本日公表の毎月勤労統計と景気動向指数から景気の先行きについて考える!
本日、厚生労働省から6月の毎月勤労統計が、また、内閣府から同じく6月の景気動向指数が、それぞれ公表されています。注目の賃金は季節調整していない原系列の前年同月比で+1.3%の上昇を示し、また、CI一致指数は前月から+1.3ポイント上昇して110.5を記録しています。2か月振りの上昇です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
名目賃金、6月1.3%増 ボーナス増加
厚生労働省が5日発表した6月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、名目にあたる従業員1人当たりの現金給与総額は43万797円と、前年同月比1.3%の増加となった。増加は3カ月ぶり。ボーナスが前年とくらべて増加したため。物価変動の影響を除く実質でみた賃金指数は前年同月比1.8%増で、5カ月連続で増加した。
名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は0.1%増の24万1746円。前年同月の水準とほぼ横ばいだった。
ボーナスや通勤費にあたる「特別に支払われた給与」は3.3%増の17万20円。正社員のボーナスは6月に予定通り支払われたとみられ、しかも幅広い業種で増額している。とりわけ不動産・物品賃貸業(36.1%増)、飲食サービス業(23.8%増)の増加が目立った。
実質賃金の増加は給与の伸びが物価の伸びを上回っていることを示す。6月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比0.5%下落し、実質賃金の伸び幅が名目より大きくなった。厚労省は「賃金は緩やかな上昇傾向にある」としている。
景気一致指数、1.3ポイント上昇 6月、判断「足踏み」で据え置き
内閣府が5日発表した6月の景気動向指数(2010年=100、速報値)で、景気の現状を示す一致指数は前月比1.3ポイント上昇の110.5だった。上昇は2カ月ぶり。内閣府は一致指数の基調判断を「足踏みを示している」に据え置いた。
前月と比較可能な8指標のうち6指標が一致指数のプラスに寄与した。なかでも電子デバイス関連や輸送用機器の出荷が伸びたことで、鉱工業用生産財の出荷指数が改善した。耐久消費財の出荷指数も上昇した。商業販売額(卸売業)は指数全体を上昇を抑える要因になった。
数カ月先の景気を示す先行指数は横ばいの98.4だった。鉱工業用生産財在庫率指数や消費者態度指数がプラスに寄与した。新規求人数や東証株価指数はマイナスに働いた。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。順に、上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、まん中のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与の季節調整していない原系列の前年同月比を、下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用指数の推移を、それぞれプロットしています。影をつけた期間は、次の景気動向指数のグラフとも共通して、景気後退期です。
注目の現金給与総額指数は原系列の前年同月比で+1.3%増と、賞与などの特別給与が増加しています。ただし、所定内給与は前年同月比で+0.1%増となっており、消費拡大に結びつきやすい恒常所得部分はまだまだです。ただし、上のグラフで見られる通り、一番下のパネルのフルタイムの一般労働者の伸びが高まっており、給与よりも正社員としての待遇が改善している可能性があります。もしもそうだと仮定すれば、将来の渡って安定的な所得を得られる可能性が高まり、「経済財政白書」で分析されていたような子育て期の不安が解消される方向にあるのかもしれません。なお、シンクタンクや金融機関などから入手したニューズレターの中に、最低賃金が3%引き上げられると、最低賃金近傍の時給で働く労働者が約340万人で6%程度いることから、全体のマクロの賃金総額で+0.2%くらいの増加に当たる、とのラフな試算が示されていたりしました。コチラはご参考です。
続いて、上のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。何といっても、景気と相関の高い鉱工業生産指数の生産や出荷が6月は増加していますので、鉱工業生産指数にシンクロしてCI一致指数も上昇しているのだと私は理解しています。それはそれで結構なことなんですが、CI先行指数は前月と同じ水準であり、先行き景気が緩やかな回復・拡大にあることは明らかとしても、それほどテンポアップするようにも見えません。
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