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2016年9月30日 (金)

巨人クローザーの沢村投手を打ち崩してサヨナラ勝ちで6連勝!

  HE
読  売000000010 130
阪  神000000002x 271

毎度おなじみの完全な消化試合ながら、巨人クローザーの沢村投手を最終回に打ち崩して逆転でサヨナラ勝ちで6連勝でした。最後に、今季冷遇され続けた俊介外野手がサヨナラ犠飛ですから、今シーズンの超変革野球のひとつの結論かもしれません。

来シーズンは、
がんばれタイガース!

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月末にいっせいに公表された経済指標から何が読み取れるか?

今日は、月末最終日の閣議日ですので、いくつか重要な経済指標が明らかにされています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局の消費者物価指数(CPI)が、それぞれ公表されています。いずれも8月の統計です。鉱工業生産は前月から+1.5%の増産を示し、雇用統計では失業率が前月から0.1%ポイント上昇して3.0%、有効求人倍率は前月と同じ1.37倍を記録し、生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率は先月からマイナス幅が拡大して▲0.5%となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、8月は1.5%上昇 電子部品好調で基調判断上げ
経済産業省が30日発表した8月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月から1.5%上昇の97.9だった。伸びはQUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(0.5%)を上回った。電子部品やパソコン、半導体製造装置など電機関連で生産が増加。経産省は生産の基調判断を「一進一退だが、一部に持ち直し」から「緩やかな持ち直しの動き」に上方修正した。
業種別では15業種のうち11業種が上昇し、3業種が低下。1業種が横ばいだった。電子部品・デバイスは6.3%上昇した。前月を上回るのは3カ月連続。カーナビゲーションや機械向けの液晶パネルなどが好調だった。企業の積極的なIT(情報技術)投資により情報通信機械は14.0%上昇した。
一方、自動車などの輸送機械は1.7%低下した。熊本地震後の回復が一服した。
出荷指数は1.3%低下の94.6と、3カ月ぶりに低下した。在庫指数は0.1%上昇の111.3、在庫率指数は3.5%低下の113.2だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査では9月の予測指数は2.2%上昇、10月は1.2%上昇となった。9月は輸送機械や業務用機械などで増産が見込まれている。生産実績が計画から下振れする傾向を考慮した結果、経産省では9月は1.5%程度の上昇になると試算している。
完全失業率、8月は3.1% 6カ月ぶりに上昇 市場予想3.0%
総務省が30日発表した8月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は3.1%と、前の月に比べて0.1ポイント上昇した。上昇は6カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想は3.0%だった。定年退職や雇用契約の満了による男性の失業者の増加が失業率を押し上げた。
完全失業率を男女別でみると、男性が3.4%と前の月に比べて0.2ポイント上昇した。女性は横ばいの2.7%だった。
完全失業者数(季節調整値)は、前の月に比べて9万人増加の210万人。勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は2万人増、「自発的な離職」は1万人増加した。就業者数(同)は6464万人と前の月から12万人減少した。雇用者数は1万人減の5726万人だった。総務省は雇用動向について「引き続き改善傾向で推移している」との見方を示した。
8月の全国消費者物価、0.5%下落 原油安で6カ月連続前年割れ
総務省が30日発表した8月の消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合が99.6と前年同月比0.5%下落した。原油安の影響で電気代やガソリン代が減少し、6カ月連続で前年実績を下回った。QUICKが事前にまとめた市場予想の中心値は0.5%下落だった。
生鮮食品を除く総合では全体の6割強にあたる323の品目が上昇し、150品目は下落した。横ばいが50品目だった。
生鮮食品を含む総合は99.7と、0.5%下落した。食料・エネルギーを除く「コアコア」の指数は100.4と、0.2%上昇した。
東京都区部の9月のCPI(中旬速報値、15年=100)は、生鮮食品を除く総合が99.5と0.5%下落した。電気料金の低下が響いた。価格据え置きや引き下げる動きが出た携帯電話端末も指数を押し下げた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。それにしても、統計をこれだけ引用すると長くなります。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、真ん中は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷、下は製造工業と電子部品・デバイスの在庫率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は、次の雇用統計とも共通して、景気後退期です。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは前月比で+0.5%の増産でしたから、それなりのボリュームの増産であると認識しています。加えて、製造工業生産予測調査でも9―10月と増産の見込みが示されており、しかもしかもで、製造工業生産予測調査のバイアスを考慮しても、引用した記事にある通り、かなりな増産が予想されますので、いよいよ生産も底入れして上向きに転じる局面を迎えた気がします。上のグラフのうちの一番下のパネルには電子部品・デバイスの在庫率がプロットされていますが、8月は急激に低下したことが示されています。単月の動きながら、在庫調整がこのまま順調に進めば、生産は増産の傾向に拍車がかかる可能性が高いと受け止めています。その意味で、統計作成官庁である経済産業省でも鉱工業生産の基調判断を「緩やかな持ち直しの動き」に上方修正しており、私も同感です。

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続いて、雇用統計については、上のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。失業率と有効求人美率は、ともに先月からほぼ変わらず、引き続き、完全雇用状態に近い人手不足が続いています。正社員の有効求人倍率も3か月連続で0.88倍を記録して高い水準にあります。来週早々に公表される日銀短観の雇用判断DIや厚生労働省の毎月勤労統計の賃金統計なども見てみたい気がしますが、どうも、前々からこのブログで表明している通り、人手不足や労働需給のひっ迫は、特に理論的な根拠はないものの、賃金よりも正社員増の方に現れがちな気がしています。

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続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エベルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。なお、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。ということで、日銀の物価目標である+2%にはほど遠く、マイナス幅が拡大してしまっています。ただし、引き続き、国際商品市況における石油価格の下落に起因する部分はいかんともしがたく、上のグラフに見る通り、コアCPIの前年同月比▲0.5%を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.83%、生鮮食品を除く食料が+0.25%、サービスが+0.10%、生鮮食品を除く財が▲0.03%となっています。エネルギーを除けばプラスの上昇率ながら、それでも2013年から始まった日銀の異次元緩和にもかかわらず、インフレ目標にはまったく達しません。OPECが最近減産合意しましたが、もはや、石油価格次第の展開かもしれません。

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2016年9月29日 (木)

IMF「世界経済見通し」World Economic Outlook 分析編やいかに?

一昨日、昨日にチラリチラリと触れましたが、10月7-9日のIMF世銀総会を前に、9月27日に国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」World Economic Outlook の分析編 Analytical Chapters が公表されています。まず、その章別構成は以下の通りです。どうでもいいことですが、通常、第1章は経済見通しそのものになります。

Chapter 2:
Global Trade: What's Behind the Slowdown?
Chapter 3:
Global Disinflation in an Era of Constrained Monetary Policy
Chapter 4:
Spillovers from China's Transition and from Migration

第2章から第5章まで、IMF News Articles のサイトからグラフを引用しつつ、というか、かなり無意味に図表を連結して、簡単にIMF「世界経済見通し」の分析編を取り上げておきたいと思います。

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まず、Keeping the Wheels of Trade in Motion と題する IMF News Articles のサイトから引用した第2章 貿易の説明グラフは上の通りです。一番上の地図は2011年以降の5年間で国別に貿易の減少を示しています。次のグラフのセットは保護主義の台頭を示唆しており、最後のグラフは、さはさりながら、経済活動が不活発であることが貿易減少の要因であることを示しています。第2章の結論として、設備投資の低迷をはじめとする最近の経済活動の停滞が貿易量の減速の3/4を説明できる一方で、国境を超えた生産拠点分散の動きも鈍化しており、何よりも保護主義により低迷している可能性があり、ポスト・ドーハの貿易交渉を含め、高止まりしている関税引き下げ、あるいは、貿易円滑化協定の批准や施行など、貿易コスト削減の一層の努力が必要と指摘しています。

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次に、Combating Persistent Disinflation: A Challenge for Many Central Banks と題する IMF News Articles のサイトから引用した第3章 ディスインフレの説明グラフは上の通りです。上のパネルは先進国と新興国に分けてディスインフレの寄与度分解をしており、2015年については輸入価格の低下、すなわち、国際商品市況における石油などの下落が占める赤い部分が大きくなっていますし、緑の失業もまだ無視できません。下のパネルは金融政策にお帰る金利の動きとインフレ目標からのかい離を考慮し、青い棒グラフの金利が下限まで達した国における目標値からのかい離が大きいことが示されています。我が国が典型ですが、欧州のいくつかの国を含めて、金融政策の有効性は政策金利がゼロに近づいている国では失われつつある可能性があり、緩和的金融政策を継続しつつ、成長を支援する財政政策、賃金の低迷する国では賃上げ目標を含む所得政策も併用して補完する必要性を指摘しています。

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次に、pillovers from Migration and China's Transition と題する IMF News Articles のサイトから引用した第4章 中国経済の低迷及び難民増加とそれらの波及の説明グラフは上の通りです。いっぱいあり過ぎて困ってしまうんですが、中国経済に着目して注目すべき項目、特に上の3枚のパネルに絞ると、1番目は中国経済の減速を示しており、成長率はゆっくりと低下を示し、中国経済をけん引して来た輸出は輸入とともにほぼゼロ成長になっています。2番目のグラフは中国経済の影響力、というか波及効果を示しており、アジア諸国、資源輸出新興国、先進国の順で影響が大きいことが示されています。3番目のグラフは2000年と2015年を比較して中国の国際商品への需要の大きさを示しています。特に非鉄金属で大きくなっており、石油でもシェアは倍増に近くなっており、中国での商品需要の停滞がこれらの価格下落の要因のひとつを考えるべきでしょう。リポートでは、中国経済がバブル的に、と私は解釈しているんですが、後に大きく崩壊するよりは、成長率が低下するもののサステイナブルな水準に適切に管理されつつ移行することは中長期的に好ましいと結論しています。申し訳ありませんが、下の3枚のグラフ、難民を含めた移民の波及効果については割愛します。

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最後の最後に、本日、経済産業省から8月の商業販売統計が公表されています。いつもの小売販売のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。消費にリンクする小売販売額は季節調整していない原系列で11兆3040億円、前年同月比▲3.1%減とマイナスをつけ、季節調整済みの系列の前月比でも7月のプラスから8月はマイナスに転じて▲1.1%減を記録しています。統計作成官庁である経済産業省の基調判断は「一部に弱さがみられるものの横ばい圏」で据え置かれています。上のグラフでは、底ばいないし最悪期を脱しつつあるのが読み取れると思います。

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2016年9月28日 (水)

来週月曜日に公表予定の9月調査日銀短観予想やいかに?

来週月曜日10月3日の発表を前に、シンクタンクや金融機関などから9月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと大企業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は今年度2016年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、今回の日銀短観予想については、今年度2016年度の設備投資計画に着目しています。ただし、三菱総研だけは設備投資計画の予想を出していませんので、適当に取っています。それ以外は一部にとても長くなってしまいました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、html の富士通総研以外は、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
6月調査 (最近)+6
+19
<+6.2%>
n.a.
日本総研+7
+19
<+6.4%>
先行き、設備投資の腰折れは回避される見通し。円高や海外情勢不安が重石となるものの、維持・更新需要に加え、人手不足下で、省力化・合理化などに向けた投資も期待可能。低金利や比較的高水準を維持している企業収益を背景に、力強さには欠けるものの、例年の足取りに沿った上方修正となる見通し。
大和総研+6
+17
<+6.8%>
2016年度の設備投資計画(全規模全産業)は前年比+2.5%と、前回(同+0.4%)から上方修正されると予想する。9月日銀短観の設備投資計画には、中小企業を中心に上方修正されるという「統計上のクセ」がある。今回は、昨年末以降の円高進行が輸出関連製造業にマイナスの影響を及ぼす一方、非製造業の企業業績の底堅さや人手不足感、さらには英国のEU離脱問題に伴う混乱が落ち着きを取り戻していることなどから、例年の修正パターン並みの上方修正になると想定した。
みずほ総研+8
+20
<+7.3%>
2016年度の設備投資計画(全規模・全産業)は、前年比+2.3%と、6月調査(同+0.4%)からの上方修正を予想する。ただし、9月計画としては、昨年よりも低い伸びとなる公算だ。
ニッセイ基礎研+7
+17
<+6.4%>
16年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年度比1.9%増と前回調査時点の0.4%増から上方修正されると予想。例年、6月調査から9月調査にかけては、中小企業を中心に計画が固まってくることに伴って上方修正されるクセが強く、今回も上方修正されるだろう。ただし、円高によって輸出環境が厳しさを増し、企業収益も悪化しているため、一部で様子見や先送り姿勢が広がりつつあると考えられ、例年と比べて上方修正の度合いが抑制的になると見ている。
第一生命経済研+7
+16
<+6.8%>
毎回、9月の大企業・設備投資計画は、ほとんど修正されない。大企業・製造業は、2016年度の前半比が12.5%と比較的高めの計画となっている。また、中小企業は、毎回の調査ごとにマイナス幅が縮小される流れを踏襲するとみられる。実体面では、設備投資は好調とは言えないのだが、短観をはじめとする企業アンケートでは割と高めの伸びになっている。おそらく、企業の年度の収益計画が固まっていくと、それに鞘寄せされる格好で、下方修正されることになるだろう。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+6
+18
<+6.9%>
16年度の大企業の設備投資計画は、小幅の上方修正が見込まれる。借入金利の低下が続くなど投資環境は引き続き良好だが、企業経営者は依然として設備投資に慎重な姿勢を崩していない。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+5
+19
<+6.9%>
2016年度の設備投資計画は、大企業製造業は前年比+13.5%、非製造業は同+3.4%と、例年どおり上方修正されたと見込まれる。将来に向けて国内需要の急速な拡大は見込めず、新興国など海外へ投資先を移す流れに大きな変化はないが、引き続き設備の維持・更新への投資が行われる計画であるほか、生産(販売)能力の拡大や効率化を進めるための前向きな投資も行われると予想される。
三菱総研+7
+19
<n.a.>
先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業は+8%ポイント、非製造業は+20%ポイントと、それぞれ小幅の改善を予測する。製造業では、資源価格の動向、円高など懸念材料はあるものの、海外経済の緩やかな持ち直しを背景に、業況の改善は続くとみる。非製造業では、雇用・所得環境の改善を背景とする消費の緩やかな持ち直しや、大型経済対策への期待が業況の下支えとなろう。
富士通総研+7
+18
<+6.7%>
2016年度の設備投資計画(全規模・全産業)は前年度比2.1%と、6月調査から上方修正されると見込まれる。円高で企業業績は悪化し、世界経済の先行き不透明感も強いが、維持更新や省力化投資に対する企業の意欲は依然強く、上方修正されると見込まれる。企業の省力化投資への注力は、最近の労働需給の逼迫が、さらに拍車をかけている。先行きは、業績悪化の一巡と生産底入れが、設備投資のプラス要因になると考えられる。大企業は製造業、非製造業とも、昨年度の伸びは下回るものの、6月調査に続き、過去の平均を上回る伸びを保つと予想される。中小企業も上方修正されるが、製造業では先行き不透明感の強さが勝り、6月調査に続き、過去の平均の伸びを下回ると見込まれる。

ということで、上のテーブルから明らかな通り、景況感は製造業・非製造業とも6月調査から大きな変化はない印象です。同時に、設備投資計画についても、9月調査の日銀短観は中小企業を中心に計画が固まってくることに伴って上方修正されるクセが強く、今回も従来と同様に上方修正されるだろうとの予想が中心となっています。上のテーブルでは取り上げませんでしたが、かなり無風状態の日銀短観予想の中で、ほぼ完全雇用の状態にある現在の我が国経済の下で、雇用判断DIなどについても注目が集まるんではないかと私は予想していたりします。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから、設備投資計画のグラフを引用しています。ただ、タイトルに明記されている通り、全規模・全産業ですから、上のテーブルで取り上げている大企業全産業とはベースが異なるので注意が必要です。

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諸般に抒情により、国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」World Economic Outlook の分析編 Analytical Chapters は明日に取り上げたいと思います。

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2016年9月27日 (火)

消化試合でもスクイズ試みる超変革野球でヤクルトに勝って5連勝4位浮上!

  HE
ヤクルト001000110 361
阪  神10000012x 4123

毎度おなじみの完全な消化試合ながら、ヤクルトに勝って5連勝4位浮上です。消化試合でもスクイズを試みる超変革野球で、何とスクイズ失敗後に梅野捕手の勝ち越しタイムリーが飛び出しました。ソフトバンクもスクイズで決勝点だそうですから、順位は違えど同じ趣向なのかもしれません。

来シーズンは、
がんばれタイガース!

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OECD「中間経済見通し」やいかに?

国際機関などの海外情報が遅れ気味で、昨夜のピュー・リサーチに続いて、今夜は国際協力開発機構(OECD)から先週水曜日9月21日にOECD「中間経済見通し」Interim Economic Outlook が公表されています。図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。まず、OECDのサイトにアップされているリポートから最初の4パラを引用すると以下の通りです。

Global growth warning: Weak trade, financial distortions
Global GDP growth is projected to remain flat around 3% in 2016 with only a modest improvement projected in 2017. This forecast is largely unchanged since June 2016 with weaker conditions in advanced economies, including the effects of Brexit, offset by a gradual improvement in major emerging market commodity producers. Overall, the world economy remains in a low-growth trap with persistent growth disappointments weighing on growth expectations and feeding back into weak trade, investment, productivity and wages.
Continued weak trade growth, and the sharp slowdown in 2015 and 2016, underlines concerns about the robustness of global growth. While demand factors play a role, weak trade also reflects structural factors and a lack of progress - together with some backtracking - on the opening of global markets to trade in goods and services. Slowing trade growth will depress productivity growth in future years.
Long-term interest rates have fallen further in recent months, reaching exceptionally low levels in many countries, with more than 35% of OECD sovereign debt trading at negative yields. At the same time, equity valuations remain high and have continued to increase in some economies despite weak profit developments and reduced long-term growth expectations. Real estate prices are rising rapidly in many economies, while credit quality and credit spreads are declining in some markets.
Monetary policy has become overburdened and is creating distortions in financial markets. Effective monetary policy support requires more and collective fiscal policy, as well as implementing structural reforms to boost growth and inclusiveness. Monetary policy has created a window of low interest rates. Fiscal policy should take advantage of the increase in fiscal space to increase growth-enhancing spending. Structural reform momentum needs to be intensified, rather than continue to slow as in recent years. Trade policies are a key lever to boost growth and should be supported by measures that ensure the gains from globalisation are widely shared. A more balanced policy mix would put the global economy on a higher growth path and reduce financial risks.

リポートの最初にサマリー的にイタリック体で4パラだけ置かれているんですが、それでもかなり長くて包括的な記述ですので、これを読むだけで十分という気もします。要するに、下線を付した通り、需要サイドの問題ながら (While demand factors play a role)、世界貿易が振るわず将来の生産性向上を阻害する恐れがあり (Slowing trade growth will depress productivity growth in future years.)、金融政策に負荷がかかり過ぎて市場を歪めている (Monetary policy has become overburdened and is creating distortions in financial markets.) 可能性が指摘されています。ということで、後は、図表を引用しつつ、簡単に見ておきたいと思います。

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まず上のテーブルはOECDのリポートから経済見通しの総括表 OECD Interim Economic Outlook Forecasts を引用しています。今年2016年6月時点の見通しと比較して、成長率がやや下方修正されていますが、ほぼ変わりないという印象です。下方修正の大きな要因は英国のEU離脱、いわゆるBREXITであり、我が国だけでなく先進国全体に影響を及ぼしていると考えられます。日本の成長率は依然として低く、かつ、振れも小さくないが続き、円高及びアジア貿易の低迷が輸出に与える影響も原因となり、2016年は+0.6%、2017年は+0.7%の成長がそれぞれ予測されています。他方、OECD非加盟国ながら、中国、ロシア、ブラジルといった新興国は商品市況の持ち直しもあって、先進国のように成長率の下方修正はされていません。

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次に、上のグラフはOECDのリポートから Real time global value chain indicator を引用しています。世界貿易は量的に弱含んでいるとともに、貿易自由化に逆行する動きやグローバル・バリューチェーン(GVC)の弱体化が進んでいるとして、最後のGVCの指標を上のグラフで示しています。特に、GVCは中国と東アジアで弱まっていると指摘しています。

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最後に、上のグラフはOECDのリポートから A high share of government debt is trading at negative yields を引用しています。OECDはリポートで加盟各国の国債のうち35%がマイナス金利で取引されていると指摘していますが、特に、日本と欧州のいくつかの国では上のグラフに見る通り、70%を超える割合の国債がマイナス金利での取引となっています。金融市場の歪みのひとつと指摘されています。
最後の最後に、政策対応として、財政政策と構造政策抜きでは金融政策に負荷がかかり過ぎるとして、インフラ整備などの財政政策、また、グローバル化を強化する構造政策、技能向上やマッチング改善を促進する積極的労働市場政策などが重要と指摘されています。

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なお、本日、日銀から8月の企業向けサービス物価指数(SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て、ヘッドラインのSPPI上昇率は+0.2%、国際運輸を除くコアSPPIは+0.3%と、ギリギリでプラス圏を維持していますが、大きな変化は見られず膠着状態が続いている印象です。

なお、次々に国際機関の経済見通しが公表されますが、10月7-9日のIMF世銀総会を前に、本日9月27日には米国東部海岸時刻で9時に国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」World Economic Outlook の分析編 Analytical Chapters が公表される予定となっています。国際貿易、ディスインフレと金融政策、中国経済の3章立てです。明日か明後日にでも日を改めて取り上げたいと思います。

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2016年9月26日 (月)

日中関係についてのピュー・リサーチの世論調査結果やいかに?

とても旧聞に属する話題かもしれませんが、私がちょくちょく参照している米国の世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから9月13日付けで Hostile Neighbors: China vs. Japan と題して日中二国間の相互の見方についての世論調査結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。当然ながら、尖閣諸島の問題もあって、日中関係はここ10年でも決して改善を示していませんが、最悪期は脱したかという気もします。まず、ピュー・リサーチのサイトからリポートの最初の4パラを引用すると以下の通りです。

Hostile Neighbors: China vs. Japan
China and Japan - neighboring economic and military powers - view each other with disdain, harbor mostly negative stereotypes of one another, disagree on Japan's World War II legacy and worry about future confrontations.
The two East Asian nations have a centuries-old relationship, punctuated by major conflict and strife. Most recently, Beijing and Tokyo have been at loggerheads about sovereignty over a group of uninhabited islands in the East China Sea, called the Senkaku by the Japanese and the Diaoyu by the Chinese.
Today, only 11% of the Japanese express a favorable opinion of China, while 14% of the Chinese say they have a positive view of Japan. In both countries positive views of the other nation have decreased since 2006.
Sino-Japanese antipathy can also be seen in a regional context. Influenced by history, economic ties and current events, Asian publics' views of each other vary widely.

諸事情あって、今夜のエントリーの取りまとめが遅い時間帯になってしまいましたので、ピュー・リサーチのサイトからいくつかグラフを引用しつつ、かんたんに取り上げておきたいと思います。

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あず、上のグラフは最近10年の日中両国間で相互にどう相手国を見ているかの推移です。グラフのタイトルは、Japanese and Chinese hold negative views of each other となっています。見れば明らかですが、両国ともに相手国に対する見方は Unfavorable が80%を超え、逆に、Favorable が10%台となっています。まだまだながら、あえて好意的に解釈すれば、両国間で反目し合う最悪期は脱したかもしれません。

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次に、日中の相手国に対する見方です。グラフのタイトルは、Japanese views of Chinese turn more negative over past decade 及び Changes in Chinese views of Japanese と題されています。この10年で、ナショナリスティックという評価こそ両国で低下しましたが、近代的や勤勉といった肯定的な評価が低下した一方で、傲慢とか暴力的といった否定的な評価が増加しています。

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最後に、1930-40年代の我が国の軍事行動に対する謝罪が十分かどうかに関する世論調査結果で、Roughly a quarter of Japanese believe they have not apologized sufficiently for World War II 及び Chinese unchanged in belief that Japan has yet to sufficiently apologize for actions during World War II と題されています。日本人自身もまだ直近で4人に1人が不十分と回答していますが、過半数の日本人は十分と考えているようです。もっとも、中国人の中では80%近い割合の人々が謝罪は不十分と受け止めているようです。私は決して右派ではないんと自分自身を位置づけているんですが、どこまで謝罪すればいいんでしょうか?

先週金曜日の9月23日に明らかにされた言論NPOによる「第12回日中共同世論調査」の結果もかなり似たような傾向を示していると私は受け止めています。なお、明らかに外交関係に関する世論調査を取り上げた記事でありながら、かなり無理やりですが、経済評論のブログに分類しておきます。

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2016年9月25日 (日)

シルバー・ウィークを終えて9月25日の雑感、宮部みゆきの『模倣犯』と『楽園』のドラマ化など

お彼岸を含む先週のシルバー・ウィークを振り返ります。
まず、よく読書しました。プールにも通いました。要するに、いつもと同じ休日だった気がします。でも、これだけ雨が降ると困ったものでした。自転車での移動に支障を来します。

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特筆すべきイベントとして、宮部みゆき『模倣犯』がテレ東でドラマ化され、9月22日23日と二夜連続で放送されました。私は宮部作品では直木賞受賞の『理由』や『火車』などもさることながら、『模倣犯』が最高傑作だとみなしています。それから、2002年に森田芳光監督作品として「模倣犯」の映画がヒットしたのは情報として知っているんですが、何せ、我が家はその年は南の島のジャカルタでのんびりと過ごしていましたので、映画「模倣犯」は見ていません。主人公の前畑滋子は映画では木村佳乃が演じたのは知っています。今回は中谷美紀でした。何となくよく似たラインかもしれません。テレビの前にかじりつきで、どっぷりと浸かっていたわけではありませんが、やっぱり、最後のテレビ局内のシーンは迫力ありました。でも、あんなにお昼の時間帯だったのでしょうか?
また、この続きで『楽園』という宮部作品があって、同じ主人公を配して『模倣犯』の9年後という設定らしいですが、WOWOWでドラマ化されるそうです。前畑役は仲間由紀恵が演じます。2017年1月スタートで6回の放映と報じられています。ところが、私はさすがに『模倣犯』はよく覚えているんですが、『楽園』はすっかり忘れました。読んだことがあるのは確かです。もう一度読みたいと思っています。

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2016年9月24日 (土)

今週の読書も盛り沢山にペースダウンできず!

今週の読書は、月曜日にアップした話題の小説3冊を別にしても6冊でした。経済書と教養書と小説と新書です。新書はなぜか、日本会議についてでした。月曜日にアップした3冊の小説を含めると計9冊になります。シルバー・ウィークでお休みが多いとはいえ、少しこれからはペースダウンしたいと思います。

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まず、藤井聡『国民所得を80万円増やす経済政策』(晶文社) です。現在の安倍総理は民主党政権から政権交代した際に、いわゆる「3本の矢」で有名なアベノミクスを提唱しましたが、昨年9月に自民党の総裁に再選された際、「新3本の矢」として、その最初に名目GDP600兆円を打ち出しました。その名目GDP600兆円を労働分配率などを無視して、国民1人あたりの所得で引き直すと、本書のタイトルのように1人当たり80万円の増加、ということになります。そのための提案として、本書冒頭のはじめにのp.7で5項目上げられています。すなわち、消費増税の延期、所得ターゲット政策、デフレ脱却、デフレ脱却までの財政拡大、デフレ脱却後の中立的な財政運営、の5点です。そして、昨年の国際金融経済分析会合に招かれたスティグリッツ教授とクルーグマン教授の説を援用しています。ほぼ金融政策が無視されていて、実物経済における財政政策だけが重視されているのがやや不思議ですが、かなりイイ線行っていると私は思います。本書でも指摘されているように、自国通貨建ての国債発行はかなり膨らんでも、ソブリン・リスクとしては破綻の懸念は極めて低いと私は考えています。その昔から、私は財政再建には否定的な財政に関しては能天気なエコノミストだったんですが、本書の指摘はこの点だけはかなり正しいと受け止めています。我が国が財政破綻するリスクは極めて小さいのは確かです。ただ、金融市場のボラティリティが急速に高まる場合もありますから、一定の収束点は追求する必要があります。いずれにせよ、デフレを実物経済現象に偏って分析している点が気になるものの、本書はかなり正鵠を得た政策提案ではないかと私は考えています。なお、今年2016年5月28日付けの読書感想文で立命館大学の松尾匡先生の『この経済政策が民主主義を救う』を取り上げましたが、基本的な主張は同じです。この経済政策を左派が実行して憲法改正を阻止しなければならない、というのが松尾先生の主張でした。

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次に、譚璐美『帝都東京を中国革命で歩く』(白水社) です。今年2016年5月8日付けの読書感想文で岩波新書の『京都の歴史を歩く』という歴史書を取り上げましたが、よく似た趣向だという気がします。でも、本書は地図こそ豊富に紹介していて、どうも著者自身はホントに歩いたような気配がうかがえるんですが、「歩く」ことは重視されていないようで、そういった本文中の記述はほとんどありません。ということで、明治維新の成功と日清・日露戦争の勝利という目をみはるような日本の躍進の一方で、1905年には中国で科挙制度が廃止され、こういった事情も手伝って、明治・大正の東京では中国から多くの亡命者や留学生を受け入れていたようです。特に、近代的な軍制を重視する中国ながら、欧米では軍学校、すなわち、陸軍士官学校や海兵学校に中国人を受け入れる日本が海外留学先として選ばれたようですが、本書では早稲田大学をはじめとする高等教育機関に受け入れた留学生や亡命者だけを取り上げています。解像度はかなり低くて、特に古い地図は同じようなのばっかりですが、かなり多くのカラー写真が取り込まれていますし、章ごとに関連する中国人留学生や亡命者の住まいの地図が示され、それなりにビジュアルに仕上がっています。でも、例えば、p.58の蒋介石の下宿先周辺地図など、どうも南北の上下が反対ではないかと疑わしい地図もあったりします。肩も凝らずに、気軽に読める教養書かもしれません。

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次に、エドワード O. ウィルソン『ヒトはどこまで進化するのか』(亜紀書房) です。著者は米国の生物学者であり、ドーキンス教授やグールド教授などとともに、現在正靴学界でももっとも影響力の大きい大先生ではないかと思います。生物学の世界は私の大きく専門外ですので、実はよく知らないんですが、この3人くらいは私もご尊名を存じ上げています。物理学会のホーキング教授やかつてのカール・セーガン教授などと同じランク、と私は考えています。本書は The Meaning of Human Existence の原題で2014年に出版されており、本書には長谷川眞理子先生の解説が付け加えられています。なお、著者のウィルソン教授は社会生物学の創始者とされており、本所でも狭い意味の生物学にとどまらず、人文科学も視野に入れた議論が展開されています。例えば、最近の心理学などの知見からは、人類が進化したのは、社会的知能を身体的能力とともに進化させ、集団の生存率を高めたためだといわれており、要するに、人間は人間に魅力を感じるからこそ、物語やゴシップやスポーツを好むということになります。ですから、同族意識があるからこそ仲間内で協力もするが、その同族意識は集団外への攻撃、つまり現在も頻発するテロや紛争の源泉ともなる可能性があるというわけです。それを難しい生物学の用語で表現すると、包括的適応度の限界から、データ本位の集団的遺伝が取って代わるべきである、ということになります。補遺に収録されているPNAS論文はそれを明らかにしており、原著論文へのリンクは以下の通りです。

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次に、門井慶喜『ゆけ、おりょう』(文藝春秋) です。作者は前作の『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補にもなった新進気鋭の時代小説作家です。この作品はタイトルから判る通り、おりょうを主人公にしていて、そのおりょうとは坂本龍馬の妻なわけです。もちろん、上の本書の表紙画像から連想される通り、有名な日本で初めてのハネムーンとか、京での寺田屋事件なども詳しく取り上げられています。ただ、おりょうが主人公ですから、龍馬との出会いの前から、軽くおりょうの人生が振り返られており、まるで、終盤に差しかかったNHK朝ドラ「とと姉ちゃん」のように、気丈に家族や幼い弟妹を守る姿が描かれています。おりょうはいうまでもなく京女なんですが、その昔の男についていくタイプの女性としては描かれていません。たぶん、東山彰良だと思うんですが、何かの小説で「中国の女性は気が強い」といった旨の評価を見た記憶があるんですが、その東山流の「中国女性」のような気の強さをおりょうは見せています。口が達者で、ものすごく酒に強く、したたかに生きる幕末の女性がここにいます。龍馬に対するおりょうの評価は厳しく、最初のころは頼りないと思いつつも結婚した龍馬が、実は、日本を動かす英雄と成長していく中で戸惑いながらも、自分なりのやり方で龍馬を愛し、また、夫を支える姿は共感を呼ぶんではないでしょうか。最後に、おりょうと龍馬が結婚していた期間はそう長くはないわけで、龍馬が死んだ後の落魄したおりょうの後半人生についても著者は温かい目で描き出しています。でも、残念ながら、デビュー作を超えるものではありません。

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最後に、菅野完『日本会議の研究』(扶桑社新書) と山崎雅弘『日本会議』(集英社新書) です。急に思い立ったわけでもないんですが、日本会議に関する新書を2冊ほど読みました。日本会議とは現内閣を支える勢力のひとつであり、憲法改正や靖国神社問題などでウルトラ右派の活動を続けている団体です。私は明確に自分を左派だと認識していますので、こういった団体には馴染みがなく、それなりに新鮮な情報が多かった気がします。『日本会議の研究』はほぼ人脈情報に限定して情報収集している雰囲気なんですが、何といっても扶桑社からの出版というのに驚きます。扶桑社とはメディアの中でももっとも右派的なフジサンケイ・グループの出版社です。集英社の方は人脈や組織を始めとして、広範な情報を網羅していますが、全体的にやや薄い気がしないでもありません。ということで、前にもこのブログで私の考えを明らかにしたことがあるような気がしますが、保守主義とは歴史の進歩に棹さす勢力であり、フランス革命の前後では民主主義を否定して王政を擁護し、社会主義・共産主義に進もうとするマルクス主義を否定します。ですから、保守主義の反対は進歩主義であり、もっとイってるのが急進主義です。逆に、歴史の進歩を否定するだけでなく、逆行させようとするのが反動ないし懐古主義・復古主義です。日本会議はこの最後のカテゴリーかと受け止めています。もう少し踏み込んで、人脈だけでなく、金脈、というか、資金源なども明らかにして欲しいところです。

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2016年9月23日 (金)

2008SNA対応による名目GDPの上振れは20兆円近く!

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週木曜日の9月15日に内閣府から
「国民経済計算の平成23年基準改定に向けて」と題するアナウンスがなされていて、基準年の改定に合わせた国連の2008SNA基準への準拠により名目GDP水準が約20兆円増加するとの公表がなされています。
すなわち、現在の2005年基準から2011年基準に基準年を改定するとともに、1993SNAから2008SNAに対応を進め、その結果、それまで中間投入とされていた民間企業の研究・開発(R&D)を固定資本形成=投資とみなしたり、政府消費だった防衛装備品も同様に固定資本形成=公共投資と同じ扱いに改めたりして、約+19.8兆円、改定前GDP比で+4.2%の上振れが生じる、と明らかにしています。

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上のテーブルは内閣府の公表資料のp.9を画像化して引用しています。5年前の2011年時点の計数ですが、名目GDP471.6兆円が491.4兆円に+19.8兆円の増加になるんですから、アベノミクス新3本の矢の1番目で掲げた名目GDP600兆円を目指す現内閣には朗報かもしれません。

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2016年9月22日 (木)

消化試合ながら藤浪投手が1失点完投勝利!

  HE
阪  神000101020 480
広  島000000001 151

すでに優勝を決めた広島、そして、クライマックス・シリーズ出場の亡くなった阪神と、完全な消化試合ながら、藤浪投手が1失点完投勝利でした。来年につながることを期待します。
ところで、日本ハムとソフトバンクの首位攻防第2戦はどうなってるんですかね?

来年は、
がんばれタイガース!

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「2016年広島東洋カープ優勝の経済効果」やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、9月7日付けで関西大学宮本名誉教授の推定による「2016年広島東洋カープ優勝の経済効果」の結果が明らかにされています。広島県だけでしめて約331億4,916万円と推計されています。そして、「阪神タイガースや読売ジャイアンツには及ばないものの、過去の他球団の優勝と比較しても、非常に大きな経済効果である」と結論しています。

ただし、ややケチいことに、詳細な推計方法や分析結果はウェブサイトには掲載せず、個別に関西大学まで連絡する必要があるようです。宮本教授のこういった推計は研究成果ではないことが明確にされた瞬間のような気がします。

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2016年9月21日 (水)

3か月振りに赤字を記録した貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から8月の貿易統計が公表されています。季節調整されていない原系列の統計で、輸出額は前年同月比▲9.6%減の5兆3163億円、輸入額は▲17.3%減の5兆3350億円、差し引き貿易収支は▲187億円のわずかな赤字となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の貿易収支、3カ月ぶり赤字 187億円
財務省が21日発表した8月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は187億円の赤字だった。貿易赤字は3カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想は2000億円の黒字だった。円高の影響で輸出入ともに減少が続いていることに加え、8月はお盆休みなどによる工場の稼働停止の影響から輸出額が落ち込んだ。
輸出額は前年同月比9.6%減の5兆3163億円にとどまった。減少は11カ月連続。8月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=103.24円と、円が対ドルで前年同月と比べて16.8%上昇したことが響いた。
米国向けの自動車、鉄鋼で韓国向けの鋼板製品が減った。地域別では米国が14.5%減、中国を含むアジアは9.4%減だった。
輸入額は17.3%減の5兆3350億円と20カ月連続で減少した。サウジアラビアからの原粗油、カタールからの液化天然ガス(LNG)などの減少が目立った。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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上のグラフを見ても明らかな通り、季節調整していない原系列の統計では、まだ時折貿易収支が赤字を記録するものの、トレンドに沿った季節調整済みの系列ではほぼ貿易黒字が定着したように見受けられます。もちろん、まだ、国際商品市況の石油価格安に起因した輸入額の落ち込みによる貿易黒字であり、その意味で、どこまで持続性があるかは不安なしとしませんが、中国を除く地域別・国別や財別の貿易動向を見る限り、リーマン・ショック前までいかないとしても、震災以降の貿易赤字からは脱したと考えるべきです。ただ、引用した記事にもある通り、輸出も輸入も数量ベースでは前年同月比で増加を示しているにもかかわらず、為替が円高に振れた影響で輸出額と輸入額がマイナスを記録しています。円高は企業収益に悪影響をもたらし、物価の下押し圧力となり、もちろん、貿易にも自国通貨建てで見て縮小効果をもたらします。インフレ目標とともに、金融政策当局には為替も視野に入れた政策運営が求められるのはいうまでもありません。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、BREXITによる公表取りやめが解除され、OECD先行指数との対比も復活しました。円高の価格効果への悪影響はまだ残るものの、所得効果の基となる海外需要は最悪期を脱しつつあるのが見て取れると思います。特に、中国については急速に回復する可能性を示しています。繰り返しになりますが、地域別・国別や財別の貿易動向を詳細に検討して、そろそろ我が国の輸出数量も増加する局面に達しつつあると私は考えています。

最後に、日銀は金融政策決定会合にて、ビミョーなレジーム・チェンジを行い、金融政策の操作目標をマネタリーベースから、長期金利の低め誘導によるイールドカーブ・コントロールへシフトしました。というか、シフトではなく、マイナス金利と同じく操作目標が追加されたということのようです。バーナンキ議長のころの米国連邦準備制度理事会(FED)もいわるゆるツイスト・オペレーションによって長めの金利を低め誘導しようと試みましたが、意図としては同じではないかという気がします。ただ、国債のストックが急速に減少するという意味で、量的緩和が長期戦に適さないので、色々と考える必要がありそうです。

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2016年9月20日 (火)

厚生労働省「所得再分配調査」の結果やいかに?

先週木曜日9月15日に厚生労働省から3年に1度の調査である「所得再分配調査」の2014年調査の結果が公表されています。より詳細なpdfの全文リポート「平成26年所得再分配調査報告書」もアップされています。格差拡大で注目されているジニ係数は当初所得で0.5704に上り、前回調査の2011年の0.5536から上昇しましたが、再分配後の所得のベースでは逆に2011年0.3791から2014年は0.3759に抑えられています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

所得格差、高齢者増加で34.1%縮小厚労省が再配分調査
厚生労働省が15日発表した所得再分配調査によると、税金や社会保障制度を使って低所得層などに所得を再分配した後の世帯所得の格差を示す「ジニ係数」は2013年に0.3759となった。再分配前の所得でみた係数より格差は34.1%縮小しており、改善度合いは過去最高だった。年金や医療で給付を多く受ける高齢者の増加で再分配機能が強まっている。
ジニ係数は0-1の間の数値で表され、所得がどれだけ均等かを示す。1に近いほど格差が大きいことを意味する。所得再分配調査はおよそ3年に1度、前年の所得を対象に実施している。
再分配前の当初所得のジニ係数は0.5704で、前回調査の10年(0.5536)を上回り過去最高になった。主な要因が高齢者世帯や単身世帯の増加だ。共働き世代などと比べて所得が低いため、格差が広がる結果となった。
再分配後の所得格差を示すジニ係数は前回調査の0.3791から0.0032ポイントとわずかに改善した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。今夜のエントリーではいくつかグラフを書いてみましたので、私の従来からの主張である高齢者優遇というか、年齢階級別の格差にも着目しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、昭和の昔にさかのぼって、1981年からの3年おきのジニ係数の推移は上のグラフの通りです。黄色が再分配前の当初所得のベースのジニ係数であり、2005年以降は0.5を超える水準で推移し、25年近くの間一貫して上昇を続けていますが、赤の再分配後所得のベースのジニ係数は直近の2014年でも0.4をわずかながら下回る水準に抑えられています。ということは、青い折れ線で示した税や社会保障による不平等の改善度が高まっているわけで、2011年調査から30%を超えており、2014年調査では34.1%に達しているのは、引用した記事にもある通りです。

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ただ、この当初所得の不平等が改善される度合いは、仕方ない面もありますが、高齢者に偏っています。上のグラフはそれを示しており、年齢階級別に見た所得再分配前後のジニ係数をプロットしています。青い折れ線が再分配前の当初所得ベースの年齢階級別ジニ係数であり、赤は再分配後です。いずれの年齢階級でも再分配後所得のベースではジニ係数は当初所得ベースよりも低く抑えられており、不平等の度合いが改善されているのは明らかですが、特に60歳以上層で改善の度合いが大きくなり始め、75歳以上では当初所得ベースで0.8に近いジニ係数が半分以下の0.4足らずに抑えられています。ある意味で、高齢者の不平等度合いが不釣り合いに偏って改善されている、ともいえますし、逆に見て、再分配しない当初所得ベースの高齢の引退世代の不平等が、勤労世代に比べて極めて高く、我が国はこの引退世代の増加に伴う高齢者数の増加により、見かけ上、不平等が進行している、ともいえます

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もっとも、高齢者に多くの財政リソースがばらまかれていることも事実であり、上のグラフは年齢階級別に見た再分配前後の所得をプロットしています。年齢階級別に見て、緑色の折れ線が当初所得、水色が再分配後所得、黄色の棒グラフがその差額の比率である再分配係数です。正負の符号で見て、60歳に達しない勤労世代は一貫してマイナスの取られる側になっているのに対して、60歳以上の引退世代はもらう側になっていて、しかも、年齢が高くなるほどもらう比率が高くなっています。財政リソースはい勤労世代から徴収して高齢者に支払われる構造になっているのは、一定の範囲で仕方ないにしても、世代間の不平等感をもたらさない範囲で行われるべきであることはいうまでもありません。

我が国では、雇用との関係で、ついつい、正規雇用と非正規の格差とか、地域振興の関係で大都市と地方の格差とか、ソチラの方の格差に目を奪われがちですが、生まれた時代による不平等は、本人にはどうしようもないことなので、こういった格差や不平等は是正されて然るべき、と私は考えています。

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2016年9月19日 (月)

3連休に読んだ小説3冊の読書感想文!

土曜日に阪神のBクラスが確定し、ついつい、この3連休はまたまた読書にいそしんでしまいました。最近の人気作家の小説を3冊読みました。とてもめずらしいことなんですが、3冊とも買い求めました。図書館から借りたわけではありません。

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まず、池井戸潤『陸王』(集英社) です。この作者の作品は私もかなり読んできたつもりで、ほぼいつものパターンの作品といえます。まあ、『下町ロケット』のシリーズと構図は変わりません。それなりに技術力ある中小企業とライバル企業、そして銀行とか技術の提供者やサプライヤーの人間関係とか、経済合理性とか、日本的な経営を持ち上げて、米国的なMBA流の経営を否定せんがごとき仕上がりになっています。最初は、創業100年超の足袋メーカーが地下足袋のようなランニング・シューズを開発するところから始まります。ランニング・アドバイザー、大手ライバル企業をクビになったシュー・フィッター、さらには、シューズのソールの素材を提供する起業家、もちろん、地元の取引銀行も相まって、独特の「池井戸節」のようなものを奏でています。それにしても、やっぱり、中小企業で新規事業が成功するのは、この作品くらいの極めてありえないような幸運が何重にも重ならないとなし得ないんだと、しみじみと感慨にふけってしまいました。諸条件が有利だったとはいえ、ソニーやホンダやパナソニックやといったカリスマ経営者が立ち上げて大企業に発展するのは、極めてまれな例外的ケースなんだろうと思います。でも、それをこういった形で小説に取りまとめると、それなりに感動が生まれます。でも、こういった中小企業の成功談はまれな例であって、小説は事実よりも奇なんではないか、という気がしないでもありません。終わり方がスッキリしているわけではないので、続編があるのかもしれません。

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次に、東野圭吾『危険なビーナス』(講談社) です。殺人事件があって名探偵が謎解きをするという形ではないものの、さすがに、一種のミステリですので、この作品は従来の東野作品と同じというわけにはいきません。そのあたりが、池井戸作品と東野作品の違いかもしれません。というわけで、獣医の兄が行方不明になった異父弟を彼の妻とともに探すミステリです。大金持ちの病院経営一族の遺産相続がからんで、失踪事件は複雑怪奇な展開を見せますが、最後は極めて論理的に解決されます。特に、延々と謎解きを展開する名探偵役はいないんですが、半分を少し過ぎたあたりから玉葱の皮をむくように、少しずつ新装が明らかになる方向に向かいます。でも、出版社のサイトかどこかで「どんでん返し」であるといった紹介を見た記憶があるんですが、私はジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムとアメリア・サックスのシリーズを読んでいますので、それほど大きなどんでん返し、すなわち、事件が解決したと考えられる段階に達してから、さらにカウンター・ファクトが発見されたり、被害者と加害者が実はまったく入れ違っていたり、というような強烈などんでん返しではないように受け止めいました。でも、最後の最後に、それまで謎とされていて、解釈のつかなかったいくつかの事実が解明され、とても読後感は爽やかです。『陸王』と違って、キャラ立ちがとても鮮やかです。

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最後に、宮部みゆき『希望荘』(小学館) です。杉村三郎シリーズの最新作です。前作で今多コンツェルンの妾腹の令嬢と離婚し、一時は郷里の山梨に戻っていた杉村三郎が、いろいろな経緯を経て東京に戻って探偵事務所を解説し、さまざまな事件を解決するというストーリーです。いままで、このシリーズはすべて長編だと記憶しているんですが、この作品は連作短編集です。4編の短編ないし中編から編まれています。必ずしも時系列で陣番に並べてあるのではなく、3番目に置かれている「砂男」が山梨のころの物語です。砂男とは本書でも言及されますが、メタリカの「エンター・サンドマン」のことで、まあ、怪物です。サイコパスとして描き出されています。メタリカの曲はヤンキースの21世紀の黄金時代にクローザーを務めたリベラ投手の登場曲でした。ということで、いかにも宮部作品らしく細部に渡ってビッチリと記述されており、今回の作品では、杉村三郎の置かれた境遇が前作から大きく変化し、山梨での事件も収録されていますから、特に長くなっています。読後感のいいミステリだけではないんですが、この宮部作品のシリーズは1作目の『名もなき毒』の姉妹の関係から、どうしても毒々しいイヤミスに近い作品が多くなっています。でも、宮部ワールドは全開です。私のような宮部ファンはぜひとも読んでおくべき作品です。

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2016年9月17日 (土)

横浜に逆転負けしてBクラス確定!

  HE
横  浜00004020 690
阪  神200000100 381

能見投手が筒香選手の逆転打に沈んで、横浜に逆転負けしてBクラス確定でした。今年の超変革野球はシーズン当初5月くらいまでしか野球が楽しくありませんでした。

来年は、
がんばれタイガース!

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今週の読書は重厚な経済書をはじめとして計8冊!

今週の読書はかなり重厚な経済書をはじめとして計8冊です。まったくペースダウンできません。8冊ということになれば、1日1冊を少し上回るペースで読んでいることになり、土日なんぞがそうなっているわけですが、いくらなんでも、もう少しペースダウンしたいと思いますし、特に今週は経済書、それもボリュームもあれば、内容も高度で専門性高く重厚な経済書が何冊かあり、それ以外にも一般教養書とかで、とうとう図書館の予約の巡りのせいで小説が1冊もありません。この連休には少し小説を読みたいと予定しています。

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まず、岩田一政ほか[編著]『マイナス金利政策』(日本経済新聞出版社) です。著者は日経センター理事長で前の日銀副総裁です。きちんとした金融政策の解説書です。サンフランシスコ連銀のLaubach-Williamsモデルに基づく自然利子率の計測も示されています。日銀のマイナス金利につては、日銀のサイトの「5分で読めるマイナス金利」がそれなりによく出来ているんですが、さすがに、多くのビジネスパーソンやエコノミスト向けには本書の方がむしろ判りやすい気がします。上の本書の表紙画像にある通り、3次元で量と質とマイナス金利なんですが、私自身はマイナス金利は量的緩和が必ずしも想定通りに物価目標を達成できなかったためであると、やや厳し目に見ています。というのは、現在の日銀執行部が国会での質疑を受けた際に、現在の岩田副総裁が2年で目標を達成できなければ辞任すると大見得を切りましたが、まさに、兵力の逐次投入をヤメにして一気に短期間で勝負を決めるべきだったにもかかわらず、言葉の綾ですが、量的緩和での物価目標達成に「失敗」したわけで、もちろん、国際商品市況における石油価格の大幅下落という想定外の海外ショックが大きな要因ではあるものの、2年間の期間が量的緩和としてはいっぱいいっぱいだったような気がします。というのは、現在は年間80兆円で国債を買い上げているんですが、これだけのペースでオペを進めると、かなり短い期間で支柱の国債ストックが大きく減少するからです。そして、量的緩和で「失敗」すれば、後はマイナス金利しか残らないのは欧州の経験から明らかです。国債ストックがなくなりそうだという議論との関係で、量的緩和の国債買い入れペースをスピードアップするのはムリですので、来週に開催される日銀の金融政策決定会合で追加緩和措置がとられるとすれば、マイナス金利の深掘りであろうと私は予想しています。それから、長期停滞論 secular stagnation との関係で自然利子率が推計されています。状態空間モデルを組んでカルマン・フィルターで解くようです。私も何度かカルマン・フィルターは用いたことがあり、それなりにプログラミングも出来たりします。何かやってみようかという気にならないでもなく、いくつか基礎的なペーパーを読み始めたりしています。出足の遅い研究者であることは自覚しています。

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次に、 スティーヴン D. レヴィット/スティーヴン J. ダブナー『ヤバすぎる経済学』(東洋経済) です。著者は『ヤバい経済学』Freakonomics で一躍有名になった経済学者とジャーナリストです。シリーズとして同様の書籍が何冊か出版されているようですが、本書は2人が運営しているブログの記事をテーマ別に編集し直して章立てしてあります。英語の原題は When to Rob a Bank であり、本書の第9章と同じとなっています。ブログ記事そのままですから学術論文とは違って定量分析はなく、社会経済的な出来事、特にマイクロな分野の経済学的な解釈を行おうとするもので、いくつか仮説を立てて理論的な説明を試みようとしています。それが伝統的なマーケット分析だけではなく、というか、マーケット分析では決してなく、環境問題への対応などはまだしも、テロやタイトルにも取っている銀行強盗を含む犯罪行為の原因やその応用たる防止策の考察、また、その他の幅広い社会経済現象に対して、いわゆるインセンティブへの反応を合理的な人間行動の原理として解き明かそうと試みています。しかしながら、本書でもセイラー教授やカーネマン教授などの行動経済学者の説も取り入れつつ、レヴィット教授の勤務するシカゴ大学の合理学派一辺倒ではなく、それなりの広がりを見せた仕上がりとなっています。まあ、そろそろこのシリーズも、少なくとも経済学の専門家でない一般読者には飽きられつつあるような印象もあり、このラインで10年はよくもった気もします。経済学そのものが、『ヤバい経済学』が出版された以降のこの10年でかなり進歩したと私自身は実感していますので、このシリーズもおそらく何らかの進歩を取り入れるんだろうという気がします。行動経済学の要素なのかもしれません。

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次に、中澤克佳・宮下量久『「平成の大合併」の政治経済学』(勁草書房) です。著者はともに公共経済学の分野を専門とする研究者であり、まえがきにある通り、本書の特徴は、「意思決定」、「合意形成」、「財政規律」という3つのキーワードに基づいて「平成の大合併」を定量的に分析している点にあります。そもそも、平成の大合併とは明治の大合併と昭和の大合併に続く第3の市町村合併を中央政府が促進したムーブメントであり、明治や昭和に比べて市町村数の減り方が少なかったのは強制性が大きく低下しているからであると分析されています。その上で、中央政府が目指したスケール・メリット、規模の経済が結果として得られたかどうか、また、合併に至る経緯で、どのような属性の市町村が合併に前向きだったのか、などを定量的に分析しています。分析結果は多岐に渡るんですが、少なくとも財政状態に関しては、フローの財政とストックの財政で整合性ない結果が示されているなど、現状で平成の大合併がどこまで定量的に評価できるのか、疑問に感じる点も存在します。他方で、上位政府出身者の市町村長、すなわち、国家公務員や県職員などが市町村長を務めている場合は合併を選択する確率が高かったり、合併前に地方債を発行して合併後の規模を大きくした自治体に返済をつけ回すフリーライダーの傾向が見られたりと、いくつかの点では世間一般の評価と一致する分析結果も定量的に得られています。また、格差の点では、本書で初出というわけではないものの、市町村ごとにジニ係数を算出した細かな評価も試みられており、それなりに政治経済学的な分析としては受け入れられる結果だという気がします。ただ、いかんともしがたいのは現時点でここまで焦り気味に早期の評価を下す必要があるかどうかです。本書では、書き下ろしの冒頭第1部に比べて、第2部からは学術雑誌などに投稿された本格的な論文の体裁となっていて、データやモデルの提示などが詳細に渡っているんですが、第4章からのモデル選択の赤池情報量基準(AIC)を見ても、不勉強にして、私はここまで大きなプラスのAICは経験ありません。いろいろな研究には諸事情あることと思いますが、やや研究としてはいわゆる「生煮え」の部分が残されているような気がしてなりません。もちろん、著者たちも「中間報告」的な研究成果との位置づけを受け入れているようで、今後の議論の土台としては貴重な分析結果と評価することは出来そうです。

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次に、 ロバート F. ブルナー/ショーン D. カー『金融恐慌1907』(東洋経済) です。著者2人はともにバージニア大学ビジネススクールの研究者で、本書は英語の原題も邦訳そのままに2007年に我が国でも訳書が出版されています。その後、サブプライム金融危機のパートを書き加えて、今年新たに訳出されているようです。タイトルの通り、米国における1907年10月からの金融危機、ユナイテッド銅社に端を発する金融危機について、ジョン・ピアモント・モルガンを中心に、最後の貸し手たる中央銀行が存在しなかった米国金融界のパニック収拾についてドキュメンタリーを構成しています。英国の中央銀行であるイングランド銀行の創設が17世紀末で、バジョットが『ロンバート街』で中央銀行に関するルールを確立したのが19世紀後半ですから、米国の中央銀行たる連邦準備制度理事会(FED)が創設されてまだ100年ほどというのは意外ですが、その米国に中央銀行がない時代、しかも、製造業に加えて農業の収穫も金融に大きな影響を及ぼした時代の恐慌の歴史を明らかにしています。その際に、著者たちがモデルとして考えているのが「完璧な嵐」 perfect dtorm であり、以下の7点を要素として想定しています。すなわち、(1)複雑極まりない体系的構造、(2)バブル的な急速な経済成長ととの反動、(3)不十分な銀行資本バッファー、逆から見て、高いレバレッジ、(4)不確実性の高い政策を採用するリーダー、(5)金融システムを源とする実体経済へのダメージ、(6)過度の恐怖や極端な行動による負のスパイラル、(7)不十分な集団的アクション、あるいは、集団的アクションの失敗、ということになります。ただし、別のところで著者たちも認めている通り、1907年恐慌の最大の要因は流動性供給に融通が利かない金本位制に起因する部分も決して少なくないことから、2007-08年ノサブプライム金融危機とどこまで同じか、異なるかについては議論の別れるところだという気もします。もちろん、流動性供給に融通の利くフィアット・マネー・システムでもあれだけの金融危機が生じたわけですから、金融システムというものの脆弱性は筋金入りで折り紙つきかもしれません。

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次に、竹中平蔵[編著]『バブル後25年の検証』(東京書籍) です。一応、今年3月だか、4月だかの出版ですが、2013年に慶応大学で連続セミナーを実施した折のメモを起こしたものであり、章により最新情報にアップデートされているものと、まったくそうでないものがあります。アップデートされているかどうかは別にして、特に読んでためになるのは第2章の金融政策と第10章の消費者行動ではないかと思っています。おそらく、短期的には景気循環への影響がもっとも大きいのは金融政策であり、バブル崩壊後に日銀が金融政策を誤って不況を大きく長くした「罪と罰」は、こういったタイトルに関して議論する場合に大いに考えておくべきポイントです。バブル経済やバブル崩壊と関連する金融政策の選択肢はいくつかあるわけですが、当時の日銀のように、ともかくバブル経済を招かないという点に最優先のプライオリティを置くのは、政策運営としては簡単で、金融政策を引き締め気味にして、ギューギューに経済を下押ししておけばいいわけです。まさに、そのために長期不況が続き、日本経済はデフレにまで陥ったわけです。ですから、私の考えるバブル対応の要諦としては、バブルを招かないギリギリまで成長率を引き上げるか、あるいは、本書でも何人か主張している通り、バブルがステルスで認識されないとすれば、バブル崩壊が認識されると時を置かずに大規模な金融緩和に踏み切る、ということだと認識しています。それから、バブル経済の時点あたりから消費のあり方が変化したという主張も興味深く読みました。それまでの「三種の神器」とか、「3C」などの大衆消費社会の横並び的な少品種大量の消費ではなく、個性化した消費に移行したのがバブル経済のころである、という主張はそうかもしれないと納得させられるものがありました。さらに現在では、消費のサービス化やソーシャル化が進み、従来の感覚では「消費」とはみなされない消費がそれなりの割合を占めている、というのもなるほどと思わせるものがありました。最後に、慶応大学での連続セミナーの取りまとめペーパーは以下のリンクの通りです。それほどよく確認したわけではありませんが、勝手ながら本書と中身は大きな違いがないんではないかと想像しています。

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次に、米澤潤一『日本財政を斬る』(蒼天社出版) です。著者は大蔵省・財務省のOBで、本書は、よく判らないんですが、少なくとも出版社は自費出版の取り扱いで有名な出版社だと私は認識しています。国債や財政についての歴史を中心とするエッセイであり、それほどボリュームはないので、国債発行を国民感情一般とも通じる見方で「うしろめたい」と表現しています。マクロ経済学に関する知識はバックグラウンドにあるんだろうと思いますが、主として予算平成上の実務の面から、いわゆる「財政の硬直化」として解説を加えています。統計を基にした定量的な解説ではなく、歴代大蔵大臣の発言などを中心に構成するエピソード分析ですから、まあ、それなりのバイアスはあるものと考えるべきです。ただし、そもそも1965年度の本格的な国債発行の原因として、経常収支で大きな黒字を上げていた当時の我が国に対する国際的な内需拡大要求の一環として捉えており、それはそれなりに正しい面を含む認識だと私は受け止めています。加えて、ここまで公債依存が膨らんだのは、予算や財政の制度に欠陥があったからではなく、問題は運用にあったと指摘しており、これもおそらくそうなんだろうと思います。もっとも、読み進むうちに、どうしてうさん臭さはぬぐい切れず、本書の最後にある「財政はだれのものか」に対する回答について、著者は国民のものと明記していますが、「財務官僚のもの」と読み取りかねない読者がいそうな気もします。でも、国際的にも見ても、ここまで公債残高を積み上げた国は21世紀の平和な現代ではほぼなく、それにもかかわらず、政府にも国民の間でもそれほどの危機感は見られず、公債依存が常態化しているのは少し怖い気がしなくもありません。ところで、アマゾンのレビューで3人ともフルマークの5ツ星なのは、偶然でしょうか、ホントにそうなのでしょうか、それとも何かウラがあるんでしょうか。

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次に、ジョン・マルコフ『人工知能は敵か味方か』(日経BP社) です。著者は米国ニューヨーク・タイムスをホームグラウンドとし、ビジネス部門でテクノロジーを追うジャーナリストです。1988年入社とありますので、かなりのベテランです。なお、英語の原題は The Quest for Common Ground between Humans and Robots であり、2015年の出版です。ということで、お決まりの枕詞なんですが、ここ数年で人工知能(AI)やロボットの技術はかなり進歩し、いわゆるシンギュラリティといわれる技術的な特異点が2045年、すなわち、AIが人間の能力を上回る当たりに来るんではないか、ともいわれていたりします。私のような文系の経済学部を卒業した専門外の人間でも、グーグルの自動運転車やアップルのiPhoneに搭載されたSiriなどは耳にする機会も少なくありません。ただ、英語の原題が「ロボット」となっていて、私の直観的な認識では、ハードがロボットでAIはそれに搭載するソフト、と考えているんですが、タイトル的には混乱があるようにも見えます。そのあたりをゴッチャにして、本書では、1950年代から米ソの技術開発競争、特にスプートニク・ショックなどを含めて、軍事的な分野も包含する形で米国の技術開発が進み、それくらいまで時代をさかのぼってAIやロボットの歴史をひも解いています。その意味で、どこかの新聞の書評でAIやロボットが神話だった時代からの超有名人が実名で次々と登場する点を特記していた評者がいましたが、誠に残念ながら、専門外の私にはノーバート・ウィーナとか、フォン・ノイマンとか、ごく限られた人しか判りませんでした。エコノミストとして念頭にあるのは雇用の問題であり、ロボットやAIは人間労働と補完的な関係にあるのか、それとも、代替的な関係にあってロボットやAIが人間の雇用を奪うのか、という極めてステレオタイプかつ単純な疑問なんですが、本書ではロボットやAIと人間の関係を雇用や労働との関係だけでなく、より幅広く、将来我々はマシンをコントロールするのか、それとも、マシンに我々はコントロールされるのか、という趣旨の問いを投げかけており、最終的に、その回答を決定するのは開発者や研究者ではなく、我々ユーザーであると本書は結論しているように見えます。私レベルではなく、もう少し専門的な基礎知識があれば、もっと面白く読めそうな気がします。

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最後に、池内恵『サイクス=ピコ協定百年の呪縛』(新潮選書) です。今年5月にNHKが締結100年を記念して、報道特番を組んでいたらしいです。私は興味ないので見ていません。「サイクス=ピコ協定」とは英国とフランスが、第1次世界大戦後のオスマン帝国解体と勢力圏の確保をにらんで、秘密裏に合意した取り決めであり、現在の国境線に近いといわれていて、さらにバルフォア宣言とか、イスラエル建国に関する英国のいわゆる二枚舌外交なども含めて、このあたりまでは、まあ、高校とはいわないものの、大学の1-2年生の教養レベルのお話で、本書はほぼそのレベルといえます。西欧列強が自分たちの価値観や利害で勝手に植民地などの国境線を引いてしまう例はいくらでもあり、アフリカはほとんどそうですし、アジアでもニューギニア島なんぞは不自然な直線ラインの国境で分割されていたりします。私は3年間インドネシアに駐在しましたが、北部はボルネオと呼ばれるマレーシア領で、南部はカリマンタンと呼ばれるインドネシア領、という大きな島もあります。しかし、中東が注目され、紛争も多いのは、なんといっても石油が出るからです。本書は新潮選書の中東シリーズの劈頭を飾る1冊らしいので、今後石油に関する本も出るので本書では石油の「せ」の字も出て来ませんが、まさか見逃しているわけではないでしょう。さらに加えて、18-19世紀の帝国主義に時代の西欧列強的な国家観が、民族や地域を超えて世界的に普遍に成立するかどうかも問われるべきです。すなわち、国連では領土と国民と統治機構が国家の3要件となっていると聞き及んでいますが、中東あたりで砂漠の民がラクダなどの家畜とともにアチコチに移動する際に、その昔であれば、国境とか国籍は気にしていなかった可能性が高いんではないか、と私は想像しています。加えて、私の知っている範囲でも、過激派組織「イスラム国」(IS)は「サイクス=ピコ協定以前の状態に戻せ」との主張を繰り返していますが、本書ではまったく触れられていません。まあ、この1冊では最終章でアラビアのロレンスの映画に言及してお茶を濁すくらいですから、とてもモノになりそうな気はしません。

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2016年9月16日 (金)

暑い夏から雨降る秋への季節の移り変わりをアンケートでひも解く!

明日から3連休で来週は祝日をはさむシルバー・ウィークという人も多いかと思います。それに来週は、何といっても「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるお彼岸です。いくつか、過ぎ行く夏と来る秋それぞれのアンケート結果を週末前らしく適当に拾ってみました。

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上のグラフは、マクロミル・ホノテのサイトから「2016年の夏を漢字一文字で表すと?」というアンケート結果を引用しています。28%が「暑」と回答していて、絶対多数ではないものの、相対的にかなりの差をつけてトップとなっています。地球温暖化の影響かどうか、専門外の私には判りませんが、今年の夏が厚かったことは確かです。また、ホノテのアンケート結果では、今夏に深く印象に残ったものとして、1位「リオ五輪」、2位「SMAP解散」、3位「ポケモンGO」が上げられています。判るような気がします。ところで、9月に入って少し残暑があっただけで、秋の訪れは早かったような気もします。

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暑かった夏に続いて秋の訪れが早かったように感じるのは、今週から来週にかけて秋雨前線の影響で雨が多く、8月末から9月にかけて関東を直撃する台風もいくつか上陸したからではないかと私は想像しています。ということで、上のグラフは、i-dio のサイトから雨男・雨女に関するアンケート調査の関連で、「あなたの、雨が降るジンクスを教えてください。」との問いに対する雨男と雨女の回答結果です。グラフには取り上げられていませんが、「その他のジンクス」にある通り、傘を持たないと雨に降られ、傘を持って出かけると降らない、というのはマーフィー法則にもありそうな経験ではないでしょうか。

よい週末をお過ごしください!

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2016年9月15日 (木)

文化工房調査による一番貯めているポイントTOP5やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、文化工房が運営するWB-naviのサイトの企画「1000人リサーチ」で、8月29日から9月4日にかけて、貯めているポイントに関する調査結果が連続で明らかにされています。その総括編としてお得感の高い「一番貯めているポイントTOP5」の調査結果に注目したいと思います。というか、以下のテーブルの通りで、今夜のエントリーはそれだけです。

順位
(票数)
ポイント
1位
(292票)
Tポイント
2位
(270票)
楽天スーパーポイント
3位
(100票)
Pontaポイント
4位
(72票)
Amazonポイント
5位
(55票)
WAONポイント

私はTポイントはあまり使い慣れないんですが、もちろん持っていますし、まあ、それ以外はこんなところではないかと思います。一応、「経済評論のブログ」に分類しておきます。

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2016年9月14日 (水)

優勝チームの横綱相撲に歯が立たずに逆転負け!

  HE
広  島200001021 672
阪  神100000300 461

先発の藤浪投手が初回に捉まり、ラッキーセブンに守備の乱れに乗じて一度は逆転しましたが、結局、優勝チーム広島の横綱相撲に押し切られて逆転負けでした。実力の差があまりに明らかで、今年はどうにもならないと感じさせられました。それにしても、藤浪投手がまったく勝てなくなってしまいました。大谷選手との差は開くばかり?

来年は、
がんばれタイガース!

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今日は私の誕生日!

今日は私の誕生日です。そろそろ老眼が進み、体力も衰えが目立ち、間もなく定年に達してしまいます。それでも誕生日はめでたいものだという気がします。ご賛同下さり、私の誕生日をめでたいとお考えの向きは、我が家恒例のジャンボくす玉を置いておきますので、クリックして割って下されば幸いです。

どうでもいい内輪のお話ながら、8月29日の下の倅の誕生日は忘れていたような気がします。誠に痛恨の極みです。

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2016年9月13日 (火)

法人企業景気予測調査に見る企業マインドは上向きか?

本日、財務省から7-9月期の法人企業景気予測調査が公表されています。統計のヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は4-6月期の▲7.9から上昇して+1.9を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月の大企業景況感、3期ぶりプラス 法人企業景気予測調査
財務省と内閣府が13日発表した法人企業景気予測調査によると、7-9月期の大企業全産業の景況判断指数(BSI)はプラス1.9だった。プラスは3期ぶり。自動車生産の持ち直しや政策対応による建設需要の高まりなどが寄与した。前回調査の4-6月期はマイナス7.9だった。
7-9月期は大企業のうち製造業はプラス2.9となり、4-6月期のマイナス11.1から改善した。新機種発売によるスマートフォン向け電子部品の受注増や熊本地震以降の自動車の生産増を指摘する声が聞かれた。
非製造業はプラス1.4だった。4-6月期のマイナス6.3から改善した。訪日外国人の増加で宿泊業などで観光需要が増加。公共事業予算の前倒し執行による受注増も寄与した。
先行き10-12月期の見通しはプラス4.9、17年1-3月期はプラス5.0となった。10-12月期は製造業がプラス8.6、非製造業がプラス3.0と、それぞれもう一段の改善を見込む。財務省と内閣府は総括判断を「企業の景況感は慎重さがみられるが、緩やかな回復基調が続いている」とした。
2016年度の設備投資見通しは前年度比4.9%増だった。前回調査の3.8%増からプラス幅が拡大した。経常利益は外国為替市場での円高進行が響き、6.8%減の見通しとなっている。
景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。今回の調査は8月15日時点。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIをプロットしています。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と青の折れ線の色分けは凡例の通りです。濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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今年2016年4-6月期は熊本地震や、この調査の回答日には関係しなかったであろうと想像するものの、英国のEU離脱、いわゆるBREXITの影響などで、企業の景況感も消費者のセンチメントも、4-6月期にはほぼ最悪を記録していた感がありますが、ゆっくりと反転上昇の局面に入りつつあるように私は受け止めています。すなわち、消費者センチメントについては、直近では消費者態度指数は4月40.8と5月40.9がほぼ底となり、景気ウォッチャー現状判断DIが6月の39.9を底に上昇しつつある印象です。消費者だけでなく、企業マインドについても、おそらく、4-6月期が底であった可能性が高く、この法人企業景気予測調査でも7-9月期の現状判断が+1.9と3四半期振りにプラスに転じた後、10-12月期見通しも+4.9、さらに来年2017年1-3月期見通しも+5.0と上昇する可能性が示唆されています。もっとも、引用した記事にもある通り、今後の最大の懸念材料は為替動向かもしれません。
ただし、法人企業景気予測調査のこのBSIのヘッドライン統計はあくまで大企業であり、中堅企業は大企業と時を同じくして7-9月期から景況感がプラスに転じるものの、中小企業では先行き来年1-3月期までを見通してもプラスに転じる気配すらありません。また、景況感を離れると、中堅企業と中小企業では人手不足の影響が深刻化して来ており、ここでも人材採用のより容易な大企業との格差が広がっているおそれがあります。例えば、9月末における雇用の不足超は大企業+12.6に対して、中堅企業+24.9、中小企業+20.0となっており、大雑把にいって、8社に1社が雇用不足を感じている大企業に比べて、中堅企業では4社に1社、中小企業でも5社に1社が不足を示しています。個の人手不足への対応も含めて、維持更新目的が多いものの、今年度2016年度の設備投資計画は上方改定されています。すなわち、前期調査時の+3.8%増から、7-9月期調査では+4.9%増との設備投資計画が示されています。ソフトウェアを含み、土地購入額を除くベースです。

10月早々には9月調査の日銀短観の公表が控えています。景況感にとどまらず、雇用の過不足感や設備投資計画など、より詳細な企業マインドに関する情報が利用可能になると期待しています。

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2016年9月12日 (月)

2か月連続で増加を示す機械受注とマイナス続く企業物価!

本日、内閣府から7月の機械受注が、また、日銀から8月の企業物価(PPI)が、それぞれ公表されています。機械受注は船舶と電力を除くコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比+4.9%増を示し、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲3.6%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、7月4.9%増 「持ち直しの動き」に上方修正
内閣府が12日発表した7月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比4.9%増の8919億円と2カ月連続で伸びた。QUICKが事前にまとめた民間予測(3.1%減)を大きく上回った。6月(8.3%増)に続いて比較的大きく伸びたため、内閣府は機械受注の基調判断を「足踏みがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。上方修正は9カ月ぶり
製造業の受注額は0.3%増の3677億円と2カ月連続で増えた。大型案件があった鉄鋼業は75.8%増加した。金属製品は2.1倍となった。
非製造業は8.6%増の5251億円と2カ月連続で伸びた。通信業でネットワーク機器の更新や修繕の需要が旺盛だった。金融業・保険業では金融システムでの受注があった。
前年同月比での「船舶、電力を除く民需」受注額(原数値)は5.2%増だった。
8月の企業物価指数、前年比3.6%下落 前月比は2カ月ぶり下落
日銀が12日に発表した8月の国内企業物価指数(2010年平均=100)は98.9で、前年同月比で3.6%下落した。前年比で下落するのは17カ月連続。7月確報値の3.9%下落からはやや下げ幅を縮めた。市場予想の中央値は3.4%下落だった。
前月比では0.3%下がり2カ月ぶりのマイナスだった。7月確報値は前月比で横ばいだった。液化天然ガス(LNG)通関単価の下落の影響があった電力・都市ガス・水道料金が全体を押し下げた。国際市況の低迷や円高を背景に石油・石炭製品や非鉄金属も下落。豚肉や牛肉、鶏卵など農林水産物の価格の下げも目立った。日銀は「国際商品市況や円相場の影響が引き続き大きく、国内需給要因による変動は小さい」(調査統計局)としている。
円ベースの輸出物価は前月比で1.4%下落、前年同月比で14.6%下落した。前年比の下落幅は2009年7月(15.6%下落)以来の大きさだった。輸入物価は前月比で2.4%下落し、前年比では22.0%下げた。円高進行が円ベースでの価格を押し下げた。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している814品目のうち、前年同月比で下落したのは510品目となった。上昇は232品目だった。下落品目と上昇品目の差は278品目で、7月の確報(287品目)から縮小した。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。でも、2つの統計を並べるとどうしても長くなってしまいます。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は次の企業物価上昇率とも共通して景気後退期を示しています。

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まず、機械受注の動向ですが、上のグラフのうちの上のパネルを見ても明らかな通り、コア機械受注はほぼ下げ止まったんではないかという気はします。特に、6月季節調整済み前月比+8.3%増の後の7月+4.9%ですから、反動減を予想していた市場の事前コンセンサスを大きく上回り、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」に上方改定しています。私自身は、機械受注の回復に力強さにはまだ確信が持てませんが、製造業・非製造業(船舶と電力を除く)ともに2か月連続で前月比プラスを示しており、足元の7-9月期は機械受注はプラスを記録しそうな勢いは感じられます。しかし、その後のさらに長い先行きを考えると、円高が投資にどこまでマイナスの影響を及ぼすかどうか、にかかっているような気がします。加えて、政策効果がどのように企業マインドや設備投資に現れるかも注目したいと思います。

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次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネから順に、は国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率、最後に、輸入物価のうちの円建て原油価格指数を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。企業物価(PPI)はようやく下げ止まって来たと受け止めています。ただ、まだ▲4%近い下落ですので国際商品市況における石油価格次第とはいえ、ゼロ近傍ないしプラスに戻るのには少し時間がかかる可能性があります。7月の統計でも、国内物価を前月比で押し下げた寄与度の大きい品目の筆頭は電力・都市ガス・水道の▲0.10%であり、その次は石油・石炭製品の▲0.04%だったりします。加えて、円相場の水準も円高に振れており、輸出入物価をダイレクトに、そして国内物価も間接的に、それぞれ引き下げる作用を及ぼしていることは明らかです。引用した記事には、日銀の分析として「国内需給要因による変動は小さい」との見方が示されていますが、そうなのかもしれません。

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2016年9月11日 (日)

岩貞投手のナイスピッチングで連敗ストップ!

  HE
阪  神001011200 5100
ヤクルト000000000 040

岩貞投手のナイスピッチングで連敗脱出でした。私は見逃したんですが、鳥谷キャプテンの先制タイムリーと2点目のホームランの後、小刻みに追加点を奪い、岩貞投手は今季2度めの完封勝利でした。今年はすでにクライマックス・シリーズ進出も諦めましたが、来年につながる生え抜き選手の活躍でした。

来年は、
がんばれタイガース!

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気象協会による紅葉見ごろ予想やいかに?

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やや旧聞に属する話題かもしれませんが、9月6日付けで日本気象協会から今秋の紅葉の見ごろ予想が、主としてカエデを眼目として明らかにされています。第1回目の情報です。上の画像に見る通り、紅葉前線は10月20日の北海道から始まって、12月20日の九州まで、2か月に渡って日本列島を縦断します。というか、なぜか、沖縄が入っていません。やや不思議な気がします。
東京の紅葉の見ごろは11月下旬の平年並みのようです。私の記憶が正しければ、季節が進むとカエデだけでなく、イチョウについての情報も明らかにされるんではないかと思います。何といっても、東京都のマークはイチョウですので、神宮外苑の絵画館前のイチョウ並木の見ごろも気になります。そろそろ秋が深まる季節です。

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2016年9月10日 (土)

広島カープ25年振りの優勝おめでとう!

広島カープ25年振りの優勝おめでとう!!!

ということで、阪神の試合を振り返ると以下の通りです。

  HE
阪  神100000000 163
ヤクルト30100041x 9110

阪神は東京ヤクルトにボロ負けでした。能見投手は山田選手のスリーランに沈み、久々の一軍マウンドだった岩田投手はサッパリでした。打つ方も、いわゆるスミ1で終わりました。今年の阪神を象徴するような試合でした。

来年は、
がんばれタイガース!

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今週の読書はペースアップしてしまって何と8冊!

ここ2-3か月、やや読書が過剰な気がしていましたが、先週末のペースダウンの固い決意にもかかわらず、今週も8冊読んでしまいました。7月、8月と研究成果のペーパーを取りまとめ、特に、8月末に取りまとめたリサーチノートは90ページを超える大作でしたので、仕事が一段落した雰囲気もあり、臨時国会が始まる前の今の時点でせっせと読書に励んでしまいました。来週もこうなるかもしれませんが、出来る限り、徐々にペースダウンしたいとは予定しています。

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まず、リチャード・セイラー『行動経済学の逆襲』(早川書房) です。著者はここ数年以内にノーベル経済学賞を受賞してもおかしくないクラスの経済学者です。特に、専門分野は本のタイトル通り、行動経済学であり、時折、実験を行ったりするので実験経済学にもかかるかもしれません。本書はセイラー教授の研究に関する半生を自伝的に行動科学とともに取りまとめています。英語の原題は Misbehaving であり、まあ、合理的でない経済行動という意味だと理解していますが、不具合のあるプログラムとか子供のイタズラなどの意味もあります。ということで、行動経済学ですから、経済合理的な行動をとるエコンの世界と、そうでなく、例えば、サンクコストにこだわったり、自分の持ち物に特に愛着を感じる保有効果などをもつヒューマンを例えとし、伝統的なアダム・スミス以来の合理的な経済行動・思考を前提とするモデルに対して、実験も行いつつより現実の経済活動に近い経済学を構築しようとする学問分野からの視点が提供されています。特に、合理性を前提とする伝統学派との対立や対決なども読ませどころかもしれません。もちろん、本書でセイラー教授が指摘する通り、合理的な経済モデルが間違っているとか、不要だというのは正しくなく、現実に対する第1次接近としては大きな意味があるんですが、行動経済学的な理論やモデルの構築も現実の経済を解明する上で役に立つような気もします。ただし、行動経済学に対して大きな疑問をかねてから私が持っているのは、マーケティングや広告などがすでに実務的に行動経済学の理論的な解明を大きく超えて実績を上げているんではないか、という点です。本書でいう超合理的なエコンは、私が想像するに、消費行動というか、商品選択に際して広告には一切影響を受けないような気がするんですが、実際には広告業界は高給取りであふれていますし、買い物客はそれなりにマーケターや広告から商品選択に関して影響を受けていそうな気がします。学問的には私の専門外ですが、どのような広告が販売促進に効果的なのかも一定の蓄積がありそうな気もします。おそらく、私の直観ですが、行動経済学の理論とモデルは、実際の広告代理店勤務の一般的なサラリーマンの実務的な能力にかなり劣っている可能性すらあるんではないかと危惧しています。そんな学問領域に関する本を有り難がって読む私もどうかという気がしますが、もう少し学問として学生に教育するに足るようなレベルに達して欲しい気がします。

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次に、スティーヴン・ワインバーグ『科学の発見』(文藝春秋) です。著者は米国の物理学の研究者であり、1979年にノーベル物理学賞を受賞し、すでに80歳を超えています。本書は英語の原題が To Explain the World であり、副題は邦訳本タイトルそのままで、米国テキサス大学における教養学部生向けの科学史の講義を基に出版されています。大学に進学したばかりとはいえ、いわゆる理系の大学生相手の講義を基にしていますから、読み進むとすれば、それなりの水準の基礎的な知識を必要とする科学書であると考えるべきです。そして、本書の最大の特徴としては、いわゆる「ホイッグ史観」に立っていることです。ですから、その特徴のひとつとして、現在の水準で過去を評価するという方法論ですから、現在の正当な歴史学には受け入れられそうもありません。また、「進歩を担った殊勲者」対「進歩に抵抗した頑迷な人びと」に分け、両陣営の戦いと前者の勝利として歴史を物語的に記述する歴史観ですから、ニュートンに至るまでは、常識的に偉大な科学の発見とか、歴史上の科学者とかであっても、容赦なく切って捨てられます。そして、だれよりもニュートンが高く評価されています。決してアインシュタイン的な相対性理論でニュートン力学が否定されたわけではなく、相対性理論の近似としてのニュートン力学が評価されているといえます。なお、どうでもいいことながら、最後に、本書では著者の専門分野である物理学、特に天文学を中心に議論が展開されますが、どこまでハード・サイエンスなのかエコノミストの私ですら疑問を持っている経済学に対して、著者がどのような見方を持っているのか、興味深くもありますが怖い気もします。

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次に、会田弘継『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社) です。著者は共同通信のジャーナリストで、本書は、米国共和党の大統領候補に選出されたトランプ候補について、かなり批判的にその人物像や来歴などを解き明かしています。ただ、誠に申し訳ないんですが、本として中身が薄い気がします。第2章のトランプの生い立ちなんぞは、ビジネスマンとしての立身出世伝をほめたたえる内容になっていて、大統領候補としての思想信条の背景として何が重要なのかを大いにぼかしてしまう効果しかありません。むしろ、トランプとは関係薄そうな米国の思想史を取り上げた第3章で、ラッセル・カーク、ノーマン・ポドレッツらから始まり、ネオコン第2世代にいたる複雑な近代的なアメリカ保守思想の潮流を追った記述の方に筆の冴えが見られます。結論としては、単なるポピュリズムではなく、ワイマール化とその先にあるヒトラー的な独裁者の登場やファシズムの台頭などに対して警鐘を鳴らすのが本書の役割なんだろうという気がします。ただし、そこまで話を持って行くには本書はかなり力不足です。むしろ、トランプ現象が伝統的・正統的な米国保守勢力からどのように見られているのかについて、もう少し取材して事実を明らかにした方がいいような気がします。本書はジャーナリストらしいインタビューの結果ではなく、筆者の読書の結果に依存する部分の方が大きくなっており、「ジャーナリストの本」という前提で読むと物足りない可能性が高いと思います。それも含めて、私自身は余り大きな興味を持っていないので、何となくスルーしているんですが、世の中には多くの「トランプ本」が出回っているような気がしますので、本書がその中の1冊としてオススメできるかどうかは自信がありません。私が読んでいない中にもっとオススメ度の高い「トランプ本」がありそうな気がします。強くします。

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次に、今野敏『真贋』(双葉社) です。著者は売れっ子の警察小説作家であり、わが家でも上の倅と私なんぞはこの作者の「隠蔽捜査シリーズ」のファンだったりします。この作品も長編の警察小説であり、盗犯を担当する警視庁捜査3課第5係のベテラン刑事である萩尾秀一と、その部下の女性刑事の武田秋穂を主人公としているシリーズ2作目です。1作目の長編は『確証』で、2012年の出版となっており、私は読んだ記憶はありますが、中身はそれほど覚えていません。警視庁の中でも素人を相手にする捜査1課とプロの窃盗犯を相手にする捜査3課があり、このシリーズの主人公の刑事は捜査3課に所属しています。そして、前作『確証』ではこの捜査1課と捜査3課の確執を背景にストーリーが進められましたが、この作品では知能犯を担当する捜査2課の捜査官が、タイトルからほの見えるように、贋作を追って捜査3課と捜査を進めます。国宝の陶磁器、世界でも3作しか残されていない曜変天目のひとつをめぐって、所蔵美術館から百貨店の催事に貸し出された際に、ホンモノとレプリカが目まぐるしく入れ替わり、プロの窃盗犯、贋作つくり、故買屋に警備会社と警察がからんで、スピーディーな展開が楽しめます。前作の『確証』と同じで、とても想像できないような人的なつながりが明らかにされ、プロの犯罪テクニックの一端にも触れることが出来ます。細部のディテールを気にせずに、萩尾の見立てが不自然なくらい見事に当たっている点についても不問とし、流れるようなストーリーを楽しむべき作品です。あまり、本格推理っぽく論理を追い求めるべき作品ではありません。その意味も含めて、みごとなエンタメ小説です。

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次に、佐藤究『QJKJQ』(講談社) です。今年の江戸川乱歩賞受賞作です。西東京市の西武新宿線沿線の東伏見駅から連なる家に住む17歳の女子高校生が主人公で、ストーリー・テラーを務めます。両親も兄も、そして彼女自身も殺人鬼という猟奇殺人一家で育ち、彼女自身もナイフで人を刺し殺す場面から始まります。読み進むうちに、明らかに整合性に欠ける部分が現れ、その昔の『クラインの壺』のように、現実と虚構が入り交じる構成になり、しかも、それがメタ構造を形成していますので、かなり読み手にも読解能力を要求します。ただし、その割には、登場人物のキャラがかなり平凡、というか、ありきたりな気もしますし、エピローグ直前のバウンダリーキラーのパートで、主人公とその父を含む何人かがバトル・ロワイヤルよろしく殺し合いをしまくるのが、私には何がなんだかよく判りませんでした。控えめにいっても、ストーリー上は殺し合いに発展する必然性はないように私は受け止めました。加えて、登場人物がやたらと少なく、これだけ人が死ぬのに警察はまったく登場せず、少し常識から外れた視点を提供しているのも、読み進むうちに気にならなくなるようです。それから、この作品を離れて、最後の数ページで江戸川乱歩賞選考委員の選評が一挙掲載されています。有栖川有栖は本書を「平成の『ドグラ・マグラ』」とかなりの高評価を下していますし、辻村深月なんかは他の候補作には目もくれずに、本作だけを延々と論評していたりします。この選評も併せて読むと、この作品の面白さがさらに増すような気がします。加えて、『QJKJQ』というタイトルも凝っています。これは本書を読んで解き明かしていただくほかありません。

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次に、吉川洋『人口と日本経済』(中公新書) です。マクロ経済学の第一人者による人口と経済成長に関するエッセイです。200ページ足らずの新書ですから、通常の学術論文よりはボリュームあるものの、どうしても物足りなく感じてしまいますが、要するに、学術論文チックなメモにすれば5ページほどで終わりそうな気もします。すなわち、吉川教授の主張は経済成長と人口は関係なく、その根拠は第2章p.74の図表2-6で見る人口と実質GDPの乖離である、ということになります。根拠薄弱、という意見も出そうです。逆に、吉川教授は成長の源泉はイノベーション、特に新しい商品・サービスを生み出すプロダクト・イノベーションであると指摘します。量的な拡大である人口の増加と、質的なイノベーションを対比させようとしているんですが、そのように明記すればもっと判りやすいのに、と思わずにいられません。そして、幕間で人口減少について考察を加え、豊かになるに従って消費の選択肢は増えて、子育ての機会費用が高まる、という議論です。私が記憶するに、私の勤務する役所で官庁エコノミストの3条件、というのがその昔にありました。官庁エコノミストになるには、マージャンをしない、ゴルフをしない、子供を作らない、という3条件です。そして、誰から聞いたかは忘れましたが、マージャン、ゴルフ、子育ては極めて労働集約的で時間がかかることから、この3条件に時間を使うのではなく、ひたすら勉強しないとエコノミストにはなれない、という趣旨だと私は心得ています。私自身についていえば、さすがに今はマージャンやゴルフはせず、少なくとも人とするマージャンはしなかったんですが、30代から40代にかけて、海外勤務が多かったこともあり、せっせとマージャンやゴルフに励んだ時期があり、子供は2人もいたりしますので、3条件すべてに反していたりします。ということで、本書の読書感想に戻ると、 最後の第4章では消費の飽和やいわゆる定常状態について詳しく触れて、いかにもゼロ成長論を擁護するような雰囲気もあったりしますが、我が国では進歩史観が決して主流ではなく、円環史観というか、循環史観というか、グルッと回って元に戻る、といった史観が決して無視できないことから、本書のように、進歩史観が志向する成長を前面に押し出したエッセイはとても貴重な気がします。1点だけ、p.184において「長期停滞」をわざわざ "long stagnation" と英語で示しているところ、サマーズ教授らの用語の "secular stagnation" を避けたのは、後者の言い回しに人口や技術の停滞に伴う自然利子率の低下があるので、これを嫌った、と私は想像しているんですが、ほかにも何か意味があるんでしょうか?

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次に、宇野重規『保守主義とは何か』(中公新書) です。著者は東大社研の研究者です。本書では、フランス革命に対峙したエドマンド・バークを保守主義の嚆矢と位置づけ、ロシアで革命に成功した社会主義に反対する保守主義としてT.S.エリオットや経済学者のハイエクなどを上げ、さらに、リベラル派の「大きな政府」に反対する保守主義として、ついつい、歴史上の偉大なエコノミストに目が行くんですが、ミルトン・フリードマンらの思想が、それぞれ取り上げられ、日本の保守主義の歴史や現状を概観した後、終章につながるという構成となっています。保守主義とは何かという本書のタイトルなんですが、本書の中でハイエクが自分自身を保守主義者でないとし、保守主義にはブレーキしかなくてアクセルがない、という趣旨のハイエクの発言を引いています。私はまったく同感です。保守主義の対立概念は進歩主義であり、さらにそれが強烈になると急進主義ということになろうかと私は考えています。ですから、本書の構成もそうなっていますが、王政の時代に民主主義的な方向を志向するフランス革命に反対し、民主主義の時代に社会主義に反対し、レッセ・フェールの政府の市場介入ない時代に政府の市場への介入に反対するのが保守主義です。ただし、それは歴史が進歩するという意味での進歩史観、その典型はマルクス主義ですが、進歩史観に立つ場合の見方であって、必ずしも進歩史観が主流ではない日本などでは保守主義というのが、本書でも取り上げられている戦後の吉田ドクトリンの系譜、ということになるんだろうという気がします。なお、進歩主義の強烈なのが急進主義としましたが、逆に、保守主義の強烈なのは懐古主義ということになり、社会主義に反対して民主主義を守ろうという方向をさらに強烈に逆回転させ、民主主義から王政に戻そうとするのが懐古主義といえます。そんな主張はホントにあるのか、と質問されれば、霞が関から永田町あたりを通って行く街宣車を見れば判ります。ということで、最後に、本書では右翼思想と保守主義を、左翼思想と進歩主義を結び付ける考えは希薄なような気がしますが、私はそのラインはアリではないかと考えています。どうしても、新書ですからボリューム的にも物足りない気がして、俗にいう「突っ込み不足」に感じてしまいました。

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最後に、本格ミステリ作家クラブ[編]『ベスト本格ミステリ 2016』(講談社ノベルス) です。本格ミステリ作家クラブ選・編の年刊アンソロジーであり、その名の通りの本格ミステリの短編9話と評論1編から成っています。今週もたくさん読み過ぎましたので、本書についての読書感想文は軽く済ませたいと思いますが、高井忍「新陰流"水月"」とか、松尾由美「不透明なロックグラスの問題」などのように読み慣れたシリーズものから再録された作品もある一方で、一田和樹「サイバー空間はミステリを殺す」がなかなか興味深く読ませてくれました。

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2016年9月 9日 (金)

ドコモ・ヘルスケアによる睡眠に関するデータ分析結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、8月30日にドコモ・ヘルスケアからリストバンド型活動量計「ムーヴバンド3」の利用者を対象にした睡眠に関するデータの調査分析をした結果が明らかにされています。こういったウェアラブル・センサーのような機器から得られたデータの分析結果が広く明らかにされるのは、私にはとてもめずらしく感じられ、簡単にグラフを引用しつつ取り上げておきたいと思います。まず、ドコモ・ヘルスケアのサイトから調査結果サマリー2点引用すると以下の通りです。

調査結果サマリー
  • 最も熟睡できているのは10代女性、最も熟睡できていないのは40代男性!
  • 睡眠時間が短くても熟睡できることが判明! 最も熟睡できているのは、最も睡眠時間が短い木曜日

ということで、次に、ドコモ・ヘルスケアのサイトからグラフを3枚、一挙に引用すると以下の通りです。上から順に、性別・年代ごとの平均熟睡時間、性別・年代ごとの平均睡眠時間、曜日ごとの平均熟睡時間と平均睡眠時間 となっています。

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調査結果サマリーにもありましたが、もっとも熟睡できているのは10代女性であり、逆に、もっとも熟睡できていないのは40代を中心とする30代から50代くらいまでの、いわゆる働き盛りの男性だったりします。しかも、40-50代の男性はそもそも睡眠時間がとても短かったりしています。曜日別では、土曜日に「寝だめ」をするがごとくに、日曜日の昼ころまで寝坊するのは判る気がします。でも、私なんかから見て、睡眠時間と熟睡時間が必ずしも相関していないのは不思議なんですが、ドコモ・ヘルスケアでは、例えば木曜日に睡眠時間が短いにもかかわらず熟睡時間が長い点については、「平日に累積した熟睡時間の不足を補うため、睡眠の質を上げて一日の中で熟睡時間を長くすることで不足分を補おうとする体の反応によるものと推測」される、と解説しています。夜間におけるウェアラブル・センサーの何らかの不具合という可能性はまったく考慮されていないようです。
私自身は7時間睡眠が適当と考えており、可能な限り、真夜中に寝て朝の7時に起きる、という睡眠を理想としています。ウェアラブル・センサーを持っていないので、熟睡については私のデータはありませんが、かなりしっかりと寝ているという自覚はあります。朝まで目覚めることはほとんどありません。特に、テレビのナイター中継のコマーシャルなどで、60代男性は夜間に何度もトイレに起きるらしいので、そを防止するサプリメントなどの広告を見かけるんですが、私はかなり60歳に近づいているものの、夜間にトイレに立つことはまったくなく、しっかりと寝ている気がします。

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2016年9月 8日 (木)

1次QE上方改定された4-6月期のGDP統計2次QEは景気の回復を示唆しているのか?

本日、内閣府から本年2016年4-6月期のGDP統計速報、2次QEが公表されています。1次QEの季節調整済み前期比+0.0%成長から小幅に上昇改定されて+0.2%成長を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4-6月期GDP改定値、年率0.7%増に上方修正 速報は0.2%増
内閣府が8日発表した2016年4-6月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.2%増、年率換算では0.7%増だった。8月15日公表の速報値(前期比0.0%増、年率0.2%増)から上方修正となった。法人企業統計などのデータを反映した。
QUICKが7日時点でまとめた民間予測の中央値は前期比0.1%増、年率0.3%増となっており、速報値から小幅に上方修正すると見込まれていた。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.3%増(速報値は0.2%増)、年率では1.3%増(0.9%増)だった。
実質GDPを需要項目別にみると、個人消費は前期比0.2%増(0.2%増)、住宅投資は5.0%増(5.0%増)、設備投資は0.1%減(0.4%減)、公共投資は2.6%増(2.3%増)。民間在庫の寄与度はプラス0.1ポイント(マイナス0.0ポイント)だった。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がプラス0.4ポイント(プラス0.3ポイント)、輸出から輸入を差し引いた外需はマイナス0.3ポイント(マイナス0.3ポイント)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期と比べてプラス0.7%(プラス0.8%)だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2015/4-62015/7-92015/10-122016/1-32016/4-6
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)▲0.5+0.5▲0.4+0.5+0.0+0.2
民間消費▲0.6+0.4▲0.8+0.7+0.2+0.2
民間住宅+1.7+1.1▲0.5▲0.1+5.0+5.0
民間設備▲1.0+0.8+1.2▲0.6▲0.4▲0.1
民間在庫 *(+0.3)(▲0.0)(▲0.2)(▲0.1)(▲0.0)(+0.1)
公的需要+0.4▲0.2+0.1+0.8+0.6+0.5
内需寄与度 *(▲0.1)(+0.3)(▲0.5)(+0.4)(+0.3)(+0.4)
外需寄与度 *(▲0.4)(+0.2)(+0.1)(+0.1)(▲0.3)(▲0.3)
輸出▲4.2+2.6▲0.9+0.1▲1.5▲1.5
輸入▲1.8+1.2▲1.1▲0.5▲0.1▲0.0
国内総所得 (GDI)▲0.1+0.6▲0.2+1.2+0.5+0.6
国民総所得 (GNI)+0.3+0.4+0.1+0.6+0.3+0.5
名目GDP▲0.1+0.6▲0.3+0.8+0.2+0.3
雇用者報酬+0.5+0.9+0.5+0.6+0.3+0.3
GDPデフレータ+1.4+1.8+1.5+0.9+0.8+0.7
内需デフレータ+0.0▲0.1▲0.2▲0.5▲0.6▲0.7

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2016年4-6月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、特に、赤い消費をはじめとした国内需要項目が小さなプラス寄与を積み上げている一方で、黒い外需が大きなマイナス寄与を示しているのが見て取れます。

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ということで、一昨日に2次QE予想で取り上げた通り、ほぼ市場の事前コンセンサスに整合的な方向で、わずかに上方修正の結果となりました。設備投資と在庫が上方修正されています。GDP前期比成長率が+0.2%ポイント上方改定され、設備投資の寄与で+0.1%ポイント、在庫でも同じく+0.1%ポイントですから、消費や外需ではなく、この設備投資と在庫の2項目で2次QEが上方改定されたと私は考えています。そして、内閣府から公表されている「1次速報から2次速報への主な改定要因」でも明らかにされている通り、法人企業統計が利用可能となったことに伴う改定であり、いくぶんなりとも、時間の経過による改定であり、景気は回復の度合いを強めている気がしないでもありません。でも、中身を詳しく見ると、決して安心できる内容ではなさそうです。すなわち、設備投資は上方改定されたとはいえ、マイナス幅が縮小したということであって、決して増加に転じたわけではありません。在庫も1次QEのマイナスゼロが2次QEでプラスに転じたんですから、一見すると在庫調整が終了した可能性もなくはないんでしょうが、現実的に考えると在庫調整が遅れているとしか考えられません。そして、我々エコノミストが重視している重要な需要コンポーネントである消費と輸出はまだ停滞から脱し切れていません。もっとも、輸出はともかく、消費については1-3月期のうるう年効果からのリバウンドを考えると、前期比伸び率+0.2%増よりも、実勢はもっと強いと考えるべきかもしれず、かなりビミョーなところです。この統計を基に考える限り、やや短絡的かもしれませんが、需要を支えるには政府の経済対策が必要、ということになるのかもしれません。もちろん、今日の日経新聞の経済教室の岩本教授ほどではありませんが、政府の経済対策や現在の金融政策は過剰と考える主張もエコノミストの中に存在することも確かです。ただ、私自身は、上のテーブルに見られる通り、雇用者報酬は着実に増加を示しており、正規雇用の拡大と相まって、消費にはジワジワとプラスの効果を及ぼすと考えられますから、ひょっとしたら過剰かもしれないながら、政府の経済対策が消費拡大の呼び水になる可能性は十分あると考えており、また、金融政策についても先日の黒田総裁の発言ではありませんが、まだまだ緩和の余地が残されていると受け止めています。

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最後に、GDP統計2次QE以外に、本日、内閣府から8月の景気ウォッチャーが、また、財務省から7月の経常収支が、それぞれ公表されています。いつものグラフだけ、上に掲げておきます。なお、同じ役所の同僚エコノミストからアドバイスを受け、景気ウォッチャーは季節調整済みの系列で見るべき、というか、季節調整済み系列で見ないと、この2016年年央の時点におけるリバウンドが評価し切れない恐れがある、との指摘でしたので、今月から景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIはいずれも季節調整済みの系列をプロットしています。たしかに、かなり力強く見えるリバウンドです。経常収支は震災前のレベルに戻ったようですが、国際商品市況の石油価格次第で振れる可能性は忘れるべきではありません。

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2016年9月 7日 (水)

景気動向指数に見る我が国景気はほぼ横ばい圏内か?

本日、内閣府から7月の景気動向指数が公表されています。統計のヘッドラインとなるCI一致指数は前月から+0.7ポイント上昇して112.8を記録した一方で、CI先行指数は逆に先月の100.7から100.0に下降しました。まず、日経新聞サイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気一致指数 7月0.7ポイント上昇 基調判断据え置き
内閣府が7日発表した7月の景気動向指数(2010年=100、CI)によると、景気の現状を示す一致指数は前月より0.7ポイント高い112.8となり、2カ月連続で上昇した。猛暑効果でエアコンが売れたほか、夏のセールが7月初めから本格化し、小売り販売を押し上げた。
内閣府は一致指数の動きからみた景気の基調判断を「足踏みを示している」に据え置いた。1年3カ月(15カ月)連続で同じ表現となった。CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出し、月ごとの景気変動の大きさやテンポを示す。
前月と比較可能な7つの指標のうち、4つの指標が前月を上回った。耐久消費財の出荷はエアコンや電気冷蔵庫のほか、4月の熊本地震による減産分を取り戻す動きが続く乗用車も伸びた。
数カ月先の景気を示す先行指数は100.0となり、前月より0.7ポイント下がった。2カ月ぶりに低下した。前月と比べられる9つの指標のうち「消費者態度指数」など7つの指標が前月より悪化した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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CI一致指数が上昇した一方で、CI先行指数は下降し、やや判りにくい動きを示しているんですが、引用した記事にもある通り、内閣府の基調判断は「足踏み」で据え置かれていますし、我が国景気の現状はほぼ横ばい圏内の動きであると私は受け止めています。CI一致指数へのプラスの寄与の系列は、耐久消費財出荷指数、商業販売額(小売業)(前年同月比)、鉱工業用生産財出荷指数などとなっていて、他方、マイナス寄与をしている系列は、有効求人倍率(除学卒)と商業販売額(卸売業)(前年同月比)などです。景気回復の波及は雇用、所得、消費の順となるのか、あるいは、設備投資が割り込むのか、現状では何とも判断がつきません。なお、CI先行指数の下降幅▲0.7のうち、半分強の▲0.4は7月の消費者態度指数であり、8月の消費者態度指数はすでに+0.7ポイントの上昇、と統計が出ていますので、それほど懸念すべき点ではないように私は考えています。しかしながら、いずれにせよ、やや方向感に乏しく横ばい圏内の景気動向かもしれません。先行きの日米両国の金融政策動向にも左右されそうです。

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2016年9月 6日 (火)

明後日9月8日に公表予定の2次QE予想やいかに?

先週木曜日の法人企業統計をはじめとして、ほぼ必要な統計が出そろい、明後日9月8日に4-6月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定です。シンクタンクや金融機関などから2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の今年7-9月期以降を重視して拾おうとしています。しかしながら、明示的に取り上げているシンクタンクはみずほ総研だけでした。2次QEですのでアッサリした結論も多かったです。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.0%
(+0.2%)
n.a.
日本総研+0.1%
(+0.5%)
4-6月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資、公共投資が小幅上方修正、在庫投資は横ばいとなる見込み。その結果、成長率は前期比年率+0.5%(前期比+0.1%)と1次QE(前期比年率+0.2%、前期比+0.0%)から小幅に上方修正される見込み。
大和総研+0.0%
(+0.0%)
4-6月期GDP二次速報(9月8日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率+0.0%(一次速報: 同+0.2%)と、一次速報から僅かに下方修正されるとみている。公共投資が上方修正となる一方、在庫投資は下方修正されるとみられる。また、民間企業設備は一次速報からほぼ横ばいとなり、全体としては一次速報を僅かに下回る見通しである。
みずほ総研+0.0%
(+0.2%)
2016年7-9月期以降を展望すると、外需・民需の低調さが続く中で、公需依存の回復になると見込まれる。
Brexit決定の影響については、現時点では英国以外への実体経済面での波及は限定的なものにとどまっているようだ。ただし、中国経済の構造調整や米国企業の設備投資の弱さなど、従来からの海外経済の減速要因は残存している。年初以来の急速な円高という逆風もあるため、日本の輸出は当面低迷が続くと見込まれる。民需については、円高による企業収益の目減りなどを受けて、設備投資が低調な伸びにとどまるとみている。個人消費も、社会保障負担増に伴う可処分所得の目減りを背景に、力強さに欠ける動きが続くだろう。
ニッセイ基礎研+0.1%
(+0.6%)
9/8公表予定の16年4-6月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.1%(前期比年率0.6%)となり、1次速報の前期比0.0%(前期比年率0.2%)から若干上方修正されると予測する。
第一生命経済研+0.1%
(+0.3%)
9月8日に内閣府から公表される2016年4-6月期実質GDP(2次速報)を前期比年率+0.3%(前期比+0.1%)と、1次速報段階の前期比年率+0.2%から僅かに上方修正されると予想する。修正幅はごく僅かなものにとどまるとみられ、1次速報とほとんど変わらずといっても良いだろう。
伊藤忠経済研+0.0%
(+0.0%)
2016年4-6月期の実質GDP成長率は前期比+0.0%(年率+0.0%)へ小幅ながら下方修正されると予想。公共投資が上方修正される一方、設備投資や在庫投資が下方修正される見込み。日本経済は、民間需要が低迷する中で政策頼みの状況にあるという見方は変わらない。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+0.0%
(+0.2%)
実質成長率が、1次速報の前期比年率0.2%から同0.8%に上方修正されると予想する。設備投資の前期比マイナス幅の縮小が見込まれるほか、民間在庫投資および公共投資が上方修正される見通しである。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.0%
(+0.0%)
9月8日に発表される予定の2016年1-3月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、設備投資が若干下方修正される一方で、公共投資が小幅上昇修正される可能性があり、1次速報値の前期比横ばいから変化はないであろう。
三菱総研+0.1%
(+0.3%)
2016年4-6月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.1%(年率+0.3%)と、1次速報値(同+0.0%(年率+0.2%))からほぼ変わらない結果を予測する。

ということで、ほぼゼロ成長近傍であり、上方改定と下方改定が入り混じっています。でも、プラス成長であることは変わりないようで、その意味で、1次QEの際にも注意すべき点として上げた通り、今年2016年の1-3月期がうるう年効果で通常の年よりは消費を中心にやや上振れている可能性があり、逆から見て、4-6月期には1-3月期のうるう年効果の反動が観察される可能性が高い、ということなんですが、それを勘案すると、それなりに数字より実態としては悪くない統計、ではないかと考えられています。その上、私にいわせれば、この+0%から+0.5%くらいが現時点の日本経済の潜在成長率、すなわち、日本経済の実力相当ではなかろうか、という気もしなくもありません。ただし、GDPコンポーネントを詳細に見ると、在庫についてはそれほど調整が進むようには見込まれていないような気がして、やや懸念が残らないでもありません。
下のグラフは、みずほ総研のリポートから引用しています。

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2016年9月 5日 (月)

毎月勤労統計の賃金動向をどう見るか?

本日、厚生労働省から7月の毎月勤労統計が公表されています。注目の賃金は季節調整していない原系列の前年同月比で+1.4%の上昇を示しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質賃金6カ月連続プラス 7月、2.0%増
厚生労働省が5日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比2.0%増加した。伸び率は6月の確報値と同じで、6カ月連続で前年を上回った。ボーナスの増加などで名目賃金が増えたほか、消費者物価指数(CPI)の下落傾向が実質賃金を押し上げている。
名目にあたる従業員1人当たりの現金給与総額は37万3808円と、前年同月比1.4%増加した。名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は0.4%増の24万1518円。ボーナスや通勤費にあたる「特別に支払われた給与」は4.2%増の11万3150円だった。
実質賃金の増加は給与の伸びが物価の伸びを上回っていることを示す。6月のCPIは前年同月比0.5%下落し、実質賃金の伸び幅が名目より大きくなった。実質賃金は6年ぶりに2カ月連続で2%台となった。ただ所定内給与の伸びは依然小幅で、物価下落の影響も大きいことから、所得環境の改善が続くかどうかは見通せない状況だ。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。上から順に、上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与の季節調整していない原系列の前年同月比を、その次のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、一番下のパネルはその雇用指数そのものを、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

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まず、景気に敏感な所定外労働時間は製造業の季節調整済み系列の前月比で見て▲0.5%減と、横ばいだった生産指数とほぼ整合的な動きを示しています。やや停滞気味の景気を反映しています。そして、注目の賃金なんですが、季節調整していない原系列の現金給与総額の前年同月比で見て、名目は+1.4%増、CPIでデフレ―トした実質で+2.0%増を記録しました。しかし、引用した記事にもある通り、ボーナスなどの所定外給与の伸びが大きく、所定内給与の伸びは名目で+0.4%増にとどまっています。従来からの研究成果に従えば、消費は恒常所得仮説に近い動きを示し、給与総額ではなく所定内賃金との相関が高いことが報告されており、なかなか消費の増加に直結するのは難しいかもしれません。しかし、他方で、所定内給与の伸びは名目ながら2-3月にそれぞれ+0.6%像を示した後、しばらくゼロかマイナスだったのに対して、7月は+0.4%増ですから、連合の集計で見る限り、かなり春闘のベースアップ率に近いラインになって来たように私自身は実感しています。また、マイナスを続けるCPIでデフレートすれば実質賃金がプラスなのはいうまでもありません。
グラフについては、いつもよりも1枚増やして、フルタイムの一般労働者とパートタイムの雇用の対比を詳しく見ています。すなわち、フルタイムの伸びがパートタイムを上回り、賃金の伸びは物足りないものの、非正規雇用ではなく正規雇用が伸びている可能性が強く示唆されていると私は受け止めています。ですから、かねてよりこのブログでも主張している通り、ほぼほぼ完全雇用に近い人手不足の現在の労働市場は賃上げではなく正規雇用の増加という雇用の質の向上に適しているのかもしれません。でも、賃金が上がる方向も見えて来たように感じないでもありません。

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2016年9月 4日 (日)

8回の集中打で横浜に逆転勝ち!

  HE
横  浜010000000 140
阪  神00000003x 3100

ここで負ければクライマックス・シリーズへの進出はほぼほぼ絶望という試合でしたが、何とか8回の集中打を活かして原口選手のツーベースで横浜に逆転勝ちでした。久し振りの甲子園での勝利だった気がします。ただ、担架で運ばれた上本選手のケガは心配です。私の従来からの主張で、サード鳥谷キャプテン、ショート北條選手、セカンド上本選手は黄金の内野陣です。筒香選手が外れていたとはいえ、岩貞投手のナイスピッチングも光りました。それにしても、人ごとながら今永投手の無念を察して余りあります。それはそうとして、可能性ある限り、クライマックス・シリーズ目指してがんばって下さい。

ジャイアンツ戦は、
がんばれタイガース!

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新しい研究成果が公表される!

先週金曜日7月15日の午後に研究所のサイトに新しい研究成果のリサーチノートがアップされました。以下の通りです。

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先週の読書はTPPのルポなど計7冊!

今週は僅かにペースダウンして、ジャーナリストによるTPPのルポをはじめとして、教養書や小説も含めて、以下の通り計7冊です。来週はもう少しペースダウンする予定です。

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まず、 山田優・石井勇人『亡国の密約』(新潮社) です。タイトルから明らかなように、昨年大筋合意されたTPPに関して、ジャーナリスト2人の手になるルポルタージュなんですが、実は、前半半分超のボリュームはウルグアイ・ラウンドでの国家貿易で輸入されるミニマム・アクセス(MA)米が、合理的な市場原理ではなく日米の密約により、米国産米のシェアが毎年47%と半分近くに達しており、米国産米の生産シェア1割程度からかなりかけ離れている、という主張を延々と繰り返しています。ややカンバンに偽りがあるんではないか、という気がしないでもありませんが、ウルグアイ・ラウンドからTPPに至る農産物貿易交渉を一括して取り上げる意図なのかもしれません。そして、著者たちの主張はp.236に見られる通り、TPPも骨抜きにされた、というものです。すなわち、聖域なき関税撤廃、金融・通信・知的財産権などの高度サービスを含めたルールの統一、といった新時代にふさわしい自由貿易協定であるべきTPPが経済学が主張するような最大厚生をもたらす自由貿易とはかけ離れた内容であり、中国が主導するAIIBに日米が対抗するTPP、という構図で経済よりも政治・外交の観点が優先した、との結論です。ということですから、著者のジャーナリスト2人はかなりエコノミスト的な観点に近く、自由貿易の利益を大いに肯定し標榜する視点からのルポといえるのかもしれません。また、日米同盟に関して、ビルマルクの言葉を引いて「同盟とは騎士と馬の関係」であるとし、日本は馬であって米国に従属する立場であることを示唆しており、日米関係についてかなり正確かつ講座派的な認識が示されていますし、ウルグアイ・ラウンド当時と今回のTPP交渉とで農水省のプレゼンスが大きく異なっている点について、小選挙区制の浸透・深化による農水族議員の凋落、と見ているのももっともだという気がします。いろいろと物足りない点もありますが、私のような貿易交渉に不案内なエコノミストには参考になる点もあって、それなりに興味深いルポでした。

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次に、上岡直見『鉄道は誰のものか』(緑風出版) です。著者は環境経済研究所代表という得体の知れない団体を主催しているようですが、化学関係のエンジニアを引退した方のようです。本書では、タイトルと大いに異なり、鉄道に対する期待の大きさとそれに比例した失望感が繰り返し何度も表明されています。基本はエンジニアの視点だという気もして、朝日新聞の書評で「理系の出身でありながら、問題意識はきわめて政治思想の研究者に近い」と持ち上げているのは少し理解できません。最初に、大都市圏の通勤・通学電車の混雑、あるいは整列乗車を評して、行列で有名になった旧社会主義国の商品出回り状況になぞらえているのは至極もっともとエコノミストの私も同感しますが、どうしてそうなったのかといえば、需要が供給を上回っているからであり、単純なエコノミストであれば価格=電車賃の引上げを提唱するのではないか、という気がします。あるいは、ラッシュアワーの電車の一定数を占める通勤サラリーマンの多くが交通費を定期券で実物支給もしくは実費支給されていて、事実上、価格メカニズムが働かなくなっているという点も見逃せません。ですから、著者のように混んでいる上に料金が高い、との指摘は矛盾しているわけで、本書でも取り上げているように、別料金を徴収して座れる電車、「ライナー」などと称されている特別列車などを利用するためには、あるいは、これをデフォルトにするためにはそれなりの運賃引き上げが必要そうな気もします。ただ、その背後には独占力というものがあり、東京をはじめとする大都会ではJRや民鉄の間である程度の競争がある一方で、ほとんど選択の余地ない地方では独占力を背景にサービスを低下させても需要は減少しないという事業者のおごりも垣間見えます。ただ、60歳過ぎというこの年齢の著者の見方ですから、第4章での障害者に対する見方は独特のような気がしますし、逆に、障害者の車いすにここまで着目しながら、ベビーカーには電車のドアに挟まれて事故を起こしたという以外の目が行き届かないのも悲しい気がします。もちろん、大都市圏においてもそれなりの独占力を持っている鉄道会社ですから、時折、こういった批判本が出てそれなりのプレッシャーをかけるのも社会的には必要なんだろうという気はしますし、最後のリニア新幹線に対する見方なんぞは私とかなり共通していることは否定しません。

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次に、栗山尚一『戦後日本外交』(岩波現代全書) です。著者は1990年ころのバブル期に外務省に事務次官を務めていた人物で、もちろん、キャリアの外交官です。天下り空いた後に、『アジア時報』なる刊行物に寄せていたコラムを取りまとめたものです。著者は2015年に亡くなっていますので、ひょっとしたら未完かもしれません。2部構成の計13章から成っているんですが、読む値打ちがあるのは第8章までです。戦後外交、というか、日本の方向を決定した吉田ドクトリン、すなわち、安全保障では米国の保護の下に入って、利用可能な政策リソースは経済発展に振り向ける、という外交政策から始まって、国連、自由経済研、アジアの外交三原則を踏まえつつ、安保条約改定、沖縄返還、日中国交正常化などの戦後外交の歩みを振り返っています。沖縄返還時の核密約など、私の腑に落ちない記述も決して少なくないんですが、第2部の最終章の憲法第9条の解釈、あるいは、明確に自衛隊は軍隊であると断定するなど、私の理解と共通する部分も少なくありません。著者は外交官試験の憲法に関する口頭試問で、自衛隊は軍隊であると明言した本書にと記しており、私も現在勤務している経済官庁に就職する際にマルクスの『資本論』全3巻を読了していると面接で述べたことを思い出してしまいました。著者が亡くなった後に編まれた書物であり、物足りない感は半端ないんですが、条約局勤務の長かった著者の外交感覚を伺える好著だという気がします。でも、繰り返しになりますが、大いに賞賛の的となっていた我が国のバブル期に国を背負った外務省事務次官ですから、すっかり先進国の中でも沈みきった我が国の現状を省みて、少し感覚的なズレがあるのは仕方ないような気がします。それから、評価はビミョーなところですが、外交はキャリアの職業外交官が担うべきか、国民から選ばれた選良たる政治家が担うべきか、そういった視点で読み進むのも一案かという気がします。

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次に、堀田江理『1941 決意なき開戦』(人文書院) です。エコノミストながら、それなりにヒストリアンを自負している私でさえ、馴染みのない著者が馴染みのない出版社から出した本ですが、ご本人が2013年に出版した Japan 1941 と題する本の日本語版らしいです。ボリュームの割には、どうということもない内容で、どこかの書評で「正統的な歴史」といった趣旨の表現を見たような気がしますが、極めてよく表現すればそうなりますが、逆からいうと凡庸極まりないともいえそうです。あとがきに、現時点で日米開戦の事情を記述するのも意味があるような著者の言い訳がありますが、賛同する読者がどこまでいるかは不明です。結局、天皇がxxしておけば…、とか、開戦反対だった海軍がxx…、とか、近衛総理がxxだったら…、とか、仮定のお話で開戦が回避できたような著者の見方には私はまったく賛同できません。これらは歴史家の語り口としてはやや奇っ怪な表現であり、どうして開戦してしまったのかを史料の解読を積み重ねて解明すべきところを、現実とは異なる仮定の話で開戦が回避可能だったようによそおうのは歴史家の態度としては疑問なしとしません。結局、結論としていえば、p.367にある通り、「結局は、誰も自らの身や組織を挺して、決定的に戦争に歯止めをかけることをしなかった結果が、開戦だった。」ということなんでしょうが、戦後70年を経てこの到達点かね、という気がしないでもありません。タイトルも英語タイトルと日本語とでビミョーに違っていて、決意のしっかりした開戦だったら、どうだったのかね? という疑問も湧いて来てしまいます。私個人としては欠のしっかりした開戦だった方が結果が怖い気がしないでもありません。いずれにせよ、終戦の日の前にはこういった本が出版されて、それなりに注目される歴史的経緯があるわけで、高校生の夏休みの読書感想文に好適なレベルの書物、という推薦は出来るかもしれません。ただ、何度か出て来る「同盟国」というのが英米の「連合国」らしいと私が気付いたのが、かなり読み進んでからでしたので、まあ、"Allies" の邦訳でしょうが、通常のヒストリアンや歴史研究者と少し違った用語が使われている点は注意が必要かもしれません。

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次に、ロビン・ダンバー『人類進化の謎を解き明かす』(インターシフト) です。著者はオックスフォード大学の進化心理学の研究者であり、私が知っているのは、強制的な規範や法を抜きに親しい安定した社会関係を維持できる人数の上限は150人、というもので、本書にも登場します。なお、本書は Human Evolution 、すなわち「人類進化」という現代で2014年に出版されています。要するに、本書ではヒトをケモノを分かつ点がいくつかあり、発声と会話、火を使った料理、社会的な集団形成などについて、何がこれらのヒト、というか、本書ではホモ属と呼ぶところのヒトの特徴をもたらし、それはいつごろなのか、という謎を解明しようとしています。その際のツールのひとつで重要な役割を果たしているのが pp.84-85 でアルゴリズムが示されている時間収支モデルです。エネルギーを得るために大量の時間を費やすのは非効率ですし、それを解決したのが火を使った料理であり、摂取カロリーの増大とエネルギーを得るための時間の節約につながった、と主張しています。さらに、社会性の形成の観点から、いわゆる毛づくろい=グルーミングを社交につながる源として重視し、毛づくろいに代替する会話が誕生し、さらに動物にはない笑いが人間には出来るようになり、音楽に発展するとともに、音楽とトランス状態になる一部のヒトから宗教が生じる、という見立てです。さらに、第9章では、本書でいうペアボンディング=単婚(モノガミー)と多婚(ポリガミー)についても生物学的な見地と社会学的な見地から考察を試みていますが、私の目から見て仮説の域を出ず、それほど説得力ある仮説でもないような気がします。取りあえず、エコノミストであり、マルキストの素養ある私の目から見て、いわゆる原始共産制までの人類の進化に関する興味深い解明だったような気がします。しかし、その後の剰余生産物が可能となるまで生産が拡大し、同時に社会階層や格差が生じた後の経済社会に目を配るのがエコノミストの役割かもしれません。いずれにせよ、興味深い「ヒトがヒトたる進化の過程」を解き明かそうと試みた好著です。社交や社会性といった切り口から、私のような専門外の読者にもわかりやすく出来上がっています。

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次に、真梨幸子『私が失敗した理由は』(講談社) です。作者は売れっ子のイヤミスの作家であり、私も最近作はほとんど読んでいます。本作はメタ構造になっているというか、著者が自らのペンネームとデビュー作の『孤虫症』の作品名も明らかにウワサ話で登場し、埼玉県の所沢市をついつい想像してしまう首都圏のベッドタウンのタワーマンションを舞台に、いろんな人が死ぬミステリです。というか、イヤミスです。作中では、ドロドロのミステリということなんでしょうが、イヤミスではなく「ドロミス」と表現されていたりします。この作者の作品ですから、必ずしも正常な意識で論理的な解決が示されるわけではありませんが、いろんな登場人物がいろんな発言をして、1ダース近い殺人がある中で、この作者の作品としては登場人物の間柄が私にも分かりやすかった気がします。要は、出版社をやめて独立した編集者が、失敗談を集めた本を出版しようと取材を続けるうちに、いろんなヒトが殺人に巻き込まれ、波乱万丈の人生を送るというストーリーで、とても現実にあり得るお話とは思えませんので、作中人物に感情移入するのは難しそうな気もします。でも、私も通勤電車で読んでいて、ついつい笑い声を上げて周囲から注目を集めてしまったりしたんですが、楽しいエンタメ小説であることは確かです。ケースは5つ取り上げられており、マイホーム、独立、選挙、結婚、家族の順です。まあ、あくまで一般論ですが、人の不幸は蜜の味、人の失敗は娯楽ともいえますので、それなりに楽しく読める小説です。イヤミスといいつつも、それほど読後感は悪くありません。小説に感情移入せずに第3者的に読めば、笑顔も出るかもしれません。

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最後に、青山文平『半席』(新潮社) です。作者はつい最近に直木賞を受賞した人気の時代小説作家で、よく確認していないんですが、この作品は直木賞受賞後第1作かもしれません。時代小説の短編集ですが、主人公は同一人物で、もちろん、時代背景も同一です。タイトルの「半席」とは、1代限りの旗本を意味し、すなわち、本人は旗本なんですが、家督を継いだ惣領息子は御家人に戻されてしまう、という江戸時代の幕府のシステムらしく、主人公がこのシステムを利用し、なのか、このシステムに苦しみ、なのか、御家人から旗本に身上がるべく、目の前の仕事に励む若き徒目付の片岡直人が主人公となった6話の短編から編まれています。でも、お役目の公式な仕事となるのは第5話だけで、この主人公の片岡直人に上役から振られたのは、腑に落ちぬ事件にひそむ「真の動機」を探り当てる御用ということになります。すなわち、犯人も罪状も明らかであって、ミステリでいえば whodunit ではなく、whydunit を解き明かすというのが、少なくとも4話までの筋立てです。例えば、職務に精勤していた老侍が、なぜ刃傷沙汰を起こしたのか、といった事犯です。主人公は一回り12歳年上の上司から、青臭い建前論で年寄侍から真実を聞き出す名人のように扱われています。そして、無役を嫌う主人公は自分の家を「半席」から脱して、自分の息子が生まれながらにして旗本になれるように、立身出世を目指し、結局、目標とする役方の勘定方になるよりも、徒目付にとどまってお役目を果たす、という人生を選択します。主人公は徒目付の片岡直人とその上司の頭である内藤雅之なんですが、下谷広小路の偽系図売りで登場する浪人ものの沢田源内が何ともいえないキャラで際立っており、定食屋のオヤジとともに、いい脇役を演じています。ややめずらしいことなんですが、私はドラマ化を熱烈に希望しています。

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2016年9月 3日 (土)

米国雇用統計の結果は金利引上げには力不足か?

日本時間の昨夜、米国労働省から8月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の増加幅は+151千人と前月から伸びを低下させ、失業率は前月と同じ4.9%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから最初の4パラだけ記事を引用すると以下の通りです。

Slower Growth in Jobs Report May Give Fed Pause on Interest Rates
After two consecutive months of hearty jobs gains, hiring eased in August, with the government reporting on Friday that employers expanded their payrolls by 151,000 workers.
The official unemployment rate, based on a separate survey of households, remained at 4.9 percent. Average hourly earnings grew slightly, bringing the 12-month increase in wages to 2.4 percent - a modest gain that still keeps most workers ahead of inflation.
The temperate performance and the absence of any wage pressure are expected to bolster the position of those within the Federal Reserve who favor a wait-and-see approach toward raising the benchmark interest rate when the central bank meets this month.
This report reflects only a single month of the labor market's performance, but it aroused particular attention because it offers the last major piece of economic news before the central bank's scheduled gathering on Sept. 20 and 21.

この後、さらにエコノミストなどへのインタビューや米国大統領選へのインプリケーションの分析が続きます。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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米国雇用統計では、失業率は4.9%と前月と変わらずだった一方で、非農業部門雇用者数の増加幅は+151千人にとどまり、雇用増加のひとつの目安とされる+200千人を3か月ぶりに下回っています。そして、7月は上方修正され、6月分は下方修正された結果、直近3か月の増加幅でみると毎月平均+232千人と目安の+200千人をかなり上回っています。しかし、市場の事前コンセンサスは+200千人増には達しないものの、+180千人増くらいのイメージでしたので、やや物足りないと感じるエコノミストもいそうな気がします。業種別では、飲食店、専門・技術サービス、金融などサービス業が伸びています。もっとも、8-9月の雇用統計については、季節調整の関係で低く出た後で翌月か翌々月に上方修正される、というパターンが何度か見られ、2008年のリーマン・ショックの影響ではないかと推測されています。
米国連邦準備制度理事会(FED)の金融政策との関係ではビミョーなところではないかと私は考えています。事前の段階では、雇用増が+150千人を超えれば利上げの確率が50%を超えるんではないかと、私なんぞは単純に考えていたんですが、ホントにスレスレで+150千人増だったわけですので、もう少し様子見を続ける可能性も残されているような気もします。FEDの連邦公開市場委員会(FOMC)も、日銀の金融政策決定会合も、ともに、9月の20-21日に開催されます。もちろん、常識の範囲で時差があります。FOMCでは利上げが決まる可能性があり、日銀の方は追加緩和の可能性が残されています。FEDはこれから市場との対話を進めることと私は予想していますが、現在の黒田総裁率いる日銀は市場との対話よりもサプライズをもたらす方を重視しているように見えなくもありません。

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また、日本やユーロ圏欧州の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。サブプライム・バブル崩壊前の+3%超の水準には復帰しそうもないんですが、まずまず、コンスタントに+2%のラインを上回って安定して推移していると受け止めており、少なくとも、底割れしてかつての日本や欧州ユーロ圏諸国のようにゼロやマイナスをつけてデフレに陥る可能性は小さそうに見えます。

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2016年9月 2日 (金)

消費者態度指数は横ばい圏内の動きが続く!

本日、内閣府から8月の消費者態度指数が公表されています。前月から+0.7ポイント上昇して42.0を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の消費者態度指数、0.7ポイント上昇 基調判断「足踏み」に据え置き
内閣府が2日発表した8月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.7ポイント上昇の42.0だった。株価や為替が比較的落ち着いたほか、失業率の改善などが消費者心理を下支えした。7月が0.5ポイント低下だったこともあり、内閣府は消費者心理の基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いた。
指数を構成する4つの意識指標の全てが上昇した。「雇用環境」が1.5ポイント上昇したほか、「暮らし向き」が4カ月連続で上昇した。「収入の増え方」も0.5ポイント上昇した。雇用指標が好調なほか、最低賃金の引き上げなども寄与したとみられる。
1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月から1.7ポイント低下し、70.5%となった。消費者物価指数(CPI)の低迷などを受け、このところ低下基調となっている。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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8月に前月から+0.7ポイントの上昇が見られたのは、基本的に、その前に▲0.5ポイントの低下に対するリバウンドの部分が大きいような気がします。それでも、消費者態度指数のコンポーネントを詳細に見ていくと、「雇用環境」が前月から+1.5ポイントの上昇ともっとも大幅で、続いて、「収入の増え方」が+0.5ポイント、「暮らし向き」が+0.4ポイント、「耐久消費財の買い時判断」が+0.2ポイントとなっています。当然の順番ながら、雇用がよくなり、それが収入を増やし、耐久消費財を買って、暮らし向きが向上する、という順番が穏当な気がしますので、雇用と収入で改善幅が大きい結果は、これから先行きで、耐久消費財の購入にもつながる動きではないかと期待しています。ただし、上のグラフからも明らかな通り、単変数のユニバリエイトで見る限り、ほぼ横ばい圏内の動きにしか見えません。しかも、水準としては40を少し超えたあたりでウロウロしている印象です。従って、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府でも基調判断を「足踏み」で据え置いています。消費者マインドが改善して、所得の増加とともに、消費に寄与し始めるのはもう少し時間がかかるのかもしれません。

すでに、米国雇用統計が米国労働省から公表されており、先日のジャクソン・ホール会合でのイエレン連邦準備制度理事会(FED)議長をはじめとする強気、というか、タカ派的な発言から注目が集まっていましたが、結果はやや物足りないとの受け止めも出ています。いずれにせよ、日を改めて取り上げたいと思います。

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2016年9月 1日 (木)

法人企業統計に見る企業活動は停滞を示すも賃上げの余地あり!

本日、財務省から4-6月期の法人企業統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で、3期連続の減収減益を記録し、売上げは前年同期比▲3.5%減の307兆3674億円、経常利益は▲10.0%減の18兆2639億円でした。ただ、設備投資は製造業が牽引して前年同期比で+3.1%増の9兆3145億円と増加を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

法人企業統計、設備投資3.1%増 4-6月期、経常益減少も過去2番目水準
財務省が1日発表した4-6月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比3.1%増の9兆3145億円だった。伸び率は1-3月期(4.2%増)から鈍化したが、13四半期連続で増えた。非製造業は13四半期ぶりに減ったが、製造業が2ケタ伸び補った。ただ今回は過去2番目の高水準だったが、前年同期は過去最高益で経常利益は3四半期連続の減益となった。原油価格下落や円高進行も響いた。
産業別の設備投資動向は製造業が11.1%増と、8四半期連続で拡大した。輸送用機械で新型車製造などでの設備投資が増えた。化学ではスマートフォン(スマホ)や自動車向けの部材の生産能力を増強する投資が目立った。非製造業はサービス業の娯楽業や純粋持ち株会社などで前年の大型投資の反動が出たほか、情報通信機械で基地局の通信設備投資が減ったことなどが響き1.3%減だった。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となる「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は、季節調整済みの前期比で0.5%減にとどまった。マイナスは3四半期連続。内訳は製造業が2.0%増で、非製造業は1.9%減だった。
経常利益は前年同期比10.0%減の18兆2639億円だった。製造業が22.4%減だった。円高進行が響いたほか、輸送用機械で熊本地震や燃費不正問題による生産停止が影響した。情報通信機械ではスマホ部材の生産調整も重荷になった。非製造業は3.1%減った。卸売業で原油価格の下落により販売価格の低下した。小売業では婦人衣料の売れ行きが鈍かったほか、インバウンド消費の客単価が減った。
全産業の売上高は、前年同期比3.5%減の307兆3674億円にとどまった。スマホの生産調整により電子部品の売り上げが減った。原油価格下落で石油関連製品の販売価格低下が響いた。建設業では前年同期の大型案件の反動が出た。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や収益動向を集計。今回の4-6月期の結果は、内閣府が8日発表する同期間のGDP改定値に反映される。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフにプロットしたように、季節調整済みの系列で見た企業活動については、昨年終わりの2015年10-12月期ころから円高の進展に伴って企業活動に陰りが見え始めた、とこのブログで指摘し、今年に入って2016年1-3月期の統計を見ても同様の停滞が伺えたんですが、基本的に、企業活動の停滞が続いていると私は受け止めています。売上高も経常利益も2014年10-12月をピークに、売上高は6四半期連続で減少を続ける一方で、経常利益は2015年4-6月期に続いて最新データで2016年4-6月期にも増加を示しています。少し前まで「増収増益」で歴史的に過去最高の売上げや経常利益を記録していた企業も少なくなかったんですが、現在では売上げが伸びないながらも収益は確保する企業行動に移行しつつあるように見受けられます。そのあおりを受けているのが設備投資と人件費だったりするので、決して拡大均衡を目指す方向としては好ましくないような気もしますし、合成の誤謬ではないかとさえ思ってしまったりするんですが、それにしても、経常収益が増益に戻って、「過去最高」を連発したリーマン・ショック前をも超える利益水準を達成している点は、何らかの企業の社会貢献を考える上ではそれなりの重要性を持つと考えるべきです。要するに、設備投資を縮小させつつ、賃上げにも消極的で、ひたすら内部留保として溜め込んでいるだけでいいのかどうか、ということです。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出しています。このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。いずれも、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下しまし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞が続いており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。どちらも、最近時点でやや反転の兆しを見せていますが、為替相場との関係で経常利益などの企業収益の先行きに不安が残るものの、これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善のひとつである賃上げ、もちろん、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないかと私は期待しています。

本日公表された法人企業統計などを盛り込んで、4-6月期のGDP統計2次QEが来週9月8日に内閣府から公表される予定となっています。設備投資が下方修正されるんではないかと私は予想しています。また、日を改めて2次QE予想として取りまとめたいと思います。

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