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2016年7月23日 (土)

今週の読書は少しペースダウンして小説も含めて計6冊!

今週の読書は、先週と同じように、少しペースダウンしました。経済書、というか、パンフレットのような本に専門書や教養書、加えて小説も含めて計6冊、以下の通りです。

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まず、上村雄彦[編]『世界の富を再分配する30の方法』(合同出版) です。編者はエコノミストというよりは、グローバル政治論やグローバル公共政策論を専門分野とする研究者です。本というよりは、その昔のパンフレットに近い印象で、例えが突飛かもしれませんが、ケインズの「平和の経済的帰結」なんかも、こういった形で出版されたんだろうと勝手に想像しています。なお、同じ出版社から、ここ何年かの間に「30の方法で世界を変える本」をタイトルに有するシリーズが何冊か刊行されており、私のような開発経済学のエコノミストには気になるタイトルとして、本書のほか『世界から貧しさをなくす30の方法』、『世界から飢餓を終わらせるための30の方法』などが含まれています。というとで、本書は国内的な富の不平等とともに、各国間、すなわち、先進国と途上国の間の富の不平等をなくすための方策を訴えるパンフレットです。その要諦は地球規模で税金を徴収するグローバル・タックスということになります。このグローバル・タックスを金融取引について応用したのがトービン・タックスといえば、理解が速いかもしれません。もちろん、グッズではなくバッズに課税を強化するという趣旨で、いわゆる炭素税はもとより、武器売買への課税、さらに、将来を見据えて資源採掘産業に対するグローバルな課税、そして、もちろん、金融取引に対するトービン・タックスなど、何種類かの課税対象を取り上げています。そして、その資金を基に貧困削減はもちろん、地球温暖化の防止などに役立てることを主張しています。ただ単なる主張にとどまらず、第5章では実現に向けた取り組みも明らかにしており、なかなか啓蒙的なパンフレットに仕上がっています。反論はいくつも出るでしょうが、本書で主張している通り、ODAによる途上国支援が遅々として進まず、航空券連帯税のようにグローバル・タックスの萌芽のような制度も導入されつつある現時点で、とてもためになる本です。開発経済学をひとつの専門分野とするエコノミストとして、多くの方にオススメできる本だと思います。

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次に、スティーヴ・ロー『データサイエンティストが創る未来』(講談社) です。著者はニューヨーク・タイムズをホームグラウンドとするジャーナリストであり、英語の原題は表紙画像に見える通り、Data-ism ですから、直訳すれば「データ主義」ということになるのかもしれません。インターネット時代は必然的にビッグデータ時代となり、大量のデータが蓄積されようとしています。そして、それらのデータが然るべきソフトウェアで解析される時代が到来しつつあります。これらのデータを支える情報源、すなわち、ウェブページ、ブラウザの閲覧履歴、センサーからの信号、ソーシャルメディア、スマートフォンから得られるGPSデータ、ゲノム情報、監視カメラの録画など、止まるところを知りません。本書では、冒頭でデータがこれだけ集積されると、「量的変化が質的変化に転化する」とし、明示されていませんが、あるいは、著者も認識していないのかもしれませんが、ヘーゲル弁証法的な立場を取っているようです。そして、何人かのキーパーソンが子供時代のエピソードとともに紹介されて、この先のデータ主義の広がりを示唆しています。その中の1人が、今を時めくFacebookを退職する際に、「コンピュータサイエンティストの優秀な頭脳が、ターゲット型オンライン広告にばかり費やされる」ことに失望した、という部分があります(p.114)。私も、上下にシフトさせたりして、無理やりにでも広告をクリックさせようとする悪質なアンケート・サイトをいくつか知っていますが、もっと生産的で世のため人のためになるデータ分析をお願いしたいもんです。なお、本書でも紹介されているテューキーの「データ解析の未来」は、学術論文としてはかなり長いんですが、読んでおく価値があります。以下のリファレンスの通りです。

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次に、デイヴィッド・ライアン『スノーデン・ショック』(岩波書店) です。著者はカナダのクイーンズ大学の社会学教授であり、大学に設置されている監視研究センターの所長を務めている監視を専門分野とする研究者です。英語の原題は Surveillance after Snowden となっています。本書をひとことで言うと、スノーデン事件で明らかになった、あるいは、その後、判明した監視体制、特に、米国国家安全保障局(NSA)をはじめとするファイブ・アイズ、すなわち、米国、カナダ、英国、オーストラリア、ニュージーランドのアングロサクソン5国による監視体制と民主主義のあり方に関する入門書です。インターネットの発達とともに、いわゆるビッグデータからいろいろ情報を収集することが容易になり、いわゆる仮想敵国だけでなく、米国の同盟国たるドイツやブラジルの首脳まで盗聴の対象にしていたとして、それなりの衝撃を引き起こしたのは記憶に新しいところです。ただ、本書でも指摘している通り、あるいは、やり過ぎかもしれないものの、こういった情報収集体制がテロの防止などに役立っている可能性は否定できません。ただし、どこまで役立っているかは市民から見て不透明です。ということで、私のような単純な思考パターンのエコノミストからすれば、監視体制の強度は明らかに自由な市民生活とトレードオフの関係にある一方で、テロの防止などに対してはそれなりに正の相関がありそうな気もします。他方で、匿名性が強調されるインターネットの世界で、ホントに匿名のままでいいのかという疑問もあります。ですから、Facebookやmixiなど、実名主義を取っているSNSがあるのも事実です。もっとも、トレードオフの関係にある市民生活の自由と監視体制の強度の間で、どの最適点を取るかは難しいところです。

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次に、ジャンナ・レヴィン『重力波は歌う』(早川書房) です。作者は米国の物理学者だそうですが、読んでいてジャーナリストのリポートのような気がします。というのは、経済学なんかもそうなんですが、研究者が書けば人間が出て来ないんですが、本書は研究者を中心に書かれています。なお、英語の原題は Black Hole Blues となっており、なんと今年2016年の出版です。というのも、解説にもある通り、昨年9月に重力波が検出されたらしいとの発表が米国国立科学財団(NSF)から今年2016年2月になされたからかもしれません。ストーリーはアインシュタインの一般相対性理論で予告された重力波の検出に取り組む米国の物理学界を対象にしています。すなわち、ワイス教授、ソーン教授、ドレーヴァー教授のトロイカ体制からなるLIGOという研究機関の設立から始まりそうなんですが、実は、その前の親の世代から話が始まります。ナチスによるユダヤ人迫害に触れたいんだろうと思います。といったことは別にして、本書で中心に据えられるLIGOはまさに重力波の検出のために設立された機関であり、連邦議会での承認などにも話は及んでいます。私は専門外もはなはだしく、まあ、我が国のスーパー・カミオカンデがニュートリノ検出のための大がかりな設備ですし、そういったものを想像して読み進みました。ただし、欧州のCERNも有名なんですが、中性子をぶつけるという以上の知識はありません。重力波とは何か、については、本書冒頭のp.52から解説されており、翻訳者の解説に少ししありますが、要するに、質量が運動する際に出るものらしく、質量=エネルギーは重力波となって失われるとされ、ただ、極めて微弱なために、ブラックホール級の大きな質量でないと地球上では観測されないとのことです。アインシュタインの一般相対性理論からは重力による光の屈折、高速による時間の遅れ、重力赤方偏移などとともに、重力波も予言されていましたが、理論的にはともかく、実証的には検出が最後になったそうです。干渉計とか、共鳴棒とか、研究者の写真とともに、重力はを検出する装置の写真も盛り込まれており、私のような専門外の人間には何のことやらサッパリ理解は進まないものの、それなりに教養を身につけることが出来そうな気もします。それにしても、物理学というよりは、工学に使い検出の工夫だったように受け止めています。

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次に、桐野夏生『バラカ』(集英社) です。人気作家が2011年から連載を始めて、極めて長期に渡って書き綴って来た大作の震災文学です。福島の原発が爆発を起こして、東京ですらかなり高い放射能汚染に見舞われるという想定で、北関東は群馬に働きに来ていたブラジル人夫婦の間に生まれた少女が、反原発の側からも原発推進の側からも、いずれからも極めて都合よく象徴的な存在として祭り上げられ、その数奇な人生をたどるものです。しかしながら、何となく、私にはしっくり来ませんでした。「震災履歴」の情報開示というのは、伊藤計劃の『ハーモニー』あたりからのインスピレーションでしょうが、何といっても物足りないのは、第1にラストの足の速さです。すなわち、バラカが川島の下から逃げ出して岩手の農園に帰った時点で、川島がバラカを殺そうとしたり、あるいは、川島自身が自殺したりと、パタパタを先を急いで一気に20年余りも先を飛ばしたりするのは、ひどく唐突感があります。第2に聖霊の声教会のヨシザキ牧師をはじめとして、極めてご都合主義的に少ない登場人物の間のリンケージでコトを済ませようとしています。世界最大のカトリック国民であるブラジル人がプロテスタントに傾倒するのも意味不明です。いずれにせよ、登場人物の少ない妙に狭い世界で物語が完結し、最後は駆け足で小説が終わったのか、終わらせられなかったのかも不明ですので、違和感を感じて読後感が悪いものになってしまいました。せっかく、基本ラインは私と同じ反原発なんですから、もっとしっかりした小説を書いて欲しかった気がしますが、人気作家はこの程度でも許されるのかもしれません。とてもガッカリしました。

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最後も小説で、葉真中顕『ブラック・ドッグ』(講談社) です。DOGなる過激な動物愛護団体、というか、動物解放組織と自ら定義し、ヒトとヒト以外の動物の種差別=スピーシズムを否定し、人間だけでなく動物も含めた最大多数の最大幸福を目指す団体による東京へのテロ活動をテーマにしています。そこに、ペットの声が理解できるという妙ちきりんな美女やその女性を看板に据えたペット会社、さらに、虐待され棄てられたペットの里親を探す団体の活動家、ジャーナリスト、また、単にその場に居合わせただけの中学生のクラスメートなどなど、かなり広がりを持った登場人物で物語が進み、当然ながら、テロを仕掛けたDOGサイドの人間も含めて、そのかなりの部分が死に絶えます。特に主人公的な人物は設定されていないような気もしますが、登場人物がモノローグを語るパートが少なくなく、誰のモノローグなのだろうかと、私のような浅い読み方しか出来ない読者は戸惑うかもしれません。東京のベイエリアのペットに関連するイベントを知能が高くて凶暴な怪物が襲い、次々と殺されていくというストーリーです。特に、倫理的なテーマや教訓めいたテーマがあるわけではなく、テロはほぼほぼ成功に終了しますので、特に勧善懲悪というわけでもなさそうですし、候補作に上げられながら直木賞を逃したのも理由がありそうな気がします。私はこの作者のデビュー作『ロスト・ケア』から、いくつか作品を読んで来ていますので、本作品もいちファンとして読んでみましたが、そうでない読書子にはオススメしません。なお、続編がありそうな終わり方だと私は受け止めていますが、その続編を読みたいかどうかは、現時点では、ビミョーなところかもしれません。

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