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2016年5月31日 (火)

鉱工業生産指数に見る熊本地震の影響やいかに?

本日は月末最後の営業日の閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも4月の統計です。鉱工業生産は季節調整済みの前月比で+0.3%のわずかな増産を示した一方で、失業率は3.2%と前月から変わらず、また、有効求人倍率は1.34倍と前月から0.04ポイントの上昇を見せました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の鉱工業生産、0.3%上昇 エアコンや化粧品など伸びる
経済産業省が31日発表した4月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比0.3%上昇の97.0だった。上昇は2カ月連続で、QUICKがまとめた民間予測(中央値は1.5)低下)に反して改善した。熊本地震に伴い中旬以降に自動車生産などへ影響が出たものの、夏場に向けてエアコンや化粧品などの生産が増えた。
経産省は生産の基調判断を「一進一退で推移している」に据え置いた。業種別では15業種のうち7業種が上昇し、7業種が低下、1業種が横ばいだった。化粧品の出荷が好調だった化学工業が3.5%増だったほか、夏場を控えてエアコンなどの電気機械も3.9%増えた。一方、地震の影響で自動車メーカーが一時的に生産を停止したこともあり、輸送機械は0.6%減った。
経産省は、熊本地震の影響について「自動車以外の業種でははっきりみられなかった」と説明。「一部で大きな被害を受けたところ以外では、生産が続いていた」という。
出荷指数は1.5%上昇。生産に比べて出荷の伸びが大きく、在庫率指数は2.2%低下した。
同時に発表した製造工業生産予測調査では5月が2.2%上昇、6月は0.3%上昇となった。5月ははん用・生産用・業務用機械や情報通信機械などで増産が見込まれている。
完全失業率、4月は3.2%で横ばい 市場予想と一致、労働力調査
総務省が31日発表した4月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は3.2%と、前月から横ばいだった。QUICKが事前にまとめた市場予想も3.2%。人手不足により労働需給が引き締まった状態が続き、3%台前半の失業率を保った。総務省は雇用の動向に関して「引き続き改善傾向にある」との見方を示した。
完全失業率を男女別にみると、男性は3.4%、女性は3.0%でともに前月と同水準だった。完全失業者(季節調整値)は横ばいの211万人。勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は1万人増、「自発的な離職」は3万人増だった。
就業者数(同)は6407万人と、前月から20万人増えた。雇用者数は21万人増の5714万人だった。就業率は前年同月から0.5ポイント上がり57.8%となった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。それにしても、統計をこれだけ引用すると長くなります。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は雇用統計とも共通して景気後退期です。

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引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比で▲1.5%の減産が見込まれていたんですが、結果はわずかながら増産となりました。自動車以外の業種では熊本地震の影響ははっきりしない、というのが統計作成官庁である経済産業省の見方のようです。逆に、市場の事前コンセンサスが熊本地震のインパクトをいわば「過大評価」して、結果的に実績が上振れるということだったのかもしれないと受け止めています。ただし、自動車工業会の4月生産実績によれば、例えば、四輪車の輸出が増加しているにもかかわらず、生産が前年同月比で▲7.7%の減少となっているのは、何らかの熊本地震の影響をうかがわせる統計だと考えるべきでしょう。ただし、全国ベースでは影響は小さく、製造工業生産予測調査では5月+2.2%増の後、6月も+0.3%と見込まれており、実績よりも大きめに出やすいバイアスがあるとはいえ、生産は一進一退ながら回復に向かうものと期待しています。もっとも、賃上げがイマイチでしたので消費の増加テンポは緩やかですし、円高の為替効果もあって輸出には大きな期待をかけるのもムリそうな気がしますので、夏場以降の先行きの生産を考えれば、それほど順調に回復に向かうとは私は考えていません。

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続いて、雇用統計については、上のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。失業率は前月から変わりありませんでしたが、有効求人倍率は前月からさらに+0.04ポイント上昇して1.34を示しました。有効求人倍率のこの水準は1991年以来だそうですし、全都道府県で1倍を超えていることからも人手不足が伺われます。加えて、失業率もほぼ完全雇用状態で、それでも賃金が上昇しないのは不思議なんですが、統計局で2013年から統計を取り始めた雇用形態別の統計では世紀・非正規別の雇用比率が明らかとなっているところ、昨年2015年12月61.9%のボトムから正規比率が今年2016年1月62.0%、2月62.4%、3月62.8%、そして今日発表の4月63.2%と、ジワジワと上昇しているのを見ると、量的にはほぼ完全雇用に達した雇用の質的な改善は、賃上げではなく正規比率の上昇に現れる可能性があるんではないかと推測しています。もっとも、正規・非正規比率は最近取り始めた統計ですので原系列しかなく、最近の動きは季節変動なのかもしれません。

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2016年5月30日 (月)

4月の商業販売統計に見る熊本地震の影響やいかに?

本日、経済産業省から4月の商業販売統計が公表されています。ヘッドラインとなる小売業販売は季節調整していない前年同月比で▲0.8%減の11兆4660億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の小売業販売額、0.8%減 基調判断「弱含み傾向」に据え置き
経済産業省が30日発表した4月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比0.8%減の11兆4660億円だった。2カ月連続で前年を下回った。原油安で燃料小売業の減少が続いたほか、テレビやデジタルカメラなどの販売もふるわなかった。季節調整した前月比は横ばいとなった。
経産省は小売業の基調判断を「弱含み傾向」に据え置いた。大型小売店の販売額は百貨店とスーパーの合計で前年比0.1%減の1兆5458億円だった。百貨店の既存店販売は3.6%減となった。婦人服などの衣類が低調だったことが響いた。一方、スーパーでは主力の飲食料品が好調で、既存店販売は0.8%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は4.5%増の9190億円となった。食品などが好調だった。

いつもながら、コンパクトかつ包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。

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消費の回復が引き続き思わしくありません。4月については、単月の要因として、熊本地震の影響はあり得ますが、全国でならすとそれほど大きなマイナス要因とも思えません。基本的な傾向として、統計作成官庁である経済産業省の基調判断にあるように「弱含み傾向」ということになるんでしょう。繰り返しになりますが、私がチェックした範囲で地方の統計が分かるものは、百貨店・スーパー小売売上額なんですが、全国の▲0.1%減に比べて、九州ブロックでは▲4.6%減を記録していて、その中でも熊本県では▲33.7%、特に政令市の統計を見ると、熊本市では▲45.2%減となっていることから、熊本地震の影響は確かに見られます。しかし、これも私が見た範囲で、この売上げ減は全国ベースに引き直せば▲0.3%くらいの寄与度と試算した同業者エコノミストのリポートもありましたから、熊本地震の影響を別に考えても全国ベースで前年同月比マイナスは変わらなかったのではないかと私は受け止めています。また、産業別に季節調整していない系列の前年同月比で見ると、自動車小売業が+1.5%の上昇を示したのは、新型車投入効果なのか、それとも、部品サプライに伴う生産停止を脱した反動増的な要因なのか、判断は分かれるところですが、我が国の主要産業のひとつである自動車の販売増加は悪いことではないと考えるべきです。他方、燃料小売業が▲1.6%の減少を記録しています。また、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは4月の消費者物価は▲0.4%の下落と見込まれていますから、物価を考慮した実質ベースの小売販売額でもプラスにはなりません。ただ、季節調整指数では前月から横ばいとなっています。

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2016年5月29日 (日)

先発メッセンジャー投手に援護なく勝率5割で交流戦へ!

  HE
阪  神000100000 141
読  売00200000x 260

メッセンジャー投手に援護なく巨人に競り負けました。決勝点が狭いドーム特有のホームランとはいえ、阪神打線も打棒振るわず、4安打、鳥谷キャプテンのホームランによる1点だけでは勝てません。

交流戦では、
がんばれタイガース!

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2016年5月28日 (土)

先発岩崎投手の好投と新井選手のタイムリーで巨人に逆転勝ち!

  HE
阪  神000400002 692
読  売002000002 460

巨人に先制されたものの、岩崎投手が粘り強く投げ巨人に逆転勝ちでした。打線の得点力も、先制された直後に逆転し、最終回もホームラン攻勢でダメを押しました。藤川投手が往年の凄みを感じさせないのは仕方ないとしても、勝ちパターンのリリーフ陣に課題が残った気もします。でも、7回ウラを抑え切った安藤投手をベンチ前でお迎えする岩崎投手の笑顔が印象的でした。

明日は3タテ目指して、
がんばれタイガース!

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今週の読書は強い感銘を受けた最高の経済書『この経済政策が民主主義を救う』ほか計7冊!

今週の読書は、感銘を受けた最高の経済書『この経済政策が民主主義を救う』をはじめとして、計7冊です。まったくペースダウンできません。

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まず、松尾匡『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店) です。著者は立命館大学の研究者です。本書には私はとても感銘を受けました。ジャカルタから2003年に帰国して以来、ここ十数年で読んだうちの最高の経済書でした。まさに、私が考える経済政策の要諦を余すところなく指摘してくれている気がします。今までは、痛みを伴う構造調整による景気拡大でなければ「ホンモノ」ではなく、金融緩和による「まやかし」の成長は歪をもたらすので、増税で財政再建を進め、デフレや円高を容認して、その分、構造改革を進めるべし、といったウルトラ右派的かつ新自由主義的な経済政策観が幅を利かせる一方で、現在のアベノミクスの基礎をなしているリフレ的かつケインジアンな政策に対する世間一般の理解が進まず、とても絶望的になった時期もあったんですが、ようやく、左派的あるいはリベラル派の経済政策観が現政権に近づいた気がします。とても望ましいと私は受け止めています。不況で困るのは格差の下の方にいる国民であり、大金持ちは少しくらい所得が減少しても、少なくとも生活に困らないのに対して、もともと所得の少ない階層はさらに所得が減ったりしたら、たちまち生活が立ち行かなくなってしまいます。その低所得層の不安を煽るような構造改革なんて、私は避けられれば避けるべきだと従来から考えています。金融緩和の財政ファイナンスにより得た資金を福祉・医療・教育・子育て支援などに回し、ホントに完全雇用家でインフレになりそうだったら、そこはインフレ目標の発動により金融引締めに転じたり、あるいは、それこそ、消費増税に踏み切ればいいだけのお話で、まだまだ景気回復が緩やかな現状で構造改革や消費増税やといった議論は笑止千万です。しかも、ここは私はよく理解できないところなんですが、本書の指摘するように、現在の安倍政権が改憲を目論んで、そのために2/3多数を確保するために経済政策を操作すれば、ホントに実現しかねないのは、本書の東京都知事選の分析で示されているように、「ひょっとしたら」と思わせるものがあります。左派・リベラル派に今一度 "It's the economy, stupid." を思い出して欲しいと思います。

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次に、ペネロピ・フランクス/ジャネット・ハンター[編]『歴史のなかの消費者』(法政大学出版局) です。著者編者は内外の経済史の研究家であり、日本を専門分野とする学者も含まれています。明治維新の少し前から2000年くらいまでの我が国の消費の歴史をひも解いていますが、大雑把に中心は戦後の昭和と考えてよさそうです。英語の原題は Historical Consumers ですから、邦訳タイトルそのままであり、2012年に出版されています。そして、一般向けの教養書というよりも学術書と考えた方がよさそうです。まず、第1部の3章で生産と消費における女性の役割を明らかにし、例えば、ミシンの役割についてファッションとの関係で論じています。第2部では伝統的な消費から、砂糖の使用、洋装の定着、健康サービスにおける西洋薬と漢方薬の役割分担、などを論じ、最後の第3部で消費を空間の広がりで捉え、鉄道、郵便、通信販売などを取り上げています。日本経済は漠然と生産や供給サイドの論理で動いているような印象がありますが、家庭の主婦をはじめとする消費者側の論理も経済を動かしてきた大きな要因のひとつであることは間違いなく、家庭において和装で日本食を食べる、といった消費スタイルから、旅行先で洋装で洋食を食べる、といった消費スタイルに変化した歴史がよく描き出されています。私は統計局で消費統計を担当した経験もありますが、統計に表れるマクロの消費だけでなく、マイクロな家計や個人レベルの消費に流行を感じます。消費は常々所得とマインドの掛け算だと私は考えていますが、本書では所得の観念ないものの流行に乗ったマインドの変化は感じ取れます。GEのCEOだったジャック・ウェルチではないんですが、家電製品などはGDPの伸びの尻馬に乗るんではなく、その昔の三種の神器のようにGDP成長を牽引したヒット商品も見られた歴史を感じます。学術書とはいっても、それなりに国民生活の身近なところの流行や変化を捉えていますので、それなりの教養書としても楽しめるかもしれません。

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次に、ジョン・スカリー『ムーンショット!』(パブラボ) です。著者はペプシからアップルのCEOに転じた際に、ジョブスから "Do you want to sell sugared water for the rest of your life? Or do you want to come with me and change the world?" と、あまりにも有名になった殺し文句で誘われた人物です。1983年から93年まで約10年間、アップルのCEOを務めています。タイトルは英語の原典も同じで、「ムーンショット」とはシリコンバレーの用語で「それに続くすべてをリセットしてしまう、ごく少数の大きなイノベーション」のことをいうらしいです。マイクロプロセッサの発明はムーンショットでしたし、パーソナルコンピュータとして生まれたアップルIIもそうで、クリエイティブな人々に向けて初めて手頃な価格で販売された、デスクトップ・パブリッシング・システムとしてのMacもそうだったといえます。もちろん、ワールド・ワイド・ウェブ WWW も、グーグルのネクサス・ワンやアップルのiPhoneもムーンショットというべきです。でも、本書ではイノベーション全般ではなく、adaptive=適応的型のイノベーションに限って論を進めています。ですから、適応すべき技術的な変化を本書では4つ上げ、(1) クラウドコンピューティング、(2) モノのインターネット(IoT)、(3) ビッグデータ、(4) モバイル機器、にどう適応するかが問題なわけです。適応したイノベーションとしては、アマゾンやフェイスブックなどが上げられるのは、ほとんどの読者が合意できるのではないかと思います。他方、適応的でないイノベーションがどういうものかは、私はよく知らないんですが、クリステンセン教授の提唱する破壊的イノベーションなのかもしれません。違うかもしれません。まあ、イノベーションの型はともかく、本書では顧客重視といった従来から何度も聞き及びながら、実は徹底されていないコンセプトとか、さらに、チマチマしたイノベーションではなく、「ビリオンダラー・コンセプト」という考えの下に、10億ドル=1000億円超の規模のビジネスの立ち上げや運営戦略を論じています。公務員の官庁エコノミストである私なんぞには及びもつきませんが、確実なのは、本書がかなり啓発的で面白い、という事実です。企業家を目指すわけではない私にもそうですから、ひょっとしたら、かなりオススメの本なのかもしれません。

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次に、ラリー・ダウンズ/ポール F. ヌーネス『ビッグバン・イノベーション』(ダイヤモンド社) です。これもイノベーション、しかも、本書のタイトルとは裏腹に適合型イノベーションを取り上げています。著者は経営コンサルタントであり、本書の英語の原題は Big Bang Disruption、すなわち、訳者あとがきにあるように、直訳すれば「ビッグバン型破壊」だったりします。スカリーの著書と違うのは2点あり、まず、ビッグバン・イノベーションによる大儲け状態の後に、ビッグクランチ=大収縮が来て、これを乗り切らないとインーベーションによる儲けをすべて吐き出すどころか、さらに悲惨な破産・倒産にもつながりかねないと指摘しています。一連のイノベーションに伴う市場プロセスは、シャークフィン=サメのヒレのように大きく盛り上がった後、大きく落ち込む可能性があり、ビッグバン的なイノベーションに乗ってしまえばそれでお終い、というわけではなく、延々とイノベーションを続けなければ生き残れない、と説いています。ですから、かつての『エクセレント・カンパンー』は私も読んだ記憶がありますが、優良企業だけでなく、すでに倒産したり、かなり低迷していたりするコダックやシャープなんかの例も引き合いに出しています。そしてもう1点は、「ビリオンダラー・コンセプト」は該当しません。企業規模や市場規模に関係なくイノベーションの重要性を示しています。それはそうなのかもしれません。もちろん、スカリーの著書と同じラインにある主張も少なくなく、例えば、イノベーションの性質の変更を迫った事情はほぼ共通しており、IoT、ビッグデータ、ソーシャルメディア、モバイル・コンピューティングなどを上げています。いずれにせよ、私の実感としては、ハードウェアでムーアの法則が適用される限り、こういったイノベーションの方向は続く可能性があります。ムーアの法則が最初に示されたのは1960年代なかばだったんですが、当初は5年くらいは成立するだろうと考えられていたこの指数的な法則が、何と、50年の長きに渡って生き続けているんですから、そろそろという気もしますが、私の生きている間は廃れない可能性もある、とすら感じさせます。

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次に、トラヴィス・ソーチック『ビッグデータ・ベースボール』(角川書店) です。著者は「ピッツバーグ・トリビューン・レビュー」紙のジャーナリストであり、まさに、野球のパイレーツを担当しているそうです。英語の原題はそのままで、2015年の出版ですが、それまで20年以上に渡ってリーグでの負け越しを続けてきた大リーグ球団であるピッツバーグ・パイレーツが2013年にリーグ戦で勝ち越しを決め、さらに、ポストシーズンゲームであるプレーオフに進出した経緯を取材から明らかにしています。その秘訣は本書のタイトル通りにビッグデータの活用にあります。本書の邦訳者のあとがきだか、解説だかにもある通り、私も読んで、映画化もされた『マネー・ボール』が出版されたのが2003年で、出塁率の重視とか、本書で焦点を当てているビッグデータからすればかなり初歩的な統計を用いた戦略上のイノベーションだったんですが、本書では球団のGMと監督が一致協力してチーム力強化のためにビッグデータを活用し、それを守備に活かすことにより勝利につなげようとの試みです。すなわち、守備シフトとそれに対応してゴロを打たせるためのツーシームの多用、フレーミングによりストライクの判定を引き出せるキャッチャーの獲得、の3本の矢に加えて、投手の怪我の防止や新人選手の獲得や育成まで含めたデータの活用が取り上げられています。そして、私も『マネー・ボール』やマリアノ・リベラの自伝などの大リーグにまつわるノンフィクションを読んだりした中に、あまりお目にかからなかったのは試合経過の記述なんですが、本書では、第12章の後半を使ってポストシーズンゲームへの進出を決めた試合の実況中継のような試合経過が報告されています。それはそれで感動的なんだろうと私は受け止めています。私のような野球ファンには大いにオススメです。大リーグの選手に親近感があって、何人かのスタープレイヤーの名前を知っていたりすると、もっと面白いかもしれません。それにしても、内陸に位置するピッツバーグの大リーグ球団名がパイレーツというのは、私は昔から不思議に感じていました。なぜなのでしょうか?

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次に、東山彰良『流』(講談社) です。広く知られた通り、昨年第153回直木賞の受賞作です。長らく待って、ようやく図書館から順番が回って来ました。このところ、芥川賞受賞作よりも直木賞受賞作の方をよく読んでいる気がし、例えば、この直後の青山文平『つまをめとらば』とか、直前の西加奈子『サラバ!』とか、その前の黒川博行『破門』とか、さらにその前の姫野カオルコ『昭和の犬』とか、しっかりと読んでいたりします。その昔は芥川賞受賞作をせっせと読んでいたにもかかわらず、最近は又吉直樹『火花』の前は2011年の円城塔「道化師の蝶」や田中慎弥「共喰い」までさかのぼらないと読了した芥川賞作品がないようになってしまい、年齢を感じるべきなのかもしれません。でも、時代小説が好きなのは昔からですし、年齢とともに私自身の読書の傾向がさらに高齢化したのかもしれません。それはともかく、本書は基本的に私の好きな青春小説です。著者が幼少期を過ごした台北の町が本書の舞台となっています。1975年で高校2年生の17歳ですから、ほぼ私と同じ世代の主人公で、逆に、著者からは10歳くらい年長になるんではないかと計算しています。祖父を殺され、替え玉受験で高校を退学になり、いろいろあって大学にも進学できずに、2年間の徴兵から帰ると恋人とは疎遠になり、結局、最後は大陸に渡って祖父を殺した意外な犯人と対面します。アチコチでけんかが起こり、友人よりさらに親密な「兄弟」という日本ではもうすっかり廃れた親友関係が濃厚に残る台湾で、しかも、大陸からの落ちのびて来た外省人と台湾土着の内省人との差別や対立も色濃く残り、私のように小さいころから核家族で育った日本人とは異なる環境の下の台湾での複雑な人間関係の下で、青春を過ごす主人公が羨ましい時もあれば、まあ、アホらしく感じないでもないケースもありました。青春小説としては、私は吉田修一の『横道世之介』をもっとも高く評価しているんですが、本書もなかなかのスケールで一気に読ませます。似てはいても、異なる文化の下での青春物語として、一定の評価が出来ると受け止めています。また、本書を読んでから、街頭で配布しているポケット・ティッシュを有り難くもらっておくようになりました。

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最後に、岡田尊司『マインド・コントロール 増補改訂版』(文春新書) です。2012年に単行本で出版された本を増補改訂して新書に収録しています。著者は精神科の医師です。タイトル通りのマインド・コントロールについて、男女間の恋愛や家族関係などの小さな物語から始まって、カルト宗教から大きな物語のファシズムや共産主義などの全体主義まで、いろいろと分析を加えています。特に、マインド・コントロールで支配しようとするファシズムや共産主義の支配層だけでなく、DV夫に尽くしまくる女性などの支配される側の分析も豊富であり、依存度の高いパーソナリティ、被暗示性の強さ、バランスの悪い自己愛、ストレスなどをその原因として上げていたりします。また、洗脳と脱洗脳の比較など、興味深い視点が提供されており、割合と最近読んだ『スタンフォード監獄実験』などとともに、私は、決して、個人レベルのパーソナリティだけでなく、社会レベルとまではいわないまでも、相対的な人間関係の中で役割分担に基づく支配もあるんではないか、という気がしていて、例えば、男女間の関係では男性が女性に対して支配的な地位に立ちやすい、などがありそうなんですが、本書ではあくまで個人レベルの精神科医的な視点で貫き通しています。もう少し心理学的、あるいは、社会学的な視点も欲しい気がしないでもありません。でも、人間の本姓に迫る部分にスポットを当てていて、とても興味深い本だと思います。いろんな自然科学、物理学や化学などの知識は善用もされれば、悪用もされます。それは、自然科学だけでなく、社会科学も同じなのかもしれません。研究者として心しておきたいと思います。

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Text of President Obama's Speech in Hiroshima, Japan

The following is a transcript of President Obama's speech in Hiroshima, Japan, as recorded by The New York Times.

Seventy-one years ago, on a bright cloudless morning, death fell from the sky and the world was changed. A flash of light and a wall of fire destroyed a city and demonstrated that mankind possessed the means to destroy itself.
Why do we come to this place, to Hiroshima? We come to ponder a terrible force unleashed in a not-so-distant past. We come to mourn the dead, including over 100,000 Japanese men, women and children, thousands of Koreans, a dozen Americans held prisoner.
Their souls speak to us. They ask us to look inward, to take stock of who we are and what we might become.
It is not the fact of war that sets Hiroshima apart. Artifacts tell us that violent conflict appeared with the very first man. Our early ancestors having learned to make blades from flint and spears from wood used these tools not just for hunting but against their own kind. On every continent, the history of civilization is filled with war, whether driven by scarcity of grain or hunger for gold, compelled by nationalist fervor or religious zeal. Empires have risen and fallen. Peoples have been subjugated and liberated. And at each juncture, innocents have suffered, a countless toll, their names forgotten by time.
The world war that reached its brutal end in Hiroshima and Nagasaki was fought among the wealthiest and most powerful of nations. Their civilizations had given the world great cities and magnificent art. Their thinkers had advanced ideas of justice and harmony and truth. And yet the war grew out of the same base instinct for domination or conquest that had caused conflicts among the simplest tribes, an old pattern amplified by new capabilities and without new constraints.
In the span of a few years, some 60 million people would die. Men, women, children, no different than us. Shot, beaten, marched, bombed, jailed, starved, gassed to death. There are many sites around the world that chronicle this war, memorials that tell stories of courage and heroism, graves and empty camps that echo of unspeakable depravity.
Yet in the image of a mushroom cloud that rose into these skies, we are most starkly reminded of humanity's core contradiction. How the very spark that marks us as a species, our thoughts, our imagination, our language, our toolmaking, our ability to set ourselves apart from nature and bend it to our will — those very things also give us the capacity for unmatched destruction.
How often does material advancement or social innovation blind us to this truth? How easily we learn to justify violence in the name of some higher cause.
Every great religion promises a pathway to love and peace and righteousness, and yet no religion has been spared from believers who have claimed their faith as a license to kill.
Nations arise telling a story that binds people together in sacrifice and cooperation, allowing for remarkable feats. But those same stories have so often been used to oppress and dehumanize those who are different.
Science allows us to communicate across the seas and fly above the clouds, to cure disease and understand the cosmos, but those same discoveries can be turned into ever more efficient killing machines.
The wars of the modern age teach us this truth. Hiroshima teaches this truth. Technological progress without an equivalent progress in human institutions can doom us. The scientific revolution that led to the splitting of an atom requires a moral revolution as well.
That is why we come to this place. We stand here in the middle of this city and force ourselves to imagine the moment the bomb fell. We force ourselves to feel the dread of children confused by what they see. We listen to a silent cry. We remember all the innocents killed across the arc of that terrible war and the wars that came before and the wars that would follow.
Mere words cannot give voice to such suffering. But we have a shared responsibility to look directly into the eye of history and ask what we must do differently to curb such suffering again.
Some day, the voices of the hibakusha will no longer be with us to bear witness. But the memory of the morning of Aug. 6, 1945, must never fade. That memory allows us to fight complacency. It fuels our moral imagination. It allows us to change.
And since that fateful day, we have made choices that give us hope. The United States and Japan have forged not only an alliance but a friendship that has won far more for our people than we could ever claim through war. The nations of Europe built a union that replaced battlefields with bonds of commerce and democracy. Oppressed people and nations won liberation. An international community established institutions and treaties that work to avoid war and aspire to restrict and roll back and ultimately eliminate the existence of nuclear weapons.
Still, every act of aggression between nations, every act of terror and corruption and cruelty and oppression that we see around the world shows our work is never done. We may not be able to eliminate man's capacity to do evil, so nations and the alliances that we form must possess the means to defend ourselves. But among those nations like my own that hold nuclear stockpiles, we must have the courage to escape the logic of fear and pursue a world without them.
We may not realize this goal in my lifetime, but persistent effort can roll back the possibility of catastrophe. We can chart a course that leads to the destruction of these stockpiles. We can stop the spread to new nations and secure deadly materials from fanatics.
And yet that is not enough. For we see around the world today how even the crudest rifles and barrel bombs can serve up violence on a terrible scale. We must change our mind-set about war itself. To prevent conflict through diplomacy and strive to end conflicts after they've begun. To see our growing interdependence as a cause for peaceful cooperation and not violent competition. To define our nations not by our capacity to destroy but by what we build. And perhaps, above all, we must reimagine our connection to one another as members of one human race.
For this, too, is what makes our species unique. We're not bound by genetic code to repeat the mistakes of the past. We can learn. We can choose. We can tell our children a different story, one that describes a common humanity, one that makes war less likely and cruelty less easily accepted.
We see these stories in the hibakusha. The woman who forgave a pilot who flew the plane that dropped the atomic bomb because she recognized that what she really hated was war itself. The man who sought out families of Americans killed here because he believed their loss was equal to his own.
My own nation's story began with simple words: All men are created equal and endowed by our creator with certain unalienable rights including life, liberty and the pursuit of happiness. Realizing that ideal has never been easy, even within our own borders, even among our own citizens. But staying true to that story is worth the effort. It is an ideal to be strived for, an ideal that extends across continents and across oceans. The irreducible worth of every person, the insistence that every life is precious, the radical and necessary notion that we are part of a single human family — that is the story that we all must tell.
That is why we come to Hiroshima. So that we might think of people we love. The first smile from our children in the morning. The gentle touch from a spouse over the kitchen table. The comforting embrace of a parent. We can think of those things and know that those same precious moments took place here, 71 years ago.
Those who died, they are like us. Ordinary people understand this, I think. They do not want more war. They would rather that the wonders of science be focused on improving life and not eliminating it. When the choices made by nations, when the choices made by leaders, reflect this simple wisdom, then the lesson of Hiroshima is done.
The world was forever changed here, but today the children of this city will go through their day in peace. What a precious thing that is. It is worth protecting, and then extending to every child. That is a future we can choose, a future in which Hiroshima and Nagasaki are known not as the dawn of atomic warfare but as the start of our own moral awakening.

source: The New York Times

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2016年5月27日 (金)

岩貞投手が鬼気迫るピッチングで巨人打線を3安打完封!

  HE
阪  神100000000 160
読  売000000000 031

さすがに防御率トップ2投手の先発で引き締まった投手戦を、岩貞投手が鬼気迫るピッチングで3安打完封で制しました。打線は相変わらず打てませんが、相手投手が菅野投手ですから止むを得ないところもあります。ヤクルトとは乱打戦を展開しましたが、巨人とは投手戦となるんでしょうか?

明日も、
がんばれタイガース!

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2か月連続でマイナスを記録した消費者物価をどう見るか?

本日、総務省統計局から4月の消費者物価指数(CPI)が公表されています。ヘッドラインの前年同月比上昇率は▲0.3%の下落を記録し、生鮮食品を除くコアCPIも同じ▲0.3%の下落となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価、2カ月連続マイナス 4月0.3%下落
総務省が27日発表した4月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きの激しい生鮮食品を除く総合指数が102.9と、前年同月比0.3%下落した。2カ月連続のマイナス。前年比での原油安などを背景にガソリンや電気代が下がったことが全体の物価を押し下げた。
市場予測の平均は0.4%の下落だった。分野別にみると電気代が9.9%、ガソリンが16.0%それぞれ下落。エネルギー全体は12.6%下がった。このほかルームエアコンが値下がりし、家庭用耐久財も2.4%下落した。
一方、上昇した品目は価格が下がりにくくなっているテレビが13.3%上昇した。外国パック旅行も12.0%上昇した。衣類なども値上がりが続いている。
ガソリン価格は足元でみると上昇に転じている。前月比4.7%上昇と9カ月ぶりに前月を上回った。
総合指数は前年同月比0.3%下落した。マイナスは2カ月連続。「食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合指数」は前年同月から0.7%上昇し、2年7カ月連続で前年水準を上回った。
先行指標となる5月の東京都区部のCPIは、生鮮食品を除く総合指数が前年同月比0.5%下落した。電気代の下落などが影響し、5カ月連続のマイナス。下落幅は11年3月以来5年2カ月ぶりの大きさだった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが5月中旬値です。いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。

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昨夜の企業向けサービス価格指数(SPPI)を取り上げたブログでも書きましたが、4月の物価はある意味で節目に当たっており、財政年度が始まり、学校も新学期ですから、価格改定が集中する場合もあるんですが、少なくともここ何年かに渡ってはそのような価格改定の集中は生じず、景気が緩やかに回復する中で人手不足が本格化する中で、それなりに期待しないでもなかったんですが、今年も大きな価格改定の集中はやって来なかった印象です。これまで、国際商品市況における石油価格の下落から、消費者物価(CPI)でも価格の下落はエネルギーにほぼ集中していたんですが、ここ1-2か月で国内の財に対する波及が見られ始め、相対価格ではなく一般物価に広がりを見せることがほぼ確実になったと私は受け止めています。ただ、エネルギー価格の波及とともに為替の円高進行も合わせ技で進んでおり、その両方のインパクトによるものと考えるべきです。加えて、需要の弱さが物価上昇を阻害していることも明らかです。特に最後の需要の弱さは賃上げの低下とともに、物価上昇に昨年に比べてネガティブな影響を及ぼしているように私は受け止めています。
また、東京都区部のCPIの推移を見ても、この先、全国でも物価の下落幅の拡大が継続する可能性が高く、こういった将来的な物価情勢も視野に入れると、デフレに逆戻りというか、デフレ脱却プロセスの停止すら考えられることから、現政権の財政出動に合わせた、というか、財政政策の発動があると仮定すれば、ということですが、その際には、金融政策のいっそうの緩和がアジェンダに上るんではないかと私は想像しています。

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2016年5月26日 (木)

乱打戦の最後は連夜のサヨナラ負けで大きく疲れまくる!

  HE
阪  神010202000 591
ヤクルト102020001x 6130

今夜の阪神に分のない乱打戦で、最後はヤクルトに連夜のサヨナラ負けでした。打線の得点力も、終盤の勝ちパターンの投手陣も、昨日今日に限っては、いずれもヤクルトの方が1枚上手だったということなのかもしれません。

東京ドームの巨人戦は、
がんばれタイガース!

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企業向けサービス物価はプラスを維持するもこう着状態が続く!

本日、日銀から4月の企業向けサービス価格指数(SPPI)が公表されています。ヘッドラインの前年同月比上昇率は+0.2%を記録し、国際運輸を除くコアSPPIも同じ+0.4%の上昇率となっています。いずれも、前月と同じ上昇率でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の企業向けサービス価格、前年比0.2%上昇 上昇と下落品目数同じ
日銀が26日発表した4月の企業向けサービス価格指数(2010年=100)は102.9と前年同月比0.2%上昇した。前年比での上昇は34カ月連続。「国内の需給拡大を背景に値上げの動きは続いたが、前年に比べると値上げ幅の縮小が多かった」(調査統計局)という。伸び率は3月と同じだった。
品目別に前月と比較すると、情報通信でインターネット接続手数料が引き上げられたことや、ソフトウエア開発の受注が好調で人材不足となり、外注単価の上昇したことなどから伸び率が拡大した。そのほか、広告でインターネット広告の検索連動型やバナー広告が値上げ幅を拡大した。
諸サービスでは宿泊サービスが前年同月比9.7%上昇した。上昇は15年12月以来4カ月ぶり。国内ビジネス客や外国人観光客の需要が好調だった。
一方、運輸・郵便では道路貨物輸送や道路旅客輸送が上昇幅を縮小し、下落につながった。貨物貸し切り輸送でトラックドライバーの人件費や燃料費の上昇が一巡したことや、軽油価格の引き下げが影響した。
全147品目のうち、上昇品目、下落ともに53で、上昇品目と下落品目の差はゼロとなり、13年9月(マイナス3以来)の低い値となった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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最初に書きましたように、ヘッドラインのSPPIもコアSPPIも3月から上昇率は変わらずでした。というのは、4月は財政年度が始まり、学校も新学期ですから、価格改定の時期に当たるわけで、場合によってはインフレ基調が鮮明になることも考えられると予想していたんですが、基調の変化をもたらすような価格上昇は起こらなかったようです。ただ、引用した記事にもある通り、インターネット接続料金の改定があり、前年同月比で見て情報通信が大きな寄与度差を生じています。結局、国際商品市況における石油価格の下落の影響をモロに受けた財価格が低迷している一方で、人手不足のインパクトの方が大きいサービス価格は前年比でプラスを続けている現状は大きくは変わりありません。少し前にこのブログでは膠着状態と書いたような気がしますが、まさにそれが続いているわけなんでしょう。小幅に、インターネット広告や事務所賃貸が前月に比べて寄与度差プラスを示し、土木建築サービスやプラントエンジニアリング、また、道路貨物輸送などが寄与度差マイナスを記録しています。下落幅が大きい品目として、外航貨物輸送が▲24.4%、国際航空貨物輸送が▲13.8%、それぞれ下落していますが、荷動きの鈍さに加えて、原油安や円高が影響しているものと受け止めています。

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2016年5月25日 (水)

乱打戦の最後に藤川投手が打ち込まれてサヨナラ負け!

  HE
阪  神004003010 8101
ヤクルト303200001x 9120

序盤からノーガードに近い乱打戦でしたが、最後は藤川投手が力尽きてヤクルトにサヨナラ負けでした。仕事の都合で序盤は見ていないんですが、乱打線では阪神よりもヤクルトの方に分があったような気がします。バレンティン選手のように、ゴメス選手にもう1本欲しかったところかもしれません。

明日は、
がんばれタイガース!

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第一生命サラリーマン川柳ベストテンが発表される!

今週月曜日の5月23日に第一生命から、今年の第29回サラリーマン川柳ベストテンが発表されています。以下の画像の通りです。高齢化の進展とともに、川柳に詠まれたサラリーマンが現役世代から引退世代に中心が少しずつ移行しつつあるような気がします。

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やや無理やりですが、経済評論のブログに分類しておきます。

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2016年5月24日 (火)

リクルートのワークス研による Works Index 2015 やいかに?

実は、昨日午後、お誘いを受けてリクルート社のワークス研で作成を始めた Works Index 2015 に関するシンポジウムを聞きに行ってきました。かなり大サンプルのパネルデータの作成を始めたようなんですが、毎年1月にその前年の状況を回答してもらう、ということのようで、今回が初めての調査でしたから、実は、まだパネルデータにはなっていないわけで、現時点では単なるクロスセクション・データだったりします。まあ、それでも、立派なリポートがpdfでアップされていますので、グラフを引用して簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、リポート p.13 から 図表16 就業形態別の Works Index の結果 (2015年) を引用しています。このインデックスを構成している5つのコンポーネント、すなわち、就業の安定(安定性)、生計の自立(経済性)、ワークライフバランス(継続性)、学習・訓練(発展性)、ディーセントワーク(健全性)、のそれぞれについて、就業形態別、すなわち、正規・非正規などの条件に従って、インデックスの値をプロットしています。正規・非正規という観点でいえば、正規職員は安定性と経済性と発展性=スキルアップはパート・アルバイトを上回り、逆に、ワークライフバランスでは正規職員はパート・アルバイトを下回っています。その正規職員とパート・アルバイトの間に位置するのが派遣職員、ということになりそうです。まあ、正規職員はワークライフバランスを犠牲にして安定性と経済性と発展性=スキルアップを取っている、ということなんでしょうから、そうなのかもしれません。

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次に、上のグラフは、リポート p.19 から 図表21 生計の自立と学習・訓練との関係 を引用しています。縦軸が経済性、横軸が発展性ですが、ほとんど無相関ながら、単純に計測するとわずかに正の相関があるかもしれません。右上に例示してある職種は、高給でかつスキルアップもできる一方で、左下は、処遇が悪くて現時点で生計の自立が困難な状況であるだけでなく、スキルアップする機会にも恵まれないため、将来にわたって生計の自立ができない状況が続く可能性が懸念されるわけです。ですから、リポートでは、「職種としての生産性を高めること、特定の業務を繰り返し行いスキルを高めてスペシャリストとして仕事ができるような環境を整備することが求められている」と、結論しています。

繰り返しになりますが、まだ1年目のデータですのでパネルデータにはなっていませんが、東京大学のサイトでかなり詳細なデータが公開される予定であり、将来的には研究目的などで利用可能なように聞き及んでいます。

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2016年5月23日 (月)

貿易統計に見る熊本地震の影響は大きいのか?

本日、財務省から4月の貿易統計が公表されています。ヘッドラインとなる輸出額は季節調整していない原系列の統計で▲10.1%減の5兆8892億円、輸入額は▲23.3%減の5兆657億円、差引き貿易収支は+8235億円の黒字と3か月連続の黒字を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の貿易収支、3カ月連続の黒字 熊本地震で輸出減
財務省が23日発表した4月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は8235億円の黒字(前年同月は583億円の赤字)だった。貿易黒字は3カ月連続。黒字額は2010年3月以来、6年1カ月ぶりの高水準だった。原油安で輸入額の減少幅が大きくなった。黒字幅はQUICKがまとめた市場予想(5350億円の黒字)を上回った。
輸出額は前年同月比10.1%減の5兆8892億円と、7カ月連続で減った。対米輸出は11.8%減と2カ月連続で減少。品目別では自動車が4.4%減と、14年11月以来、1年5カ月ぶりに前年割れした。4月下旬に発生した熊本地震により、大手車メーカーの部品工場が生産を停止した影響が出た。中国を含むアジア向けは、台湾向けの鉄鋼半製品などの輸出が振るわず、11.1%減った。
対ドルの円相場が111.23円と前年同月から7.2%の円高となったことも輸出額の減少要因。対世界の輸出数量指数は4.6%低下し、2カ月連続でマイナスとなった。
輸入額は23.3%減の5兆657億円と、16カ月連続で前年実績を下回った。金額は11年2月以来、5年2カ月ぶりの低水準。原油価格が下落し、サウジアラビアからの原粗油やカタールからの液化天然ガス(LNG)などの輸入額が減った。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、注目された熊本地震の輸出への影響なんですが、引用した記事にもある通り、前年同月比で見て、国別では米国向けの輸出が減少し、さらに、品目別では自動車輸出が減少しているので、米国経済の低迷の影響があるとはいえ、やや輸出にネガティブな影響が見受けられるような気がしますが、熊本地震の輸出への影響はほとんど限定的といっていいレベルの減少であろうと私は受け止めています。むしろ、直感的には、輸出の減少は円高に起因し、輸入の減少は我が国景気動向に由来すると考える方が自然だという気がします。輸出入の差引きで決まる貿易収支の黒字幅が大きいのは、どちらかといえば輸入の減少に起因し、国際商品市況における石油価格の低迷と我が国景気の停滞に原因がありそうな気がします。上のグラフ、特に季節調整済みの系列のグラフからも、輸出入がともに減少する中で、特に輸入額の減少の方が大きくて差額が貿易黒字につながっているのが見て取れると思います。別の見方をすれば、貿易黒字は定着しつつあると考えるべきです。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、貿易収支の黒字が定着しつつある要因は現在のところ輸出額の増加よりも輸入額の減少の寄与の方が大きいと考えられるため、必ずしも手放しで評価できるわけではないと受け止めている一方で、先行きについては、さすがの国際商品市況もそろそろ底打ちに向かう一方で、我が国からの輸出も増加の方向に向かうと考えられるので、おそらくとても緩やかな動きながら、それなりの拡大均衡に向かう可能性があると私は考えています。すなわち、米国経済は6月にも再利上げが予定されているほど堅調であり、欧州経済と中国経済も最悪期を脱しているように受け止めています。大きな懸念材料は為替です。しかし、米国が再利上げに踏み切れば、現在の円高は是正される可能性があるんではないかと私は楽観しています。

繰り返しになりますが、詳細な情報があるわけではないものの、貿易統計から見て熊本地震の輸出入への影響はかなり限定的と私は受け止めています。為替の影響は無視すべきではないものの、世界経済の回復とともに我が国からの輸出も緩やかに増加する可能性が高まっていると考えるべきです。

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2016年5月22日 (日)

ホームランの威力を見せつけられて広島に完敗し5割に戻る!

  HE
広  島005200030 10141
阪  神202001000 5120

昨夜のサヨナラ勝ちの勢いから初回に2点を先制し、いいムードで試合を始められたにもかかわらず、先発メッセンジャー投手がボロくも崩れて、広島の長打力に屈して完敗でした。主力打者があれだけ低めのクソボールを振っていたんでは得点力は大いに落ちますし、しかも、広島がホームランでポンポンと得点する一方で、阪神は単打や押出しフォアボールばかりで、尺取り虫のような歩みでは追いつきません。ダブルスコアの完敗でした。根本的には、12安打で5点取れば投手陣で抑えないとタイガースに勝機はないような気がします。

次のヤクルト戦は、
がんばれタイガース!

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2016年5月21日 (土)

またまた9回逃げ切りに失敗するもルーキー高山選手のサヨナラ打で広島にリベンジ!

  HE
広  島100000002 360
阪  神000100111x 4150

今季初先発の岩崎投手がよく投げ、またまた9回の逃げ切りに失敗したものの、ルーキー高山選手のサヨナラ打で広島にリベンジでした。15安打で4点ですから、とても効率は悪いんですが、まあ勝ったんでよしとします。

明日は、
がんばれタイガース!

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今週の読書は経済書と教養書・専門書に加えて、伊坂幸太郎の『サブマリン』などの小説もあって計7冊です。

今週の読書は経済書と教養書・専門書に加えて、伊坂幸太郎の『サブマリン』などの小説もあって計7冊です。

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まず、ポーラ・ステファン『科学の経済学』(日本評論社) です。著者はこの分野の専門家で、すでに70歳を過ぎていると思いますが、長らくジョージア州立大学教授の職にあります。専門は経済学であって、いわゆる「科学」ではありません。本書は2010年に出版された Handobook of the Economics of Innovation" の第5章の翻訳です。タイトルはそのままと考えてよさそうです。ただし、本書の「科学」とは基本的に自然科学であって、社会科学は含まれていません。ということで、科学的な学術活動が成果を得ると生産分野におけるイノベーションを通じて経済成長にスピル・オーバーする、というのがエコノミストの基本的な考え方で、これに従って科学の活動の生産性、というか、経済への影響を分析しています。一般の私的財と異なり、学術研究の成果やいわゆる知識と呼ばれるものは、公共財的に排除原則が作用せず、だれもが利用可能になる一方で、その知識を応用して生産物にする場合には、特許が成立すれば独占的な利益が得られます。基礎研究と応用研究でかなり大きな違いがあるわけです。しかも、特許が典型なんですが、勝者総取り方式です。2番目以降の発明や発見に対しては特許は与えられず、利得はゼロとなります。非常に興味ある点として2点取り上げると、科学の学術活動にはそれなりのライフ・サイクルがあり、当然ながら逆U字カーブを描きます。ノーベル賞受賞者のピークは30歳から31歳くらいだそうです。どうでもいいことながら、少なくとも出版された学術論文に限って言えば、私の学術活動のピークは50歳くらいだったような気がします。もう1点は性差です。科学分野の学術活動では、歴然として男女の差があります。そして、歴史的にこの差が縮小する方向には決してありません。この理由は私には理解できないところです。最後に、STAP細胞があるのかないのかで話題になりましたが、科学的な学術研究の成果が経済的にどこまで報いられるかのシステムによっては、インチキをしようとするインセンティブが生まれる可能性があります。私はジャカルタにいるころに、名古屋大学のエコノミストを招いてインドネシア政府の役人たち向けにセミナーを開催した経験があり、その女性が当時ノーベル化学賞を授賞したばかりの野依教授と親しかったものですから、ノーベル賞を受賞しても金銭面でまったく報われない日本的な研究システムについてさんざん聞かされた記憶があります。インチキのインセンティブを生むほどの高額の報酬とその昔の何も報酬のないシステムと、その間のどこかに最適解があるんだろうと思います。インチキではなく実際の成果につながるようなシステム設計が可能かどうかは、解はあると仮定しても、それが制度的に実現が可能かどうかは不明なような気がします。

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次に、安部修仁・伊藤元重『吉野家で経済入門』(日本経済新聞出版社) です。著者は吉野家ホールディングスの会長と著名なエコノミストで東大教授です。同じ2人の共著で、2002年に『吉野家で経済学』という本が出版されているらしいです。2002年当時、我が家は南の島の海外生活でしたので、私はまったく前著は記憶にありません。ということで、当然ながら、吉野家の経営に関する本なんですが、前著と同じように対談の口述筆記の形式を取っています。もちろん、提灯持ちの出版なんですが、同じ提灯持ちでも、『海賊とよばれた男』の出光興産と違って、吉野家は賞賛に値する企業だと私は考えています。すなわち、本書には出て来ませんが、割り箸をヤメてリターナブルな箸にしたり、従業員も使い捨てのブラック企業と違って、きちんとした正社員登用制度もあり、なんといっても、商品開発力、というか、イノベーション力が違います。私は日本の企業の中で、私の世代が感じることが出来る範囲で、もっともイノベーションの優れた企業のひとつではなかろうかと考えています。ほかは、ヤマト運輸とセブン・イレブンなどです。私の世代が体感できる範囲からは少し古く、例えば、戦後の企業ではホンダやソニーも上げられるでしょうし、その前となれば、現パナソニックの松下電産なども入るかもしれません。また、外食産業というスコープで考えると、国内企業と外国企業が入り乱れているのが実感でき、その意味で、国際化が進んでいるともいえます。吉野家をはじめとする牛丼店やいくつかの回転寿司やファミレスなどの国内勢のほか、海外勢のマクドナルド、ケンタッキー・フライドチキン、ミスター・ドーナツ、そして、カフェのスター・バックスなど、枚挙に暇がありません。その昔、我が家の子供達が小さいころは、私もマクドナルドが好きだったりしたんですが、青山に住んでいた折りには徒歩圏内に3-4店舗あったスタバに行く機会もめっきり少なくなり、今では、吉野家とミスター・ドーナツを使い分けています。すなわち、食事に適した吉野家には長居できない一方で、オヤツに適したミスター・ドーナツで読書したりしています。また、我が家の上の倅が私以上に極端なんですが、個人店舗の喫茶店などよりも、今では何らかのチェーン店の方が、個性はないにしてもクオリティに安心かがあるような気がします。エコノミスト誌が購買力平価でビッグマック指数を明らかにしているのと同じ感覚かもしれません。

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次に、マッケンジー・ファンク『地球を「売り物」にする人たち』(ダイヤモンド社) です。著者は「ニューヨーク・タイムス」や「ナショナル・ジオグラフィック」などに寄稿した経験を持つジャーナリストであり、本書の取材に6年かけたとされています。英語の原題は Windfall であり、風で落ちた果実を意味しますから、日本語でいえば「たなぼた」といったところで、2014年に出版されています。気候変動の負の面ではなく、ビジネス・チャンスと捉えて儲け話を進める人たちを取材しています。ただし、決して肯定的にオススメするかのような切り口ではなく、批判的に、とはいわないまでも、事実を淡々と記述しているように受け止めています。温暖化による海水面の上昇は南の島を水没させる一方で、極地に近い氷河を融解させて利用な好な土地が増加する可能性も含んでいます。その土地からエネルギーや何らかの天然資源が採取できれば、経済社会にプラスかもしれません。ということで、本書では3部構成を取っており、融解、旱魃、洪水、となっています。日本人はパニック・シナリオが好きで、ゴジラが東京に来てすべてを破壊するようなストーリーに飛びつくんですが、経済社会全体で考えると、ゼロサムとまではいわないまでも、どこまでマイナスが発生すれば、それを埋め合わせるほどではないにしても、どこかでプラスが発生している可能性が十分あります。でも、何らかの変化が好ましいかどうかは、エコノミストは価値判断したがらないんですが、それなりに考慮する必要があり、例えば、少子高齢化や地球温暖化については、私は何らかの防止策が考慮されて然るべきではないかと考えています。本書でも著者は、気候変動にビジネス・チャンスを見出そうとする人々について「1人として悪人には出くわさなかった」(プロローグ p.xv)という一方で、「誰かを犠牲にした利益」(エピローグ p.403)に手を伸ばすことが本当に正義なのかどうか、を問うています。私が今まで気候変動や地球温暖化問題について手にした本では、ほとんどすべてが温暖化の緩和を訴えていた内容だったのに対し、本書は新たな観点を提示しているともいえます。それなりに耳を傾けるべきなのかもしれません。

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次に、白石隆『海洋アジアvs.大陸アジア』(ミネルヴァ書房) です。著者は主としてアジア地域をホームグラウンドとする政治学者であり、政策研究大学院大学の学長やアジア経済研究所の所長などを務めています。本書はミネルヴァ書房の雑誌「究」掲載のための4回の講演を基に書籍化されており、4章構成です。私は京都にあるミネルヴァ書房の本社の場所を知っていますが、あの山科の本社での講演だったんでしょうか。それはともかく、2015年半ばの時点から論じています。長期、といってもせいぜいが数十年のスパンから、地政学的な観点も含めて、主として経済の規模などを基礎として、アジア各国の戦略的な動向を踏まえた上で、日本の国家戦略を論じています。米国のオバマ大統領が従来の欧州との大西洋関係ではなく、アジアとの太平洋重視を打ち出し、6:4で軍隊を太平洋に展開しているわけですから、経済はいうに及ばず世界の政治外交の中心が大西洋から太平洋に徐々に移動している可能性は考慮すべきです。欧米で一括りにされる大西洋関係がキリスト教という宗教的な同一性、カトリックかプロテスタントかはさて置き、で考えられるのに対して、オーストラリアやニュージーランドも含めたアジア太平洋には、いわゆる3大宗教がすべて取りそろえられています。タイは仏教ですし、マレーシアやインドネシアは主としてイスラム教です。そして、経済的には何といっても1980年代の日本、さらに、2000年以降の中国の台頭が目覚ましく、大きな地殻変動を生じています。日本は米国との同盟関係がある一方で、中国はそうではない点がそれなりの重要性を帯びてきます。米国を軸として日韓両国は同盟関係にある一方で、現在の韓国の朴政権や日本の少し前の民主党の鳩山政権などは、米国から距離を置いて中国に接近する姿勢を示したこともあります。米国がアジア太平洋で果たすべき役割については、本書でも、アイケンベリー流の米国の役割を重視するリベラル・リアリズムと、ブレマー流のG0とを本書でも第1章で取り上げつつ、実は、中国はグローバル・ガバナンスの点で米国にフリー・ライドしている点を強調したりしています。他方で、米国でもいわゆる「関与とヘッジ」の政策で中国に接しており、強固に日韓との同盟関係の優先順位を不変と考えるばかりではない可能性も示唆されています。さすがに、この方面の一流の専門家になる本だけに、私にも参考となる部分が少なくなかったんですが、3点ほど疑問を呈すると、第1に、すでに書きましたが、宗教的な側面がとても軽視されているように感じます。第2に、著者は安倍政権の安全保障政策を手放しで肯定しているように見受けられますが、ホントにそれでいいのかどうかは疑問が残らないでもありません。第3に、本書のタイトルが内容を表していないような気がします。著者の白石先生はマハン的な『海の帝国』という著書もあるんですが、本書は陸と海の戦略論からはほど遠い気がします。何か、適当なタイトルはなかったんでしょうか?

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次に、ボストングローブ紙『スポットライト 世紀のスクープ』(竹書房) です。ご存じの通り、今年のアカデミー賞を受賞した映画の原作本であり、英語の原題は Betrayal すなわち、裏切りです。オリジナルの出版は2002年ですが、映画化に合わせて昨年2015年に増補改訂版が出版されています。かなりの著名作ですから、内容の想像はつくと思いますが、要するに、米国のカトリック教会内における小児性愛などの逸脱行為を行った神父の存在を明らかにするとともに、これらの不法行為や神父の存在について秘匿しようとしたり、あるいは、分かっていながら聖職にとどめ続けた教会組織のあり方に疑問を投げるというか、あからさまに批判しています。ジャーナリズムですから、事実をていねいにインタビューをはじめとする取材から明らかにしています。ただ、メディアの常なんですが、事実を明らかにするだけで、その原因を追求するのは因果関係に光を当てる科学の役割ですし、その原因究明に基づいて対応策を立案するのは、本書の場合は違うんですが、往々にして政府の役割だったりします。私の知る範囲で、読売新聞が年金制度の提案をしたことがありますが、本書では異常というか、性的な犯罪行為を明らかにし、それを隠匿ないし無視した教会組織のあり方を批判しているわけです。特に、米国の場合は訴訟社会ですから、聖職者や教会の犯罪行為・不法行為はかなり高い確率で裁判を引き起こし、その結果は犯罪者や犯罪者を隠匿した組織が負うことになります。それは大いに結構な正義なんですが、後追いではなく、先行きの犯罪行為の防止につなげる志向も大切ではないでしょうか。本書を読んだので、私は映画の方はとりあえずパスして、後ほどDVDを借りてみるのも一案か、と考えないでもありません。

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次に、伊坂幸太郎『サブマリン』(講談社) です。人気ミステリ作家の書き下ろし作品であり、12年前の『チルドレン』の続編です。ですから、主人公は家庭裁判所調査官の陣内と武藤です。傍若無人で発言も率直極まりない陣内とより常識人に近い武藤のコンビで、人事異動先の東京にて再会し、さらに新たな同僚として女性の調査官が加わっています。ほとんど感情を表に出すことなく機械のような印象で、口癖は「それって必要ですか」だそうですが、出番は限られており、陣内と武藤のコンビで物語が進みます。今回の表のテーマは自動車と交通事故であり、触法青年は無免許運転で暴走事故を起こし早朝のジョギング中の中年男性をひき殺してしまいます。よくいわれる通り、当然といえば当然ながら、故意の殺人と異なり交通事故の死亡事故は量刑が格段に軽く、さらに未成年の少年犯罪は「罪と罰」ではなく更生を主たる眼目としていますので、遺族などの被害者側からは疑問の声が上がる場合があったりします。本作では触法青年が交通事故を起こすに至る経緯を陣内と武藤が同僚の女性調査官とともに解き明かすのがミステリの勘どころとなっています。少しずつ真実が明らかにされていく中で、関係ないと見逃されがちだった周辺事情が伏線となり、また、交通事故とは無関係と思える登場人物や出来事が、とてもピッタリと謎解きに関係していたりで、伊坂ワールドが堪能できると思います。私のようなファンだけでなく、多くの方にオススメです。私は伊坂幸太郎のファンですので、12年前の『チルドレン』を読んでいるんですが、ほぼ忘れかけており、前作を読んでいなくてもそれなりに楽しめると思いますし、私なんぞはもう一度読んでみました。作品の中では、新聞記事で「公務員」としか紹介されず、決して社会派ではない陣内と武藤なんですが、それなりに、私の好きな「世のため、人のために役立っている」気がします。

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最後に、島田荘司『屋上の道化たち』(講談社) です。この著者の代表的シリーズのひとつである御手洗潔のシリーズの最新作、シリーズ50冊目に当たる長編書き下ろしです。どうでもいいことながら、本書の最後の部分に50冊すべてがリストになっているんですが、おそらく、あくまでおそらくで、私はすべて読んでいると思います。ということで、本作はT見市なる横浜市鶴見区を強烈に示唆する地域で、地域商店街と銀行の支店を舞台に、自殺するハズがなくて、その旨を明言していながら、銀行支店の屋上から飛び降り自殺をする4人の死について、御手洗潔が謎解きをします。まあ、シリーズ前作『星籠の海』が玉木宏主演で映画化され、6月4日に封切られる予定となっていますが、前作ではまだ朝鮮半島由来の怪しげな新興宗教と対決する御手洗潔という社会派的な正義感も伺われましたが、本作では何もありません。映画化もされないと思います。およそ、社会常識では考えられないような奇っ怪な偶然が重なった事件でしたし、特に面白くもなかった気がします。唯一、作者が考えを巡らせたであろう点は、時代背景をバブル末期で金銭的な倫理観が麻痺していたピークの1991年年末から翌1992年年始に置いたことであり、この点だけは評価できます。デフレの真っ最中に本作のような一般庶民の金銭感覚が示されると、私でなくても疑問に感じる人も多そうな気がします。時間差謎解きで、大昔の事件や謎を解き明かして解決するケースが少なくない御手洗潔シリーズなんですが、本作はワトソン役の石岡が同時進行の1992-92年時点の物語として書いている体裁と解釈すべきなんでしょう。私のように、御手洗潔シリーズをかなり読んでいるファン以外には、決してオススメしません。

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2016年5月20日 (金)

超変革打線は拙攻を続け超変革投手陣は12回に力尽きて広島に逆転負け!

 十一十二 HE
広  島000000001003 470
阪  神000100000000 1121

岩貞投手と黒田投手の両先発投手の力投が続く引き締まった投手戦だったんですが、結局、超変革打線がサッパリで超変革投手陣も12回に力尽き逆転負けでした。現時点での順位を象徴するようなチーム力の差を見せつけられた気がします。

明日は、
がんばれタイガース!

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TSAロックのスーツケースを買いに行く!

今日は今年初めての年休を取って、1日お休みでした。
今年は米国本土に出張予定があり、TSAロックのついたスーツケースを買いに行きました。我が家のスーツケースは2000年にジャカルタに赴任した際の大きな70リットルくらいのですが、2001年9月11日のテロに対応したTSAロックはついていません。当然です。ここ数年でも、パリに出張したり、昨年は豪州のメルボルンまで行って経済モデルの年次総会に出席したりしたんですが、米国本土はホントに久し振りです。私も国際派を自任しているんですが、隣席の同僚が気を利かせてくれて、TSAロックに対応していないスーツケース向けのTSAロックのついたベルトを貸してくれたんですが、まあ、ここはひとつスーツケースを買ってしまいました。少し小さめの50リットルくらいのもので、旅行代理店の人に言わせれば、1日10リットルの勘定らしいんですが、まあ、私のような人間であれば、1週間で50リットルあれば十分ではなかろうかと高をくくっています。また、最近はジッパーの開閉式が目につくんですが、昔ながらの金具の方式にしてしまいました。公用旅券で行きますので大丈夫と思いますが、テロリスト間違われないように気をつけたいと思います。

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2016年5月19日 (木)

最後は原口捕手のサヨナラ打で中日に逆転勝ち!

  HE
中  日200000000 290
阪  神000002001x 390

クリンナップ鳥谷遊撃手と福留外野手のタイムリーで6回に追いつき、最後は原口捕手のサヨナラ打で中日に逆転勝ちでした。どうも先発投手が序盤に失点するのは藤浪投手でもどうしようもなく、中盤6回にクリンナップの打棒で追いつき、投手陣は粘って持ち堪えた甲斐がありました。最後の原口捕手のサヨナラ打は9回の流れの中で、打つべくして打ったものだという気もします。
どうでもいいことながら、サヨナラ打の後のヒーロー・インタビューで思い出すのは葛城選手の雄叫びなんですが、原口選手が復活させてくれないものでしょうか?

次の広島戦も、
がんばれタイガース!

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機械受注はマイナス金利により増加に転じるか?

本日、内閣府から3月の機械受注が公表されています。電力と船舶を除く民需で定義されたコア機械受注の季節調整済みの系列は前月比+5.5%増の8951億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下のとおりです。

機械受注、3月は5.5%増 15年度は8年ぶり高水準
内閣府が19日発表した3月の機械受注によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比5.5%増の8951億円だった。増加は2カ月ぶり。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(0.7%増)を上回った。内閣府は機械受注の判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
製造業からの受注額は19.7%増の3842億円と、2カ月ぶりに増加した。業種別では非鉄金属で原子力原動機、化学機械、造船業で内燃機関などの受注が増えた。一方で非製造業から受注した金額は6.9%減の4944億円だった。
併せて発表した1-3月期の船舶・電力を除いた民需の受注額は前期比6.7%増の2兆6785億円だった。プラスは2四半期連続。内閣府が2月に公表した1-3月期の受注額見通し(6.4%増)も上回った。
4-6月期は3.5%減の見通しとした。製造業は7.5%減、非製造業は1.5%減を予想している。製造業で原動機と航空機、非製造業で電子・通信機器・原動機などの受注減を見込んでいる。
2015年度の受注額(船舶・電力を除く民需)は前年度比4.1%増の10兆1838億円だった。増加は3年連続で、2007年度以来8年ぶりの高水準だった。製造業が6.2%増で非製造業が2.5%増だった。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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最近のコア機械受注の動きを見ると、1月にイレギュラーな大型案件が入った反動で2月が減少に転じた後、3月は前月比でプラスを記録しました。機械受注は毎月の変動の激しい指標ですから四半期で見ると、1-3月期はコア機械受注は前期比で+6.7%増となり、3か月前の見通し時点の+6.4%を上回りました。また、先行き四半期の4-6月期の見通しはコア機械受注の前期比で▲3.5%減が見込まれていますが、これは1月にイレギュラーな大型受注案件が入ったこともあり、4-6月期の受注水準見込みとしては2兆5836億円ですから、昨年10-12月期実績の2兆5098億円を軽く+3%近く上回っています。ですから、統計作成官庁である内閣府の基調判断「持ち直しの動き」の正にその通りであり、ようやく機械受注から設備投資の先行きが明るくなり始めた可能性が示唆されていると私は受け止めています。。
四半期ではなく、直近の3月の単月統計に関していえば、非鉄金属が前月比で+928.5%を示しており、1月の鉄鋼業の前月比+928.5%増ほどではないものの、何らかのイレギュラーな大型案件があった可能性も否定できません。また、不動産業が3月には前月比で+51.8%を記録しており、あくまでエコノミストの間の噂話程度の確度ながら、足下でマイナス金利の導入によって不動産業界が活気づき始めている可能性を指摘する意見も聞かれます。私は疑わしいと思いますが、少なくとも、これだけ企業の手元流動性が豊富になり、同時に、人手不足がある一方で設備の過剰感が払しょくされつつありますので、今後の設備投資動向は企業マインドに依存する部分が大きく、マイナス金利が期待やマインドの面から企業の設備投資を後押しする可能性も十分あり得ると受け止めています。その呼び水として財政政策による需要プッシュが有効かどうかは議論あるものの、ひとつの可能性としては私もエコノミストとして認めざるを得ないような気がします。

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上のグラフはコア機械受注達成率をプロットしています。ジグザグした動きながら、エコノミストの経験則である景気転換点の90%は上回って推移しています。

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2016年5月18日 (水)

2四半期振りのプラス成長となった1-3月期1次QEの「実力」はほぼゼロ成長か?

本日、内閣府から1-3月期のGDP統計1次速報、いわゆる1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.4%で、前期比年率成長率で+1.7%となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1-3月期GDP、年率1.7%増 うるう年効果で
内閣府が18日発表した2016年1-3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.4%増、年率換算では1.7%増だった。15年10-12月期(年率換算で1.7%減)から2四半期ぶりのプラス成長に持ち直した。
今回のGDPは、2月が例年より1日多いうるう年の影響を含んでいる。事前の民間試算によれば、うるう年効果で1-3月期のGDPは前期比0.3ポイント程度(年率1.2ポイント程度)押し上げられる。
QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.1%増、年率で0.3%増だった。
生活実感に近い名目GDP成長率は前期比0.5%増、年率では2.0%増だった。名目でも2四半期ぶりのプラス成長となった。
実質GDPの内訳は、内需が0.2%分のプラス寄与、外需は0.2%分のプラス寄与だった。
項目別にみると、個人消費は前期比0.5%増と、2四半期ぶりにプラスとなった。前四半期(0.8%減)から持ち直した。うるう年によって消費が押し上げられた。公共投資は0.3%増と、小幅ながら3四半期ぶりのプラス成長となった。
一方、設備投資は1.4%減と、3四半期ぶりのマイナスだった。前四半期(1.2%増)から減少に転じた。世界経済の減速懸念から、企業が投資を先送りする動きがあったとみられる。価格上昇などが響き、住宅投資は0.8%減と、2四半期連続でマイナスだった。民間在庫の寄与度は0.0%のマイナスだった。
輸出は0.6%増、輸入は0.5%減となり、GDP成長率に対する外需寄与度はプラスを確保した。GDPで個人消費ではなく輸出に計上されるインバウンド(訪日客)需要は輸出を下支えした。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス0.9%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.5%下落した。
同時に発表した2015年度のGDPは実質で前年度比0.8%増と、2年ぶりのプラス成長となった。生活実感に近い名目では2.2%増だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2015/1-32015/4-62014/7-92015/10-122016/1-3
国内総生産 (GDP)+1.3▲0.4+0.4▲0.4+0.4
民間消費+0.2▲0.8+0.5▲0.8+0.5
民間住宅+2.1+2.2+1.7▲1.0▲0.8
民間設備+3.8▲1.6+0.7+1.2▲1.4
民間在庫 *(+0.6)(+0.3)(▲0.1)(▲0.1)(▲0.0)
公的需要▲0.2+0.9▲0.3▲0.1+0.6
内需寄与度 *(+1.2)(▲0.1)(+0.3)(▲0.5)(+0.2)
外需寄与度 *(+0.1)(▲0.3)(+0.1)(+0.1)(+0.2)
輸出+2.2▲4.8+2.6▲0.8+0.6
輸入+1.5▲2.6+1.7▲1.1▲0.5
国内総所得 (GDI)+2.1▲0.1+0.6▲0.2+1.0
国民総所得 (GNI)+1.4+0.3+0.4+0.1+0.3
名目GDP+2.0▲0.1+0.7▲0.2+0.5
雇用者報酬 (実質)+0.5+0.0+0.8+0.5+1.3
GDPデフレータ+3.2+1.4+1.8+1.5+0.9
内需デフレータ+1.4+0.0▲0.1▲0.2▲0.5

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2016年1-3月期の最新データでは、前期比成長率がプラスに転じ、特に、うるう年効果により赤い消費のプラス寄与が大きい一方で、水色の設備投資がマイナス寄与しているのが見て取れます。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは年率+0.3%でしたから、やや上振れしたとはいうものの、力強い回復にはほど遠くて、数字の字面はともかく、実感としてはほぼジャストミートしたと私は受け止めています。要するに、公式答弁を一言でいえば「緩やかな回復」であり、もっと端的な表現を用いると、低迷とは言わないまでも、緩やかな回復のほか、力強さに欠けるとか、踊り場とか、一進一退とか、膠着状態、などで表現できそうな景気の現状です。
その主因である消費の停滞が、この1-3月期はうるう年効果でプラスに振れたわけですから、それなりの成長率を記録したと考えるべきです。逆に、消費が伸びれば全体の成長率の底上げになる可能性があります。という意味では、当面のカギは家計部門かもしれませんが、他方、企業部門では相変わらず先行き視界不良で設備投資がマイナスとなりましたし、在庫調整の進展もはかばかしくありません。家計部門を盛り上げるためにはそれなりの賃上げも必要なんですが、春闘の結果などを見る限り、厚生労働省の毎月勤労統計の信頼性を別にしても、やや力不足という感触を私は持っています。家計部門と企業部門が相互作用の中で停滞した状況にあるとすれば、この1-3月期は純輸出が成長にプラスに貢献したものの、中国をはじめとする新興国景気にまだ、これまた力強さが欠けるとすれば、政府部門で景気の底上げを図るしかない、というのが最近の安倍政権の方向性です。短期には理解できる論法ですし、それなりの現実的な効果も見込めますが、中長期的な政府債務のサステイナビリティの議論では疑問が残る手法と受け止めるエコノミストも少なくなさそうです。
先行きの日本経済については、財政・金融の政策主導での回復が図られるかどうかは未確定であり、財政出動があるとしても中長期的なマイナス要因と見なされる場合も決して可能性がゼロではないことから、このままけん引役不在で漂流する可能性も否定できないと私は考えています。。ただ、メインのシナリオとしては人手不足の労働市場から正規雇用の増加や賃上げが生じ、家計部門の消費が主導して回復が継続する可能性が高いんではないかと期待しています。もうひとつは、米国が年半ばに利上げを実施して日米間の金融政策スタンスの違いが明らかになることに伴い、円高が修正されて輸出の増加につながる可能性があります。いずれにせよ、画期的に景気を力強く上向かせる要因は少なそうな気がします。最後に、10-12月期のGDP統計でも示したインバウンド消費のグラフは以下の通りです。今後とも、参考指標かもしれません。

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2016年5月17日 (火)

明日公表の1-3月期GDP統計1次QE予想やいかに?

必要な統計が出そろい、明日の5月18日に1-3月期GDP速報が内閣府より公表される予定となっており、シンクタンクや金融機関などから1次QE予想がほぼ出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の今年4-6月期以降を重視して拾おうとしています。明示的に取り上げているシンクタンクは、日本総研、大和総研、みずほ総研に加えて三菱総研の4機関だけでした。それらについては、可能な範囲で、ヘッドラインを気持ち長めに引用してあります。特に、みずほ総研は足元の4-6月期だけでなく、7-9月期まで言及していましたので、超長めに引用しています。なお、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.2%
(+0.9%)
4-6月期を展望すると、在庫調整圧力が引き続き企業の生産活動の重石となるほか、熊本地震による生産・消費・観光の下振れも一時的に景気下押しに作用。うるう年による消費上振れの反動も見込まれることから、GDPは下振れしやすい状況に。もっとも、①2015年度補正予算・16年度予算の前倒し執行を受けた公共投資の持ち直し、②人手不足などを背景とした所得雇用環境の改善傾向の持続、などが景気下支えに作用することで、景気が持続的に落ち込む事態は回避される公算。
大和総研+0.1%
(+0.5%)
先行きの日本経済は、基調として緩やかな拡大傾向へと復する公算であるが、世界経済の減速や4月に発生した熊本地震の影響といった下振れリスクが浮上している点には警戒が必要だ。
個人消費は非常に緩やかながら拡大基調に復すると見込んでいるが、足元で個人消費を取り巻く環境は厳しさを増している。確かに、労働需給は引き続きタイトであり、このことが雇用者報酬の増加を通じて個人消費を下支えするとみている。加えて、政府が景気対策として実施する低所得の年金受給者に対する給付金も先行きの個人消費を下支えするだろう。しかし、今年のベースアップの増加幅が昨年より縮小したことや株安が消費マインドを抑制する一因となるほか、原油価格が上昇に転じた結果、実質賃金の増加ペースが鈍化するとみられることも消費を抑える要因となろう。更に、熊本地震を受けて、国内において消費自粛ムードが高まってくることになれば、個人消費の停滞が長期化する公算が大きい。
みずほ総研+0.1%
(+0.5%)
4-6月期の日本経済は、在庫調整圧力が残る中で、熊本地震による生産停滞が下押しとなるため、景気の足踏みが続くとみられる。
報道等によれば、自動車部品工場の被災によって大手自動車メーカーが全国的に工場を閉鎖した影響で、自動車生産は9万台程度下振れした模様である。機械的に試算すると、上記減産によって、4月の生産全体は1%強下押しされる計算だ。
ただし、4月末にかけて、自動車メーカーの生産停止は解消しつつある。今後、他の部品で供給制約が再び顕在化する可能性は残存しているが、仮に5月以降の生産が従来の計画水準に復すれば、4-6月期を通した生産の下振れは0%台にとどまり、実質GDPの下押しも0.1%程度に抑えられるだろう。物流停滞に伴う消費下振れなどの影響を考慮に入れても、現時点では、熊本地震による日本経済全体への影響を、過度に悲観的にみる必要はないと判断される。過去の事例として、熊本地震と同程度の被害がみられた新潟県中越地震、および同程度の地震規模(マグニチュード)だった阪神淡路大震災時の経済指標(鉱工業生産、実質GDP)を確認しても、①地震発生直後こそ生産が減少したものの、1-3か月後には持ち直したこと、さらに②実質GDPは必ずしも明確に下振れしたわけではないことなどが見て取れる。
7-9月期以降については、熊本地震に伴う消費者マインド低迷の長期化などに注意は必要だが、生産下振れ分の挽回生産が続くとともに、欧米を中心とした海外経済の緩やかな回復により輸出の下支えも見込まれることから、景気は緩やかに持ち直すと見込んでいる。
ニッセイ基礎研+0.1%
(+0.6%)
GDP統計では季節調整をかける際にうるう年調整が行われていないため、1-3月期の成長率は日数増によりかさ上げされている可能性がある。当研究所では1-3 月期の成長率はうるう年の影響で前期比年率1%程度押し上げられた(民間消費は前期比0.4%程度)と試算しており、この影響を除けば小幅なマイナス成長と考えられる。
第一生命経済研+0.4%
(+1.4%)
1-3月期のGDPは、表面上の数字こそ高めになると思われるが、これはうるう年による日数増の要因によって、見かけ上押し上げられていることによるものである(前期比年率で+1.2%Pt程度の押し上げと試算される)。この押し上げ分を除けば概ねゼロ成長とみられる。15年10-12月期がマイナス成長だった後にもかかわらずゼロ成長ということであれば、弱い結果という評価で問題ない。日本経済の停滞が持続していることを示す結果といって良いだろう。
伊藤忠経済研+0.1%
(+0.2%)
1-3月期の実質GDP成長率は前期比+0.1%(年率+0.2%)と2四半期ぶりの前期比プラス成長になった模様。ただし、輸出の持ち直しが主因であり、内需は総じて低調。さらに、10-12月期の落ち込みを埋め切れておらず、日本経済は停滞局面が続いている。こうした中で日銀は追加の金融緩和を見送り、デフレ脱却期待は後退した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+0.1%
(+0.6%)
2四半期ぶりの実質プラス成長が見込まれるものの、成長ペースは緩やかにとどまった模様である。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング0.0%
(0.0%)
個人消費は、雇用・所得情勢が緩やかに持ち直しているほか、うるう年効果による押し上げがあったと考えられるものの、消費者マインドの悪化による節約志向の高まりなどにより、小幅の伸びにとどまった模様である。設備投資は、業績改善が一服していることもあって、企業の新規投資に対する慎重姿勢が強まっていると考えられ、前期比でマイナスに転じたと予想される。一方、輸出が比較的底堅く増加している半面で、輸入の伸びが小幅にとどまったため、外需寄与度は3四半期連続でプラスとなったと見込まれる。
三菱総研+0.4%
(+1.6%)
2016年4-6月期は、うるう年要因が剥落することから、消費が前期比マイナスに転じると見込む。GDP全体としても小幅マイナス成長となる可能性があり、景気の回復力が鈍い状況が続くであろう。

要するに、ほぼカツカツのプラス成長で、しかも、輸出とうるう年要因によるプラス成長であり、経済の実態はまだまだ本格回復にはほど遠いと受け止めています。1-3月期で90日からうるう年は1日増えますので、日数だけからすれば単純に消費は3%強増える計算になりますが、月極で料金が決まっているものもありますから、それほどでもありません。でも、軽く1-2%の消費押し上げ効果はあり、GDPベースに引き直しても1%ないし1.5%くらいはあるんだろうと思います。ですから、うるう年効果なければ、ほぼゼロ近傍の成長率にとどまっていたか、あるいは、マイナス成長だったかもしれません。逆に、もしも公表値がマイナスであれば、かなりのネガティブなサプライズということになりかねません。足元から先行きの景気動向については、基本的に、緩やかな回復が続くと私は見ているんですが、熊本地震の終息と世界経済の回復が前提になります。ですから、リスクは下振れリスクの方が大きいと考えるべきです。
下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。

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2016年5月16日 (月)

またまた大きな下落を示した企業物価をどう見るか?

本日、日銀から4月の企業物価(PPI)が公表されています。ヘッドラインの前年同月比上昇率は▲4.2%の下落と引き続き大きなマイナスを記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の企業物価指数、4.2%下落 マイナス幅は6年5カ月ぶりの大きさ
日銀が16日に発表した4月の国内企業物価指数(2010年平均=100)は前年同月比4.2%下落の99.3だった。前年同月を下回るのは13カ月連続で、指数はリーマン・ショック後の09年11月以来6年5カ月以来の低水準だった。下落率も09年11月以来の大きさだった。電力やガスの値下がりが続いていることに加え、円高も物価押し下げ要因になった。市場予想の中央値である3.7%の下落を下回った。
4月の指数は前月比では0.3%下がった。電力・都市ガス関連の価格下落に加えて、薬価改定で医薬品価格が下がった。一方、鉄鉱石の国際価格の上昇を受けて鉄くずは価格が上昇した。
円ベースの輸出物価は前月比で1.0%下落、前年同月比で9.5%下落。円高進行で輸入物価は前月比で1.1%下落、前年比では19.4%下げている。
「エネルギー関連の価格契約は昨年末から年初の原油価格などを基に算出されている。最近回復しつつある原油の国際市況が反映されるのには時間がかかる」(調査統計局)という。
企業物価指数は企業間で売買するモノの価格動向を示す。公表している814品目のうち、前年同月比で上昇したのは242品目、下落は492品目となった。下落品目と上昇品目の差は250品目で3月の143品目からから拡大した。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の、下のパネルは需要段階別の、それぞれの上昇率をプロットしています。いずれも前年同月比上昇率です。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲3.7%の下落だったので、かなりの大きな下落と私は受け止めています。特に、国内物価の前年同月比で見て、1月の▲3.2%下落から、2月▲3.4%、3月▲3.8%と来て、4月は▲4.2%ですから、国際商品市況における石油価格の下落はほぼ反転したにもかかわらず、タイムラグがあるとはいえ、3か月連続で国内物価が下落幅を拡大し、しかも、6年振りの大きな下落を示しているわけですから、円高の影響は大きいと受け止めざるを得ません。介入の示唆をはじめとして、為替に関する財務省幹部の発言などがここ数日で報じられていますが、まあ、理由のあることなのかもしれません。
現状では、輸入物価の下落はほぼ一巡しており、ドル建ての国際価格の上昇と円高の進行による円建て国内価格の下落の綱引きで、後者に軍配が上がっている段階ですので、このまま石油などの国際価格が上昇したり、あるいは、円高がそれなりに収まれば、PPIの基となる円建て国内価格の下落にも歯止めがかかる可能性は十分あります。国際商品市況の変化と為替相場の動向は、おそらく、ラグ構造に違いがあるんでしょうが、価格の調整という面では為替のラグが長い気がします。ですから、CPIへの影響はそれほど大きくない可能性はあるんではないかと私は想像しています。

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2016年5月15日 (日)

横浜に勝ち切れずに悔しい引き分け!

 十一十二 HE
阪  神000301001000 550
横  浜000000032000 5111

鳥谷選手のツーランとタイムリーでリードしながら、終盤に守備のミスが出ただけでなく、クローザーのマテオ投手も失点し、横浜に追いつかれて勝ち切れませんでした。序盤に超変革打線が得点を上げ、しかも不振を極めた鳥谷キャプテンの打棒で得点し、さらに、8回ウラに考え難いプレーが出て追い上げられてからも、ゴメス選手のダメ押しホームランが出ながら、クローザーのマテオ投手が追いつかれました。交代は考えないんですかね?
あほらし。

次の中日戦は、
がんばれタイガース!

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2016年5月14日 (土)

先発投手が序盤に失点し打撃陣が抑え込まれる負けパターンで横浜に沈む!

  HE
阪  神000010000 150
横  浜03000000x 3100

典型的な負けパターンでした。先発岩貞投手に期待しましたが、やっぱり、超変革投手陣は序盤に失点し、超変革打線は終盤までお休みで得点できず、というのはここ何試合か続いている負けパターンでした。昨夜の繰り返しですが、超変革投手陣は序盤に失点しつつも、何とか粘れているので、超変革打線がもっと得点力を上げるよう期待します。

明日は、
がんばれタイガース!

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今週の読書は井堀先生の消費増税論など計7冊!

今週の読書は、財政学の権威である井堀先生の『消費増税は、なぜ経済学的に正しいのか』ほか、教養書や宗教書(?)、さらに、話題の小説も含めて全部で7冊です。なかなかペースダウン出来ません。

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まず、井堀利宏『消費増税は、なぜ経済学的に正しいのか』(ダイヤモンド社) です。著者の井堀教授は財政学や公共政策学に関する著名なエコノミストであり、東京大学名誉教授です。本書は3部構成から成っており、第1部で財政再建の重要性を強調し、第2部で世代間不公平を是正するための年金と医療の改革を提示し、最後の第3部でシルバー民主主義を是正するための選挙制度改革などにも言及しています。第1部では財政再建を楽観視させる4つのポイント、すなわち、成長への依存、消費増税のダメージの大きさ、基礎的財政収支の均衡と財政再建の違い、などについて、ていねいに井堀教授の元来の説を敷衍しつつ、明らかに次世代へのツケの先送りである財政再建を歳出と歳入の両面から強力かつ早期に開始する必要性を強調しています。不平等是正なども、それなりの財政収入がなければ、「ない袖は振れない」わけですから、社会保障政策のためにはそれなりの歳入確保は絶対に必要なんですが、このブログでも何度か指摘した通り、我が国のシステムは、集めた税金を社会保障で国民に還元する福祉国家ではなく、トリクルダウンを期待して土木建設により還元する土建国家ですので、不公平感が強くて増税に対する抵抗感が強く、単に税制だけでなく支出面での適正化も含めた議論が必要です。第2部では、年金などは現行の賦課方式から積立方式に移行して世代間不公平を改善するという意見は従来から根強く存在するんですが、井堀教授はさらに個人積立方式への移行を視野に入れています。詳細は省略しますが、誤解を恐れず私なりに短く表現すれば、子供がいて年金保険料を支払ってくれないと親には年金が支払われない、というシステムです。もはや社会保障ではなく、家族単位での老後保障でしかないような気もするんですが、ひとつの意見かもしれません。最後のシルバー民主主義の克服の部では、選挙制度で青年・中年・老年の3部構成の議会とか、余命別選挙制度とか、極めて画期的ながらすでにいくつかの研究成果の出ている民主主義システムを紹介しています。ただし、最後の納税者投票というのは、私には少し違和感がありました。

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次に、エコノミスト誌編集部による『通貨の未来 円・ドル・元』(文藝春秋) です。4部構成となっており、ドル、元、ビットコインなどの仮想通貨、そして、円の4通貨を対象にして、基本的に、すでにエコノミスト誌に掲載された記事をアンソロジーのように編集しています。ただし、円の部の2章だけは書き下ろしとなっています。ドルの部が5章、というか、記事5つ、元が記事4つ、仮想通貨と円がそれぞれ記事2つ、ですから、円の部は記事がなくて書き下ろしだけなわけです。現時点での世界経済における重要性を象徴しているウェイトではなかろうかと受け止めています。現在の国境を超えるいわゆるクロスボーダーの取引で用いられる決済通貨のうち40パーセントあまりはドル建てであり、いわゆる基軸通貨の役割を果たしています。そして、本書でもドルに代わる基軸通貨は見当たらいと結論しています。ユーロを思い浮かべる人も少なくないんでしょうが、ユーロは裏付けとなる主権を有する国家があるわけではありませんから、欧州で消滅が合意されればその瞬間に消えてなくなる可能性があります。元が基軸通貨になるためには中国国内の金融市場が相当程度に成熟する必要があり、流動性を高め、世界で受け入れられる通貨とならねばなりなせんし、現時点でも元がいわゆるハードカレンシーなのかどうかは疑問があります。さいごの2章で書き下ろされた日本経済については、日銀のインフレ目標は非現実的で失敗と断定し、アベノミクスにも辛い採点がなされています。繰り返しになりますが、基本はすでに掲載された記事をテーマにそって集めているだけですから、毎週のエコノミスト誌をたんねんに読んでいれば本書を読む必要はないわけで、最期の日本経済の2章だけを立ち読みで済ませるという手もありそうな気もしました。

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次に、スコット・パタースン『ウォール街のアルゴリズム戦争』(日経BP社) です。著者はウォールストリート・ジャーナル紙をホームグラウンドとするジャーナリストです。本書の英語の原題は Dark Pool であり、ヘッジファンド用語で、ビッドやオファーといった気配値が公開されない場を通じて、取引当事者同士が直接交渉することで価格を決定して取引が成立する取引環境を指します。ただ、出版は2012年ですから、決して、直近の最新情報まで収録されているわけではないので、その点は注意が必要です。1987年10月のいわゆるブラック・マンデーでもインデックス取引が大きな下げのひとつの要因としてクローズアップされましたが、その後、1990年代半ばからコンピュータによる高頻度取引が現れ、さらに、その高頻度取引が人間ではなくAIによって指示されるほぼ自動的・自律的なアルゴリズムにより繰り返され、株式市場が歪められていく様を、本書では20年近い歴史的スパンで追跡しています。巨大な投資銀行などと違って、あまり表に出ることのないヘッジファンドで活動し、これまた、それほどの著名人ではないファンド・マネージャーや規制当局の責任者などの実名がポンポンと小気味よく飛び出すノンフィクションです。本書では株式市場に的を絞って、コンピュータや人工知能(AI)による取引の実態を明らかにしていますが、逆からエコノミストの目で見ると、ある意味で、すなわち、市場がファーマ教授のような意味での効率的な状態になったがために、アノマリを得るためにはピコ秒やナノ秒単位で超高速の取引を行う必要が出て来たんではないかと想像しています。ただし、本書では日本語で「裁定取引」=アービトラージが出現するのは p.431 だけではないかという気がします。「アノマリ」はそもそも出て来ません。裁定取引でサヤを抜くのはソロモン・ブラザーズ証券のメリウェザー率いる債券アービトラージ部門が有名だったんですが、国債ではなく株式市場でどこまでアノマリが生じて裁定が可能なのかは議論があるところかもしれません。最後に、やや邦訳に疑問が残る部分があります。すなわち、「アノマリ」が出現しませんが、何か、別の訳語が当てられているのかもしれません。あとがきで、「破綻するには大き過ぎる」というのを見かけて、たぶん、Too Big to Fail なんだろうと思いますが、何とかならないものかという気がします。最後の最後に、「ブロード街50番地」なる住所も頻出しますが、まさか、Broadway ではないでしょうね。

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次に、小倉和夫・康仁徳・日本経済研究センター[編]『解剖 北朝鮮リスク』(日本経済新聞出版社) です。水爆実験を成功したと称したり、ミサイル発射を宣伝したり、労働党大会を36年振りに開催したりと、謎に満ちた隣国なんですが、その北朝鮮を最新の情報に基づいて第一級の研究者が分析したのが本書です。全12章のうち前半部分6章は北朝鮮に関するデータというか、政治経済外交などに関する知られざる事実を網羅し、後半部分6章で対応策を披露しています。何分、私も知らないことばかりなので、本書の内容がどこまで真実なのかどうかは検証のしようがありませんが、それなりに示唆に富んだ内容です。現在の3代目の指導者が、かなり予測不能で危険で暴力的といわれている一方で、米国大統領選挙の共和党予備選でトランプ候補が事実上勝利し、ピュー研究所の世論調査などでも米国が孤立化の方向に動き出す可能性も少なくなく、「アジアの問題は勝手にアジアで解決すべし」なんて方向性が打ち出されたりすると、我が国としては米国抜きでどうすべきなのか、まったく私には何の見識もないんですが、それなりに勉強にある1冊でした。いずれにせよ、北朝鮮を対抗軸に考えると、竹島や慰安婦問題などで同盟国である日韓関係がぎくしゃくするのは米国は避けたいところではないかと思います。北朝鮮は末期症状という意見も捨てがたいものがあり、その際、私は勝手に朝鮮半島が統一されるとすればドイツ型であって、まさかベトナム型ではなかろうと予想しているんですが、まったく根拠はありません。中国が少なくともIS対策などで世界のリーダーシップを取ることは想像されないものの、さすがに北朝鮮への対応では何もしないわけでもないでしょうし、単に北朝鮮一国の「解剖」だけでなく、ロシアとまではいわないものの、中国の反応くらいは知りたい気もします。エコノミストの専門外もはなはだしい分野ですが、日本人として可能な範囲で知っておきたい知識が本書から得られると思います。

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次に、オースティン・アイヴァリー『教皇フランシスコ』(明石書店) です。この出版社からは何冊か教皇フランシスコの著書や、本書のようなドキュメンタリーというか、ノンフィクションというか、関連書籍が出版されています。教皇自身の手になる『教皇フランシスコ いつくしみの教会』とか、発言集のような『教皇フランシスコ 喜びと感謝のことば』などです。本書は2013年3月に就位した教皇フランシスコの半生記であり、著者はイエズス会の雑誌をホームグラウンドにする米国人ジャーナリストです。というのも、教皇フランシスコはイエズス会士として初めて教皇に選出されたからではないでしょうか。英語の原題は The Great Reformer であり、英語で言うところの定冠詞を付けて、大文字で始める the Reformation は日本語で言うところの「宗教改革」を意味しますから、とても意味深長なタイトルです。初のイエズス会士にして、初の南米出身、でも、実はイタリア人の家系出身、という複雑な人脈の中で選出され、改革派かつ南米出身でもイタリア人という細かな条件を満たし、ラテン人的な明るい人柄の教皇を本書ではいきいきと描き出しています。教皇フランシスコとなる前のホルヘ・ベルゴリオ神父ないし枢機卿の2世代くらい前の南米に移住して来た家族の物語から始めて、神学校へ進み聖職者となり、枢機卿から教皇に聖職者の階段を上り詰めるまでの半生をたどっています。本書では、母国アルゼンチンでのペロン政権やエビータ政権との複雑なかかわり、1970年代から80年代初頭の軍事独裁政権下での宗教者としての活動、マルクス主義的な「解放の神学」の解釈をめぐる葛藤、イエズス会の内部分裂と孤独の体験、さまざまなこういった困難をどう乗り越え、どのように枢機卿から教皇の座に上り詰めたのか、また、教皇になった最初のインタビューで明らかにした「貧しい人のための貧しい教会」という思想はいかにして生まれたのか、カトリック教皇庁にはどのような改革が必要なのか、こういった困難で重厚な問題を正面から取り上げ、明確で唯一の解決策のない議論ながら、教皇フランシスコの確固たる方向性を著者は強く支持しています。南米出身の教皇を育て上げるという小説には、かの有名なガルシア-マルケスの『百年の孤独』があります。ご興味ある向きは併せて読んでおくといいかもしれません。

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次に、宮下奈都『羊と鋼の森』(文藝春秋) です。ご存じ、今年の本屋大賞の第1位に選出された小説です。今年2016年1月18日付けのエントリーで、直木賞はこの作品ではないかと考えていた旨の投稿をしました。青山文平『つまをめとらば』も読んみましたし、いい作品だと思うんですが、両方読んで、ついでに、候補作品として上げられていた柚月裕子『孤狼の血』も読んで、やっぱり、直木賞は『羊と鋼の森』ではなかったのか、という気になりました。でも、直木賞としては大衆文学的なエンタメの要素というか、ひねりがなくて、むしろ純文学的な作品なので避けられた可能性もあるかもしれないと感じました。ということで、北海道の高校2年生が板鳥さんという優秀なピアノ調律師と出会い、自身がピアノ調律師になり板鳥さんと同じ会社で働きつつ、ピアノを弾くふたごの姉妹と出会い、また、いろんな経験を積んで、人間としても調律師としても成長していくという数年間を軽やかな文体で温かく静かに見守るような視点から小説として綴っています。実は、私は25年ほども前に南米チリに外交官として赴任する際、88鍵フルスケールのピアノを日本から持って行きました。外交官ですから通関もなく、よほどの明らかなご禁制品でない限り持ち込みは自由です。ただ、いわゆる電子ピアノでしたので、調律は一切不要でした。チリ大学音楽学部の助教授にレッスンを受けていました。電子ピアノではない、いわゆるアコースティックなピアノは、この作品にあるように調律によりかなり鳴り方が変わります。でも、ここまで自由自在に調律できるとは知りませんでした。別の視点ながら、少し本書がズルいと感じるのは、ピアノを持っていて調律をお願いできる家族や人というのは、自分がそうだったからというわけではありませんが、それなりの所得に恵まれて社会常識からすれば決して悪くない生活が可能で、短くいえば、ゆとりある上品な人達なんだろうと思います。おそらく、接していてそれほど不愉快でなく、余裕を持って鷹揚に構えている人が多いんではないかという気がしますので、そういった人達を中心に据えた小説にすれば、それなりに品よく温かな作品が出来そうな気もします。ズルい、とも、よく考えられた、ともどちらともいえそうです。ヤクザと警察を扱った『孤狼の血』よりは万人受けする可能性が高いんではなかろうかと考えてしまいました。

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最後に、旦部幸博『コーヒーの科学』(講談社ブルーバックス) です。著者は医学薬学系の研究者です。タイトルそのままで、要するに、コーヒーについて、香りやおいしさなどの科学的な分析を行うとともに、実践編として、なぜか豆のひき方が欠けているんですが、コーヒー豆の栽培から始まって、飲む直前の抽出までが網羅されています。ブルーバックスのシリーズですから、それなりに科学的な知識のバックグラウンドを必要とします。少し前にワインの新書を読みましたが、その続きみたいなもんです。食べ物はさて置いても、飲み物でコーヒーとビールについて、私はどちらも決して嫌いではないんですが、通常のおいしさとは違う何かがあると私は考えています。すなわち、人間のエネルギー源になるのは糖類であり、多くの人間はそれを甘くておいしいと感じ、エネルギー源を摂取するように自然の摂理が出来ているわけですが、コーヒーは明治の最初のころには、日本人の口には受け入れられませんでしたし、ビールをおいしいとは感じない人もいそうな気がします。主として、苦いからです。ただ、本書ではなぜそれを好きになるかまでは、心理学的なカテゴリーなのかどうか、解明してくれてはいませんが、少なくともおいしいと感じる科学的な根拠については、例えば、成分とは閾値とかは明らかにしてくれています。私なんぞはカフェや喫茶店で飲むだけなんですが、好事家はさかのぼる傾向があり、まず、挽いたコーヒー豆を買って自分でいれます。そして、さらにさかのぼると、焙煎したコーヒー豆を買ってきて、自分で挽いて、そして抽出するんだろうと思います。さらにさかのぼれば、生豆を入手して焙煎して、以下同様となり、まさかとは思いますが、自分でコーヒーノキを入手して育てる人もいるかもしれません。ただ、私が本書で不思議だったのは、先ほど触れた通り、コーヒー。ミルで豆を挽くという過程を無視している点です。私の高校生の頃に、私の両親はコーヒー・ミルを近所でもらって、焙煎した豆を買って来てミルで挽くようになったと記憶しています。もう一つはブレンドを無視している点です。喫茶店に入って「ブレンド」と注文する人は少なくないですし、ブレンドすることにより品質が向上する場合も少なくありません。ブレンドでよくなるのは繊維、コメ、ある種の合金など、決して少なくないんですが、コーヒーもその典型的なブレンドが成り立つものだと私は思っています。ということで、本書のスコープ外なのかもしれませんが、科学的な難しさとともに、少し物足りなさを感じました。

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2016年5月13日 (金)

競った試合で横浜に逆転勝ちで連敗ストップ!

  HE
阪  神000000021 382
横  浜010000010 251

何とか終盤で横浜に逆転して連敗ストップでした。それにしても、確かに藤浪投手はいいピッチングながら、超変革投手陣は序盤に失点し、超変革打線は終盤までお休みで得点できず、というのはここ何試合か続いていて、今日も負けパターンに近かった気がします。超変革投手陣は序盤に失点しつつも、何とか粘れているので、超変革打線がもっと得点力を上げるよう期待します。

明日も、
がんばれタイガース!

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三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる「2016年度 新入社員意識調査」の結果やいかに?

ちょうど1週間前の5月6日付けで、三菱UFJリサーチ&コンサルティングから「2016年度 新入社員意識調査アンケート結果」が明らかにされています。pdfの全文リポートもアップされています。新入社員を対象とするセミナーを東京、名古屋、大阪にて合計38講座を開催し1,300名を超える新入社員が受講したそうですが、そのアンケートの集計・分析結果をまとめたものです。まず、リポートから【アンケート調査結果の概要】5点を引用すると以下の通りです。

【アンケート調査結果の概要】
  • 理想の上司は「寛容型」。動物に例えれば「いぬ」。
  • リスク回避的。
  • 30歳時点での予想年収は平均427万円。今後は最高で平均606万円まで上がると予想。
  • 今の日本は「曇り」。10年後についても悲観的な見方が広がる。
  • 東京オリンピックの追加種目で正式採用が期待されるのは「野球・ソフトボール」。

ということで、毎年の定点観測のように注目している調査結果ですので、ここ何年かの時系列で傾向を把握できる項目を中心に、リポートから図表を引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポート p.3/34 から最近3年間の 就職活動の感想 のグラフを引用すると上の通りです。景気はさほどいいとも思えないんですが、人口減少や高齢化などに伴って人手不足が深刻化してきており、就活は楽になりつつあるといえるようです。ただし、グラフは引用しませんが、就職活動の際に「ブラック企業」を気にしたか、との問いがあり、半数近くの49.0%が「気にした」と回答し、31.9%の「少しは気にした」と合わせると8割強にも上っています。

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次に、リポート p.5/34 から 会社に望むこと と 仕事・職場生活に関する不安 のグラフを引用すると上の通りです。いずれも、第1に人間関係、第2に仕事と能力の関係、ということなんだろうと思います。私が新入社員、というか、新入りの公務員だったのは30年以上も昔のことながら、何となく判る気がします。

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次に、リポート p.10/34 から 就労意識 に関して最近10年余りの推移を見たグラフを引用すると上の通りです。2008年のリーマン・ショックを契機とする金融危機の前後から転職希望が大きく減少し、安定志向が割合を高めて来ていたんですが、2013年以降は選択肢が変更されたのもあって、転職希望は50%を少し超えたところで安定しているようです。でもこれはかなりの高率ともいえますから、人手不足が深刻化する中で転職市場もそれなりに活況を呈しており、よりよい就労機会があれば転職も考える新入社員が一定数いるのかもしれません。

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最後に、リポート p.11/34 から 出世意欲 に関して最近10年余りの推移を見たグラフを引用すると上の通りです。時系列的に一定の傾向があるわけではないのかもしれませんが、ジワジワと出世志向の割合が高まっているのも事実です。最初に見たように、第1に人間関係、そして、第2に仕事と能力発揮、だったんですが、人間関係を重んじる中でも、ある程度の競争を許容する、というか、仕方ないと考える新入社員の複雑な心理状態を表しているような気がします。

ここに取り上げた三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポートの他にも、「2016年マイナビ新入社員意識調査」でも同様の結果が示されています。ご参考まで。

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2016年5月12日 (木)

景気ウオッチャーの悪化は熊本地震の影響か?

本日、内閣府から4月の景気ウォッチャーが、また、財務省から3月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーの現状判断DIは前月から▲1.9ポイント低下して43.5を記録した一方で、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+2兆9804億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

街角景気、2カ月ぶり悪化 4月、熊本地震で 基調判断は据え置き
内閣府が12日発表した4月の景気ウオッチャー調査によると、街角景気の実感を示す現状判断指数は前月比1.9ポイント低下の43.5だった。悪化は2カ月ぶりで、指数は2014年11月以来の低水準だった。指数を構成する家計と企業動向、雇用関連の全項目が前月から低下した。熊本地震の影響が大きく、九州地域の現状判断指数が大幅に下がった。景気の基調判断はこれまでの「弱さがみられる」を据え置いた。
街角では地震の悪影響を懸念する声が目立ち、企業からは「熊本地震で自動車部品メーカーが操業停止したこともあり、当社の加工量も減っている」(東海・輸送用機械器具製造業)との声があがった。雇用面では「求人依頼数が前四半期よりも低調である。熊本地震の影響もあり採用を見合わす企業も出ている」(九州・人材派遣会社)との指摘もあった。
2-3カ月後の景気を聞いた先行き判断指数は1.2ポイント低下の45.5と、3カ月連続で悪化した。飲食関連が大きく悪化した家計動向のほか、企業動向、雇用関連のいずれの指数も低下した。「熊本地震による自粛ムードが高まっていることから、今後についてはやや悪くなる」(北海道・高級レストラン)との見方が出ていた。
15年度の経常黒字17兆9752億円、原油安で黒字額は2倍
財務省が12日発表した2015年度の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は17兆9752億円の黒字だった。原油価格の下落を受けて貿易収支が5年ぶりに黒字転換し、経常収支の黒字額は前年度(8兆7245億円の黒字)の2倍超となった。企業が海外事業への投資で受け取る配当金などの第1次所得収支は比較可能な1985年度以降で過去最大となり、20兆円を超えた。
15年度の貿易収支は6299億円の黒字だった。輸出額は3.3%減の73兆1355億円となり、3年ぶりに減少した。市況の悪化で鉄鋼の輸出額が落ち込んだことなどが響いた。輸入額は11.8%減の72兆5057億円で、6年ぶりに前年度を下回った。
サービス収支は1兆2109億円の赤字となり、赤字額は1兆5144億円減少した。項目別では「旅行収支」が訪日外国人観光客の増加を受けて、1兆2731億円の黒字となった。旅行収支は比較可能な1996年度以降で過去最大の黒字となった。
第1次所得収支は20兆5611億円の黒字となった。企業が海外事業への投資で受け取る配当金や証券投資からの収益が増え、黒字額は5855億円増加した。
同時に発表した3月の経常収支は2兆9804億円の黒字だった。経常黒字は21カ月連続。原油安による輸入額の減少などにより貿易収支は9272億円の黒字となった。輸出、輸入ともに前年同月から10%を超える減少となった。輸出は鉄鋼などの落ち込みが続いた。第1次所得収支は2兆1317億円の黒字だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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景気ウォッチャーは、現状判断DIが前月比▲1.9ポイント低下の43.5、先行き判断DIが前月比▲1.2ポイント低下の45.5をそれぞれ記録しています。上のグラフを見ても明らかなんですが、現状も先行きもジワジワと低下を続けており、供給サイドのマインドは悪化から抜け出せないでいます。特に、4月のマインドについては熊本地震の影響が色濃く出ていると受け止めています。なお、この統計の調査期間は毎月25日から月末となっています。2011年3月の震災ほどではないにしても、九州の自動車部品メーカーが操業を見合わせたり、もちろん、観光には大きな影響が及んでいるであろうことは専門外の私にも想像できます。もっとも、さすがに、2011年3月の統計では前月から現状判断DIで▲20.7ポイントの落ち込みを記録しましたが、今回2016年4月の指数は▲1.9ポイントにとどまっていますので、落ち込みとしてはかなり違いがあります。4月の現状判断DIの3つのコンポーネントの前月からの変化を見ると、家計動向関連がもっとも大きなマイナスで▲2.1ポイントを記録しており、次に、雇用関連が▲1.9ポイント、企業動向関連が▲1.5ポイントとなっており、昨日の景気動向指数と同じ傾向を示していて、家計部門がもっとも弱い現状を的確に示していると私は受け止めています。

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最後に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれませんが、経常収支についてもかなり震災前の水準に戻りつつある、と私は受け止めています。メディアの報道では2015年度の統計を取り上げて、国際商品市況における石油価格の下落から経常収支の黒字幅が前年度から倍増した点に注目が集まっています。ほぼ、年間20兆円近くの経常黒字ですから、震災前の水準に戻ったわけですが、当然ながら、このまま黒字が拡大するわけではないと考えるべきです。少なくとも、為替と石油市況はすでに反転している可能性が高いんではないでしょうか。また、貿易収支についても黒字化しているものの、輸出入ともに減少しての縮小均衡です。決して、輸出が伸びて黒字に貢献しているわけではありません。ただ、インバウンド消費だけはもう少し伸びる余地があるかもしれません。いずれにせよ、経常収支の黒字はGDP比で見てほぼ3-4%の震災以前の水準に戻ったものの、このまま黒字幅が拡大するわけではない点は注意が必要です。

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2016年5月11日 (水)

超変革打線が3安打に抑え込まれて巨人に完敗!

  HE
読  売102000000 370
阪  神000000100 130

超変革打線が抑え込まれて巨人に完敗でした。世間的にはコリジョン・ルールに注目が集まるのかもしれませんが、日曜日の試合と同じような展開で、先発投手が序盤に失点し、打線はサッパリ打てない、という得点差以上に完敗の雰囲気ただよい、ファンにはつまらない試合でした。

次の横浜戦は、
がんばれタイガース!

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景気動向指数から企業部門と家計部門の違いを見る!

本日、内閣府から3月の景気動向指数が公表されています。ヘッドラインとなるCI一致指数は前月から+0.5ポイント上昇して111.2を示した一方で、CI先行指数は逆に前月から▲0.5ポイント下降してを98.4記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気一致指数、3月は0.5ポイント上昇 2カ月ぶりプラス
内閣府が11日発表した3月の景気動向指数(2010年=100、速報値)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比0.5ポイント上昇の111.2だった。鉱工業生産指数などが前月から上昇し、2カ月ぶりのプラスとなった。一致指数の基調判断は「足踏みを示している」に据え置いた。
前月と比較可能な8指標のうち、鉱工業生産など4つの指標が上昇に寄与した。2月に愛知製鋼(5482)の工場爆発を受けてトヨタ自動車(7203)が生産を停止していた反動で、3月は生産指数や鉱工業用生産財出荷指数が改善した。半面、商業販売額は小売業、卸売業ともに前年同月から低下し、指数全体を押し下げた。
数カ月先の景気を示す先行指数は0.5ポイント低下の98.4となった。低下は2カ月連続で、自動車などで輸出向け在庫が高まっていることが響いた。一方、消費者態度指数や東証株価指数などは上昇に転じた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、CI一致指数は自動車生産に起因する鉱工業生産にかなり敏感に反応して、3月指数は2月の下降の後の反発もあって上昇しました。そのCI一致指数で寄与度がプラスを示した系列は、生産指数(鉱工業)、鉱工業用生産財出荷指数、投資財出荷指数(除輸送機械)、有効求人倍率となっている一方で、逆にマイナス寄与は、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、中小企業出荷指数(製造業)、商業販売額(小売業)(前年同月比)、耐久消費財出荷指数が上げらており、プラスは企業部門でマイナスが家計部門と中小企業となっていて、クッキリと分かれており、家計の消費や中小企業で停滞している現状が明らかとなっています。なお、CI先行指数の寄与度でもマイナス寄与の絶対値が大きいのは、新規求人数(除学卒)に次いで逆サイクルの最終需要財在庫率指数と中小企業売上げ見通DIが下げに効いています。特に、私が気にかけているのは、CI一致指数がやや右下がりながらほぼ横ばい圏内であるのに対して、CI先行指数より強く右下がりのシェイプを示している点です。現時点では、42種総合の日経商品指数が先行指数に含まれていて、国際商品市況に連動して下げ続けているためだと考えていますが、何か背景に加えるべき情報を私は見落としているだけかもしれません。

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2016年5月10日 (火)

米国大統領予備選も大詰めを迎えて米国は孤立に向かうのか?

今年11月の米国大統領選挙に向けて、民主党と共和党の両党の予備選がいよいよ大詰めを迎えつつあり、特に、共和党は事実上トランプ候補の予備選での指名獲得がほぼ確実視される中で、私がよく参照している米国の世論調査機関であるピュー研究所から5月5日付けで Public Uncertain, Divided Over America's Place in the World と題するリポートが明らかにされています。世界の中で米国が占める位置はどうあるべきか、米国民の意見は割れているようです。グラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、ピュー研究所のサイトから、世界的な問題への米国のかかわりについての調査結果のグラフを引用すると上の通りです。他国を助けるべきというのは37%にとどまり、自国の問題に絞って関与し他国の問題はより適切な国に任せるというのが過半数の57%に上っており、しかも、世界規模の問題解決に米国が首を突っ込み過ぎているというのが41%で、逆の関与が少な過ぎるの27%を上回っています。特に、世界経済の問題に限っても関与することが好ましいが44%で、よくないの49%を下回っています。世界の問題に関与せずに他国に任せるという孤立主義的な傾向が米国内では高まっているのかもしれません。

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次に、ピュー研究所のサイトから、政党支持別、政党の中で大統領候補支持別に世界経済との関係強化について新市場の開拓や米国経済の成長にとってどう考えるかの調査結果を引用すると上のグラフの通りです。共和党支持者の方が民主党支持者よりも世界経済との関係強化に消極的で、特に、共和党支持者の中でもトランプ候補の支持者はその傾向が強く表れています。民主党内ではクリントン候補の支持者が過半数を超えて世界経済との関係強化に積極的といえます。TPPは再交渉なんでしょうか、どうなるんでしょうか?

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最後に、ピュー研究所のサイトから、経済的及び軍事的な世界の強国に関して調査居た結果が上のグラフの通りです。経済的にも軍事的にも、まだ米国が世界のトップであり、しかも、米国民の過半数がそう感じていることが示されていますが、2番目はいずれも中国が上げられており、その差は軍事面よりも経済面でより接近されている、と感じているようです。これはかなり真実に近いかもしれません。

米国の19世紀的、というか、モンロー主義は20世紀まで明らかに米国民への影響力を持ち続けており、特に、第1次世界大戦への参戦が大きく遅れた背景でもあります。しかも、事実上共和党の大統領候補に確定したトランプ候補は、この孤立主義を前面に押し出しているように私には見えます。しかし、現実には、イスラム国(IS)に対する封じ込めをはじめとする中東和平などで、米国に次ぐ位置を占めている中国が世界的に何らかの影響力を行使するとは、少なくとも私には考え難く、中東に次いで不安定な地域である北朝鮮に何かあれば、実に何かありそうな気が私はするんですが、米国の介入なしに地域的あるいは世界的な安定が取り戻せるかどうかは極めて不安に感じるのは私だけでしょうか?

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2016年5月 9日 (月)

消費者態度指数と毎月勤労統計から賃金動向を考える!

本日、内閣府から4月の消費者態度指数が、また、厚生労働省から3月の毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。消費者態度指数は前月から▲0.9ポイント悪化して40。8を記録した一方で、毎月勤労統計のヘッドラインとなる現金給与総額は季節調整していない原系列の前年同月比で見て+1.4%増を示し、また、製造業の所定外労働時間は季節調整済みの前月比で▲0.4%減となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者態度指数、4月は前月比0.9ポイント低下 判断は据え置き
内閣府が9日発表した4月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.9ポイント低下の40.8だった。低下は2カ月ぶり。指数を構成する4つの意識指標のうち「暮らし向き」と「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」の3指標が悪化した。円高基調となり、日経平均株価が一時1万6000円を割り込むなど不安定な金融・資本市場の動きが消費者心理の重荷となった。原油相場の持ち直しに伴うガソリン価格の値上がりも指数低下の一因とみられる。
調査の基準日は4月15日。熊本地震については、前震が14日にあったことから、一部で影響が出た可能性があるという。消費者心理の基調判断は前月までの「足踏みがみられる」に据え置いた。1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月から4.5ポイント上昇し、82.3%となった。
消費動向調査は全国8400世帯が対象で、有効回答数は5480世帯(回答率65.2%)だった。
実質賃金1.4%増、2カ月連続プラス 3月
厚生労働省が9日発表した3月の毎月勤労統計調査(速報値)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月に比べ1.4%増えた。2カ月連続のプラス。一部企業のボーナスなど特別に支払われた給与の増加や、これまで上昇していた物価が横ばいになったことが押し上げた。
実質賃金は2010年9月以来5年半ぶりの大きな増加幅となった。実質賃金の増加は、物価よりも給与の伸びが上回っていることを示す。3月の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が前年同月と同水準となり、物価上昇に伴う実質賃金の目減りがなくなった影響が大きい。
名目賃金にあたる現金給与総額は1.4%増の27万8501円だった。現金給与総額のうち基本給にあたる所定内給与は0.4%増の24万446円。残業代などの所定外給与は0.2%減の1万9739円、特別に支払われた給与は19.8%増の1万8316円だった。
調査は従業員5人以上の事業所が対象。業種別では不動産・物品賃貸業の現金給与総額が5.8%と大幅に増えた。金融・保険業と教育・学習支援業とも4.8%で伸びが目立った。一方で電気・ガス業は2.9%減少した。
安倍政権は経済の好循環に向け、企業に基本給を底上げするベースアップ(ベア)を含む賃上げを求めている。人手不足問題を抱える業界は賃上げに前向きだが、全体的には業績懸念などからベアの引き上げには慎重な企業が増えている。

2つの記事を並べましたので、やや長くなってしまいました。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は、次の毎月勤労統計のグラフと共通して景気後退期を示しています。

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消費者態度指数は前月から▲0.9ポイントのダウンですから、指数の水準からして2%ほどのかなり大きな低下なんですが、最近の動きは上のグラフに見える通り、ジグザグとなっており、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏み」に据え置いています。指数を構成する4つのコンポーネントのうち、「耐久消費財の買い時判断」、「雇用環境」、「暮らし向き」はこの順で前月からの低下幅が大きくなっている一方で、「収入の増え方」だけは+0.2ポイントとわずかながら上昇しています。次に取り上げる毎月勤労統計では2月から実質賃金が上昇に転じており、少しマインドにラグがあるとすれば、それなりに整合的な結果ではないかと受け止めています。もっとも、これら4つのコンポーネントを総合した消費者態度指数は、ここ1年ほど40を少し超えたレベルで一進一退を繰り返しており、マインドの改善につながる賃上げは、少なくとも大きな賃上げについては、この先も期待できないような見込みですから、消費に対するマインドからの影響はそれほど期待できそうもありません。見方を逆にすれば、マインドは大きく改善しないまでも底堅く、熊本地震の影響は現時点では計り知れないものの、一気に景気を急降下させるような動きにはつながらないと考えてよさそうです。

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次に、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。順に、上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、まん中のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与の季節調整していない原系列の前年同月比を、下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用指数の推移を、それぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。まず、景気に敏感な製造業の所定外労働時間ですが、3月は2月から減少しています。3月に大きな増産を示した鉱工業生産指数とは逆の動きを示したわけですが、5人以上事業所では減少したものの、30人以上事業所では増加を示しており、このあたりは毎月勤労統計の統計としての信頼性も含めて、やや疑問が残るところです。次に、賃金は前年に比較して+1.4%増を示しましたが、所定内賃金はわずかに+0.4%増にとどまっており、引用した記事にもある通り、一部企業のボーナスなどの特別に支払われた給与の増加の寄与が大きく、本格的な賃金上昇の兆しとは見なされないように受け止めています。ただ、賃上げはとてもゆっくりしたペースながら、雇用形態を見るとジワジワとパートタイム労働者の伸びが鈍化して、フルタイムの一般労働者の伸びが高まっており、雇用の質的な改善は賃上げよりも正規雇用の増加に現れる可能性があるのかもしれません。

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2016年5月 8日 (日)

ルーキー原投手を打てずヤクルトに完敗!

  HE
ヤクルト200000102 5100
阪  神000000100 161

ルーキー原投手を打てずにヤクルトに連敗でした。投手陣を見ると、先発能見投手は6回2失点ですから、まずまずのQSだったんですが、リリーフ陣はやや失点を重ねました、打つ方はサッパリです。開幕時の勢いはまったく消え失せて、ルーキー投手に名を成さしめてしまいました。このままセリーグは混戦模様になるんでしょうか?

次の巨人戦は、
がんばれタイガース!

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先週の読書は難しい自然科学の教養書など計6冊!

昨日に米国雇用統計が割って入って、今週ではなくなった先週の読書は、やや経済書が少なく、自然科学の専門書・教養書のレベルが高すぎて、私の理解が追いつかないという悲しい読書だったりしましたが、以下の6冊です。

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まず、横山和輝『マーケット進化論』(日本評論社) です。著者は日本経済史の研究者であり、本書は『経済セミナー』に掲載されていた連載を単行本として取りまとめたものです。阪大の大竹先生がNHKの「オイコノミア」などでしきりに宣伝していたと聞き及んでいます。ということで、前半第7章までは律令制の荘園時代から昭和の戦前までを、おおむね時代を追って我が国の市場につき歴史的な展開を記述し、第8章以降は土地の度量衡、交通、金利計算や経済・金融教育などの横断的な亜トピックを取り上げています。『経済セミナー』連載ですから、大雑把に大学入学性位を対象にしているんではないかと思いますが、レベルやトピックによっては高校生でもタメになりそうな気がします。通常、私の想像もそうなんですが、マルクス主義的な経済史では本書のような市場という流通の場をかなり軽視して、工場などの生産の場における広い意味での技術や動力などに焦点を当てるんですが、本書では市場という流通の場に対して歴史的な観点からスポットを当てています。ただ、私の考える市場では、財サービスに加えて本書でも金融市場はカバーしているんですが、労働市場が本書ではスッポリと抜け落ちています。生産よりも流通を重視した本書のひとつの問題点かもしれません。でも、それはそれなりに面白く、特に、金融市場については徳川期の大坂で21世紀のデリバティブもかくやと思わせかねないような先物や空売りが行われていたという事実を改めて思い起こさせてくれました。徳川期には財力を背景にした商人の勢力は無視しがたく、寛政の改革や天保の改革などを主導した節約勤倹の改革派は市場重視で競争促進的な政策を実施した一方で、田沼などの金権派は市場の実勢に合わせて商人から冥加金とともに賄賂を取ったんだろうと、私は勝手に想像しています。昭和の戦前期で終わっているという意味で、やや中途半端な歴史書となっていますが、学術書というよりは雑学的な知識を求める向きにオススメかもしれません。

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次に、アレックス・メスーディ『文化進化論』(NTT出版) です。著者は英国の若手研究者で、生物科学部に所属しつつ、博士号の学位は心理学で取得しています。本書の原題は Cultural Evolution ですので、邦訳そのままです。2011年に出版されています。それほど賞味期限が短い種類の学術書ではないので、それなりに興味深く読むことが出来ると思います。北海道大学の竹澤先生が解説を書いていますが、私にはさほどインフォーマティブとも思われませんでした。本書は、基本的には、文化がダーウィン的な進化論と同じ進化をたどるかどうか、さらに、より厳密な意味でネオ・ダーウィニズム的な進化をたどるかどうかを検証しつつ、社会科学の統合についても考察を進めています。さらに、文化については、人類だけでなく模倣という観点から他の生物、哺乳類にとどまらず昆虫などについても対象を広げようとしていますが、ダーウィン的な継承の観点から、人類の文化だけが本書の対象とされています。最初に文化や情報の定義をしつつ、p.30では行動の違いのうち半分弱が遺伝子を原因とし、半分強が文化の影響との研究成果を持ち出して、文化の影響度の大きさを確認しています。その上で、文化の歴史的な変化がダーウィン的かスペンサー的か、あるいは、ダーウィン的かネオ・ダーウィン的か、についてミクロ的な観点とマクロ的な観点から分析を試みています。そして、人類学、考古学、経済学、歴史学、言語学、心理学、社会学などの極めて多様な社会科学の統合がこの文化の進化論的変容と関連させられています。私にはなかなか理解が進まなかったんですが、本書でも指摘されている通り、進化は進歩と同じではないですし、社会科学については社会をなして生産しつつある人間を分析するのであれば、かなりの程度に統合は可能であろうと私は考えています。その一つの視点はマルクス主義が与えてくれている可能性があります。でも、もっと平易に考えることも可能かもしれません。私が見た範囲では読売新聞でポケモンの進化と本書を結び付けて論じている書評がありました。ちょっと違う気もしました。

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次に、ピーター・ウォード/ジョゼフ・カーシュヴィンク『生物はなぜ誕生したのか』(河出書房新社) です。著者達は米国の生物学の研究者です。英語の原題は A New History of Life であり、2015年に出版されています。内容からして、現代の方がふさわしいと私は思います。すなわち、本書では、生物の定義として、カール・セーガン教授の流れを汲んだNASAの「ダーウィン進化が可能な化学的システム」を採用した上で、地球上における生物の誕生から包括的な進化の歴史を説き起こしています。どうでもいいことながら、前回の読書感想文で取り上げた『男子御三家』では、麻布中学校の入試でドラえもんが生物ではない理由を答えさせる問題を紹介していましたが、NASAの定義に従って、ドラえもんはダーウィン進化しない、と回答すればどのように採点されるのか、とても興味があります。まず、私のようなシロートがとても驚かされるのは、本書の著者達は約40億年前、大雑把に38-42億年前の地球上の生命の誕生について、40億年余り前に火星で誕生した生命が地球に到達した、との説をとっています。その昔のほのかな記憶をたどれば、海底の熱水が噴出しているあたりで生命が地球という閉じた系で誕生したのであり、地球より火星で先に生命が誕生して、その生命が火星から地球に到達した、たぶん隕石に乗って、というのは、生物学の業界では定説ではないまでも、決して驚くべき荒唐無稽な説ではないようです。エコノミストの私はあまりに専門外で理解がはかどりません。その生命の誕生から歴史をたどり、ビッグ・ファイブと呼ばれる5度の大絶滅、例えば、恐竜も絶滅に追いやった巨大隕石の飛来などに起因する何回かの大きな節目を経て、また、大気中の酸素濃度の変化により、生命がどのように進化を遂げ、現在に至るかを、極めて包括的に解説してくれています。おそらく、本書の著者たちの意図としては、決して学術書ではなく一般大衆向けの教養書のつもりだったんでしょうが、誠に残念ながら、私には難し過ぎる印象です。石炭紀の植物の根が浅くてすぐに倒れて石炭になった、などのように判りやすい部分もあるものの、全体として、用語も含めて私には理解が及ばない部分が少なからずあった気がします。突端の火星から地球に生命が到達した、というところで頭が混乱して、そのまま読み進んでしまったのかもしれません。いずれにせよ、それなりの難易度の本であることは覚悟すべきでしょう。でも、ポジティブな評価の表現として、私にはテンポのいいSF小説を読むようなカンジでした。

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次に、バリー・パーカー『戦争の物理学』(白揚社) です。著者は米国の物理学研究者で、英語の原題は The Physics of War ですから、そのままです。ローマ時代のチャリオットと呼ばれる馬に引かせる二輪戦車から始まって、第2次大戦時の原爆やその後の水爆まで、物理学が戦争にどのように応用されたのかを歴史的に概観しています。武器や兵器だけでなく、飛行機や通信手段、あるいは、人工衛星まで含んでいます。本書も『生物はなぜ誕生したのか』と同じで、それなりの難易度の教養書であり、数式もかなり出て来ます。でも、同時に、挿絵というか、図解も豊富です。戦争のいわゆる戦史を概観した後に、先方や戦術などとともに武器・兵器の物理学を解説しており、投石機の弾道学などから始まって、原爆や水爆の相対性理論物理学まで、幅広い物理学が応用されており、よくも悪くも戦争が物理学を進歩させた麺があることが理解できます。また、戦争だけでなく、産業革命といった経済社会の時代背景にも影響を強く受けているのが判るように工夫されています。ただ、ローマ人が典型なんですが、科学や特に物理学に興味がなくても、実用的な工学に秀でている場合もあり、それが実用や戦争に応用されるケースも紹介されています。生物学については、かなり純粋な科学的興味なんですが、物理学や化学は工学を通じて実用に供されます。ですから、核分裂も発電に用いるか、原爆を作るかで、実用化の方向が大きく異なります。そのこんpン的な学問の利用や実用化という面もスポットを当てて欲しかった気がします。また、チラチと感じただけなんですが、本書では極めて新規で破壊的な武器・兵器が開発されると、ある意味で戦争というか、戦闘が膠着状態になる可能性を示唆しています。例えば、機関銃の出現により塹壕戦になって戦線が膠着するとか、核兵器の極めて大規模な破壊力により戦争そのものが抑止される可能性などです。基本的に、勢力均衡というかなり古い考えに立脚した戦争・戦闘感ですが、まあ、そうなのかもしれません。戦争で使われる武器や兵器の解説がひとつのテーマですから、あまり愉快な本ではありません。でも、歴史を知って戦争に対処することも重要かもしれません。

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次に、有川浩『倒れるときは前のめり』(角川書店) です。著者はいうまでもなく人気の小説家で、本書は巻末に短編2編を含むものの、基本的にはエッセイです。神戸新聞と産経新聞大阪版夕刊が初出に多かった気がします。東京では産経新聞の夕刊は見かけないんですが、大阪版では夕刊があるんだと感激してしまいました。それはともかく、本書の著者の場合、ご自分でも認めているように、ライトノベルから初めて、さらに、自衛隊に深く傾倒して行った小説家ですから、かなり自衛隊や軍隊に対する思い入れが強く、反戦主義者などからは好ましくないと見られがちなんですが、作者は決して好戦的というわけでもありません。テレビのドラマにもなった『空飛ぶ広報室』に関して、軍国主義的なエンタメ小説により愛国心を煽る、といった批判がされたように本書でも反論していますが、戦争小説に関するエッセイ(p.146)でも、「日本が行った戦争の是非を問うことはなしにしたい」と侵略戦争を否定したいのだろうかといぶかしむ人も出そうな表現をしたりしています。そして、随所に出て来るんですが、嫌いという表現はよくない、という趣旨のエッセイがかなりあります。要するに、「嫌いと言われるのは嫌い」と言っている自分に気づいていない可能性があり、ある意味で正直なもんですから、やや微笑ましい気もします。ただ、肯定的でほめるエッセイよりも、批判する傾向のあるエッセイが比較的多かったような気がします。私の好きな三浦しをんのエッセイに比べての私の単なる感想ですので、違っているかもしれません。後、やや感覚が古い、というか、かなり昔のエッセイを引っ張り出してきて単行本化した結果、という印象を持ったのは、映画と本を比較している点です。この両者が違うのはいうまでもないんですが、当然のように作家の観点で、原作⇒映画という流れでしか見ていないような気がして、しかも、テレビのドラマは無視されているようです。映画やドラマのノベライズという手法もめずらしくないですし、表現のひとつの方法として、映画とドラマ、小説に加えてゲームから映像になったり活字になったりというのは決して少なくなく、そうなる前の時期のやや昔に書かれたエッセイがかなりの部分を占めるんではないかという印象を持ちました。よく読んでいながら、私自身がそれほど好きでもない作家のエッセイなので、少しビミョーに否定的な感想文かもしれませんが、この作者の小説が好きな読者は読んでおくべきかもしれません。

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最後に、小林丈広・高木博志・三枝暁子『京都の歴史を歩く』(岩波新書) です。著者3人は京都を代表する京都大学・同志社大学・立命館大学の研究者であり、専門は歴史学、中世史や近代史です。まあ、容易に想像されるところかもしれません。岩波新書ではその昔に林屋辰三郎先生が『京都』のタイトルの出版があり、本書の著者あとがきでも触れられていますが、1962年の刊行です。本書は、大雑把に、300ページの本で、3部構成で、各部が5章ずつの合計15章ですから、各著者は5章ずつ執筆担当となっており、しかも、各部が100ページ、各章が20ページという律儀な構成になっています。何でも3で割って構成されるという点では、合併して創設された当時のみずほ銀行を思い出してしまいました。しかも、地図上に著者達が実際に歩いた道筋を明示しています。ですから、想像するに原稿制約がそれなりに厳しくて、しかも、実際に歩かねばなりませんから、本書で本来取り上げるべき場所や建物などで漏れているのが散見されます。かなり網羅的なセンを狙っていい出来なだけに、やや惜しい気がします。適当に上げると、洛外の宇治を最後に取り上げるのであれば、伏見から中書島も目を向けて欲しかった気がします。大坂であれば太閤さんへの心情から注目されるでしょうが、京都の人は私もそうですが、桃山城に対する関心がとても薄くなっているのは理解します。今では近鉄がやっている遊園地くらいのカンジだろうと思いますが、三条の池田屋が幕末の事件で何度も登場するのであれば、中書島の寺田屋も坂本龍馬との関係もあって、もう少し注目されていいですし、灘と並ぶ酒どころの伏見も言及あって然るべきかという気がします。さらに、何度か明治初期の山本覚馬の名が出ますが、映画の「パッチギ!」や「鴨川ホルモー」の舞台になった、というのが引用されるのであれば、「八重の桜」のドラマもそれなりに有名な気もします。また、最初に取り上げられている六道の辻では、冥界との往来伝説という点で、小野篁にもスポットが当たっていいように思います。加えて、最後のあとがきで観光至上主義を批判するのであれば、古都税問題にも何らかの見識を示して欲しかったところです。ということで、私の期待値が高かっただけに、少し漏れがあるような気もしますが、なかなかにいい出来の新書です。私は洛外もいいところの宇治の出ですが、私ごときは知らないような歴史的事実や場所の由来などが充実した良書です。

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2016年5月 7日 (土)

打撃戦でヤクルトに打ち負けて連勝ストップ!

  HE
ヤクルト302000500 10101
阪  神003200010 661

打撃戦でヤクルトに打ち負けました。先発藤川投手が序盤に失った5点は追いつきましたが、さすがに、終盤7回の5点は荷が重かったです。阪神打線では、投手陣が10点取られれば勝ちは遠くなります。長い試合でした。

明日は、
がんばれタイガース!

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やや弱かった米国雇用統計は金融政策にどう影響するか?

日本時間の昨夜、米国労働省から4月の米国雇用統計が公表されています。金融政策動向と合わせて注目されていたところ、非農業雇用者数の増加幅は+160千人と前月から伸びが鈍化し、失業率は前月と同じ5.0%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから最初の5パラだけ記事を引用すると以下の通りです。

U.S. Added 160,000 Jobs Last Month as Brisk Hiring Slowed
After racing ahead for many months, the American jobs machine cooled in April as employers took their cue from other signs that economic growth was slowing by easing up on new hiring.
The 160,000 increase in payrolls in April reported by the Labor Department on Friday came after the best two-year stretch for the job market since the tech-fueled boom of the late 1990s.
The unemployment rate, which is tied to a separate survey of households, was unchanged at 5 percent.
While a downshift, the healthy pace suggested that some of the other recent signals exaggerated the weakness in the economy Late last month, for example, the government reported that the economy barely expanded in the first quarter.
But most experts say the gains in the labor market in recent months are a more reliable sign, suggesting that the economy will continue to expand for the rest of 2016, with the pace of growth picking up modestly from the stagnant start to the year.

この後、さらにエコノミストなどへのインタビューが続きます。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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連邦準備制度理事会(FED)による金融政策運営の目安となる比農業部門雇用者数の前月からの伸びは、3月の208千人に及ばず、市場予想の200千人程度も下回って、160千人にとどまりました。ただ、失業率は前月と同じ5.0%ながら、ほぼ完全雇用に近い水準と考えるべきです。2月3月の雇用者数の伸びが下方修正された上に、4月が160千人でしたから、雇用はかなり減速している可能性が示唆されていると考えるべきです。業種別に見るとややビミョーなところですが、小売業が▲3.1千人減と、2月の+52千人増、3月の+39千人増からマイナスに転じています。年初来の株安による資産効果で小売売上への影響が出始めている可能性がある一方で、FEDが金利引き上げをペースダウンした効果でドル安に振れて輸出が回復し、製造業が自動車などの耐久財製造を中心に+6千人増と増加を示しました。年2回の利上げペーストすれば、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)がひとつのターゲットとなる可能性がありますが、ひとまず、4月の雇用統計はやや利上げにネガティブに振れる指標だったと私は受け止めています。同時に、日本経済から見れば、さらに円高が進む材料となる危惧もあります。

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また、日本やユーロ圏欧州の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。サブプライム・バブル崩壊前の+3%超の水準には復帰しそうもないんですが、まずまず、コンスタントに+2%のラインを上回って安定して推移していると受け止めており、少なくとも、底割れしてかつての日本や欧州ユーロ圏諸国のようにゼロやマイナスをつけてデフレに陥る可能性は小さそうに見えます。

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2016年5月 6日 (金)

3試合連続の完封リレーで初回のルーキー板山選手の虎の子の2点を守って3連勝!

  HE
ヤクルト000000000 080
阪  神20000000x 260

3試合連続の完封リレーでヤクルトに完勝でした。しかも、3試合とも先発投手が7回までしっかり抑えての完封リレーで、キャッチャーの原口選手のリードも光りました。打線はルーキー板山選手のタイムリーで上げた虎の子の2点だけでしたが、まあ、もともとそんなに打てる打線ではありません。

明日も、
がんばれタイガース!

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マーケティング・リサーチ・キャンプによる「プリペイドカード利用に関する実態調査」やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、マーケティング・リサーチ・キャンプによる「プリペイドカード利用に関する実態調査」の結果が明らかにされています。でも、メアドなどの登録をしないとリポート全文は入手できないようなので、サイトに置いてある「利用しているプリペイドカードのタイプ」と題されている画像のみ引用しておきます。会社名もややセンスがないんですが、まさかとは思いますが、ひょとしたらプリペイド・カードと電子マネーの区別に無理解なまま調査しているのかもしれません。という意味も含めて、どこまで信頼性あるかは不明ですが、何ら、ご参考まで。

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まもなく、米国労働省から米国雇用統計が公表される予定ですが、日を改めて取り上げたいと思います。

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2016年5月 5日 (木)

大和選手のソロで投手戦を制して中日に連勝!

  HE
阪  神000000100 150
中  日000000000 040

両軍合わせて9安打の投手戦を大和選手のソロホームランで中日に連勝でした。先発メッセンジャー投手も7回を3安打無失点に抑え、勝ちパターンのドリス投手とマテオ投手が完封リレーを完成させました。8回ノーアウトからのやや無謀な盗塁を刺したり、9回先頭打者のビシエド選手の強烈なセカンドゴロをさばいたりした終盤の守備も光りました。それにしても、大和選手のプロ2本目のホームランには驚きました。

明日からのヤクルト戦も、
がんばれタイガース!

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2016年5月 4日 (水)

下の倅の高校の文化祭に行く!

今日は下の倅が通う高校の文化祭に行きました。我が家の下の倅もいよいよ高校の最終学年となり、今年の文化祭が最後です。以下は適当に撮った写真です。

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上から順に、ステージです。何をやっているかは不明です。セーラームーンっぽい派手な衣装なんですが、男子校ですから男の子が女装しているんではないかと想像しています。2番めは高校の文化祭では定番の鉄道部のNゲージです。神奈川新町なる駅に電車が集合していました。3番めは京都展です。初めて見ました。最初の展示が清水寺だったので、その辺にいる生徒に「清水寺は何宗か知っているか?」と私の定番の京都クイズを出したんですが知りませんでした。昭和中期まで奈良の興福寺の門下で法相宗だったんですが、たぶん、50年くらい前に北法相宗を名乗り始めていると記憶しています。最後に、下の倅の高校の文化祭は今年で69回目だそうです。
文化祭のパンフレットが欲しくて探し求めたんですが、私が行ったのは最終日の、それも、午後の遅い時間帯でしたから残っていませんでした。誠に残念。

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2016年5月 3日 (火)

藤浪投手を押し立ててもナゴヤドームで負け続けるタイガース!

  HE
阪  神100100000 280
中  日20001010x 460

先発藤浪投手でもナゴヤドームで連敗が止まらないタイガースでした。最終回にやや期待を持たせる場面もありましたが、中日にほぼ完敗です。
アホらし。

明日は、
がんばれタイガース!

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クロス・マーケティングによる「睡眠に関する調査」やいかに?

今日からもう一度3連休で、今朝は少し寝坊していたところなんですが、先週4月28日にクロス・マーケティングによる「睡眠に関する調査」の結果が明らかにされています。私は基本的に睡眠に関しては満足しているんですが、少し興味をひかれました。まず、クロス・マーケティングのサイトから調査結果を3点引用すると以下の通りです。

調査結果
  • 睡眠の満足度では、【満足・計】(かなり満足+やや満足)と、【不満・計】(かなり不満+やや不満)の割合が同じ34.3%という結果となった。【満足・計】を性年代別に見ると、男女ともに60代の満足度が高い
  • 睡眠の不満理由では、【睡眠の質が悪い】(60.1%)と【睡眠時間が短い】(50.6%)が半数を超えており、他の項目と比べて圧倒的に高い
  • 日中の眠気の有無では、【眠気がある・計】(毎日ある+よくある+たまにある)が85.4%と、日中に眠気を感じている人が大多数を占める。さらに、【「毎日ある」+「よくある」・計】を性年代別に見ると、男性よりも女性の方が眠気を感じており、なかでも10代女性にその傾向が強い

調査対象は、いわゆる首都圏の一都三県に限られていて、ネット調査でもあり、それなりのバイアスは仕方ないところかもしれません。上の「調査結果」の概要に対応するグラフをクロス・マーケティングのサイトから引用すると以下の通りです。

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繰り返しになりますが、基本的に、私自身は睡眠にかなり満足しています。年齢的にトイレが近い人も知っていますが、私はまったくトイレは近くありませんので、もう何年も夜中に起きることはありませんし、7時間睡眠が取れている夜も多いと思います。でも、年齢のためか、日中に眠くなる時も少なくなく、昼休みにウトウトする時もあります。オフィスにいる時はコーヒーが好きで日によっては2-3杯飲む時もあり、その興奮作用で眠くならないような気もします。

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2016年5月 2日 (月)

東洋経済オンライン「最新! これが『賞与が多い』トップ500社だ」やいかに?

このブログでは、先週、やや遅れて今夏のボーナスの予想について、シンクタンクのリポートを取り上げたところですが、とても旧聞に属する話題ながら、4月6日付けの東洋経済オンラインでは、「最新! これが『賞与が多い』トップ500社だ」と題する記事が掲載されていました。書き振りを考えると、昨年2015年1年間に支給されたボーナスの合計だと思うんですが、安直に1位から100位までの調査結果の画像だけ引用しておきます。

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2016年5月 1日 (日)

終盤の猛攻で横浜に5点差を逆転勝ち!

  HE
横  浜030003000 690
阪  神00100051x 7111

ラッキーセブンが始まるまでは敗色濃厚な展開でしたが、7-8回の猛攻で横浜に逆転勝ちでした。最終的に8回ウラに逆転打を放ったのは大和選手でヒーロー・インタビューも受けていましたが、同点に追いついた7回の猛攻では若手選手が大いに活躍しました。まあ、私はよく知らない横浜の外国人サウスポーの乱調もありましたが、終盤に5点差を逆転ですから、ゴールデン・ウィークで大入りの甲子園のファンも大いに満足だったんではないでしょうか?

ナゴヤドームでも、
がんばれタイガース!

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