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2016年5月31日 (火)

鉱工業生産指数に見る熊本地震の影響やいかに?

本日は月末最後の営業日の閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも4月の統計です。鉱工業生産は季節調整済みの前月比で+0.3%のわずかな増産を示した一方で、失業率は3.2%と前月から変わらず、また、有効求人倍率は1.34倍と前月から0.04ポイントの上昇を見せました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の鉱工業生産、0.3%上昇 エアコンや化粧品など伸びる
経済産業省が31日発表した4月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比0.3%上昇の97.0だった。上昇は2カ月連続で、QUICKがまとめた民間予測(中央値は1.5)低下)に反して改善した。熊本地震に伴い中旬以降に自動車生産などへ影響が出たものの、夏場に向けてエアコンや化粧品などの生産が増えた。
経産省は生産の基調判断を「一進一退で推移している」に据え置いた。業種別では15業種のうち7業種が上昇し、7業種が低下、1業種が横ばいだった。化粧品の出荷が好調だった化学工業が3.5%増だったほか、夏場を控えてエアコンなどの電気機械も3.9%増えた。一方、地震の影響で自動車メーカーが一時的に生産を停止したこともあり、輸送機械は0.6%減った。
経産省は、熊本地震の影響について「自動車以外の業種でははっきりみられなかった」と説明。「一部で大きな被害を受けたところ以外では、生産が続いていた」という。
出荷指数は1.5%上昇。生産に比べて出荷の伸びが大きく、在庫率指数は2.2%低下した。
同時に発表した製造工業生産予測調査では5月が2.2%上昇、6月は0.3%上昇となった。5月ははん用・生産用・業務用機械や情報通信機械などで増産が見込まれている。
完全失業率、4月は3.2%で横ばい 市場予想と一致、労働力調査
総務省が31日発表した4月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は3.2%と、前月から横ばいだった。QUICKが事前にまとめた市場予想も3.2%。人手不足により労働需給が引き締まった状態が続き、3%台前半の失業率を保った。総務省は雇用の動向に関して「引き続き改善傾向にある」との見方を示した。
完全失業率を男女別にみると、男性は3.4%、女性は3.0%でともに前月と同水準だった。完全失業者(季節調整値)は横ばいの211万人。勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は1万人増、「自発的な離職」は3万人増だった。
就業者数(同)は6407万人と、前月から20万人増えた。雇用者数は21万人増の5714万人だった。就業率は前年同月から0.5ポイント上がり57.8%となった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。それにしても、統計をこれだけ引用すると長くなります。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は雇用統計とも共通して景気後退期です。

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引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比で▲1.5%の減産が見込まれていたんですが、結果はわずかながら増産となりました。自動車以外の業種では熊本地震の影響ははっきりしない、というのが統計作成官庁である経済産業省の見方のようです。逆に、市場の事前コンセンサスが熊本地震のインパクトをいわば「過大評価」して、結果的に実績が上振れるということだったのかもしれないと受け止めています。ただし、自動車工業会の4月生産実績によれば、例えば、四輪車の輸出が増加しているにもかかわらず、生産が前年同月比で▲7.7%の減少となっているのは、何らかの熊本地震の影響をうかがわせる統計だと考えるべきでしょう。ただし、全国ベースでは影響は小さく、製造工業生産予測調査では5月+2.2%増の後、6月も+0.3%と見込まれており、実績よりも大きめに出やすいバイアスがあるとはいえ、生産は一進一退ながら回復に向かうものと期待しています。もっとも、賃上げがイマイチでしたので消費の増加テンポは緩やかですし、円高の為替効果もあって輸出には大きな期待をかけるのもムリそうな気がしますので、夏場以降の先行きの生産を考えれば、それほど順調に回復に向かうとは私は考えていません。

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続いて、雇用統計については、上のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。失業率は前月から変わりありませんでしたが、有効求人倍率は前月からさらに+0.04ポイント上昇して1.34を示しました。有効求人倍率のこの水準は1991年以来だそうですし、全都道府県で1倍を超えていることからも人手不足が伺われます。加えて、失業率もほぼ完全雇用状態で、それでも賃金が上昇しないのは不思議なんですが、統計局で2013年から統計を取り始めた雇用形態別の統計では世紀・非正規別の雇用比率が明らかとなっているところ、昨年2015年12月61.9%のボトムから正規比率が今年2016年1月62.0%、2月62.4%、3月62.8%、そして今日発表の4月63.2%と、ジワジワと上昇しているのを見ると、量的にはほぼ完全雇用に達した雇用の質的な改善は、賃上げではなく正規比率の上昇に現れる可能性があるんではないかと推測しています。もっとも、正規・非正規比率は最近取り始めた統計ですので原系列しかなく、最近の動きは季節変動なのかもしれません。

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