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2016年9月30日 (金)

月末にいっせいに公表された経済指標から何が読み取れるか?

今日は、月末最終日の閣議日ですので、いくつか重要な経済指標が明らかにされています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局の消費者物価指数(CPI)が、それぞれ公表されています。いずれも8月の統計です。鉱工業生産は前月から+1.5%の増産を示し、雇用統計では失業率が前月から0.1%ポイント上昇して3.0%、有効求人倍率は前月と同じ1.37倍を記録し、生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率は先月からマイナス幅が拡大して▲0.5%となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、8月は1.5%上昇 電子部品好調で基調判断上げ
経済産業省が30日発表した8月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月から1.5%上昇の97.9だった。伸びはQUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(0.5%)を上回った。電子部品やパソコン、半導体製造装置など電機関連で生産が増加。経産省は生産の基調判断を「一進一退だが、一部に持ち直し」から「緩やかな持ち直しの動き」に上方修正した。
業種別では15業種のうち11業種が上昇し、3業種が低下。1業種が横ばいだった。電子部品・デバイスは6.3%上昇した。前月を上回るのは3カ月連続。カーナビゲーションや機械向けの液晶パネルなどが好調だった。企業の積極的なIT(情報技術)投資により情報通信機械は14.0%上昇した。
一方、自動車などの輸送機械は1.7%低下した。熊本地震後の回復が一服した。
出荷指数は1.3%低下の94.6と、3カ月ぶりに低下した。在庫指数は0.1%上昇の111.3、在庫率指数は3.5%低下の113.2だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査では9月の予測指数は2.2%上昇、10月は1.2%上昇となった。9月は輸送機械や業務用機械などで増産が見込まれている。生産実績が計画から下振れする傾向を考慮した結果、経産省では9月は1.5%程度の上昇になると試算している。
完全失業率、8月は3.1% 6カ月ぶりに上昇 市場予想3.0%
総務省が30日発表した8月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は3.1%と、前の月に比べて0.1ポイント上昇した。上昇は6カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想は3.0%だった。定年退職や雇用契約の満了による男性の失業者の増加が失業率を押し上げた。
完全失業率を男女別でみると、男性が3.4%と前の月に比べて0.2ポイント上昇した。女性は横ばいの2.7%だった。
完全失業者数(季節調整値)は、前の月に比べて9万人増加の210万人。勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は2万人増、「自発的な離職」は1万人増加した。就業者数(同)は6464万人と前の月から12万人減少した。雇用者数は1万人減の5726万人だった。総務省は雇用動向について「引き続き改善傾向で推移している」との見方を示した。
8月の全国消費者物価、0.5%下落 原油安で6カ月連続前年割れ
総務省が30日発表した8月の消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合が99.6と前年同月比0.5%下落した。原油安の影響で電気代やガソリン代が減少し、6カ月連続で前年実績を下回った。QUICKが事前にまとめた市場予想の中心値は0.5%下落だった。
生鮮食品を除く総合では全体の6割強にあたる323の品目が上昇し、150品目は下落した。横ばいが50品目だった。
生鮮食品を含む総合は99.7と、0.5%下落した。食料・エネルギーを除く「コアコア」の指数は100.4と、0.2%上昇した。
東京都区部の9月のCPI(中旬速報値、15年=100)は、生鮮食品を除く総合が99.5と0.5%下落した。電気料金の低下が響いた。価格据え置きや引き下げる動きが出た携帯電話端末も指数を押し下げた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。それにしても、統計をこれだけ引用すると長くなります。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、真ん中は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷、下は製造工業と電子部品・デバイスの在庫率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は、次の雇用統計とも共通して、景気後退期です。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは前月比で+0.5%の増産でしたから、それなりのボリュームの増産であると認識しています。加えて、製造工業生産予測調査でも9―10月と増産の見込みが示されており、しかもしかもで、製造工業生産予測調査のバイアスを考慮しても、引用した記事にある通り、かなりな増産が予想されますので、いよいよ生産も底入れして上向きに転じる局面を迎えた気がします。上のグラフのうちの一番下のパネルには電子部品・デバイスの在庫率がプロットされていますが、8月は急激に低下したことが示されています。単月の動きながら、在庫調整がこのまま順調に進めば、生産は増産の傾向に拍車がかかる可能性が高いと受け止めています。その意味で、統計作成官庁である経済産業省でも鉱工業生産の基調判断を「緩やかな持ち直しの動き」に上方修正しており、私も同感です。

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続いて、雇用統計については、上のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。失業率と有効求人美率は、ともに先月からほぼ変わらず、引き続き、完全雇用状態に近い人手不足が続いています。正社員の有効求人倍率も3か月連続で0.88倍を記録して高い水準にあります。来週早々に公表される日銀短観の雇用判断DIや厚生労働省の毎月勤労統計の賃金統計なども見てみたい気がしますが、どうも、前々からこのブログで表明している通り、人手不足や労働需給のひっ迫は、特に理論的な根拠はないものの、賃金よりも正社員増の方に現れがちな気がしています。

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続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エベルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。なお、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。ということで、日銀の物価目標である+2%にはほど遠く、マイナス幅が拡大してしまっています。ただし、引き続き、国際商品市況における石油価格の下落に起因する部分はいかんともしがたく、上のグラフに見る通り、コアCPIの前年同月比▲0.5%を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.83%、生鮮食品を除く食料が+0.25%、サービスが+0.10%、生鮮食品を除く財が▲0.03%となっています。エネルギーを除けばプラスの上昇率ながら、それでも2013年から始まった日銀の異次元緩和にもかかわらず、インフレ目標にはまったく達しません。OPECが最近減産合意しましたが、もはや、石油価格次第の展開かもしれません。

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