過熱感を示す雇用統計とそろそろ下げ止まりつつある商業販売統計!
本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、経済産業省の商業販売統計が、それぞれ公表されています。いずれも7月の統計です。失業率は先月から▲0.1%ポイント低下して3.0%を、また、有効求人倍率は先月と変わらず1.37倍を、それぞれ記録し、商業販売統計のうち小売業販売額は季節調整していない統計の前年同月比で▲0.2%減の12兆30億円を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
完全失業率、7月は3.0% 21年ぶり低水準 前月比0.1%低下
総務省が30日発表した7月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は3.0%と、前の月に比べて0.1ポイント低下した。1995年5月(3.0%)以来、21年2カ月ぶりの低水準となった。QUICKがまとめた市場予想は3.1%だった。人手不足を背景に労働需給が引き締まった状況が続いている。総務省は雇用動向について「引き続き改善傾向で推移している」と分析した。
完全失業率を男女別でみると、女性が2.7%と前月比0.3ポイント低下し、93年9月(2.7%)以来、22年10カ月ぶりの低水準となった。男性は前の月と同じ3.2%だった。
完全失業者(季節調整値)は、前の月に比べて7万人減の201万人。勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は1万人減、「自発的な離職」も1万人減った。
就業者数(同)は6476万人と前の月から20万人増加。雇用者数は11万人増の5727万人だった。
有効求人倍率、7月は1.37倍 前月比横ばい 新規求人倍率2.01倍
厚生労働省が30日発表した7月の有効求人倍率(季節調整値)は前の月から横ばいの1.37倍だった。QUICKが事前にまとめた市場予想(1.37倍)と一致した。前の月に続いて1991年8月(1.40倍)以来の高水準となった。企業の求人が伸びる一方で求職者数も増えた。産業別では、訪日外国人の恩恵を受ける宿泊・飲食サービス業や教育・学習支援事業などの求人が伸びた。
雇用の先行指標とされる新規求人倍率は前月に比べて横ばいの2.01倍だった。正社員の有効求人倍率も0.88倍と前月と同水準だった。就業地別の有効求人倍率は4カ月連続で全都道府県で1倍を上回った。
7月の小売業販売、前年比0.2%減 家電好調で前月比は1.4%増
経済産業省が30日発表した7月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比0.2%減の12兆30億円だった。原油安の影響で5カ月連続で前年を下回ったが、季節調整した前月比では1.4%増加。経産省は前月比の伸びを受け、小売業の基調判断を「一部に弱さがみられるものの横ばい圏」と、「弱含み傾向」から引き上げた。
7月は洗濯機や冷蔵庫などの白物家電が伸びた。リオデジャネイロ五輪の開催を控えて薄型テレビなどの販売も好調だった。
大型小売店の販売額は百貨店とスーパーの合計で前年比0.9%増の1兆7210億円だった。スーパーは主力の飲食料品の販売が堅調で1.6%増加した。百貨店は訪日外国人による高額商品の購入が落ち込んで0.4%減少した。
コンビニエンスストアの販売額は3.8%増の1兆416億円だった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。それにしても、統計をこれだけ引用すると長くなります。続いて、雇用統計については、下のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、商業販売統計とも共通して影を付けた部分は景気後退期です。
労働市場はかなり過熱に近い状態を示し始めています。就業者や雇用者が増加し、失業者は減少し、当然の帰結として失業率が低下しています。有効求人倍率は前月と同じでしたが、先行指標と見なされている新規求人はさらに増加していますので、先行きもしばらくは労働市場はタイトな状態が続くものを考えるべきです。引用した報道にもある通り、全都道府県で有効求人倍率は1倍を超え、産業別地域別で幅広い人手不足が見られるようです。おそらく、雇用はほぼ完全雇用の水準に張り付いており、今後は量的な改善から質的な雇用の改善に進む段階であろうと私は認識していますが、何度かこのブログでも指摘している通り、雇用の質的改善は賃金の上昇よりは正規雇用の増加に現れる可能性があります。
続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。消費にリンクする小売販売額は季節調整していない原系列では前年同月比▲0.2%減とマイナスをつけましたが、季節調整済みの系列の前月比では7月は+1.4%と増加しています。上のグラフでもほぼ最悪期を脱しつつあるのが読み取れると思います。最近時点でいくつか台風が関東から東北に上陸したりしましたが、先月7月は天候要因もよく、客足が伸びたともいわれています。引用した記事にもある通り、家電製品が伸びた結果が含まれており、統計作成官庁である経済産業省でも、基調判断を「弱含み」から「横ばい圏」に上方修正しています。所得とマインドの動向から、消費もそろそろ底を打つんではないかと私は期待しています。
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