毎月勤労統計の賃金動向をどう見るか?
本日、厚生労働省から7月の毎月勤労統計が公表されています。注目の賃金は季節調整していない原系列の前年同月比で+1.4%の上昇を示しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
実質賃金6カ月連続プラス 7月、2.0%増
厚生労働省が5日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比2.0%増加した。伸び率は6月の確報値と同じで、6カ月連続で前年を上回った。ボーナスの増加などで名目賃金が増えたほか、消費者物価指数(CPI)の下落傾向が実質賃金を押し上げている。
名目にあたる従業員1人当たりの現金給与総額は37万3808円と、前年同月比1.4%増加した。名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は0.4%増の24万1518円。ボーナスや通勤費にあたる「特別に支払われた給与」は4.2%増の11万3150円だった。
実質賃金の増加は給与の伸びが物価の伸びを上回っていることを示す。6月のCPIは前年同月比0.5%下落し、実質賃金の伸び幅が名目より大きくなった。実質賃金は6年ぶりに2カ月連続で2%台となった。ただ所定内給与の伸びは依然小幅で、物価下落の影響も大きいことから、所得環境の改善が続くかどうかは見通せない状況だ。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。上から順に、上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与の季節調整していない原系列の前年同月比を、その次のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、一番下のパネルはその雇用指数そのものを、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

まず、景気に敏感な所定外労働時間は製造業の季節調整済み系列の前月比で見て▲0.5%減と、横ばいだった生産指数とほぼ整合的な動きを示しています。やや停滞気味の景気を反映しています。そして、注目の賃金なんですが、季節調整していない原系列の現金給与総額の前年同月比で見て、名目は+1.4%増、CPIでデフレ―トした実質で+2.0%増を記録しました。しかし、引用した記事にもある通り、ボーナスなどの所定外給与の伸びが大きく、所定内給与の伸びは名目で+0.4%増にとどまっています。従来からの研究成果に従えば、消費は恒常所得仮説に近い動きを示し、給与総額ではなく所定内賃金との相関が高いことが報告されており、なかなか消費の増加に直結するのは難しいかもしれません。しかし、他方で、所定内給与の伸びは名目ながら2-3月にそれぞれ+0.6%像を示した後、しばらくゼロかマイナスだったのに対して、7月は+0.4%増ですから、連合の集計で見る限り、かなり春闘のベースアップ率に近いラインになって来たように私自身は実感しています。また、マイナスを続けるCPIでデフレートすれば実質賃金がプラスなのはいうまでもありません。
グラフについては、いつもよりも1枚増やして、フルタイムの一般労働者とパートタイムの雇用の対比を詳しく見ています。すなわち、フルタイムの伸びがパートタイムを上回り、賃金の伸びは物足りないものの、非正規雇用ではなく正規雇用が伸びている可能性が強く示唆されていると私は受け止めています。ですから、かねてよりこのブログでも主張している通り、ほぼほぼ完全雇用に近い人手不足の現在の労働市場は賃上げではなく正規雇用の増加という雇用の質の向上に適しているのかもしれません。でも、賃金が上がる方向も見えて来たように感じないでもありません。
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