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2016年6月11日 (土)

今週の読書は『アリエリー教授の人生相談室』のほか計5冊にちょっぴりペースダウン!

諸般の事情により、今週の読書はちょっぴりペースダウンして、『アリエリー教授の人生相談室』のほか以下の通り5冊で済みました。来週はもっとペースダウンするつもりです。というか、そもそも、来週はほとんど新刊書の読書はしないような気もします。

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まず、ダン・アリエリー『アリエリー教授の人生相談室』(早川書房) です。著者はデューク大学の経済学研究者であり、特に行動経済学に詳しく、私も『予想どおりに不合理』など何冊か読んでブログでも取り上げたことがあります。本書はウォールストリート・ジャーナルに掲載されていた Ask Ariely =アリエリーに聞いてみよう、というコラムを書籍化したもので、英語の原題は Irrationally Yours、すなわち、「親愛なる不合理な君へ」とでもいうことになろうかと思います。2015年の出版で、アリエリー教授のサイトでは最新の相談記事を読むことも出来ます。なお、英語の原書は本書の中で数多く掲載されているのと同じ趣きのマンガが表紙を飾っています。ということで、「転職したら幸せになれる?」、「頼まれごとはどう断ればいい?」、「食べ放題は何から食べるべき?」、「オークションで高く売るには?」、「ダイエットはどう続ければいい?」などといった悩みや人生相談の質問に対して、心理学ないし行動経済学の観点も踏まえながらアリエリー教授が回答を寄せています。もっとも、学術書でも何でもないので、まったくのジョークもあったりします。私が感銘を受けた質疑を2点だけ上げると、p.51 で市場取引ではモラルが直接的に失われる可能性を示唆する学術論文が紹介されていたり、p.186 でどの車を買うのか決められないとの質問に対して、迷ったら基本的に等価であると考えられるのでコイントスで決めて差し支えないといったものです。それから、アリエリー教授の基本的な思考パターンに強く同意するのも2点あり、p.173 でスーツにネクタイをウザい服装だと考える場合に、民族衣装に対しては周囲の反発は小さい、というのは大きく同意しますし、p.244 で人間は自由意思よりも環境に左右されるかもしれないが、その環境を自由意思で変えることが重要、といった点です。スラスラと読める本ですし、エコノミストでなくても、経済学の基礎知識がなくても十分楽しめると思います。

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次に、リチャード J. サミュエルズ『3.11震災は日本を変えたのか』(英治出版) です。聞き慣れない出版社ですが、著者はマサチューセッツ工科大学(MIT)政治学部の研究者であり、専門は日本の政治外交安保政策です。本書はタイトル通り2011年3月11日の東北震災が日本に何らかの変化をもたらしたのか、を問うています。思考の側面としては、自衛隊や米軍を対象に安全保障政策、主として原子力を対象にエネルギー政策、そして、道州制の進み方などの地方自治政策です。そして、方法論としては、私のようなエコノミストの数量分析とはまったく異なる方法で、インタビューや公開刊行物を渉猟し、極めて多種多様な情報から著者のセレクションにより思考を進めています。実は、本書冒頭のp.16に名前を出して構わないインタビュー対象者が列挙されているんですが、私が官邸スタッフをしていたころの上司の名が上げられていました。役所はそもそもそうですが、完全に黒子に徹するような縁の下の力持ち的な部署のボスだったので少しびっくりしました。それはともかく、とても大量の情報をコンピュータによる統計的な処理ではなく、個人の頭の中で方向性を見出すべく帰納的に処理しているように見えますので、とても私にはマネの出来ない情報処理だと驚きましたが、結論としては、震災から変化を加速するパワー、現状維持に止めようとするパワー、逆コースに立ち戻らせようとするパワー、の3者を理解した上で日本の政治外交安保を考えて、著者は何も変わっていない、と喝破しています。そうなのかもしれませんし、もしもそうだとすれば、政治家というよりも官僚の現状維持志向が一つの要因かもしれないと考えないでもありません。でも、震災処理が民主党政権、しかも、菅内閣という、さまざまな意味で、特殊な状況下だったもの考慮する必要があるような気もします。

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次に、デービッド・アトキンソン『国宝消滅』(東洋経済) です。この著者の本は、昨年2015年7月18日付けの読書感想文で『新・観光立国論』を取り上げましたが、基本的に本書も同一のラインに乗っていると考えてよさそうです。文化財を活用した観光業の振興により、人口減少に歯止めがかからず衰退一方の日本経済の成長を支え、社会保障などの原資をひねり出そうという意図からの政策提言の書という位置づけで著者は考えているようです。でも、まずそもそも、著者の意図が本書の中で大きく矛盾しており、やや読むに耐えない結論を引き出しているとしか言いようがありません。最初の方は文化財保護の財政負担が小さ過ぎるというお話で始まったように感じていたんですが、最後の方では職人が慢心して、あるいは、文化財保護の公的部局の勘違いが甚だしく、補助金はヤメにして市場原理で文化財を用いた観光業の振興を図るべし、といっているように見えます。私なんぞは口先三寸で丸め込まれてしまいそうな気がしますが、キチンと文化財や観光業のことを考えている有識者には読むに耐えない書物だという気がします。外国人観光客を本書のように「短期移民」と考えて、我が国経済の成長の原動力のひとつに仕立て上げようとするのは、理解出来ますし、それなりに可能性のあることだと思いますが、文化財がその中で果たすべき役割について、周辺諸国、例えば、中国や韓国と比べて、本書のように高い位置づけが出来るのかどうか、そもそもの原点を考える必要もあるような気がします。

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次に、木下昌輝『天下一の軽口男』(幻冬舎) です。著者は最近の時代小説の新たな作家として注目を集めてる小説家であり、私もデビュー作の『宇喜多の捨て嫁』は読みました。ただ、やや重厚な時代小説を狙い過ぎている印象があり、第2作の『人魚ノ肉』はまだ読んでいません。本書は江戸時代中期に実在した上方落語の祖と呼ばれる初代米沢彦八の一代記です。難波村に生まれ、江戸に下向し、大坂に立ち戻り、名古屋で最期を迎えます。難波村の幼なじみの女性との関係をいつまでも大切にするロマンチストであり、笑いで生計を立てようとする現実家でもあり、何よりも小咄程度の短い笑い話をそれなりの長さがあって最後に落ちがある落語まで発展させた功労者ともいえます。私は詳しくないんですが、一節によれば、本書はかなり史実に忠実な面があるものの、米沢彦七その人が決して歴史のかなで確たる足跡を残し、明確な年代記があるわけではありませんから、時代小説特有の史実と小説のフィクションのとても微妙なバランスを要求されるところです。その点で、本書はかなりいい出来だという気がします。史実に男女関係も含めた人間を浮かび上がらせ、しかも、落語の成立という必ずしも歴史に詳らかではない事実を入れ込んでいます。私は時代小説というと、江戸期の天下泰平の世の中で、絶対に揺るがない主家、場合によっては将軍家の盤石の体制の下で、家老などの高級武士が心ゆくまでお家騒動を繰り広げるのを王道の典型と考えて来ましたが、こういった庶民を中心に据えた時代小説も悪くないと思い始めています。第2作の『人魚ノ肉』は読んでいませんが、デビュー作にして直木賞候補となった『宇喜多の捨て嫁』よりもいい出来だと私は受け止めています。ただ、次回作は、私が王道と考えるような、江戸期の天下泰平を舞台に侍を主人公にした時代小説を書いて欲しい気がします。いずれにせよ、ひとりの時代小説ファンとして、この作者にはとても期待しています。

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最後に、住野よる『また、同じ夢を見ていた』(双葉社) です。この作者は『君の膵臓をたべたい』で20万部を売ったそうで、本書はデビュー2作目となります。おそらく小学高学年の小柳菜ノ花なる女子を主人公とし、「季節を売る」アバズレさん、廃墟の建物の階段でリスカする高校生の南さん、静かに余生を送るおばあちゃんの3人を主人公の小学生が放課後に黒猫とともに回るという趣向です。もちろん、小学校での子供足しい活動もあり、隣席のペアを組む男の子都の興隆や授業参観日の両親とのふれあいなども盛り込まれます。かなり強引なんですが、小学校の国語の授業で「幸せ」について考えるというのがあり、登場人物それぞれでヒントを出しあったりします。どこまであっているか自信はありませんが、以下ネタバレかもしれません。ようするに、菜ノ花が少し大きくなって高校生になると南さんになり、もっと大きくなって成人するとアバズレさんになり、そして、人生の最終盤ではおばあちゃんと呼ばれる老婆になるわけでしょう。要するに、この主要な4人の登場人物は同一人物ながら人生のステージの異なる時点で切り取られているんだと私は解釈してます。ですから、本書はファンタジーとして読むべきです。飛行機事故で両親が亡くなるのも同じ趣旨で受け止めるべきでしょう。小説の出来としてはデビュー作よりはいいかもしれませんが、平均スコアはクリアしている可能性があるものの、両作品とも私にはあまりピンときませんでした。もっといい小説が世の中にはたくさんあるような気がします。

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