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2016年8月27日 (土)

今週の読書はややペースダウンしつつそれでも計7冊プラスアルファ!

先週はとうとう9冊を読み飛ばしてしまい、少し反省していますが、今週も図書館の予約の巡りのよさか、悪さか、8冊借りてしまいました。以下の通りです。

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まず、トム・バージェス『喰い尽くされるアフリカ』(集英社) です。英語の原題は The Looting Machine であり、2015年の出版です。著者は日経新聞に買収された英国フィナンシャル・タイムズのアフリカ特派員をしているジャーナリストです。上の表紙を見ても中身は歴然というべきなんでしょうが、100年以上も前のいわゆる帝国主義の時代においては、英国のインド支配が典型で、植民地から原材料を安く買いたたいて、工業国である先進国が製品化して、植民地はその製品市場として二重に収奪される、という構図がありました。そして、本書ではアフリカがまだその帝国主義時代の植民地支配の名残りを引きずっており、加えて、中国がかつての先進国に代わってアフリカの資源を収奪している姿を、豊富な取材や資料のチェックを通じて明らかにしようと試みています。そして、旧宗主国に代わって、現在では民族を代表する独裁者が君臨し、文明国家とも、ましてや、法治国家とも思えないような極めてブルータルな方法で石油や鉱物資源をはじめとする国家の富を私物化している姿が描き出されています。そして、そういった資源開発のためにインフラ整備などで、倫理も人権もイデオロギーもお構いなしに腐敗した独裁元首に手を貸す中国のあり方に疑問を呈しています。どうしても、ムガベに支配されるジンバブエはこの種の腐敗した独裁国家で上位にヒットしますから、ターゲットとして本書にも入っていますが、主として、アンゴラとナイジェリアを題材に議論が進められています。開発経済を専門分野のひとつとするエコノミストとして、私は極めて強い怒りを覚えるんですが、同時に、ここまで腐敗が進んだ独裁国家には開発経済学も手の施しようがないような気がします。本書でも、ジャーナリストらしく、取材で明らかになった事実を次々と羅列するものの、何をどうすれば解決に至るのか、アフリカが民主的な経済開発を進めることが出来るのか、処方箋は明らかにされておらず、ジャーナリストも、エコノミストも、こういった強烈な事例にはお手上げなのかもしれません。

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次に、清水勝彦『あなたの会社が理不尽な理由』(日経BP社) です。著者は経営コンサルタント出身で、現在は慶応ビジネス・スクールのM&Aなどを専門とする研究者であり、本書は日経ビジネスオンラインで提供されていた記事を基に出版されています。中身は経営の視点から、8章から成る第1部で書籍を、12章から成る第2部で論文を取り上げ、12冊の本と16編の論文の解説から構成されています。ということで、確証はかなり独立していて相互に関係が内向性となっていますが、私はどちらかというと第2部の論文篇の方が面白かったような気がします。というのも、第1部の書籍編では必ずしも学術的でない本も数多く取り上げられており、それを経営学的にどう読むか、という視点で解説されていて、第2部の学術論文の解説よりも、作者がややムリをしているように感じたからです。特に、第2部の最初の3章は秀逸で、第2部第1章は本書のタイトルそのままであり、第2章では正しいかどうかではなく、興味を持てるかどうかの重要性について、第3章の戦略についてもなかなかのモノでした。経済学も帝国主義的に各方面に進出して、決定の方法や選択理論などで幅広い活用を目指していますが、実学である経営学も同じことであり、会社経営だけでなく幅広い組織運営に適用される可能性があります。特に、私はスポーツ、中でも野球の監督と選手の関係や試合運びに対して、会社の経営者と社員、あるいは、企業経営と類似した観点を持ち込んで読んだりしましたので、本書も大いに楽しめました。エコノミストであって経営学については専門外の私でも聞いたことのある著名論文もたくさん取り上げられています。

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次に、東山彰良『罪の終わり』(新潮社) です。第11回中央公論文芸賞受賞作品であり、売れっ子作家の話題の小説です。私はこの作者の作品は、不勉強にして、直木賞受賞の『流』と『ブラック・ライダー』しか読んでおらず、しかもこの順番で読んだんですが、この『罪の終わり』は『ブラック・ライダー』の前日譚、ただし、100年ほどさかのぼる時代を舞台にした小説です。すなわち、2173年6月16日のいわゆる6.16のナイチンゲール小惑星の地球への衝突の少し前の次点であるナサニエル・ヘイレンが生まれる少し前から彼の生い立ち、そして、白聖書教会に抹殺されるまでを追っています。語り手はヘイレンを処置したネイサン・バラードです。と、ここまで書いただけで理解できるのは相当な東山ファンだという気もします。ナサニエル・ヘイデンの生涯を描き出した伝記、もちろん、黙示録的なSF超大作です。小惑星の地球衝突による近代的な生活や秩序や文明や崩壊という観点からは、核戦争と原因が異なるものの大友克洋の『AKIRA』と同じラインですし、人肉食という観点からは貴志祐介の『クリムゾンの迷宮』と通じる点があり、VB手術による身体能力の飛躍的な向上、極めて濃厚な宗教的色彩、などなど、とても大がかりな舞台装置を前にした壮大な小説です。ストーリーは壮大ですし、加えて、主人公のナサニエル・ヘイレン、語り手のネイサン・バラードは言うに及ばず、男性と女性の二重人格を併せ持つ怪人ダニー・レヴンワースをはじめ、右前足を欠いた三本肢犬のカールハインツまで、強烈な個性というかキャラが明確な登場人物で固めています。私はこの作品が出版される前に『ブラック・ライダー』を読んで感激し、『流』よりも高く評価したんですが、この作品が出版された今となっては、この『罪の終わり』と『ブラック・ライダー』をどの順で読むかに迷うかもしれません。出版順、というものアリでしょうし、作品の舞台の時代順、というのも、私はすでに不可能ですが、興味深そうな気もします。ただ1点だけ、『ブラック・ライダー』で大きくクローズ・アップされた存在で、「牛腹」の青年ジョアン・プスカドールがいましたが、このヒトとウシの遺伝子をかけ合わせた食用動物が、『罪の終わり』では最後の最後にお印ばかりに触れられただけというのは、私個人としては少し物足りないような気がしています。どうでもいいことながら、これくらいのスケールの小説であれば、舞台は日本ではなくて米国なんでしょうね、とついつい納得してしまいました。

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次に、近藤史恵『スーツケースの半分は』(祥伝社) です。私はこの作者の作品では、白石誓を主人公とする自転車レースの「サクリファイス」のシリーズが好きなんですが、『タルト・タタンの夢』で始まるビストロ・パ・マルのシリーズ、女性清掃作業員・キリコのシリーズなども愛読しており、ミステリではない本書のような作品はそれはそれで新鮮な気もします。ということで、青いスーツケースにまつわる連作短編9篇を収録しています。最初の4話は大学の同級生であるアラサーの女性4人を順繰りに主人公とし、フリマで青いスーツケースを買った女性がニューヨークに行き、彼女からスーツケースを借りた友人が香港、アブダビ、パリに旅行し、当然ながら、青いスーツケースが旅行のお供をします。そして、パリの旅先に留学生で滞在している女性を主人公にした第5話、スーツケースをフリマに出した母と子の家庭を舞台にした第6話、その家庭の子供が大学からドイツのシュトゥットガルトに交換留学に出る第7話、最初の大学時代の友人が南紀白浜に旅行に出る第8話、スーツケースの最初の持ち主の女性とその世話係を主人公にした第9話、の構成となります。基本的にいい人ばかりで、第3話アブダビ編で女性を置き去りにする男性とか、最終話でスーツケースの持ち主の恒例女性宅に盗みに入ろうとする男性とか、もちろん、けしからん人物が登場しないわけはないんですが、善意の人に囲まれたほのぼのとした心温まるストーリーが大きな部分を占めます。もちろん、スーツケースを持っての旅もテーマのひとつでしょうから、異国情緒をはじめとした知らない土地の紀行文もひとつの魅力かもしれません。本書の表紙の青いスーツケースがとても愛らしく描かれているんですが、まったくどうでもいいことながら、TSAロックは装着していない印象で、これではニューヨークには旅行できそうもない、と心配してしまいました。同じ作者のサクリファイス・シリーズ最新刊『スティグマータ』も図書館には予約を入れてあり、楽しみに待っています。

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次に、西垣通『ビッグデータと人工知能』(中公新書) です。著者は東大名誉教授であり、工学系の研究者から情報学などの分野も視野に修めた研究にも手を伸ばしているようです。本書では、カーツワイルの予言、すなわち、2045年に技術的特異点シンギュラリティが来るとか、このブログでも今年2016年1月7日付けの記事で取り上げた野村総研とオックスフォード大学の共同研究で多くの職が人工知能(AI)に奪われる、などの技術に関する将来予想について批判的に論じています。第1章と第2章のビッグデータやそれを扱うAIの進歩などの現状の紹介については、それなりに読ませる部分もあるんですが、第3章から方向性がおかしくなり始め、コミュニケーション論から、p.126で人間のコミュニケーションを指摘で柔軟な「共感作用」、人工知能の擬似コミュニケーションを司令的で定型的な「伝達作用」とするあたりまではともかく、日本と欧米でロボットの受容性に差がある点をユダヤ教-キリスト教的な一神教の宗教的な要素で論じたり、フランケンシュタインのような神の創りたもうたものではない生命を持ち出したりするあたりでも、おおよそビッグデータやAIとは関係のない観念論的な哲学に逃げ込んでいく姿勢が疑問です。加えて、日本では理系のIT専門家が技術屋として、文系の下請けに回って社会的地位が低い、などのp.165の分析などは、何を意図しているのか、私にはサッパリ判りません。そして、最終章では著者の従来からの主張である集団知に強引に結論を持って行き、ビッグデータと人工知能と集合知は三位一体(p.171)都の主張に落ち着き、さらに暗黙知にまで敷衍されます。まあ、前半1-2章だけをしっかり読むのも一案ですし、後半も眉に唾しつつ読み進むのも一案かもしれません。

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次に、岡本真一郎『悪意の心理学』(中公新書) です。著者はい社ではなく、人文科学系の心理学の研究者です。3年ほど前に同じ中公新書で『言語の社会心理学』と題する本を出版しています。ということで、本書はタイトル通りの中身を期待した私には少し肩透かしを食ったような気になりましたが、コミュニケーションの上で悪意の伝わり方を論じており、意識や意思として悪意がどのように生じるかを論じているわけではありません。ですから、嘘やヘイト・スピーチなどの方に関心がある向きにはいいような気がします。ただ、単純な嘘ではなく、いわゆるハッタリとか方便まで話題が広がっているわけではありません。ですから、悪意の伝わり方に着目し、いじめや差別、クレーマーやセクハラ、政治家の問題発言などにつながります。ただし、本書でもp.264などで認めているように、悪意がある発言と悪意がない発言をそれほど簡単に峻別できるわけではなく、ある種のコメディアンのギャグや最近では米国大統領選挙での特定の候補者の発言などを聞いている限り、ホントに真面目に考えて発言しているのか、単なるギャグで少しだけ不穏当な要素を加えているのか、私には理解できない場合もあります。また、本書ではp.113から京都人の「いけずな発言」というパートがありますが、その背後には明確な何らかの意図が隠されているのはいうまでもありません。そういったいわば「高等な悪意」のようなものをいかに真意を包み隠して発言すればいいのか、という思考様式や行動様式について、もう少し掘り下げた心理学的な分析が欲しかったような気がします。底流に悪意がありながら発言だけは身ぎれいにしておけばいい、と考えるのか、「臭いものにふた」ではなく、基から悪意を絶つ必要があるのか、本書は前者の立場で書かれていると解釈する読者もいそうな気がする一方で、ホントに社会的に意味あるのは後者ではないか、という気もしないでもありません。

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次に、ミステリー文学資料館[編]『電話ミステリー倶楽部』(光文社文庫) です。ありがちな電話に関するミステリを集めたアンソロジーです。トリックに電話が使われているというだけでなく、幅広く電話に関するミステリを集めています。しかも、最近のミステリ作品だけでなく、黒電話でダイヤルをジーコロと回していた時代から、プッシュホンになって短縮ダイヤルの設定が可能になった電話、さらに、私も初めて接した時には「画期的」と感激した留守電、もちろん、最後にはケータイ電話まで、長らくの時代を横断しての電話ミステリの集大成かもしれません。ただい、エラリー・クイーンの作品にあるような電話交換手を介しての通話は、さすがに出て来ません。冒頭には、江戸川乱歩と電話機のモノクロ写真も収録しています。題材としても、古典的ともいえる固定電話にかかってきた電話を受けるアリバイから、最近の世相を反映した携帯電話を使った振り込め詐欺にまつわる犯罪まで、これまた時代を横断して幅広く収録されています。また、収録されている短編作品は、鮎川哲也、泡坂妻夫、島田荘司、岡嶋二人、山村美紗などの定番というか、我が国の戦後ミステリを代表する作家たちです。400ページ余りとややボリュームがありますから、通勤電車での無聊を慰めるお相手にもピッタリかもしれません。もちろん、全部が全部そうではありませんが、本格に近いミステリも少なくなく、謎解きとしても十分に読み応えがあります。

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最後に、日本推理作家協会[編]『Question 謎解きの最高峰』(講談社文庫) です。短編ミステリ7篇を集めたアンソロジーです。しかしながら、何と、たった1編「現場の見取り図 大癋見警部の事件簿」を除いて、すべて既読でした。記憶力の悪さを反映して、結末までは覚えがなくて、それなりに楽しめたんですが、いい小説はアチコチに収録されているんだということを改めて実感しました。ちなみに、私が何度も読むはめになったタンペンミステリは何といっても鮎川哲也の「達也が嗤う」のような気がします。ということで、他に7冊もあるんですから、本書に関する読書感想文はパスします。

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