法人企業景気予測調査に見る企業マインドは上向きか?
本日、財務省から7-9月期の法人企業景気予測調査が公表されています。統計のヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は4-6月期の▲7.9から上昇して+1.9を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7-9月の大企業景況感、3期ぶりプラス 法人企業景気予測調査
財務省と内閣府が13日発表した法人企業景気予測調査によると、7-9月期の大企業全産業の景況判断指数(BSI)はプラス1.9だった。プラスは3期ぶり。自動車生産の持ち直しや政策対応による建設需要の高まりなどが寄与した。前回調査の4-6月期はマイナス7.9だった。
7-9月期は大企業のうち製造業はプラス2.9となり、4-6月期のマイナス11.1から改善した。新機種発売によるスマートフォン向け電子部品の受注増や熊本地震以降の自動車の生産増を指摘する声が聞かれた。
非製造業はプラス1.4だった。4-6月期のマイナス6.3から改善した。訪日外国人の増加で宿泊業などで観光需要が増加。公共事業予算の前倒し執行による受注増も寄与した。
先行き10-12月期の見通しはプラス4.9、17年1-3月期はプラス5.0となった。10-12月期は製造業がプラス8.6、非製造業がプラス3.0と、それぞれもう一段の改善を見込む。財務省と内閣府は総括判断を「企業の景況感は慎重さがみられるが、緩やかな回復基調が続いている」とした。
2016年度の設備投資見通しは前年度比4.9%増だった。前回調査の3.8%増からプラス幅が拡大した。経常利益は外国為替市場での円高進行が響き、6.8%減の見通しとなっている。
景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。今回の調査は8月15日時点。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIをプロットしています。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と青の折れ線の色分けは凡例の通りです。濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

今年2016年4-6月期は熊本地震や、この調査の回答日には関係しなかったであろうと想像するものの、英国のEU離脱、いわゆるBREXITの影響などで、企業の景況感も消費者のセンチメントも、4-6月期にはほぼ最悪を記録していた感がありますが、ゆっくりと反転上昇の局面に入りつつあるように私は受け止めています。すなわち、消費者センチメントについては、直近では消費者態度指数は4月40.8と5月40.9がほぼ底となり、景気ウォッチャー現状判断DIが6月の39.9を底に上昇しつつある印象です。消費者だけでなく、企業マインドについても、おそらく、4-6月期が底であった可能性が高く、この法人企業景気予測調査でも7-9月期の現状判断が+1.9と3四半期振りにプラスに転じた後、10-12月期見通しも+4.9、さらに来年2017年1-3月期見通しも+5.0と上昇する可能性が示唆されています。もっとも、引用した記事にもある通り、今後の最大の懸念材料は為替動向かもしれません。
ただし、法人企業景気予測調査のこのBSIのヘッドライン統計はあくまで大企業であり、中堅企業は大企業と時を同じくして7-9月期から景況感がプラスに転じるものの、中小企業では先行き来年1-3月期までを見通してもプラスに転じる気配すらありません。また、景況感を離れると、中堅企業と中小企業では人手不足の影響が深刻化して来ており、ここでも人材採用のより容易な大企業との格差が広がっているおそれがあります。例えば、9月末における雇用の不足超は大企業+12.6に対して、中堅企業+24.9、中小企業+20.0となっており、大雑把にいって、8社に1社が雇用不足を感じている大企業に比べて、中堅企業では4社に1社、中小企業でも5社に1社が不足を示しています。個の人手不足への対応も含めて、維持更新目的が多いものの、今年度2016年度の設備投資計画は上方改定されています。すなわち、前期調査時の+3.8%増から、7-9月期調査では+4.9%増との設備投資計画が示されています。ソフトウェアを含み、土地購入額を除くベースです。
10月早々には9月調査の日銀短観の公表が控えています。景況感にとどまらず、雇用の過不足感や設備投資計画など、より詳細な企業マインドに関する情報が利用可能になると期待しています。
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