米国雇用統計の結果は金利引上げには力不足か?
日本時間の昨夜、米国労働省から8月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の増加幅は+151千人と前月から伸びを低下させ、失業率は前月と同じ4.9%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから最初の4パラだけ記事を引用すると以下の通りです。
Slower Growth in Jobs Report May Give Fed Pause on Interest Rates
After two consecutive months of hearty jobs gains, hiring eased in August, with the government reporting on Friday that employers expanded their payrolls by 151,000 workers.
The official unemployment rate, based on a separate survey of households, remained at 4.9 percent. Average hourly earnings grew slightly, bringing the 12-month increase in wages to 2.4 percent - a modest gain that still keeps most workers ahead of inflation.
The temperate performance and the absence of any wage pressure are expected to bolster the position of those within the Federal Reserve who favor a wait-and-see approach toward raising the benchmark interest rate when the central bank meets this month.
This report reflects only a single month of the labor market's performance, but it aroused particular attention because it offers the last major piece of economic news before the central bank's scheduled gathering on Sept. 20 and 21.
この後、さらにエコノミストなどへのインタビューや米国大統領選へのインプリケーションの分析が続きます。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。
米国雇用統計では、失業率は4.9%と前月と変わらずだった一方で、非農業部門雇用者数の増加幅は+151千人にとどまり、雇用増加のひとつの目安とされる+200千人を3か月ぶりに下回っています。そして、7月は上方修正され、6月分は下方修正された結果、直近3か月の増加幅でみると毎月平均+232千人と目安の+200千人をかなり上回っています。しかし、市場の事前コンセンサスは+200千人増には達しないものの、+180千人増くらいのイメージでしたので、やや物足りないと感じるエコノミストもいそうな気がします。業種別では、飲食店、専門・技術サービス、金融などサービス業が伸びています。もっとも、8-9月の雇用統計については、季節調整の関係で低く出た後で翌月か翌々月に上方修正される、というパターンが何度か見られ、2008年のリーマン・ショックの影響ではないかと推測されています。
米国連邦準備制度理事会(FED)の金融政策との関係ではビミョーなところではないかと私は考えています。事前の段階では、雇用増が+150千人を超えれば利上げの確率が50%を超えるんではないかと、私なんぞは単純に考えていたんですが、ホントにスレスレで+150千人増だったわけですので、もう少し様子見を続ける可能性も残されているような気もします。FEDの連邦公開市場委員会(FOMC)も、日銀の金融政策決定会合も、ともに、9月の20-21日に開催されます。もちろん、常識の範囲で時差があります。FOMCでは利上げが決まる可能性があり、日銀の方は追加緩和の可能性が残されています。FEDはこれから市場との対話を進めることと私は予想していますが、現在の黒田総裁率いる日銀は市場との対話よりもサプライズをもたらす方を重視しているように見えなくもありません。
また、日本やユーロ圏欧州の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。サブプライム・バブル崩壊前の+3%超の水準には復帰しそうもないんですが、まずまず、コンスタントに+2%のラインを上回って安定して推移していると受け止めており、少なくとも、底割れしてかつての日本や欧州ユーロ圏諸国のようにゼロやマイナスをつけてデフレに陥る可能性は小さそうに見えます。
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