米国雇用統計は大きく減速し6月利上げは1回休みか?
日本時間の昨夜、米国労働省から5月の米国雇用統計が公表されています。金融政策動向と合わせて注目されていたところ、非農業雇用者数の増加幅はわずかに+38千人と前月から伸びが大きく減速した一方で、失業率は前月から▲0.3%ポイント低下して4.7%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから最初の2パラだけ記事を引用すると以下の通りです。
Sharp Fall in U.S. Hiring Saps Chance of Fed Rate Increase in June
The government reported on Friday that employers added just 38,000 workers in May, a troubling sign that the economic recovery may have stalled, at least temporarily, and a sharp slowdown in hiring that is expected to push back a decision by the Federal Reserve to raise interest rates.
Despite the anemic job gains, the official unemployment rate, which is based on a separate survey of households, fell to its lowest point in nearly a decade, 4.7 percent from 5 percent in April. But the decline was primarily a result of Americans dropping out of the labor force rather than finding new jobs.
この後、さらにエコノミストなどへのインタビューが続きます。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

ちょっとびっくりの米国雇用の急ブレーキでした。直前に明らかにされたADPの民間雇用は4月の+166千人に続いて5月は+173千人でしたから、私のような思考パターンの単純なエコノミストは、米国労働省の米国雇用統計でも4月から少し増加幅が拡大するものの、+200千人には届かない、といった予想をしており、市場の事前コンセンサスもこれに近いものだったと受け止めていたんですが、何と、わずかに+38千人増で、非農業民間部門に限れば+25千人増と限りなくゼロに近い印象の結果が出てしまいました。業種別の犯人探しが始まり、現時点では、情報産業の雇用が34千人も減となっていることから、米国通信大手ベライゾンの一時的なストライキの影響ではないかと指摘するエコノミストもいるようですが、それでも100千人単位の影響ではないので、マクロ的な景気の影響ではないかという意見も無視できません。失業率は低下したものの、米国雇用統計では失業率よりも雇用増の方が重視されますので、もっとも敏感に反応したのは為替市場であり、円ドル為替相場は2円ほども円高に振れてしまいました。市場の理解は、米国の連邦準備制度理事会(FED)の6月利上げは1回休み、ということなのかもしれません。

また、日本やユーロ圏欧州の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。サブプライム・バブル崩壊前の+3%超の水準には復帰しそうもないんですが、まずまず、コンスタントに+2%のラインを上回って安定して推移していると受け止めており、少なくとも、底割れしてかつての日本や欧州ユーロ圏諸国のようにゼロやマイナスをつけてデフレに陥る可能性は小さそうに見えます。
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