がします。私の好きな三浦しをんのエッセイに比べての私の単なる感想ですので、違っているかもしれません。後、やや感覚が古い、というか、かなり昔のエッセイを引っ張り出してきて単行本化した結果、という印象を持ったのは、映画と本を比較している点です。この両者が違うのはいうまでもないんですが、当然のように作家の観点で、原作⇒映画という流れでしか見ていないような気がして、しかも、テレビのドラマは無視されているようです。映画やドラマのノベライズという手法もめずらしくないですし、表現のひとつの方法として、映画とドラマ、小説に加えてゲームから映像になったり活字になったりというのは決して少なくなく、そうなる前の時期のやや昔に書かれたエッセイがかなりの部分を占めるんではないかという印象を持ちました。よく読んでいながら、私自身がそれほど好きでもない作家のエッセイなので、少しビミョーに否定的な感想文かもしれませんが、この作者の小説が好きな読者は読んでおくべきかもしれません。

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最後に、小林丈広・高木博志・三枝暁子『京都の歴史を歩く』(岩波新書) です。著者3人は京都を代表する京都大学・同志社大学・立命館大学の研究者であり、専門は歴史学、中世史や近代史です。まあ、容易に想像されるところかもしれません。岩波新書ではその昔に林屋辰三郎先生が『京都』のタイトルの出版があり、本書の著者あとがきでも触れられていますが、1962年の刊行です。本書は、大雑把に、300ページの本で、3部構成で、各部が5章ずつの合計15章ですから、各著者は5章ずつ執筆担当となっており、しかも、各部が100ページ、各章が20ページという律儀な構成になっています。何でも3で割って構成されるという点では、合併して創設された当時のみずほ銀行を思い出してしまいました。しかも、地図上に著者達が実際に歩いた道筋を明示しています。ですから、想像するに原稿制約がそれなりに厳しくて、しかも、実際に歩かねばなりませんから、本書で本来取り上げるべき場所や建物などで漏れているのが散見されます。かなり網羅的なセンを狙っていい出来なだけに、やや惜しい気がします。適当に上げると、洛外の宇治を最後に取り上げるのであれば、伏見から中書島も目を向けて欲しかった気がします。大坂であれば太閤さんへの心情から注目されるでしょうが、京都の人は私もそうですが、桃山城に対する関心がとても薄くなっているのは理解します。今では近鉄がやっている遊園地くらいのカンジだろうと思いますが、三条の池田屋が幕末の事件で何度も登場するのであれば、中書島の寺田屋も坂本龍馬との関係もあって、もう少し注目されていいですし、灘と並ぶ酒どころの伏見も言及あって然るべきかという気がします。さらに、何度か明治初期の山本覚馬の名が出ますが、映画の「パッチギ!」や「鴨川ホルモー」の舞台になった、というのが引用されるのであれば、「八重の桜」のドラマもそれなりに有名な気もします。また、最初に取り上げられている六道の辻では、冥界との往来伝説という点で、小野篁にもスポットが当たっていいように思います。加えて、最後のあとがきで観光至上主義を批判するのであれば、古都税問題にも何らかの見識を示して欲しかったところです。ということで、私の期待値が高かっただけに、少し漏れがあるような気もしますが、なかなかにいい出来の新書です。私は洛外もいいところの宇治の出ですが、私ごときは知らないような歴史的事実や場所の由来などが充実した良書です。

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