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2016年5月 9日 (月)

消費者態度指数と毎月勤労統計から賃金動向を考える!

本日、内閣府から4月の消費者態度指数が、また、厚生労働省から3月の毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。消費者態度指数は前月から▲0.9ポイント悪化して40。8を記録した一方で、毎月勤労統計のヘッドラインとなる現金給与総額は季節調整していない原系列の前年同月比で見て+1.4%増を示し、また、製造業の所定外労働時間は季節調整済みの前月比で▲0.4%減となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者態度指数、4月は前月比0.9ポイント低下 判断は据え置き
内閣府が9日発表した4月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.9ポイント低下の40.8だった。低下は2カ月ぶり。指数を構成する4つの意識指標のうち「暮らし向き」と「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」の3指標が悪化した。円高基調となり、日経平均株価が一時1万6000円を割り込むなど不安定な金融・資本市場の動きが消費者心理の重荷となった。原油相場の持ち直しに伴うガソリン価格の値上がりも指数低下の一因とみられる。
調査の基準日は4月15日。熊本地震については、前震が14日にあったことから、一部で影響が出た可能性があるという。消費者心理の基調判断は前月までの「足踏みがみられる」に据え置いた。1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月から4.5ポイント上昇し、82.3%となった。
消費動向調査は全国8400世帯が対象で、有効回答数は5480世帯(回答率65.2%)だった。
実質賃金1.4%増、2カ月連続プラス 3月
厚生労働省が9日発表した3月の毎月勤労統計調査(速報値)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月に比べ1.4%増えた。2カ月連続のプラス。一部企業のボーナスなど特別に支払われた給与の増加や、これまで上昇していた物価が横ばいになったことが押し上げた。
実質賃金は2010年9月以来5年半ぶりの大きな増加幅となった。実質賃金の増加は、物価よりも給与の伸びが上回っていることを示す。3月の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が前年同月と同水準となり、物価上昇に伴う実質賃金の目減りがなくなった影響が大きい。
名目賃金にあたる現金給与総額は1.4%増の27万8501円だった。現金給与総額のうち基本給にあたる所定内給与は0.4%増の24万446円。残業代などの所定外給与は0.2%減の1万9739円、特別に支払われた給与は19.8%増の1万8316円だった。
調査は従業員5人以上の事業所が対象。業種別では不動産・物品賃貸業の現金給与総額が5.8%と大幅に増えた。金融・保険業と教育・学習支援業とも4.8%で伸びが目立った。一方で電気・ガス業は2.9%減少した。
安倍政権は経済の好循環に向け、企業に基本給を底上げするベースアップ(ベア)を含む賃上げを求めている。人手不足問題を抱える業界は賃上げに前向きだが、全体的には業績懸念などからベアの引き上げには慎重な企業が増えている。

2つの記事を並べましたので、やや長くなってしまいました。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は、次の毎月勤労統計のグラフと共通して景気後退期を示しています。

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消費者態度指数は前月から▲0.9ポイントのダウンですから、指数の水準からして2%ほどのかなり大きな低下なんですが、最近の動きは上のグラフに見える通り、ジグザグとなっており、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏み」に据え置いています。指数を構成する4つのコンポーネントのうち、「耐久消費財の買い時判断」、「雇用環境」、「暮らし向き」はこの順で前月からの低下幅が大きくなっている一方で、「収入の増え方」だけは+0.2ポイントとわずかながら上昇しています。次に取り上げる毎月勤労統計では2月から実質賃金が上昇に転じており、少しマインドにラグがあるとすれば、それなりに整合的な結果ではないかと受け止めています。もっとも、これら4つのコンポーネントを総合した消費者態度指数は、ここ1年ほど40を少し超えたレベルで一進一退を繰り返しており、マインドの改善につながる賃上げは、少なくとも大きな賃上げについては、この先も期待できないような見込みですから、消費に対するマインドからの影響はそれほど期待できそうもありません。見方を逆にすれば、マインドは大きく改善しないまでも底堅く、熊本地震の影響は現時点では計り知れないものの、一気に景気を急降下させるような動きにはつながらないと考えてよさそうです。

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次に、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。順に、上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、まん中のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与の季節調整していない原系列の前年同月比を、下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用指数の推移を、それぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。まず、景気に敏感な製造業の所定外労働時間ですが、3月は2月から減少しています。3月に大きな増産を示した鉱工業生産指数とは逆の動きを示したわけですが、5人以上事業所では減少したものの、30人以上事業所では増加を示しており、このあたりは毎月勤労統計の統計としての信頼性も含めて、やや疑問が残るところです。次に、賃金は前年に比較して+1.4%増を示しましたが、所定内賃金はわずかに+0.4%増にとどまっており、引用した記事にもある通り、一部企業のボーナスなどの特別に支払われた給与の増加の寄与が大きく、本格的な賃金上昇の兆しとは見なされないように受け止めています。ただ、賃上げはとてもゆっくりしたペースながら、雇用形態を見るとジワジワとパートタイム労働者の伸びが鈍化して、フルタイムの一般労働者の伸びが高まっており、雇用の質的な改善は賃上げよりも正規雇用の増加に現れる可能性があるのかもしれません。

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